アンブラハンズ♀の一人リメイヨ。彼女は、勇者一行の話を聞いた。
フリーレンが80年後の未来から来ており、帰還方法を探している。手がかりになるのは女神の石碑。そして、魔王軍との戦いでボンドルドとの接点は無かったと聞いていると。歴史を変えないため、今回の件を内密にして欲しいとの事だ。
『状況から推測するに、女神様の魔法はタイムリープ。実に興味深い。魔法で過去に来られたのだから魔法で戻れる。時間とは、進めるより戻る方が難しい。それと、既に認識されている通り、これからの行動次第では未来だけで無く世界線が変わる』
「リメイヨさんの理解力が高くて助かる。だけど、"世界線が変わる"と"未来が変わる"の違いを教えて貰えないか」
フリーレンとリメイヨだけが納得していたが、聞いているヒンメルには理解が追いつかなかった。未来とか世界線とか事前知識が無くてはついていけない。
『失礼した、ヒンメル様。世界線が変わるとは、未来が分岐する事を意味している。つまり、分岐した後にフリーレン様が未来に戻っても元の未来ではないと言う事だ。未来が変わるとは、少しの差はあるが同じ未来に帰れるという事を意味する』
「うん?」
『歴史の転換点での動きにフリーレン様が関与する程、同じ未来に帰れなくなる可能性が高くなる。その事だけを覚えて貰えれば構いません。フリーレン様は、最終手段として卿に合流する事も視野にいれて下さい。卿も同じ回答を出すと思いますが、タイムリープを繰り返す事で最悪の事態は回避できます。そうなると失う物も多いため、覚悟しておいてください』
「薄々分かっていたけど、そうだろうね。助かるよ、リメイヨ。ボンドルドを頼ると未来への影響もあるだろうから、その事態は避ける方向にする。だから、秘密にしておいてね」
この場合、リメイヨも困る。アンブラハンズは、全てボンドルド。秘密以前に全てバレてしまっているが、次代のボンドルド候補でもないので最悪リメイヨの個体が話さなければ問題無い。そう言うことだ。
フリーレンから「ボンドルドに秘密にしてほしい」という発言が出る時点で中身が80年後もバレていない事がわかる。リメイヨは、今後80年は何もないのかと思うばかりだ。まだ外堀を埋める期間なのかと。だが、ありがたい情報は、フリーレンがボンドルドを頼るだけの関係がある。お互い生きてさえ居れば、十分だ。これが長寿のやりかた。
『全て承知した。未来を変える可能性は、私
「助かる。一時的にリメイヨをPTに入れたいんだけどいいかな?」
アンブラハンズと言えば、今や北側諸国でボンドルドと共に人類防衛ラインを持ち上げた立役者だ。その一人が、対価なしで協力してくれる有り難いが恐いという感情が優先してしまう。
ただ一つ……ヒンメルの直感でわかる事があった。このアンブラハンズという者が、フリーレンに対して絶対な忠誠心を持っている事だ。それこそ、死ねと言ったら死ぬレベル。
「フリーレン。一体、君は何をしたんだ。全幅の信頼を寄せられているのがわかる。彼女は、君が、死ねと言ったら死ぬぞ」
「アンブラハンズと言えば黎明卿の個人戦力として、有名です。教会でも彼等に対して失礼な態度がとれないのに、本当に何をやらかしたんですか。場合によっては、今後教会の利用が出来なくなりますよ」
「どうするんだ、彼女を連れて行くのか。目立つぞ」
なんでアンブラハンズがここまでフリーレンの為に尽くすのか理解できないヒンメル達。それも、どんな指示にも従う姿勢だ。助かるという反面、困る事もある。紫サイリウムが光る仮面なんて付けられて一緒に歩かれれば目立つ。夜の森で遠くからでも目立つ。
どこぞの地方では、この紫サイリウムを家の外に飾ると魔族や魔物に襲われないなんて都市伝説もあるが、流石にこのまま連れて行くのは問題だと彼等も思った。
「むふ~。多分孫の代とかだと思うけど未来のリメイヨは、とっても世話が上手なんだ。彼女がいれば、おはようからお休みまで全自動」
ヒンメルの脳に10ダメージ。
ヒンメルは、冷静さを取り戻す。相手は女性だ。大丈夫だ。幼馴染みの所にいるお手伝いさん的な人と仲がいいだけの事だ。長寿のエルフ女性の女友達。女友達ならば、お泊まり会とかもあるだろう。おはようからお休みまで……そう言うことで良いんだよなとヒンメルは自分を納得させる。
『ヒンメル様、リメイヨは女性の死装束に名付けられる物。この名は、襲名制。貴方が考えているような問題は発生していない』
少し安心したヒンメル。だが、素顔がわからない以上、万が一男でしたなんて事だったら、ヒンメルを殺す魔法がこの場で完成してしまう。
「悪いが、その仮面は外してくれ。目立ちすぎるし素顔を知らない者を信用するわけにはいかない」
「それは確かに気になる。ボンドルドもアンブラハンズもその仮面を取らないから」
フリーレンを手助けしたいが、その為には仮面を取って素顔を見せろと要求されてしまうリメイヨ。アイデンティティを守るより、フリーレンを未来に帰す事の方が大事だ。そこに重きを置いた。その為なら、素顔を見せる事に抵抗はない。
この件を当代ボンドルドに確認しても同じ回答になる。こう言うとき、トップと同じレベルで現場が動けるのは便利だ。
『フリーレン様の緊急事態の為、条件付きで承知。この場で素顔を見せるが、同行する際は仮面は外さない。また、素顔の情報は墓の下まで持ち帰って頂きたい――了承頂き感謝する』
人を見る目があるヒンメル達。素顔を見れば、その者が邪な連中かなど直ぐにわかる。フリーレンを利用しようとする奴なら、ヒンメルは容赦なくリメイヨを切り捨てる。
リメイヨが仮面を外す。仮面の下からは、青い瞳をした赤いセミロングの女性、強い意志を感じる眼。色白な肌、眼の色、髪の色、彼等が知るどの地方の人間にも合致しない。優性遺伝子のみを組み合わせて産まれたアンブラハンズならではの人種だ。
「リメイヨ、勿体ないよ。美人じゃん」
「………いいだろう。君を信頼しよう。君は、フリーレンを裏切るような奴じゃ無い」
「ヒンメルがそう言うなら、僕は構いませんよ。アンブラハンズの方と一緒に共闘できるのは心強い」
「俺も構わない。だが、そうなると連携はどうするんだ」
フリーレンが未来に戻るまでの期間だが、アンブラハンズ♀が勇者一行に臨時加入する。勇者ヒンメルの眼は邪な考えを見抜くのは本当だ。だが、愛に全振りしている狂信者は、その判定には含まれない。
愛には無限の可能性があった。
「リメイヨは、何ができる?」
『魔力総量以外は、ほぼ卿と同じレベルの事が可能』
それは十分凄い事だが、勇者ヒンメルのPTメンバーで考えれば足手まといだ。彼等はバグしかいない。勇者ヒンメルPTからしたら二軍どころか三軍未満だ。最低限、自衛できる知恵袋程度の存在がリメイヨのポジション。
「自衛できれば問題無い。私が考えている方法を伝えるけど……ヒンメル達もここから先は墓の下まで持っていって。外に漏らしたら聞いた者達含めて、ボンドルドが殺しに来る。ボンドルドは、獣化の魔法が使える。女神様の石碑を解読し手に入れたと言っていた。そして、失伝させたと。石碑の内容と解析方法を知りたい」
「ありえません!女神様の魔法は、人類に残された遺産です。それをあの黎明卿が意図的に失伝させているなど。そのような独占が許される筈が……失礼しました。少し取り乱しました。ここでの事は墓の下まで持っていく、フリーレンさんの信頼を裏切るような事はしません」
ハイターが取り乱した。女神様の信徒である僧侶が、女神様の魔法を独占しようとしている。しかも教会に強い権力を持ち、女神様の敬虔な信徒と名高い人が裏でそれをやっているのだから驚きもする。
聖人君子の裏の顔を知った、ハイターだった。
ボンドルドをよく知るフリーレンからすれば、その程度の事で何も驚く事ではない。魔法使いだって知識の独占など何時の時代でもやってきた。ゼーリエが良い事例だ。彼女が持つ魔法は、彼女が一人で独占している魔法も数多い。
『ハイター様が言うのも当然。だが、必要な事だ。フリーレン様、未来では女神様の石碑が壊れていたはず。タイムリープを可能とする魔法など存在してはいけない。卿の場合も同じ。正しく管理できない者に渡る方が危険』
「確かにその通りだ。私なら帰還と同時に石碑は壊す。魔族に同じ事をされたら人類は魔族に勝てない」
広く普及して問題がない魔法以外、隠匿されるべきなのが女神様の魔法。
ハイターも納得した。過去に戻る魔法は、危険過ぎる。
『フリーレン様。残念ながら女神様の魔法に、解析方法などありません。卿の場合、天啓を得て石碑が読み解けたに過ぎない。女神様の魔法は、必要な時、必要な人に、必要な情報が与えられる。それこそ、女神様の導きのように。ここに、私が居るのもその導きによるものだと考えます。命に代えても、必ずフリーレンさんを未来に送り届けます』
リメイヨが仮面を被り直す。そして、握手を求めた。これから一時的とは言え、PTに加わるのだから、歩み寄る姿勢は大事だ。その覚悟を評し、ヒンメル達もリメイヨに握手する。
アンブラハンズを従えるフリーレン。
コレはいけません、魔族側からみたら、勘違いされてしまう。
本作品の今後の展開について、アンケートのご協力のお願い。どんな話で続けようか、読者様のご希望を窺えればと思っています。
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女神の石碑編normal ※週刊誌+独自
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女神の石碑編another(原作世界線)