誤字脱字修正についても本当にありがとうございます。
ボンドルドは、プルシュカを抱き上げる。逃げ出さないようにしっかりと抱え込む。プルシュカは、最初こそ父親に抱きかかえられて御満悦だったが、段々と意図を察する。
「パパ。離してくれないとプルシュカが、ヒンメルさんに会いに行けないよ。プルシュカが勇者になれない」
「プルシュカ、残念ですがそれは出来ません。恩があるアイゼンさんからの頼みです。パパからのお願いを受け入れて貰えませんか、プルシュカ」
父親からのお願いと言われれば、プルシュカも一考する余地はある。自称大魔王の称号だけで満足するかと思い始めた。そもそも、ここのシステム的にプルシュカが
………
……
…
勇者ヒンメルは、親友であるハイターをアウラに託して思い人との面談に臨む。数十年ぶりの再会。だが、今回の再会は以前とは異なり50年という歳月はかかっていない。まさか、死後も会えるとはヒンメルも思っていなかった。
歴代のボンドルドから近況報告こそされていたが、プルシュカの件については色々と濁されており同族の仲間が同行している程度しか情報がない。
ヒンメルがフリーレンとの面談を望む。周りをきょろきょろと見渡すフリーレンが現れた。彼女は、以前会った時と何も変わっていない。一人だけ別の時間を生きているような存在だった。
『フリーレン。君は、いつも変わらないね』
「久しぶりだね、ヒンメル」
年老いたヒンメルの心が潤う。フリーレンの声をまた聞くことが出来た。それだけで、彼は幸せだった。
『まさか、君の口から久しぶりなんて言葉が聞けるなんて。ここまで来る旅路が君を変えたのかな』
「そうだよ。旅のキッカケは、ヒンメルだ。私は、ヒンメルを見送ってから皆の事をもっと知るべきだったと後悔したんだ。私が泣いたんだ」
フリーレンが泣く程の事だったのかとヒンメルは思った。彼の中のイメージでは、淡々として見送るイメージだった。
『ありがとう。僕の為に泣いてくれて。よかったら、フリーレンの旅を聞かせてくれないか。多分、過去の世界で僕にも会ったんだろう。運命とは不思議なものだ』
「過去でも未来でも私を助けてくれてありがとう、ヒンメル。少し長話になるから座ってなよ。年なんだから」
フリーレンは、ヒンメルを見送った後の話をぽつぽつと話した。
フェルンとの出会い、ハイターとの別れ、ボンドルドとプルシュカとの出会い、シュタルクとの出会い、腐敗の賢老クヴァールの討伐、断頭台アウラの討伐、魔法使い試験の話、黄金郷マハトの討伐、過去でのグラオザームの討伐、大魔族の残党狩り、魔王城の占拠といった内容を聞かせた。
『フリーレン。控えめに言って呪われているよ。僕達との旅路よりトラブルに巻き込まれてる。七崩賢の半数は、フリーレン達が倒しているのも同然だよ』
「むふ~、良く言われる。戦果だけ並べると、魔王軍との戦争後で最大級じゃないかな。でも、お陰で過去でヒンメル達にも会えた。助けたし、助けられた。改めて、ありがとうヒンメル」
『当然の事をしたまでさ。僕も君が無事に帰れている事が分かって嬉しいよ。本当によかった。それに、君は間違いなく人として成長した。それが見られただけで僕の人生には価値があった』
「最近、皆に言われるんだよね。成長したって。私は元々大人のお姉さんなのに。そうだ、皆の事を紹介したい。一度に紹介した方が早いからハイターも呼んで」
アイゼンは、ボンドルドには会わせないように頼んだ。だが、未来の事もあるのでフリーレンには頼めなかった。アイゼンの苦労を全て水の泡にする行為。
『ハイターか……少し、ひび割れているけど許してやってくれ。先ほど、フェルンとシュタルクの結婚報告を受けて、精神がやられたみたいなんだ。ハイター、フリーレンが呼んでるぞ。えっ?まだ立てないって。アウラ、ハイターに肩を貸してやってくれ』
『まったく、だらしないじゃない。ほら、男なんだからしゃきっと立ちなさい。そんな事じゃ、嫌われるわよ』
フリーレンは、アウラに肩を支えられるハイターを見た。本当に、老人介護をしているんだと内心褒める。しっかりと、ここに順応している。真っ白に燃え尽きてひび割れているハイターが連れてこられた。
そして、ヒンメルが許可した事でフェルン、シュタルク、ボンドルド、プルシュカがこの場に大集合する。プルシュカが悪い笑みを浮かべる。だが、まだ彼女は動かない。大人しく隙を狙っている。
フェルンとシュタルクは、何故呼ばれたのか分からないがとりあえず大人しくしておくのが良いと雰囲気で悟った。真っ白なハイターが居る時点で、大体の状況は察している。
『やぁ、フリーレン。すまないね、少しばかり心に来るものがあって……。フリーレンは知っているかい。フェルンとシュタルクが付き合っているんだって。子供の名前を私に考えて欲しいって』
「何も泣かなくても。知っているも何も私がフェルンにお膳立てしたんだよ。フェルンも結婚適齢期なんだからさ。子離れするのも大事だ。大人達が使う民間魔法も幾つか教えてあげた」
ハイターのヒビが進行する。
まさか、あのフリーレンがそんな事をしていただなんて。ハイターは、信じて預けた娘が………って感じだった。
『ハイターは、軟弱者だな。フリーレン、紹介してくれ』
「左からフェルン、シュタルク、ボンドルド、プルシュカ。ボンドルドについては、説明は要らないよね。フェルンは、私の弟子。シュタルクは、アイゼンの弟子だ。その様子だと、先に会ってる?」
「フリーレン様の弟子のフェルンです。勇者ヒンメル様」
「俺は、アイゼンの弟子のシュタルク。ヒンメルさんの話は師匠からも良く聞いたぜ」
フェルンとシュタルクが自己紹介をする。
ヒンメルは、嬉しかった。フリーレンとアイゼンの弟子同士が恋人だという。これを祝わずしてどうすると。ハイターの事を情けないというヒンメル。
『ヒ、ヒンメル。私が、軟弱者ですって……貴方もコチラ側の人間ですよ。私の苦しみを貴方も味わうといい。
ハイターは、プルシュカを見て察した。そして、ヒンメルに向けて発動するはずもない呪いの言葉をおくる。
「むふ~、プルシュカだよ。ヒンメルさん。えへへ」
『可愛らしい
ヒンメルも何かを察した。だが、脳がそれを拒絶する。精神の崩壊を防ぐ為の防御機構がプルシュカの存在を消し去ろうとしている。気が付いてはいけない。気が付けば大変な事になる。
プルシュカがフリーレンに並び立つ。
ただ、それだけの行為。だというのに、二人が並ぶ事で見比べる事が容易になる。エルフ、髪の色、言動……色々と一致してしまう。
「ヒンメルが何か苦しそう。あれ?皆どうしたの、そんな呆れたような顔をして」
「仕方ないな、獣化したプルシュカが抱きしめてあげる。落ち着くよ~」
フェルンもシュタルクもボンドルドも気が付いている。ヒンメルが頭を抱えて苦悩する理由を。だが、もう止まらない。
獣化プルシュカの香ばしい匂いがヒンメルの精神を少し安定させる。スーーハーースーーハーと呼吸音が聞こえるレベルだ。
「おぃ、ヒンメル。私の
『違うんだ、フリーレン。なんか落ち着い…い……て。む、む、むすめ?』
ヒンメルの脳に激痛が走る。
徐々に真っ白に染まるヒンメル。体中にヒビが入り、ハイターと良い勝負だ。
「そうだよ。私と似て可愛いだろう」
『ふふふふりいーーれん。結婚してたんだ……はは、そうだよな。1000年以上も生きていればそりゃそうだよな。脳がああああぁぁぁ』
ピシリピシリと、ヒビが拡大してヒンメルの全身がヤバイ状態になる。
見ている側の方が泣きたくなる光景だ。
「初めまして、ヒンメルさん。
パリンとヒンメルの一部が砕けた。
「ヒンメルのお陰で私はプルシュカと出会えたんだ。ありがとうヒンメル。要するに私がプルシュカを産んだのは、魔王討伐後に中央諸国を巡っていた時だ。ヒンメル達との旅が無ければ、その機会もなかった。それに、この感情を理解できなかった。
パリンパリンパリンとヒンメルが虫の息だ。
仲間に何て惨い仕打ちをするんだと見守っていたアウラですら青ざめる。これが、エルフ式の拷問だというならば、魔族なんて可愛い物だ。魔王様がエルフを毛嫌いした理由がここにもあるのではないかとアウラは考えた。
「フリーレンさん、人の心があるならそれ以上は止めてあげてください」
「フリーレン様。流石に、あんまりです。ヒンメル様がズタボロじゃないですか」
「そうだぜ、フリーレン。俺にだって分かる位酷い仕打ちをしてなにが楽しんだよ」
「え、何で皆そんな顔をしているの?私は、ただプルシュカを紹介してあげただけなんだけど」
真っ白になり崩壊を続けるヒンメル。
彼は悟る。初恋は実らないと。だから、最後に一言だけ言葉を贈ることにする。
『フリーレン。今の君は幸せかい?』
「最高に幸せさ」
同じ途を歩むことはできなかった。だが、愛する人の幸せな途を作れた事に勇者ヒンメルは満足した。自分の幸せでなく愛する者を優先する。
彼こそが真の勇者。
本編完結の最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございます。
その為、連載状態は完結に変更させていただきます。
10/12に投稿を初めて、約一ヶ月半。
本話で90回目になりました。
このペースで投稿できるのは、今回が最初で最後だと思います。
作者の転職前の休みを利用して執筆していました。
※投稿時間や頻度から無職と思われていたと考えています。
読者様のお声を頂く事でここまで頑張ってこられました。
本当にありがとうございます。
今後の予定は、エンデの帰りとしてゼーリエさんの所とアイゼンさんの所を少しだけ予定しております。
やっぱり、SSを最後まで投稿しきるとやりきった感があって最高の気分です。