エンデ周辺の魔族達は、魔王軍解散後も人間の追ってから逃れて流れ着いた者が多い。敗走した魔王軍への追撃は苛烈を極めており、生き残った大魔族の元に魔族達は身を寄せている。すなわち、魔族が居る場所を虱潰しにする事で大魔族も芋蔓式で見つかる。
それは、ひっそりと暮らしたい終極の聖女トートも例に漏れなかった。非好戦的と自称する彼女だが、大魔族の一人として頼られている。大魔族となれば、同じ大魔族同士の付き合いもあるので、更なる強者の庇護の下へと良縁を願う魔族もいた。
だが、それは夢物語。数が増えれば、発見のリスクが伴う。それに、七崩賢アウラが大魔族達の情報をボンドルドに売っている。種のバレている魔法なんて、フリーレン一行を前には通じない。
魔王軍時代の拠点を改修して住んでいた終極の聖女トート。彼女が従えていた魔族は50人を越える。彼女直属の部下も5人いたが、全員が血祭りにされている。
「いや~、封魔鉱を身につけて戦うと楽だわ。おっと、サンキュー。フェルン」
「気をつけてくださいシュタルク様。精神魔法などには有効ですが、全ての魔法を防げるわけではございません」
フェルンとプルシュカが後衛として援護する事で並の魔族では手も足も出ない。シュタルクが通った道に生き残った魔族は誰も居ない。完全武装の重戦車たるシュタルク相手に立ち向かえるのは、大魔族くらいだ。
「そうだな。で、プルシュカの方も終わったのか?」
「当然よ!! そこら辺にいる魔族なんてひゅーとやってひょい」
プルシュカは、ソリテールから見て覚えた魔力をぶつける方法を活用している。威力、速度、使いやすさが抜群で有り、便利な魔法だった。魔力を薄く鋭く強靱にする事がプルシュカの特技であり、壁越しでも相手を真っ二つにできる。
………
……
…
トートは目の前に居るバカみたいな魔力をしている二人を見て絶望する。
黎明卿ボンドルド。トートの二倍近い魔力量を誇っており、七崩賢を遙かに上回る。彼に背負われているソリテールの魔力も加算されているが、それをトートが知る事はない。だが、それを差し引いても化け物というのに十分だった。
黎明のフリーレン。老魔法使いレベルの魔法量しかないが、何時までも減らぬ魔法量にそれが偽りであるとトートも気が付いた。だが、気が付いたところで意味も無い。既に逃げ場はないのだから。
「トートさん。貴方の
「なんで、知っている。魔法については、大魔族でも知る者はすくない」
トートの魔法は、魔族の中でも秘密事項。外に漏れれば、人間が確実に殺そうと本腰を入れる。そうならないように、人目に付かないよう大人しくしていた。時間で彼女は勝つつもりだった。
「そっか、トートは知らないんだ。アウラがボンドルドに大魔族の情報を売っていた事。七崩賢なんて呼ばれているくせに、命惜しさに仲間の情報を売るなんて良い魔族だったよ。もしかして、天国に居たりして」
「それは面白いですね。もし、アウラさんが
フリーレンの冗談は、冗談では無い事を後々知る。
「さて、トート。お前には、二つの道がある。今死ぬか、後で死ぬか。好きな方を選んでいいよ」
「いけませんよ、フリーレンさん。言葉は正確に伝えないと。魔王が使っていた装備の場所を吐いて、今すぐ楽に殺して貰うのか。私が尋問した上で洗いざらい吐いてから箱入り娘に……と思いましたが、魔法の事も考慮してやはり死んで貰います」
どちらを選んでも最悪なのは間違いない。だが、苦痛が長引かないという点では前者が理想的だ。
「トート、三秒で決めろ。私は気が短いんだ……3、2、1」
「くたばれ、
直接的な戦闘力が低いトートは、化け物を二人も相手にして勝てない。大魔族達は、基本的にカートリッジとなる。そして、ボンドルドやプルシュカに背負われて、次の魔族狩りに使われる。この最悪な悪循環を今の魔族達に止められる者は誰も居ない。
魔王亡き後に散り散りになった魔王装備が再び集まりつつある。
装飾品、マント、服。魔族達も考える事は人間と同じく、権力者の死後は持ち物が略奪される。ボンドルドとしては、男が使っていた服とか
「魔王は、魔族を統べる王の総称。魔王は女だ。私がプルシュカに男のお古なんて許可しないよ」
「魔王って女性だったんですか」
ボンドルドは、魔王が女性だと言われても何故か納得していた。この世界において、女性は強い。女神様も女性、ゼーリエも女性、フランメも女性、フリーレンも女性、フェルンも女性、プルシュカも女性、七崩賢や大魔族にも女性は多数いる。寧ろ、男性で歴史に名を残した存在の方が少ない。
だから、魔王が女性であっても何ら不思議は無い。
「そうなんだよ。だから、ヒンメルも魔王の性別が分かった瞬間、躊躇して危なかったんだ。私が切り札を使わされたのもそれが原因だ」
「ヒンメル様らしいですね。フリーレンさん、見てください。可愛らしい魔王様が来ましたよ」
「パパ、ママ見て見て!! 私が、大魔王プルシュカである」
むふ~と魔王が使っていたマントを翻しながらプルシュカが言い放った。実に可愛らしい大魔王様だ。
「可愛いね。後は、杖か……やっぱり、魔王城かな」
「そうでしょう。大魔族達の拠点はあらかた調べましたがそれらしい物はありませんでした。まぁ良いではありませんか。メインディッシュは最後の方が楽しめると思います」
魔族が集めた収集品を強奪して進むフリーレンPT。彼等が通った道には、ぺんぺん草も生えないレベルに更地にされる。生存者が誰もおらず、魔族達で情報共有がされなかった。
大魔族が減る事で人類側の攻勢も始まり、魔族が根絶やしにされるまでのタイムリミットが迫っている。彼等が助かる道はただ一つ……保護を謳っている黎明卿の庇護下に入る事だ。これが全知のシュラハトが残した魔族生存の道だとは誰も信じないだろう。
「そうだね……じゃあ、フェルンにも頑張って貰わないと。遠距離狙撃得意でしょう。超長距離、高圧縮ゾルトラーク。撃てるよね?」
「何回かは。ですが、魔力が心許ないです」
フリーレンとボンドルドは、つまらない事で悩むなと思っていた。魔力が足りないなら外部タンクを使えば解決する。新しく仕入れた大魔族を使い潰せば、魔王城の外からゾルトラークで数を削れる。
その作戦で、三日三晩掛けて魔族が誰も感知できない場所から魔族が人知れずに減る。魔族は死ねば魔素に帰るため、死体は残らない。更に、魔族も時間感覚がクソのため、数日間同族をみなかった程度では騒がない。
「では、何も問題ありませんね。照準補正は私とフリーレンさんが手伝います。フェルンさんは、引き金を引くだけで構いません」
「なぁ、もしかしてフェルンって凄い魔法使い?」
「バカだね、シュタルク。フェルンお姉ちゃんは、凄いに決まっているじゃない。気が付いたら脳天ぶち抜かれるんだよ。普通は防げないわよ」
フェルンの実力は、ゼーリエが見込むとおりの進化を遂げていた。だが、その進む方向がフリーレンよりだったのは否定できない。完全に魔族を殺す事に特化した殺し屋スタイルだ。闇夜に紛れて夜な夜な黒いゾルトラークで魔族を狙撃する女ゴルゴが誕生する。
フリーレンPT遂に魔王城に!!
城の杖が無いと確信できていれば、フリーレンが上空から大魔族カートリッジを数本使っての特大ゾルトラークで城ごと粉砕しております。