黎明のフリーレン   作:新グロモント

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48:コミュニケーション

 フリーレンを未来に帰す為ならば、労力を惜しまないリメイヨ。勇者ヒンメルPTの中で、彼女が浮いていることは当人も自覚している。臨時とは言え、異物が混入した。だからといって、距離をとっては円滑なコミュニケーションができない。

 

 仕事は一人では出来ない。勇者ヒンメルPTメンバーと仲よくしておいて損はない。よって、リメイヨはフリーレンに誘われた食事にも同席させて貰う事にした。酒場で浮きまくるアンブラハンズだが、フリーレンは全く気にしていない。未来の旅路でボンドルドが一緒に居た時と比べれば、屁でも無い。

 

 リメイヨは、ヒンメル、ハイター、アイゼンについての情報を持っている。フリーレンが世話になるPTなのだから、下調べくらいは済んでいた。つまり、仲良くなるキッカケを作るには十分なネタを仕入れている。

 

『ハイター様は、お酒がお好きと伺った。卿含めてアンブラハンズ達は、飲酒する事は少ない。よろしければ消費に協力頂きたい。各地方の魔族を殲滅したお礼で貰った地元からの献上品が余っている。その中でも、特に上等な物を持ってきた』

 

「それは、勿体ない。ですが、本当に良いのですか?これ、なかなか高いですよ」

 

 ハイターの目の前に並べられた年代物のお酒。助けたお礼に献上された物、魔族に占拠された場所にあった物資など入手経路は様々だ。だが、酒というのは意外と役に立つ。価値が分かる者ならば、金より物々交換の方が有効だ。

 

 今現在ハイターの前にある10本の酒瓶だけで家が建つ。

 

 ハイターの眼は既にお酒に釘付けで、既に数本の酒を抱きしめている。これは、もう返さないぞという雰囲気だ。

 

『問題無い。良い酒は、悪酔いしない。さぁ、グラスを』

 

「いえいえ、これは有り難い。開けてしまったからには飲みきらないといけませんね」

 

 中身が美人であるリメイヨからのお酌だ。コレを断る事はハイターはしない。なにより、高い酒だ。その日から、安酒は悪酔いするからといって、高級酒を強請るようになる生臭坊主が誕生する。だが、二日酔いの頻度が減る事から勇者ヒンメルは、高級酒か二日酔いかを選ばされる事になった。

 

………

……

 

『アイゼン様、南の勇者様に興味があると聞いた。南の勇者様と卿は、行動を同じくして人類防衛ラインを底上げした。南の勇者の活躍を一番近くで見てきた。他にも、伝記にすら残っていないドワーフの英雄達についても詳しく知っている』

 

「興味がある。ハイターには酒。オレには、興味がある話ときたか。上手いな」

 

 高い酒で酔いつぶれかけているハイター。それを見たアイゼンの純粋な感想だ。別に、アイゼンも悪いとは思っていない。リメイヨの狙いがコミュニケーションである事は分かっている。

 

 ただ、アンブラハンズであるという事だけがアイゼンの気がかりな所だった。怪しい、くそ怪しい。今までの彼の人生でこれほどまでに謎めいた人物はいなかった。それだけの事だ。

 

『今、怪しいと思われましたね。このような格好をしている身だ。慣れている。我々の姿も南の勇者様は、怪しいと散々言っていた。だが、南の勇者様は覚悟をもって受け入れた。彼は、人類を救う為なら何でもやる。そういう強い意志を持った男だった』

 

「そうなのか。南の勇者は、七崩賢と相打ちになったと聞いたがそこら辺の話を聞かせて欲しい。後、黎明卿と南の勇者はどんな関係だったんだ」

 

 両方が知る人物で話題性がある者をネタにする。これこそ、会話が弾む大事な方法だ。そして、インパクトも大事。

 

『卿と南の勇者は、同盟関係。南の勇者は、リメイヨが産んだ子の父親。あぁ、この事は内密にお願いします』

 

「ぶはっ!! ゴホゴホ。冗談なのか。冗談にしては……」

 

 アイゼンは吹き出したビールを拭きつつ、他の者達が聞いていないか確認した。だが、アイゼン以外にそれを聞いた者はいない。同盟関係?南の勇者が父親?といった、とんでも無いネタを話してくるリメイヨにアイゼンはこの野郎と思った。

 

 是が非でも聞きたくなってしまうと。

 

『この酒場は、白身魚のムニエルが旨いらしい。もし、食べれたなら口が軽くなるかもしれない』

 

「ムニエルだな。少し待ってろ」

 

 アイゼンが白身魚のムニエルを追加注文した。そして、世間に知られることがない英雄達の話をリメイヨから聞く事に成功する。直近の話から過去1000年分の話もあり、話題に欠かない。

 

………

……

 

 ヒンメルは、ハイターとアイゼンがあっという間にリメイヨの手中に落ちた事をみて、苦笑いしか出来なかった。人との距離の詰め方を熟知している。

 

「僕は、絶対に堕ちないからな」

 

『何のことでしょう。フリーレン様が旅路で皆様に迷惑を掛けていないか不安がある。よければ、ヒンメル様達の旅路を教えて欲しい』

 

「フリーレンの事を迷惑だなんて思ったことは無い。多少寝起きが悪いが、大切な仲間だ。……確かに、グランツ海峡で朝日を一緒に見たかったが寝坊した時もあった」

 

『グランツ海峡の景色は、一見する価値はある。美しい海に眩しい朝日が反射して幻想的だ。……フリーレン様の事ですから、恐らくお昼に起床しましたね。ですが、その時に貴方が注意したから、今は改善された。フリーレン様を変えられたのは貴方です、ヒンメル様。貴方が上手に纏めていなければ、PT崩壊の危機があったはず』

 

 ヒンメルは、思わず案外良い奴じゃないかとリメイヨを見直した。今まで、勇者ヒンメルはPTリーダーとして頑張ってこの面子を率いてきた。だが、勇者ヒンメルのメンタルケアをしてくれる者はいない。

 

 PTメンバーで最年長であるフリーレンは、中身が最年少だから頼れない。どれほどの負担が彼に掛かっていたか想像を絶する。

 

「そうなんだよ。あの時は、ハイターも舌打ちするくらいに切れててさ」

 

『日頃のストレスを良い酒で解消して欲しい。お勧めは、ハイター様が大事に抱えているワイン。あれは、本日お渡しした中で一番高級な物。恐らく一人で飲まれるつもりです』

 

 勇者ヒンメル、高級酒を独占しようとしていた僧侶ハイターと拳での話し合いの結果、皆で分けて飲む事になる。ハイターは、涙を流しながら旨いと言っているが、その絵面が面白く皆が笑っていた。

 

「やはり、酒は皆で飲まないとな……おっと、リメイヨさんのお酒だったか」

 

『お気になさらずに。それとフリーレン様の事です。旅路に備えて荷物を確認したところ、香水などの必需品がありません。この近所には、夜まで営業している女性向けのお店があります……あとは、おわかりですね』

 

「貴方はいい人だ。最近の流行は何だと思う?」

 

『清涼感のあるミントやライムがお勧めでしょう』

 

 信頼を勝ち取るためならば、敵に塩を送る事すら厭わない。香水程度でフリーレンの心が揺さぶれるなら、何百年も前に決着はついている。翌日には、ヒンメルの手から香水が手渡された。旅路に役立ててくれという体裁で。

 

………

……

 

 たった、一日でなぜかリメイヨとヒンメル達の距離が近くなったと感じたフリーレン。食事に誘っただけでここまで距離が縮まったのかと良い事をしたと思っている。本人は、タダ飯を食べて酒を飲んでいただけだったが。

 

「まだ、眠いな。リメイヨ、次の街に着いたら起こして」

 

『承知しました、フリーレン様』

 

 護衛先で辿り着いた街では、女神様の魔法についての情報がなく次の街へと向かった勇者ヒンメル一行。朝の出発であった為、寝起きの悪いフリーレンはリメイヨが背負っている。

 

 その様子に、ヒンメル達も困惑していた。今までは、最低限自分の足で歩いていたが、背負われて旅ってどういう事だと。背負っているリメイヨも当然という対応をしている。

 

「フリーレン、未来で旅をしているって言ったよな。お手伝いさんを雇って旅をしているとかじゃないよな」

 

「なに?もしかして、疑ってる? ヒンメルも背負って貰いたいの?エッチだな」

 

 誰がそこを代われと言ったとヒンメルがフリーレンにつめ寄ろうとしたが、ハイターとアイゼンが止めに入った。

 

「抑えてください、ヒンメル。フリーレンさんがずぼらなのは今に始まった事ではありません。しかし、リメイヨさんもフリーレンさんを甘やかしすぎです」

 

「オレもそう思うぞ。朝食の時なんて、介護老人みたいな感じだったからな。あそこまで堕落したらお終いだぞ」

 

「アイゼン。今、私をおばあちゃん扱いしたな。1点だ」

 

 アンブラハンズに背負われつつ、バカみたいなやり取りをする勇者ヒンメルPT。その様子が遠くから魔族に見られている事に誰も気が付かなかった。




皇獄竜→勇者の剣(レプリカ)→帰還の魔法+大魔族達かな。
どっかで、魔族視点の話も入れたいと思います。

皆大好き贖罪の旅にでているソリテールさんが再登場で胸熱です。

今週のサンデー…フリーレンが休載だったのかなorz
原作連載頑張ってくれ。

後、最近フリーレンのSS増えてきて嬉しい~。
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