黎明のフリーレン   作:新グロモント

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61:腹を切れ

 ヒンメル一行は、新しい力を手に入れた。己のリミッターを解除する事で殺意に目覚める。これが魔王討伐に役に立つ事を人類は願っている。

 

 目覚めた力で奇跡のグラオザームを惨殺し、無名の大魔族ソリテールを逃亡させ、血塗られし軍神リヴァーレを戦略的撤退に追い込んだ。後世の歴史に偉業を一つ足した事になる。

 

 全員が五体満足で生き残った事を喜ぶ最中。正座させられているボンドルド。その対面にはフリーレンが厳しい顔をしている。フリーレンは、未来から来てくれた事には十分感謝している。

 

 だが、アンブラハンズの中身に気が付いた。再び芋づる式にボンドルドの正体にも気が付く。リメイヨの肉体に未来のボンドルドが上書きされるという事は、そう言うことなのだと。

 

「腹を切れ、リメイヨ(ボンドルド)

 

「フリーレン。僕達の故郷に習わなくてもいいじゃないか。幻覚を見せたり、人の認識に干渉する魔族相手に誤チェストで切腹は厳しすぎるぞ」

 

「そうですよ。折角治したのに」

 

「いや、そう言う問題じゃ無いと思う。中央諸国にそんな野蛮な場所があったとは知らんかった。俺は、絶対に二人の故郷には近寄らないぞ」

 

 腹を切る事を否定しないヒンメルとハイター。アイゼンは、改めて二人のヤバさを自覚した。勇者PTで唯一の良心である彼の気苦労は、死ぬまで続くだろう。この状況を解消する為にも、早くフリーレンが未来に帰ってくれないかとすら思い始めていた。

 

 ボンドルドは、服をまくり上げた。

 

 懐からナイフを取り出し、脇腹に突き刺す。左から右に綺麗に裂かれ、血で周囲を汚した。だが、切れた瞬間から回復魔法で治しており、重傷にはならない。

 

「麻酔無しでは、些か痛いですね。これで宜しいでしょうか、フリーレンさん(・・)

 

「リメイヨは、()付けで呼んでいるよ」

 

 ヒンメル達も未来から来たリメイヨには違和感があった。その正体にまでは気がつけていない。だが、彼等は知らなくても良いことだ。

 

「ご安心ください。未来に帰れば、彼女は戻ってきます。少し、フリーレンさんとお話をしたいので皆様席を外して貰っても?過去から未来に来たフリーレンさんが少しやらかしましたのでその話を伝えておこうかと」

 

 ヒンメル達が離れた場所で休んでいる。

 

 その間にボンドルドは、フリーレンと対話する。

 

………

……

 

「ボンドルド。私の記憶を消したのは何回ある?」

 

「二回です。一度目は、マハトを倒した後に次代のボンドルドに引き継ぎをした直後です。二度目は、過去から来たフリーレンさんがプルシュカに対して色々吹き込んだのを消しました」

 

 フリーレンは、やはり過去に一度同じようなやり取りをしていたと理解する。

 

 マハトとの戦いの後に一部記憶が欠落している理由が判明。更に、過去に女神の石碑を調べた際に未来の記憶が無い原因が判明。

 

 それ故にフリーレンは、納得する。

 

「ボンドルドは、私に嘘は言わないって約束した。記憶を消した時の話を全部話して。やっと、人の心が少し理解出来た。今の私は、全てを受け入れられる」

 

「分かりました。フリーレンさんが成長されて本当に嬉しい限りです。グラオザームは、良い魔族でした。貴方の心を成長させた」

 

 ボンドルド、プルシュカ、フェルン、シュタルク。皆と離れたことで、自分を見つめ直す事ができたフリーレンは、成長していた。過去の時代でヒンメル達に世話になり、未来でも実は世話になっていた事をしり、理解する。自分は一人で生きていたわけではなかったと。

 

 それから、隠していたことをボンドルドは全て教えた。

 

精神隷属機(ゾアホリック)で1000年後まで精神を上書きして生き続けた事。

フリーレンが初恋の相手で、今まで頑張っていた事。

アンブラハンズが全てボンドルドである事。

フランメがクソ弟子へと残した魔法で記憶が消されていた事。

過去から来たフリーレンが未来でやらかした事。

 

 男って本当にしょうもない生物だなと思う反面、感謝の念を抱く。この1000年を思い出しても、何だかんだで辛い時、困った時に側に居てくれたと。

 

「ボンドルド、一つだけ言っておく。私は、ゼーリエママとかは許さないからな」

 

「今の話を聞いて、そこを心配されますか。大丈夫ですよ、私は過去も現在も未来も貴方だけを()しています」

 

 なにやら遠くでアイゼンが歌い出した。ドワーフの聴力は、エルフと同じく地獄耳。その事は、この場に居る誰も知らない。ヒンメルとハイターが突然歌い出したアイゼンを心配し始める。魔族の新しい精神攻撃かと勘違いされ、取り押さえにかかった。

 

「私()だ。ありがとう、ボンドルド。何時も助けに来てくれて」

 

「………そこは、愛していると言葉で聞きたい所です。ですが、それはまた次回の楽しみにしておきます。何時でもその言葉は受け付けております」

 

 ボンドルドは、フリーレンに惚れ直す。

 

 取り押さえられるアイゼン。知りたくも無かった真実を墓の下まで持っていくと誓いを立てていた。

 

 

 それから、一休憩して未来へ帰る時が来たフリーレンとボンドルド。お互いが女神の石碑に触れており、帰還の魔法名を唱えれば片付く。

 

「フリーレン。君が過去に来たのにはしっかりと理由があった。未来でも元気に過ごしてくれ」

 

「ありがとう、ヒンメル。後、私が帰った後にこの石碑の大部分は壊しておいて。悪用される心配があるから」

 

 了承するヒンメル。

 

 愛する人が無事に未来に帰り、旅を続けられる。その手伝いが出来ただけで、彼は満足だった。未来から戻ってくるであろうフリーレンへの対応も色々と考えていた。

 

「リメイヨさん、未来から来てくれてありがとう。貴方に女神様の加護がありますように」

 

「ハイター様。過去の私を色々助けてくれたこと感謝します。何かお困りの事がありましたら最寄りのアンブラハンズまでお訪ねください。必ず力になります」

 

 見送るハイター。

 

 今生の別れでも無いと信じている。ハイターは、彼女が南の勇者の子供を妊娠して産んだことをまだ知らない。その秘密を勇者PTで知っているのは、アイゼンのみ。

 

「フリーレン、リメイヨさん。長寿種の特権が今ほど嫌になった事はない。また、未来でな」

 

 全ての秘密を墓の下まで持っていくアイゼン。

 

 ヒンメルの恋の行方もボンドルドの秘密も経産婦フリーレンで有ることも全て知ってしまった彼。勇者ヒンメルPTの良心は、死ぬまで良心であり続けるだろう。

 

 だが、彼の苦労はまだ終わらない。

 

「……アイゼン。少し頼みがある。私は未来に手紙を残す必要がある。メモを渡すから、後で誰も居ないところで確認して欲しい」

 

「あの石碑を作ったのはアイゼンさんでしたか。私からもお願いします」

 

 未来で一度は誰かが石碑に帰還の魔法名を残しに来る。その際に、プルシュカへの手紙が見られては都合が悪い。だから、長寿種であるアイゼンが適任だ。渋々とメモを受け取るアイゼン。

 

 フリーレンとボンドルドは、アイゼンに対して返すべき恩がドンドン積み重なる。

 

 最後の別れの挨拶をし、ヒンメル達が耳を塞ぎ離れていく。帰還の魔法名を聞かないためだ。

 

「「フィアラトール」」

 

 過去での仕事を終えたフリーレンとボンドルド。二人が帰還の呪文を唱えた。

 




女神の石碑編(妄想)が終わった。

閑話を挟んで、妄想ネタをやりつつ、オレオール到着って感じかしらね^-^

原作がないからオリジナルで完結まで走り抜く。
既に原作の原型などないから、何も気にしない!
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