黎明のフリーレン   作:新グロモント

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62:ヘタレ

 過去から帰ってきたボンドルドとフリーレン。

 

 未来では、ボンドルドが過去に行ってから数分程度しか経過していない。その数分間で一番苦労したのはプルシュカだった。過去から来たボンドルドが、獣化したプルシュカを抱きしめたらしく撫でられまくったそうだ。途中で、過去から来たフリーレンが目を覚ましそうになり、獣化プルシュカが尻尾で目隠しをしている。

 

「皆さん、苦労を掛けました。フリーレンさんと一緒に帰ってきましたよ」

 

「ただいま。後、何か暗い。この匂い、プルシュカか……面倒をかけたね」

 

 過去から戻ってきた二人を祝うフェルンとシュタルクとプルシュカ。

 

 実は、同じ未来に帰ってこられるかという不安はあった。この三人がこの場に居る時点で第一関門はクリアしている。どこかで未来がこじれていれば、この三人で旅をしていることはない。

 

「フリーレン様が素直に謝ってる。これは、褒めてあげないと…」

 

「おぉ、そうだね。偉い偉いフリーレンお姉ちゃん」

 

「またそれかよ。二人とも本当にフリーレンの事を子供扱いするの好きだな」

 

 フェルンとプルシュカに偉い偉いと撫でられて満更でもないフリーレン。微笑ましい光景だった。フリーレンもさり気なくプルシュカを抱き寄せており、感触と匂いを確かめている。

 

「パパ!! 過去で大冒険して来たんでしょ。過去から来たパパに聞いたよ。知りたかったら、戻ってきたパパに聞いてって」

 

「えぇ、勿論です。今となっては過去の出来事です。フリーレンさんもそれで……どうされましたか?」

 

「ちょっと、石碑を確認しててね」

 

 フリーレンは、アイゼンが建ててくれた石碑を確認している。そこには、愛する娘プルシュカへと書かれている。コレを彫ったのが母親で無くアイゼンである事をいつの日かプルシュカも知るだろう。

 

「むふ~。ママったら照れ屋さんなんだからね。この手紙には、封印魔法を解く為のヒントがあったんだよ。ママって凄いよね。こんな複雑な構築式を考えられるんだから」

 

「そうですね。しかし、宛名以外数式の羅列ですね……」

 

 ボンドルドは、チラリとフリーレンの方を見た。最後でヘタレたなと。

 

 この絶好の機会を逃してどうすると。過去から送る娘への手紙で宛名以外が構築式のみってどういうことだ。つまり、天脈竜の所に残した石碑にも構築式が残されている。

 

 プルシュカ以外がこんな手紙をもらったら泣き叫ぶぞ。もっと、子供の心を勉強しないと駄目なフリーレン。何処の世の中に、七崩賢不死なるベーゼの封印魔法を模倣した構築式をもらって喜ぶ子供が居る。

 

「それで、これからどうされますかフリーレン様、ボンドルド様」

 

「女神の石碑とプルシュカへの手紙は、後でアンブラハンズに連絡して回収させます。持ち去られないように強固な封印魔法を頼めますか」

 

「そうだね。ボンドルドが管理していれば、未来から情報を手に入れ放題か……ヨシ!!」

 

「なるほど、プルシュカは入れ替わって未来旅行も出来るのか……ヨシ!!」

 

 現場猫と同じポーズで石碑を指さすエルフの二人。

 

 女神様の敬虔な信徒を前にして、よくぞそこまで碌でもない使い方を言い切れる。尤も、ボンドルドも致命的な未来を回避する為に使う気だから、あまり人の事はいえない。

 

 フリーレンとプルシュカが仲よく二人で封印処理を始める。

 

「プルシュカちゃんの封印魔法……凄いですね。私では、あそこまでできません」

 

「へぇ~、プルシュカってそんなに凄い魔法使いなのか。あまり、そうは見えないが」

 

 フェルンとシュタルクが二人を見た感想。

 

 魔法使い視点でみれば、プルシュカの領域にいる者は少ない。見た目はどうであれ、50年以上を魔法の研鑽に掛けている。母親と同じく、一度見たり経験すれば、だいたい模倣できる程度に優秀。時間を掛ければ、再現して改良も加えられる。

 

「フェルンさんは、得意の分野が異なります。貴方は、私やフリーレンさんすら凌駕する一般攻撃魔法があります。貴方の速射、抜き打ち、遠距離射撃の精度を抜ける存在は私の知る限りおりません。誇ってください」

 

「そうだぜフェルン!!」

 

 褒めて伸ばす。これは、子育てでは大事な事だ。フェルンは大人びているが、このPTで言えばまだまだ子供。時おり、母性が有りすぎて実は子持ちなのではと勘違いされる事もあるが…。

 

 ボンドルドがフリーレンにゴルゴ13のネタ書物をイドフロントで読ませておいて良かったと思った。これが、ボンドルドの故郷の伝記だった場合、フェルンが杖でなく剣を持っていたかもしれない。剣にゾルトラークを纏わせて、魔法を斬り、相手をなで切りするフェルン……有り寄りの有りだなって思っていた。

 

………

……

 

 それから、フリーレン一行は検問所を無事に通過し、帝国入りを果たす。

 

 最初の大きな街に着き、そこにも勇者PTの銅像があった。今までとは異なり、少なからず変化があった。

 

「フリーレンさん、何か覚えている事はありますか?」

 

「そういえば、女神の石碑を調べた後。記憶が明白になった頃だけど……なんか、ヒンメルもハイターも血なまぐさくなった気がした。アイゼンは変わらずだったけど」

 

 昔は、気にしていなかったが思い出せば、そんな気がしたなというフリーレン。

 

 ヒンメルのポーズが格好いいから実践的な構えに変わり目つきが鋭くなる。ハイターもなぜか露骨に筋肉が付いているように見える。頼りがいのある勇者になったという感じがして実に好感が持たれている。

 

「フリーレン様、大変でございます。北側諸国から来る人が多く宿が……」

 

「フェルンさん、私にお任せ下さい」

 

 ボンドルドは、自らの伝手で高級宿に二部屋を確保した。ボンドルドは、フェルンに伝える。帝国の国境警備は優秀です。ここならば当面安全……高級宿は、二人一部屋と三人一部屋。後は、分かりますねと。

 

「フェルン、安心してくれて良いよ。ここにお姉さんがいるんだから色々アドバイスしてあげる」

 

「シュタルクさん、貴方には私から話があります……少しコチラに」

 

「パパ~、プルシュカはあそこでおやつ食べて待ってるね」

 

 気を利かせてプルシュカは、喫茶店でおやつを食べに行く。

 

 フェルンには、フリーレンが正しい夜の教育を行う。

 

 シュタルクには、ボンドルドが正しい夜の教育を行う。

 

 誰も不幸にならない未来が彼等には待っているはず……だ。

 

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