『』はグラナト伯爵になります。
魔法学校では、様々な学問を学ぶ。魔法学校であるが故に、一番大事なのは魔法の成績……この一点に尽きる。成績の基準も8割の重きを置いている。だが、他が重要ではないかといえば、そうでは無い。
馬鹿な魔法使いなど、ただの暴力装置でしかない。
未来ある魔法学校の生徒達には、情操教育も大事だ。本日は、数年前から話題となっているある魔族の物語が教育にも取り込まれた。世間でも知られているほどの作品であり、子供達が好きなラブストーリー。
『最愛のアウラ』
それが、作品のタイトルだ。著者は、グラナト伯爵。敵を騙すには味方からという言葉の体現者として、彼も有名な伯爵だ。魔族の度重なる猛攻を受け、その中で息子の命を落とす事になったが、人類の為、涙を堪えて裏で魔族との交流を続けた英傑として名高い。
本日、その伯爵自身が魔法学校で最愛のアウラを読み聞かせてくれる大イベントがあった。集まる生徒達。貴族の当主自らがやってくるのだから、生徒達としては嬉しい限りだった。伯爵に雇われれば将来安泰であり、売り込もうと画策する者もいる。
………
……
…
魔法学校の教室にて、グラナト伯爵が最愛のアウラを音読する。感情が篭もった声が教室に響き渡る。語り手として素晴らしい才能を発揮していた。
それもそのはず、グラナト伯爵は、この日のために、一年以上も専属コーチを雇い特訓をしていた。サービス精神も抜群であり、プルシュカが手を振ると振り返すなどパフォーマンスも怠らない。
更には、生徒の一人にアウラ役の台詞を任せるなど粋な計らいもする。その重役を担う事になったのが、ナナチという謎生命体だ。
『可愛いですね、アウラさん。そんな顔で泣かれてしまっては、私も悲しくなります。安心して下さい、私は必ず貴方に会いに来ます』
「私もよ。例え、貴方が天国に居ても必ず見つけ出してあげるわ」
ボンドルドと南の勇者と過ごした濃密な人には言えない日々のフラッシュバックがナナチを襲う。手術台に拘束され続け、生きたまま解剖され、生かされ続け、魔族としての尊厳の全てを崩壊させられた日々。その場所で、優雅に食事をするボンドルドと南の勇者。魔族にとって、悪魔みたいな存在だったと今でも吐き気がする。
『天国での再会ですか。ソレも悪くはありません……ですが、私は生きて貴方と再会を望みます。いつか、我々が手を取り合い、世界の平和を一緒に築きましょう。それまで、しばしの別れです。どうぞ、身体には気を付けて下さい。もう、貴方一人の身体ではないのですから』
「そうね、愛しているわ■■■■■」
グラナト伯爵とナナチが読み終えると、拍手が鳴り止まなかった。戦時下での人間と魔族の愛の物語。アウラを英雄に祭り上げて、オレオールに招待するキッカケとなった物語。そして、未来永劫に苦しみを与え続ける物語。
『ご協力ありがとうございます。ナナチさん』
「………てめぇ、知ってんだろう」
グラナト伯爵は、ナナチの問いに笑顔になる。そうだ、その顔が見たかったと。今までの苦労が報われる感じをグラナト伯爵は確かに感じていた。彼は、裏でボンドルドと結託している。利害の一致だ。ボンドルドは、アウラを便利に活用したい。グラナト伯爵は、アウラを未来永劫苦しめたい……双方が手を取り合っている。
『アウラを苦しめられるのならば、儂は何だってやる。その為に、人間との愛の物語を自ら執筆して広めたんだ。アウラには地獄すら生ぬるい。長生き出来るのは、嬉しいだろう……
と、小声で伝えた。これが人間の悪意。深淵より深い人間の悪意。それを肌に感じるナナチ。
「オイラは、いつまで苦しめば救われるんだよ」
『儂は知らん。貴様は儂の部下含めて1000人以上殺している。寿命が一人当たり60年計算でも6万年程度苦しめば解放されるんじゃないか?長寿種の特権だな、長生きしろ
人生でコレほどまで清々しい日は、久しぶりだと感じるグラナト伯爵。ナナチが曇るほど、彼の心の霧は晴れていく。これが因果応報。金と権力と実力がある相手に喧嘩をうって負けた場合、どのような末路が待っているか。それを身を以て実感したナナチだった。
さて、
う、産まれる~ をやるかな。