黎明のフリーレン   作:新グロモント

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70:魂の眠る地(オレオール)(アウラ)

 アウラは、生き残る為に環境に適応した。魔族とは、優れた種族であり環境への適応能力は極めて高い。人類を効率よく殺して食べる為、収斂進化した。この魂の眠る地(オレオール)でも、その特性は活きた。

 

 アウラの精神は、61代目ボンドルドの手に因って何度も破壊と再生を繰り返した。その最中、修復中に意識を取り戻して見てしまった。自分の破片を少しずつどこかに持ち出すボンドルドの姿を。アウラは、魂に刻まれた命令もあり修復能力は非常に高い。壊れた破片が多少減っても修復される。

 

 アウラは、61代目が居ない時にこっそりと自分の破片が持ち込まれた地下室を覗く。彼女の悪い癖であるいけない好奇心だ。そこは、破片からアウラ二号の製造を試みる悪魔の実験場。その部屋にあった書物には詳しい研究内容や状態変化などが細かく纏められていた

 

『アウラ細胞の収集率2%。集めた破片から修復反応は確認出来ず』

 

『アウラ細胞を移植したが、自身に拒絶反応なし』

 

『アウラ細胞が増殖した場合、本人との差分検証を行う』

 

『アウラ細胞による増殖が成功した場合に備えて、絶対命令権をフリーレンさんから譲渡して貰う予定』

 

『アウラ細胞による増殖が成功した場合に備えて、年末調整のやり方も教えておく。介護要員としても活用の幅を広げる予定』

 

 その内容を見ただけでアウラは、貧血で倒れそうになる。こんなの人間がやって良いことじゃないと。魂の眠る地(オレオール)でなく、魂が眠れない地(オレオール)に改名されるような事をやっている。

 

 アウラは、この研究の盲点に気が付く。

 

 アウラの精神が砕け散る度に、採取される細胞だ。この世界に適応して、元気に生きればこの計画はご破産する。

 

 その日から、アウラは変わった。積極的に外に出るようになる。同居していた61代目の食事なども用意するようになり、見違えるようになる。ある程度の回復が見込めて独り暮らしも可能と判断されたアウラ。

 

 彼女は、老人介護の仕事を引き受けることにした。代わりに、独り暮らしの許可を得る。今では、ヒンメルやハイターの頼れる隣人になっている。アウラは、絶対に防ぐ必要があった……自分への命令権がボンドルドに譲渡される事を。その為ならば、勇者の下の世話も喜んでする所存だ。

 

………

……

 

 アウラは、フリーレン達が魂の眠る地(オレオール)に着いた事を知り、面談へ漕ぎ着けた。

 

『久しぶりね、フリーレン。そんなに驚かないでよ、私がここにいたら変かしら?』

 

「本当に何で居るの?それに、私に面談を申し込むって、信じられないよ。何が目的なの」

 

「あ、エッチな服のお姉さんだ~。覚えている?プルシュカだよ」

 

「おやおやおや、アウラさんまでコチラにいらっしゃったんですね。ご挨拶に来て頂けるなんて嬉しいです」

 

 アウラは出来れば会いたくなかった。

 

 だが、お願いする立場である以上、それは避けられない。

 

『お願いよ、フリーレン。私の命令権をボンドルドには渡さないで。ようやく、この環境にも慣れてきたの。ここで介護の仕事をしているのよ。老人男性も少なからずいるから、これでも喜ばれている。若い女性だからね』

 

「若いって。500年以上も生きているババァじゃん。で、ボンドルドがここでどんなことをしているの?そもそも、魔法が使えないらしいから大した事は出来ないでしょ?」

 

 アウラは、お前は幾つなんだよと叫びたくなった。幾つになって、プルシュカを産んだんだよと。だが、それを言ってしまったら交渉決裂だ。大人しくする。

 

『砕けた私の精神を少しずつ削り集めて、私を複製しているわ。それで色々と実験するみたい……もう、嫌なのよ。実験も、死ぬのも』

 

「うわ~、やりそう」

 

「パパ、酷い~。アウラちゃんが可哀相だよ」

 

 ボンドルドが批判される。だが、自分ならやるだろうなとも思っている。だから、反論はしない。

 

「私ならやるでしょう。しかし、魂レベルにまで服従させる魔法とはここでも効果があるのですね。判断は、フリーレンさんに任せますよ」

 

『お願いフリーレン。ほら、私の魔力を使って旅路で何度か助けになったでしょ。……そうそう、老人っていってもヒンメルとハイターくらいしか年寄りはいないから実質二人の専属みたいな感じよ。朝食を作って、洗濯して、お風呂に入れてあげたりしているんだから』

 

「フランメがそうだったから予想はしてたけど、二人とも死んだときのままか。ヒンメルもハイターにも世話になったからな~。しっかりと二人の面倒を見てくれる?」

 

『みるみる!約束するわ』

 

「もう、悪巧みとかしない?」

 

『絶対にしないわ』

 

「プルシュカは、可愛いよね?」

 

 ここで、アウラは回答に困る。

 

 プルシュカを可愛いと言った場合、フリーレンが私の方が可愛いに決まっていると言って怒る案件なのか。

 

 フリーレンの方が可愛いと言った場合、プルシュカの方が可愛いに決まっていると言って怒る案件なのか。

 

 どちらを褒めるべきか、必死に考える。アウラは、生を受けてこの時ほど真剣にフリーレンの心の内を察しようとした事はないだろう。人の心が分かるアウラは、気が付いてしまう。母親が何を望むかを。

 

『えぇ、可愛いわ。フリーレンの娘だもんね』

 

「アウラは、良い魔族だ。分かった。ボンドルドには私からも可哀相だから実験を止めるように言っておくよ」

 

「アウラちゃん。大魔王プルシュカだよ。偉いんだぞ~、ひかえろ~」

 

 魔王の杖まで取り出して、偉そうに振る舞うプルシュカ。

 

 アウラの生存本能が発動し、膝をついて服従のポーズを取った。フリーレンが娘に魔王装備一式を持たせているあたり、正直バカじゃないのって彼女は思っていた。魔族の歴史ある装備を子供のオモチャにするなんて、罰当たりだと。

 

「良くお似合いですよ、プルシュカ。七崩賢のアウラさんも貴方に服従の意を示しております」

 

「今までの事は水に流すよ、アウラ。オレオールでも頑張ってね。ヒンメルとハイターの事を頼んだよ」

 

「またね~、アウラちゃん」

 

 二度と来るなと思っているアウラ。だが、エルフの寿命は永遠に近い。定期的に会う事になり、その度に接待するアウラは存在しない胃痛を感じ始めた。

 

 アウラは、死んでいるのに生きているって素晴らしいと矛盾を理解する。改心したアウラは、最愛のアウラに相応しい働きをする。




F「アウラ、年末調整しろ」

ラストは、ヒンメルーーー!!

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