黎明のフリーレン   作:新グロモント

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魔法学校の事は後半少しだけだから、サブタイトルが相応しくないかもしれない。
気にしないで下さい。


閑話:魔法学校⑤

 出産を控えたフリーレンにある異変が起こった。

 

 胎児がいる場所付近に光輪が現れる現象。出産経験が浅いフリーレンは、最初こそ驚いたが比較的冷静だった。人生で二回目の妊娠だ。未経験の事など普通にあると思っていた。

 

 だが、コレを見たボンドルドは、正直理解出来なかった。幾度となく妊娠と出産の経験を有する男であっても光輪を見た事はない。エルフ特有の何かではないかと思っているほどだ。

 

「なんか、ボンドルドのサイリウムと似てるね」

 

「幾つもの四角が重なったような形状。触れられませんか、それに魔法でもありません。参考までにお伺いしますが、エルフ特有の可能性はありますか?昔、見た事とかあればと思いまして」

 

 フリーレンは、1000年前を思い出そうとする。過去に、このような光輪を見た事があるだろうかと。うーーーんと唸りながら、必死に思い出しているフリーレン。だが、結果は芳しくない。

 

 少し不安になり大事そうにお腹をさするフリーレン。ボンドルドは、フリーレンを優しく撫でて落ち着かせる。一番不安なのは、フリーレンである事はいうまでもない。そして、自分まで不安になっては誰が彼女を支えると。

 

「記憶に無い。大丈夫だよね?ボンドルド」

 

「無論です。フリーレンさん、私は出産も育児も幾度も経験した世界最高の僧侶であり、貴方の夫です。貴方と子供の安全は、私が保証します」

 

「そっか、流石だね。期待してるよ……で、光輪の見解は?」

 

「十中八九、ヘイローでしょう。無害です。お腹の子が眠れば多分消えます」

 

 過去最高の出来であるボンドルドとフリーレンの間に産まれた子供だ。世界のバグが詰まっていても不思議じゃ無い。

 

 それから、ボンドルドはフリーレンが眠るまで側を離れることは無かった。彼も過去の経験から妊娠中のフリーレンとの付き合い方は熟知している。付かず離れず……コレが大事だ。母体がストレスを感じると胎児にも影響する。

 

………

……

 

 それから、数ヶ月が過ぎた。

 

 初産と比較した場合、二度目の出産というのはかなり違う。具体的には、母体に掛かる負荷が圧倒的に楽になる。何度も出産経験をしたプロも付き添っている。約束された出産といって間違いない状態だ。

 

 この世界に新たなエルフが生を受けた。愛おしい我が子を、抱き上げるボンドルド。そして、出産で疲れるフリーレンの側に娘を寝かせた。

 

「ありがとうございます、フリーレンさん。よく頑張りました」

 

「と、当然だね。なんたって、二児のママなんだから……でも、流石に疲れたよ」

 

 二児の母となったフリーレン。彼女を心配して弟子であり13児のママをしているフェルンが様子を見に来た。彼女達の子供……通称フェルン13と呼ばれる。

 

「おめでとうございます、フリーレン様。可愛い女の子ですよ」

 

「ありがとう、フェルン。悪いけど、今日は疲れたから少し寝るね。後は頼んだよ、ボンドルド」

 

 慣れない出産で疲れ切ったフリーレンが我が子を確認して眠りにつく。

 

 フェルンが、光輪をみて首を傾げる。彼女が出会ったことがあるエルフの誰一人としてそのような物を持っていなかった。

 

「プルシュカちゃんにもありませんでしたよね?あれ」

 

「えぇ。アレは、ヘイローといいます。害はありません。それどころか、利点ばかりですよ。実験はできませんが、ヘイロー発動時は、シュタルクさん並の肉体耐久度があるとみて間違いありません」

 

 ドラゴンに咬まれても無傷、腹に大穴が空いても生きる生命力、斧一振りでドラゴンを絶命させる筋力……そのような肉体を持つシュタルクと同レベルとボンドルドが評価する。

 

 

◇◇◇◇

 

 それから、数週間が経過してフリーレンの体調も万全に回復しつつある。

 

 今度こそ決して手放さないと心に決めている。愛する我が子を抱きしめるフリーレン。数十年前と比較すると人が変わったレベルで成長していた。

 

 そんな娘のために、フリーレンは今日という日を楽しみにしていた。大事な娘の名前を決める!それが今日の一大イベントだ。

 

 だと言うのに、今日に限ってイドフロントに来客があった。最高齢のエルフにして、女神様に一番近いと評される魔法使いゼーリエ。彼女が、狙い澄ましたかのようにイドフロントにやってきた。

 

 今まで一度も来た事がないのに、今日に限ってだ。

 

 魔法とは違う科学が使われているボンドルドの施設。それには、ゼーリエも興味が沸いた。同時に、危険であるとしっかりと理解する。魔法を使わず魔法と同じ事を誰でも再現できる技術であると理解出来るあたり、ゼーリエの知見は凄まじい。

 

「何で居るの?」

 

「………」

 

 ゼーリエは、何も言わずに静かに一冊の魔道書を机の上に置いた。それをフリーレンに差し出す。紅茶を入れながら静かに見守るボンドルド。

 

「いや、だから目的が分からないと困るんだけど。それに、何の魔道書なの?」

 

「サイコロの目を操作出来る伝説の民間魔法だ。……赤ちゃんを抱かせろ下さい」

 

 ゼーリエ。フリーレンに頭を下げるのが嫌すぎて言葉がおかしくなる。だが、エルフの新生児をその手で抱きたいという気持ちは確かにあった。

 

「…………いや、自分で産んでよ」

 

「今ならコレも付けてやる。トランプを透視できる伝説の民間魔法だ」

 

 旅先のギャンブルで負ける事が無くなる魔法。伝説の民間魔法といって差し支えない。

 

 一冊では迷っていたフリーレンだが、二冊も伝説の魔法をくれるとなれば話が違ってくる。これが、1000年前に魔法は探している時が一番楽しいといったエルフの今の姿であった。

 

「むふ~、仕方ないね。同族のよしみで抱っこさせてあげるよ。落とさないでよ。頭が重たいから、こういう風に抱えるんだよ」

 

「そうなのか」

 

 フリーレンが赤子の抱き方をゼーリエに教える。その尊いやり取りを写真に残すアンブラハンズ達。後で、彼女の弟子達にゼーリエがエルフの赤子を抱く写真を送りつけて脳を焼いてやろうと思っていた。

 

 何名かの一級魔法使いが尊死しかける大事件が発生する。そして早まった弟子達が、ベビー用品をゼーリエの執務室に山積みにする。

 

「ボンドルドから事前に相談は受けていたがコレがヘイローか……私も知らんな。だが、問題無い。これは、女神様からの贈り物みたいなものだ。で、何て言うんだこの子は?」

 

「それを今日決めるんだよ、ゼーリエ」

 

 ゼーリエの目が開く。そして、無言で伝説の魔法が書かれた魔道書を5つも積み上げた。どれもフリーレンが好きそうな失伝した民間魔法ばかりだ。

 

「駄目だ、ゼーリエ。これは、親の特権だ。どんな物を積まれても譲らない」

 

「私が神出鬼没なのは知っているな。………転移魔法を欲しくないか」

 

 転移魔法。彼女も研究しているが完成には程遠い、どれほどの歳月が掛かるか分からない程だ。その為、もう一度過去に行って残影のツァルトを生きたまま解剖したいと思っているほどに。

 

 命名権についてだが、親であるボンドルドも当然権利を持っている。だからこそ、譲れない事が彼にもあった。

 

「フリーレンさん、ゼーリエ様。申し訳ありませんが、名前は私に決めさせて下さい」

 

「ボンドルドは、プルシュカを名付けたでしょ。だから、今度は私に譲って」

 

「ボンドルド。何が欲しい言ってみろ。今なら何でも用意してやる」

 

「残念ながら譲れません。お二人ともネーミングセンスは、赤点です。参考までに、聞きますけど、どんな名前を付けるつもりですか?」

 

「ジャスミン」

 

「ニトクリス」

 

 前者がフリーレン。後者がゼーリエだ。二人とも想像よりセンスが良かったとボンドルドは思った。

 

「すみません、二人とも中々センスがありましたね。では、私が考案した名前も含めて娘に決めて貰いましょう」

 

………

……

 

 フリーレンの第二子が産まれて10年後、ゼーリエの執務室にて。

 

 可愛らしいエルフの子供がレアアイテムを探していた。

 

「ごそごそアリスは、ゴミ箱を調べた。しかし、何も見つからなかった」

 

「アリス何をしてるんだ?」

 

「もちろん、アイテム探索です。先生(ゼーリエ)が居るような部屋には大抵貴重なレアアイテムが置いてあるような物なんですよ」

 

 アリス。フリーレンの第二子にして、次世代のエルフ。物理攻撃に対して、ほぼ完璧な耐性を持つ。そして、ゼーリエを慕う最年少のエルフの子供。ボンドルドと同じく勇者の剣が引き抜ける希な存在であり、その勇者の剣は形を無理矢理変えられて彼女の光の剣スーパーノヴァとして未来永劫使われる。

 

「そうか、何か見つかったか」

 

「パンパカパーン。アリスは、先生(ゼーリエ)のアルバムを手に入れた」

 

 そのアルバムには、ゼーリエ、フリーレン、プルシュカ、アリスといったエルフの面々が笑顔(・・)で一緒に写っている。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 時は遡り、アリス出産の時……魔法学校では、大変な事が起こっていた。一人の学生、アーニャという劣等生が講義中に突如立ち上がった。

 

「うおおおおぉぉぉーーー。う、産まれるぅぅぅ~~」

 

 頭が可笑しいレベルの発言に、教室は静寂になる。

 

 産まれる?何が?と言いたくなる。当然、子供が産まれるなど誰も思わない。普段から、突発的に謎の奇声をあげる生徒として有名であったため、またかと誰もがおもった。

 

 だが、今回に限っては何時もと違う。明確に産まれると叫んでいた。

 

「なんだ、トイレか?それなら、早く行けよ。ここで漏らすなよ」

 

「アーニャちゃん、だからそう言う遊びはもっと人が居ないところで……」

 

 ナナチとプルシュカが、同級生であるアーニャを一応心配する。

 

 その様子を見守るレグは、やはり魔法学校は廃校にすべきだと考え始めた。

 

「あっ、産まれた。えへへ、アーニャの子供」

 

 アーニャのその一言で、周りにいた同級生達が一瞬で離れていった。何が産まれたかなんて察しが付く。だが、明らかに様子がおかしい。大の方を漏らしたのに私の子供とか言っている変人。

 

 ヤバイ薬でもやっているのかと疑われてしまい。彼女は、数ヶ月間精神病棟に入院する事になった。

 




ボンドルドは、ゼーリエ様にもお世話になりました。
彼女も一人では寂しいだろうから、幸せを分ける事くらいはしてあげます。

エルフを幸せにする魔法……それがボンドルドが使える固有魔法。



以上、で魔法学校編も終わりになります。
読者様の休日の暇つぶしになれば幸いです。

後ちょっとで100話なのでまたネタが思いついたら頑張ります。



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