普通(人間パラメータMAX)な人間とあべこべな幻想郷 作:苺豆大福
透に促されるまま人里に案内した霊夢だが、二人を見る人々の目は様々なだが、そのほとんどが透の近くに居る霊夢に向いている。当然だろう、見るだけで気分が悪くなるあの博麗の巫女が男を連れてきた、それもかなりのイケメンを。羨ましいさ、嫉妬などの感情が入り混じった視線が霊夢へと向けられる
(そんな目で見ないでよ……私だって何でこうなったのか……)
霊夢が男と一緒にいる事自体あり得ない事だが、もう一つ周りの目を引いている事がある。それは……透の方が大通り側を歩いている事。人よりも荷車などが通る為、大通り側は基本男性は歩かない、もしそんな男が居るとすれば漫画や絵の中だけ…幻想郷に生まれた女性なら誰もが夢に見たシュチュエーションをあの霊夢が経験しているのだ
(へぇ?ここ、外のお金使えるのね……)
周囲の視線に萎縮して縮こまっている霊夢とは逆に、透は全く気にしていない様子
「霊夢?ここって雑貨屋とかある?」
「うぇ!あ…あるわよ?ほら、案内してあげるから着いてきて…‥うわ!」
一刻も早くその場から離れたかった霊夢は急足で曲がり角を回ろうとする、だが透は霊夢の手を掴むと自分の方へ抱き寄せたのだ。すると丁度、曲がり角から数人の子供と沢山の大きな荷物を積んだ荷車が通る。あのまま行けば大事故だろう
「周りはちゃんと見ないと、霊夢…‥霊夢?」
透が声を掛けても反応は無い。さて、今の二人‥いや霊夢の体制を説明しよう。先程、透に抱き寄せられた際バランスを崩し、少し低い体制で向かい合って抱きしめられていた。勘のいい人なら気づいているだろう。今、霊夢の顔は……透の胸に埋もれているのだ!
「おーい、霊夢さんやー?」
透の呼びかけにも反応しない、いや、反応出来ないのが正しいだろう。今霊夢は、自身に起きた事に対して頭が追い付かず放心状態
「………はっ、ご、ごめんなさい!!すぐ退くから!!(…いい匂いだったなぁ…)」
慌てて、透から離れる霊夢。何事かと、周りの人達が集まり出したので今度は霊夢が透の手を引きその場を離れ、目的の雑貨屋に到着した。その間、霊夢の顔はリンゴのように赤くなっていたのは言うまでもない
「はぁ…」
店の外で今日起こった事を振り返り、ため息をつく霊夢。振り返れば今日は不思議な日だった。霊夢を綺麗だと言う男、透。それどころか手を引いたり、抱きしめるなど…普通の男ならしない事を平然とする。思い出しただけでも顔が赤くなってしい、その場に座りこむ霊夢
「…本当、何なの?アイツ」
「アイツって俺のこと?」
「きゃ!!」
思わず声を上げて立ち上がり、声のした方を振り返る。そこに居たのは、買い物を終えた透だった
「ビックリさせないでよ…もう買い物いいの?」
「ああ、もう大丈夫だよ」
「そう、それじゃあ…」
「…うん、そろそろ帰ろうかな」
人里を離れ、博麗神社に続く道を歩く二人。たわいのない会話をしていると、霊夢はずっと気になっていた事を聞いた
「ねぇ?今更なんだけど…本当に私が…その…き、綺麗に見えるの?」
「ん?そうだね…俺には霊夢は綺麗だし可愛く見えるよ?」
その言葉を聞き、また顔が赤くなる霊夢。すると、透は手に持った紙袋から布にくるまれた物を取り出して霊夢に手渡す
「これは?」
「今日、俺の我儘に付き合ってくれたお礼。俺が帰ってから見てくれ」
「…ふふっ、何よそれ?…ありがとうね…」
その後も話をしながら歩いていると神社が見えてくる、神社に着くと霊夢は透を外に帰す為に、結界に穴をあける
「この鳥居をくぐれば外よ、忘れ物はない?」
「ああ、大丈夫」
目の前の鳥居には、霧のような靄がかかっている。霊夢が言うには、ここを通れば外に繋がっているようだ、透は最後にここから見える幻想郷の景色を目に焼き付け、鳥居をくぐる
「…ありがとうな、霊夢。…さよなら」
「ええ…さよなら、透」
別れの挨拶は短く、透は靄の中に姿を消した。暫く経つと、鳥居にかかっていた霧も消えてしまう。結界が閉じた証拠だ
「そう言えば…これ…」
取り出したのは、透がくれた布にくるまれた物。透は自分が帰った後に見ろと言っていたが…
「まさか私が、男から物を貰うとはね…誰も信じなさそう…さて、気になる中身は…」
「なぁ、霊夢。戻って来ちゃった」
「きゃぁぁぁ!!?!と……透?!」
背後から話しかけられ、驚きながらも後ろを振り向くとそこには、外に帰ったはずの透が居たのだ
「ど、どうゆう事よ?外に帰ったんじゃないの?」
「それがさ、ずっと真っ直ぐ歩いてたんだけど、気づいたらまたここに来ちゃった」
恐らくだが、彼は外から拒絶されここに戻ってきてしまったのだろう…彼はもう、幻想郷の住人になってしまったのだ
「しかし困った、帰れないんじゃ寝るところどうしよう。流石に野宿は避けたいな」
顎に手を当てて、考え込む透。それを見ていた霊夢は、普段では考えられない提案を透にした
「な……なんだったら……こ、ここに泊まる?(な…何言ってんの私!!)」
「…いいの?流石に…」
「い……いいから!!泊まるの!泊まらないの!!」
「…わかった、お言葉に甘えて泊まらさせてもらうよ…」
「そ…そう。ほら!案内するから来なさい」
そう言って透に背中を向ける霊夢、その顔は今日一番に赤くなっていたが、何処か嬉しそうな顔でもあった…
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