勇者ヒンメルの死から29年後。
北側バンデ森林を抜ける馬車の中、束の間の休息を味わっているフリーレン一行。ここに来る道中に底なし沼で人助けをしたり、シュタルクがフェルンにプレゼントのブレスレットをあげたりとイベントもあった。
「可愛い意匠だね。私も同じデザインの指輪持ってるよ。前にヒンメルに貰ったんだ。多分、フェルンとお揃い。――そういえば、昔ボンドルドも同じような指輪をくれたような」
「意匠は、鏡蓮華です。あの頃は、金属加工が出来なかったので、不出来な木の指輪でしたね。もう、1000年近く前の話です。その事をフリーレンさんが覚えてくれていて嬉しいですよ」
その指輪をフリーレンに贈った事が師であるフランメにバレて、色々と面倒くさい事になったのを思いだしたボンドルド。
「ねぇ、パパ。鏡蓮華の花言葉って――」
「昔はそんな言葉はありませんよ」
プルシュカの言葉を遮るボンドルド。
そんな事には耳すら傾けず、フリーレンが荷物の中からヒンメルから貰った指輪を探している。フェルンが色々と考えて詰めたのに、それをグチャグチャに取り出しており、後で怒られるのが目に見える光景だ。
そういう所は、いつになっても変わらないとボンドルドは思う。
「フリーレンさん、捜し物に集中するのはよろしいですが。油断しすぎですよ――
魔力を隠して馬車に接近してきた鳥形の魔物を打ち落とした。
「大丈夫、なんとかなる。それに、ボンドルドが警戒しているのは知ってたから。あった。これがヒンメルから貰った指輪だよ」
「フリーレンお姉ちゃん。そういう所だよ、もう少し勉強しようね。パパ~、次は私が警戒しておくから休んでて良いわよ」
プルシュカが一言、フリーレンに物申して周囲の警戒をする。しかし、その言葉はフリーレンに届く事は無い。彼女はまだ経験値が足りなかった。
馬車を乗り継ぎ、丘陵を超えて物資補充をしようと思ったフリーレン一行。だが、大きな問題が発生していた。行く先々で問題が発生するとか呪われているんじゃ無いかと思うレベルだ。
何が起こっているかと言えば、村の住民が死んだように眠っている。
「厄介ごとの匂いがするし次の村へ行こうか」
「フリーレン様、怒りますよ」
「冗談だよ……」
ボンドルドの経験上、この手の問題は"呪い"が関係していると理解した。無論、それはフリーレンとて同じだ。魔法の専門家である彼女がこの状況で答えに辿り着かない訳がない。
"呪い"とは、人類の魔法技術では原理も解除方法も分からない物の事を示す。
だからこそ、次の街へ行くという案を提案した。現状メンバーでは、いつ住民と同じ状態にされるか分からない。だが、フリーレンは忘れていることがある。
「フリーレンさん、お忘れですか?私は、僧侶を極めております。言い換えれば、女神様の使徒ですよ。"呪い"など、対魔族戦のエキスパートとして独自開発した対処法があります」
「凄いね。この村全体が攻撃範囲で、今も攻撃されている感じがするから対処をお願い」
ボンドルドは、背中に背負っているカートリッジからボトルを外す。そして、キャップを閉めた。キャップの先端に小さな針がある。
「さぁ、皆様このボトルをお持ちください。キャップ先端の針を手の甲にでも刺しておけば"呪い"を押しつけることが可能になります」
フリーレン、フェルン、シュタルクがそれぞれ受け取る。フリーレンが何の疑問も無く、その動作を行った事で、他二人も同じ行動をとった。フェルンは、針を刺した瞬間に魔力が飛躍的に増大した事に気が付く。
「これ、凄いですね。魔力総量が一気に跳ね上がった気がします。どういう品物なんですか?聞いた事ありませんよ」
「フェルンには、まだ早いかな。もう少し、大人になったら教えてあげるね。ボンドルド、プルシュカの分は無くてよかったの?」
「フリーレンお姉ちゃん。プルシュカは、パパの子供だよ。僧侶としての適性もあるから、この程度へっちゃらよ」
と、自慢げに話すプルシュカ。確かに、彼女は僧侶の才能があり、"呪い"に対して耐性も高い。だが、子供であるから、時間の問題であった。
「問題ありません。寝る子は育つといいますから、寝たら私が背負いますよ」
「じゃあ、手早く片付けるよ。住民達の様子から昏睡して一日以上経っている。長引くと、助からない」
ボンドルドが発生源を見つけて、フリーレン一行が魔物を倒しに向かう。小さい街であっても基本的に僧侶の一人程度は居るものだ。こういう事態にまで発展したことにボンドルドは強く文句を言いたい。
暫く歩くと、自信満々であったプルシュカが夢の中へと旅だった。
「やっぱり子供だね。ボンドルド、プルシュカを早く背負ってあげて」
「………よくよく考えれば、私はカートリッジを背負っておりました。済みませんが、プルシュカを背負って貰えませんか」
背負う事が出来ないなら、抱きかかえれば良い。その事を口に出したかったフリーレン。だが、ズピーーズピーーと寝息を立てるプルシュカを見て気が変わる。頬を突いて遊びつつ、仕方が無いといった様子でプルシュカを背負った。
「思ったより、重いね」
「フリーレンさん、その言葉は起きているときに言わないであげてくださいね」
女の子に重いというキーワードは禁句である。まだまだ、勉強が足りないフリーレンであった。
「嘘でしょ。背負われるばかりのフリーレン様が、プルシュカちゃんを背負ってる」
「いや、でも大丈夫か?なんか、今にも死にそうな顔してるぞ」
フェルンは、フリーレンの成長を喜び涙が出そうになっている。シュタルクは、フリーレンの体力のなさ、根性のなさを理解しており、このままでは魔物と戦う前にダウンしてしまうと懸念している。
しかし、ボンドルドという安定感抜群のユニットが居るため、それならそれでもいいかと思う二人であった。
明日のフリーレンには、筋肉痛による地獄の苦しみが待っている。その苦痛から解放されるため、回復魔法をボンドルドに頼みこむまでが規定ルートだ。
「すーー、すーー」
「人の苦労も知らないで、気持ちよさそうに寝ているんだから本当に子供だね」
………
……
…
案の定、山道を10分も歩いたところでフリーレンの体力が尽きた。ボンドルドとしては、よく10分も耐えたと正直驚いた。3分で音を上げると予想していたのが大幅に覆された。
本当に体力の限界まで背負ったお陰で、今はボンドルドが二人を魔法で浮かせて運んでいる。
「頑張ったんだから、後は任せたよ」
「これからが本番です。フェルンさんとシュタルクさんの二人がいれば、今回の魔物は楽に終わるでしょう。眠る"呪い"程度しか使えないんですから」
「プルシュカが起きたら、私に運ばれたんだと弄っても良いよね」
「ほどほどにしてあげてください。プルシュカは、フリーレンさんに対抗意識があるんです。同じエルフとして負けられないと……大人の対応を期待します」
疲れた顔をしているフリーレンではあったが、少し優しい顔になっていた。
目的地に到着する。
ソコには、大型の植物魔物が鎮座していた。どのように戦うべきか指示を仰ぐ、フェルンとシュタルク。だが、それは甘い考えだ。戦闘に於いて初見で対応する必要があることは数多い。
「危なそうなら支援するので、二人で自由に戦ってみてください。戦いの基本は、よく観察して相手を完封するか、相手が手札を切る前に殺すか、です」
フェルンとシュタルクは、既に戦闘経験を積んでいる。お互いの役割を正しく理解し、最適な行動をする事でこの程度の雑魚など相手にならない。そうなるように、フリーレンとボンドルドが彼等を育てた。
更に言えば、フェルンには携帯型カートリッジの恩恵もある。外部補給の魔力がある為、彼女の大好きなゾルトラークが撃ち放題だ。
ネタが尽きてしまったので、どのようなお話を知りたいか読者様にお伺いできればと思っています。全て何話程度やるかも全く未定です。
-
過去編(1000年前、初代ボンドルド)
-
過去編(人類防衛ライン戦)
-
過去編(50数年前、居候フリーレン)
-
閑話(ゼーリエとプルシュカの文通)
-
閑話(プルシュカと女神の魔法)
-
バカか、全部やれ