未来から来たフリーレン。その情報を重く見た魔王は、対フリーレンに貴重な戦力を出す事に決定した。グラオザームから黎明卿がフリーレンである事も示唆されており、気が抜けない。
今も最前線で猛威を振るい続けている黎明卿ボンドルドとアンブラハンズ達。人類の反抗の要となっており、こんな連中に未来の情報まで加わったら魔王軍は更なる窮地に追い込まれる。
魔王が選抜した4名が勇者ヒンメルPTを殲滅する任に当たる。血塗られし軍神リヴァーレ、七崩賢奇跡のグラオザーム、無名の大魔族ソリテール、終極の聖女トート。4名の大魔族は、女神の石碑に集合していた。
ソリテールは、女神の魔法を純粋に褒める。不可逆である時間すら遡る神の御業。魔法技術の発展では決して追いつけないであろう事を成し遂げる。天地創造の女神といわれる存在に尊敬の念を抱いていた。
「こんな化け物まで魔族は相手にしなければならないのね。ねぇ、フリーレン。未来の私はいったいどんな素敵な最後を迎えたのかしら?」
人間に興味があるソリテール。大魔族としての強さに自信はあるが、絶対だとは思っていない。何時の日か、人間に倒されるだろうとも考えている。その最後がどのような結末なのか、彼女は知りたい。フリーレンならば、それを知っているのではないかと推測している。
ソリテールの未来が、黎明卿ボンドルドに背負われ、フリーレン達と一緒に贖罪の旅をしているなど、今の彼女に言っても信じないだろう。
「ソリテール。遊んでいる時間は無い。今も黎明卿の南下を防ぐ為に、同胞の命が消えている」
「分かっているわ。しかし、グラオザームの情報も本当なの?黎明卿の中身がフリーレンというのは。私は、死にたくないから彼を見た事無いけど」
グラオザームの配下が集めた情報を統合すると、黎明卿とフリーレンが同一人物の方が色々と線が繋がる。状況証拠でしかないが、その可能性は非常に高かった。
「状況証拠の域を出ないがな。1000年を生きる人間などいない。黎明卿の魔力量もそれを物語っている。部下からの追加情報によると、フリーレンは衣食住に至るまでアンブラハンズの介護を受けているとあった。恐らく、魔法で作った分身に魔力リソースを配っている結果だろう」
「なるほど、分身を働かせるために本体が脆弱になるという事ね。リスクを取って魔法を強化する。理にかなっているわ。それ程までの魔法……七崩賢にも匹敵するわ。是非一度話してみたい」
ドンドン誤解が広まり、その裏付けとなる証拠が揃ってしまう。
それが原因で、今やフリーレンの異名は…。
「黎明のフリーレンから未来の情報を奪い、この時代で始末する」
今この場でフリーレンが死ねば、分身である黎明卿達も消えるという算段。
フリーレン達にとって不幸中の幸いなのは、大戦力がここに向けられなかった事だ。魔王軍が抱えている前線は多い。大戦力の移動になると一気に追い込まれて、別の危険が出てしまう。だからこそ、少数精鋭の大魔族達が選ばれていた。
………
……
…
グラオザームから今回の作戦概要が説明される。大魔族が四人もいるのだから、正面からの力押しという身も蓋もない作戦だ。隙を作れば、グラオザームが未来の情報を抜き取ってフリーレンを始末する。
こんなクソみたいな作戦だが、実に有効。
その圧倒的有利な作戦に乗り気でない大魔族が一人居た――終極の聖女トート。魔法の探求と明日の飯があれば良いという非好戦的な大魔族。だが、その名は人類側にも知られている事からわかるように、過去に何度かは人類側と敵対している。
「馬鹿馬鹿しいから、私帰るね。魔王様のためとか、魔族存亡のためとか、どうでもいいんだよね」
この発言には、グラオザームも頭を悩ませる。魔王の命令でこの場に来たのに、会議中に帰るとか言い出す始末。何をしにノコノコ出てきたのかと言いたくなるのも仕方が無い。大魔族は、癖が強く自己中心的な連中が多すぎると中間管理職は嘆くばかりだ。
ソリテールとしては、人数が減ればそれだけ生存率が下がるので、撒き餌としてでも居て欲しいのが心情だった。だが、一度帰ると言った大魔族が前言撤回するとは思えないので、変わりの生け贄の用意を注文する。
「トートが居なくなるんじゃ、代わりにアウラを呼べないのかな。七崩賢として、最近仕事をしてないって噂を聞いてるよ。こう言うときにこそ役立つべきなんじゃないかな」
「あぁ、ソリテールは知らないのですね。アウラは、黎明卿の手で精神崩壊間際まで追い込まれて長期療養中です。
そのような状態で、南の勇者との戦場に引っ張り出された事にソリテールはアウラの事を若干哀れに思った。彼女は、黎明卿が何故アウラの事を殺さなかったのか、何が目的だったのか考え始める。大魔族を生かして返す理由など、人類側には無い。
勇者ヒンメルと戦い生き延び、黎明卿と戦い生き延び、南の勇者と戦い生き延びる。これだけ聞けば、魔族の中ではアウラの評価が爆上がりになる。だからこそ、長期療養も許される。
「ソリテールは、長生きしたいのか。俺のような老いぼれから言わせると、長生きに秘訣などいらん。全霊を以って戦場を踊るだけよ」
魔族戦士最強の男である血塗られし軍神リヴァーレ。彼からすれば、今まで敵となる人間はいなかった。だからこそ、全霊を以って戦えば敵が死ぬ。ある意味、レベルをあげて物理で殴れば殺せる事を体現した男だ。
そんな連中に付き合い切れないというトートは、早々にこの場を後にする。彼女としては、後100年もすれば彼女の"呪い"が星を覆う。無理せずに生き延びる事が彼女の最優先課題。
結局、三人の大魔族で勇者ヒンメルPTを潰す事になる。
ソリテールは、彼女の長生きの秘訣である顔出しNG嬢として参加。つまり、援護射撃しかせず、危なくなったら逃げる事が大前提。その状態のソリテールを戦力換算で言えば、大魔族0.5人分といった所だ。
魔王が大魔族を四人も無理に集めたのにこの始末。グラオザームは、魔王が七崩賢の事を中間管理職と呼んでいたのかやっと意味を理解し始めた。
顔出しNG嬢ソリテールさん……なんか響きが良いよね。