そんなネタ話が思いついたので始まります。
一級魔法使いという称号は、この世界において中々のステータスだ。年々厳しくなる合格基準……今では、三年に一度の試験で数名合格者がでれば御の字という程だ。その理由は、ゼーリエの弱体化防止と一級魔法使いの人間性を重要視。
今までは、犯罪者であっても魔法に対して十分な知見と実力があれば合格していた。だが、それでは世間が荒れると各国からの批判がある。当初、ゼーリエはその程度の事は気にしていなかった。魔法が発展するのならば、その程度の問題など許容すると。しかし、プルシュカやアリスといったエルフの若い子供達に被害が出るかも知れないと思い、考えが一変した。
そして、今回の一級魔法使い試験……例外中の例外みたいな連中が乗り込んできた。
この度、試験官を務めるゲナウ一級魔法使いは、何度も書類を見直した。だが、書類に不備も間違いもない。ボンドルド、フリーレン、プルシュカ、アリスという面々が今回の一級魔法使い試験を受けに来た。
受験理由は、魔法学校では血縁者に一級魔法使いが居るだけでマウントを取る連中がいるみたいなので、暇つぶしに受験に来ましたという物だ。書類審査で落とすにしても、この化け物一家が書類審査落ちに納得するとは思えない。
ボンドルド、五級魔法使い。過去の魔王軍との戦いで、人類防衛ラインを押し上げた英雄。大魔族を何十人も殺し、七崩賢を幾人か殺しており魔法使いとしての経歴は最上級。彼が開発した軍用レーションや医薬品は、いまでも人々の生活を支えている。史上最高レベルの僧侶である為、実質教会のトップ。
フリーレン、五級魔法使い。魔王を討伐し、人類のゾルトラーク解析に多大な貢献をした勇者PTの魔法使い。彼女が殺した魔族の数は、数万を超えている。七崩賢の半数以上が彼女の手によって処理されている。フェルン一級魔法使いの師である。
プルシュカ、五級魔法使い。フランメの結界魔法の継承者。魔法学校を主席で卒業し、それからは学友と世界各地を回り、あらゆるダンジョンを攻略した若きエルフ。各地の残されたフランメの結界魔法の維持を担っており、魔物から人類を守っている生きる伝説的な存在になっている。
アリス、五級魔法使い。生まれ変わった勇者の剣を持つ若き勇者。ゼーリエより直接魔法を指導され、ゼーリエの後継者とも言われるレベルの存在。彼女が持つリニューアルされた勇者の剣から放たれる光は、この世界の全てを浄化する。
「メトーデ。こいつら、もう合格でいいんじゃないか」
「駄目です、ゲナウさん。それだと、私が合法的にフリーレンさん、プルシュカちゃん、アリスちゃんをペロペロできないじゃ無いですか。巫山戯ているんですか、殺しますよ」
ゲナウのパートナー的な存在であるメトーデが、割と本気でキレた。
彼女は、教育上良くないという理由だけでゼーリエを除くエルフとの接触を断たれている。ゼーリエだけが彼女の生け贄となり、守っているに等しい。ゼーリエの献身的な行動のおかげで、フリーレン一家は無事に過ごせていた。
「お前な~、そんなんだから接触禁止令が出されるんだ。はぁ~、昔の悪夢を思い出すな……今じゃ、あの時以上なんだろう?」
「プルシュカちゃん経由で聞く限り、当社比2割増しで強いらしいです。特に、フリーレンさんが七崩賢やその部下からオマージュした魔法が酷いみたいです。副作用を前提にした劣化魔法……控えめに言って対峙したら一級魔法使いでも手も足も出ないかも知れません」
極秘と書かれた書類がメトーデからゲナウに渡された。これを閲覧した場合、墓までその秘密を持っていく事が強制される魔法が掛けられている。
失敗転移魔法……転移先にいる蠅と強制融合させて、人外の化け物を製造する魔法
強制即死魔法……フリーレンより魔力が低い者に生涯一度だけ自害を強要する魔法
黄金化魔法……周囲を加工可能な黄金にする魔法
悪夢を見せる魔法……一番嫌な思い出を延々と繰り返し見せる。目覚めたら周囲が肉塊に見えるなど五感を崩壊させる魔法
などなど、一人七崩賢といっても過言で無い。
「俺が聞いてた話じゃ、フリーレンは魔王を討伐した勇者PTの魔法使いだったはずだ。これじゃ、七崩賢と言われた方が納得いくぞ」
「可愛いから良いじゃ無いですか。後、コチラがプルシュカちゃんが開発した……
"相手を痛風にする魔法"
"相手をインフルエンザにする魔法"
"相手をノロウイルスに感染させる魔法"
"相手を尿路結石症にする魔法"
"相手を統合失調症にする魔法"
"相手を糖尿病にする魔法"
"相手を白内障にする魔法"
"相手を花粉症にする魔法"
"相手を水虫にする魔法"
"相手を中耳炎にする魔法"
"相手を不眠症にする魔法"
"相手を巻き爪にする魔法"
などを詰め込んだ頭ハッピーセットの魔法だ。しかも、年々盛り込まれる魔法が増えている。
「なぁ、メトーデ。俺は、絶対にプルシュカと戦わないからな。こんな病気になってまで長生きしたくない」
「ボンドルド様クラスの僧侶なら、回復可能です。後、プルシュカちゃんと同レベルの人なら防御魔法で何とかなるとも」
ゲナウは、考えるのを止めたくなった。プルシュカは、外見こそ子供だがゲナウより年上だ。彼女と同格の魔法使いなど上澄みも良いところだ。両手で数えて足りる。
「まだ、プルシュカちゃんは可愛い物ですよ。こちらがアリスちゃんの魔法などの詳細です。あの子も凄いですね~、魔王軍と戦争中に産まれていたら間違いなく勇者でしたよ」
「俺は何を見ても驚かないぞ」
ゲナウが確認した資料の最初に、勇者と書かれていた。過去に魔王を倒した勇者ヒンメルが抜けなかった本物の勇者の剣を抜いたエルフの少女と。更に、ヘイローと言われる女神様からの贈り物を保持しており、物理攻撃に対して絶対的な耐性を保有している。現代魔法において、質量攻撃が主流となっている為、彼女には現代魔法の大半がほぼ無効。ゾルトラークのような貫通魔法に対しては、防御魔法があるため鉄壁の守りだろう。
新生勇者の剣である光の剣スーパーノヴァから放たれる光は、ボンドルドの
「後、言い忘れました……今回の受験生の中には、女性誘拐や権力をちらつかせて猥褻な行為を繰り返す魔法使いもおります。どうしますか、ゲナウさん」
「どうしますかといいながら、お前事前に処理するつもりだろう。殺意を抑えろ。子供に人生経験は大事だ。それが嫌な思い出であっても、人はソレを糧にして成長する。何ごとも起きなければセーフ。問題が起きれば……」
その時、一級魔法使い試験に備えて待機していた二人の元にある一報が届いた。街中で黒髪幼女のエルフが痴漢被害にあった。被疑者は、今回一級魔法使い試験を受験しにきた王族縁の者で、過去に色々と問題を起こしている人物だ。
「よし、殺しましょう。私でもアリスちゃんに悪戯した事がなかったのに、万死に値します」
「落ち着けメトーデ。殺したら駄目だろう。死ぬのは一度しかできないんだ」
ゼーリエ様を尊敬している弟子達。彼等一級魔法使い達にとってもアリスは孫娘のような存在だった。バレンタインデーには、一級魔法使い達全員分のチョコを用意してくれたり、誕生日には必ず誕生日カードをくれるような存在だ。
ゼーリエもアリスが来て本当に優しく笑うようになり幸せな日々を送れている。つまり、被疑者が死ぬという事だ。
◇◇◇◇
「あんた達。今、アリスのお尻を触ったでしょ!!」
「一体、アリスが何をしたのですか」
街で評判のクレープ屋に並んでいたとき、いきなり後ろから尻を鷲づかみにされてしまったアリス。アリスもプルシュカも悪意に敏感であり、普通なら起こりえない。だが、相手が直前まで尻に触ろうなど思っていない場合は別だ。
普段から本能で動く犯罪者みたいな奴が、目の前に触りたい尻が見えた瞬間に触れた。コレに対処する方が難しい。犯罪者曰く、そこに尻があるから触るんだ的なレベルの本能レベルの行動。
エルフ姉妹二人の言い分をまるで気にしていない男性魔法使い。随分と身なりが良いため、上流階級である事が窺える。
「餓鬼にしては、良い触り心地だった。見てくれも悪くない……それに、エルフか~。初めて見た。これは良いな。よいぞ!! お前達、俺の愛人にしてやる。帝国の王族に名を連ねるガイア様に気に入られるとは名誉な事だぞ。お前達なら、使い捨てにせず一生可愛がってやる」
「プルシュカ知ってるわ。旅先で聞いた事ある。帝国の恥さらしだって。魔法の才能が多少あるらしいけど、中身は下の下だってね」
「なるほど、アリス分かりました。こういう人達は、経験値にするんですよね。今は、勇者のレベル上げ真っ最中です」
ざわざわ
周囲の人が集まってくる。成人男性がエルフ幼女二人相手に事を荒立ては悪目立ちすると思い、ガイアと名乗る男は逃げ帰っていく。彼は運だけは良かった。後、数十秒逃げる事が遅ければ彼女達の両親が魔法店巡りを終えて戻ってくるところだった。