黎明のフリーレン   作:新グロモント

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57:ハイターの夢

 聖都郊外に作られた孤児院。

 

 ハイターは、魔王討伐後にヒンメルから送られてくる女神の石碑に関する資料精査を続けていた。その為には、腰を下ろして調べられる環境が必要だ。そこで考えられたのが、孤児院。

 

 不幸中の幸いで、魔王軍との戦争で戦争孤児は多く存在する。国も事態を重く見て、力を入れているが色々と不足していた。そこで、ハイターは魔王討伐の報酬と教会勢力の助けで孤児院の経営者となる。

 

 ここで大きな問題が一つあった。ヒンメルが各地方をウロウロして、なかなかハニートラップが決まらないからとハイターも標的にされた。男性僧侶は生涯独身であり、本来であればそのような事はあり得ないが…魔王討伐PTの僧侶だ。しかも、その魔力量は人類最高峰。

 

 これは、狙われて当然だった。

 

「いや~、助かりましたリメイヨさん。貴方が、孤児院に来てから教会からの圧力がピタリと止まりました」

 

『問題無い。フリーレン様を未来に帰す約束を果たすのは、こちらも本望。卿からも貴方との関係性を繋いでおくように言われている』

 

 ハイターの孤児院で雇われる事になったアンブラハンズのリメイヨ。命が惜しい者達は、その日を境にハイターへのちょっかいを止めた。大人しく、一般的な支援になる。

 

「経営も手伝って貰って助かっております」

 

『問題無い。女神様の魔法についての解析は、貴方にしかできない仕事。雑事は気にせず、解析を進めて欲しい』

 

 当初不安であった孤児院経営。それが軌道にのる。

 

 よかれと思って始めた時は、彼も苦労していた。何をするにも手探りだ。手伝ってくれる人を探すにしても、魔王討伐PTの僧侶ハイターを狙ってくる者達ばかり。最悪、割り切って考えようとすら思っていた所にボンドルドが彼に救いの手をだした。

 

 ボンドルドは、打算的な考えだったが……その恩恵を受ける側としては、しっかりと感謝の念を抱く。

 

 ハイターの日々は充実していた。

 

 女神様に祈りを捧げ、集められた孤児達と食事をし、聖典の教えを伝え、成長していく子供達と過ごす。集められた孤児の中で希に極めて優秀な者がいれば、アンブラハンズ候補として、リメイヨが推薦状を書いて黎明卿の元で高度な教育がなされる事になっている。

 

 優秀な人材発掘のお礼に、黎明卿からは高額な資金援助と様々な物資支援が見返りである。孤児院の経営として、実に充実していた。

 

………

……

 

 ハイターは、女神の石碑に関する解析を夜遅くまでやっている。

 

 時間は有限だ。だが、未だに手がかりの一つもない。調査は進めているが、女神の石碑に関する情報が少なすぎる。

 

 一息入れようと思ったとき、彼の執務室がノックされる。

 

『ハイター様。元気の出る水を持ってきました』

 

「ふふふ、元気の出る水ですか。いいですね~。丁度、休憩しようと思っていました。入ってきてください」

 

 扉を開けて部屋に入ってくるリメイヨ。彼女は、何時もの仮面を付けていない。夜にお酒を飲む時だけは、外してくれる。アンブラハンズである彼女が仮面を付けない理由は、ハイターからの頼みだったからだ。酒を一緒に飲むとき位は、外してくれと。

 

『卿の所から差し入れで、45年物の良いワインが届きました。後、二年前に卿の元でアンブラハンズ候補になった彼が正式にアンブラハンズになりました』

 

「おぉ、それは吉報です。彼には、才能がありました。黎明卿の元で僧侶として学び、力を付けて欲しいものです。リメイヨさんにも黎明卿にも何時もお世話になっています。感謝しています」

 

 万事上手く回っている。自分の足りない部分を補ってくれる優しい女性が近くにおり、未来ある子供達を育て上げ、輝かしい未来へ送り出せる環境。実に素晴らしいとハイターは思っていた。

 

 リメイヨがワインを注いでハイターに渡す。美人がお酌をしてくれるのだから嬉しい物だと考えているハイター。だが、些か世間体が悪い。孤児院経営者であるハイターが、夜の私室に美女を連れ込んでお酌をさせている。

 

『飲まれないのですか』

 

「いえ、そういうわけではないのですが……リメイヨさんは、ご結婚などはなされないんですか。手伝って貰っているのは嬉しいのですが、女性は家庭に入る方も多いと思ったもので」

 

『そう言うことですか、貰い手が居ないだけです。それとも、ハイター様が貰ってくれるのですか?』

 

「貴方でしたら喜んで」

 

 思わず本音が出てしまったハイター。

 

 リメイヨとハイターの付き合いは、魔王討伐時代に遡る。美人で気立てが良くて、優秀。更には、魔法使いでもあり僧侶でもある。完璧を体現した女性に惚れない男は少ない。

 

 男ハイター……ここまで来たら引けない。

 

 渡されたワインを一気飲みし、酒に勇気を貰う。だが、そこで気が付いてしまった。お酒にしてはアルコールが全くないと。

 

『どうしましたか。狐につままれたような顔をして』

 

「はぁ~……お酒にアルコールがない。これは、許せませんね」

 

 男の純情を弄び、更には酒への冒涜。

 

 都合がよい夢ならば、アルコールまでしっかり再現して欲しいものだとハイターは思った。そして、目覚める準備を始める。

 

「私はね。許せない事があるんです……男の純情を弄ぶ事、酒への冒涜。この二つの地雷を踏み抜いた魔族なんて、殺すしかないじゃないですか」

 

 女神様の魔法である"目覚めの解呪"を死ぬ気で唱え続ける。それが夢の中であろうとも、肉体がそれに反応するとハイターは信じていた。

 

『起きられるのですね。頑張ってきてください』

 

「女神様に供物(魔族)を捧げてきます」

 

 目が覚めたハイターを見た瞬間、グラオザームは悟るだろう。男の純情を弄び、酒への冒涜をした罪の重さを。グラオザームは、知らず知らずのうちに阿修羅を量産する。

 

 




次は、フリーレンの番。
さて、どんな内容にしようかな。
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