異世壊の荒武者と御珠の狐御巫   作:難燃性揮発ガソリン

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妄想の始まり


壱丿譚 御巫舞踊ー六世邂逅

ヴィサス=スタフロストとクシャトリラ・ライズハート、一体何が違ったというのだ。

 

 

血のように紅い機械鎧を纏い、哀しみと恐怖を己のが力とした俺は確実にあのヴィサス=スタフロストを超えていたはずだ。

 

 

 

俺こそが本物のヴィサス=スタフロストだと確信していたのだ。

 

 

だがヤツは星の力を吸い上げ、哀しみ・恐怖・怒りを右腕に込め、俺を打ち倒した。

 

 

敗北した俺はせめて不安定なヴィサス=スタフロストを暴走させることで相打ちを狙った。

 

 

 

しかし

 

 

 

 

俺はこのために生きてきたのか?

 

俺はこんな終わりのために生きてきたのか?

 

ライズハートという存在の意味は?

 

 

 

 

 

その瞬間目の前に『裂け目』が開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界に飛ばされてきたのはあのヴィサス=スタフロストに敗北したとき、不安定なヤツに吸収され暴走させようと目論んでいたときだった。

いきなり目の前に次元の裂け目が発生し、俺は飲み込まれたのだ。

忌々しいヤツに吸収されずに済んだものの、たどり着いた先はライフォビアのように緑が多く、木で拵えられたペルレイノとは比べられんほどに古めかしい建物が立ち並び、弱々しい人の気配も多く感じられた。

 

さてどうするか、尖兵もいない上に己の怒りを向ける先も確認できない。さらに弱々しいと感じたがなにか得体のしれない強い力を感じるのも事実。

流石に事を荒だてるのは不味い―――

 

誰かがこちらに向かっているようだ。

少なくともそこらにいる奴らよりも強い力を持つ存在が、

 

いいだろう、俺を排しに来たのならば怒りを、憎む理由が出来る。そうなればこの世界を侵略するのも容易い。

 

そして現れたのは

 

金と緑が混ざった髪をした小娘だった。

 

 

 

 

 

 

羨ましかった

 

ハレちゃんは御剣の当主の娘で霊獣は力の弱い火ネズミ、からかわれてもそれでも立派な御巫になるために強い意志で前を向き続けている。

私にはわかっている、彼女はまだまだ強くなれると。

 

羨ましかった

 

ニニちゃんは御鏡の当主の娘で霊獣は猫又、御鏡の家は外交が得意で様々な文化を取り入れており、他の家からも反発を受けてもなお続けている。彼女は外の文化を取り入れた舞で自分を表現出来る。

 

 

 

 

 

辛かった

 

御珠の分家から宗家に実力で籍を置き、候補生になったのは。

 

辛かった

 

霊獣がとても力の強い妖狐になり、あらゆるところから期待という名の重責を与えられたこと。

 

 

 

 

気づいてしまった

 

別に優秀なら私でなくてもいいと、今回私がそうだっただけだと。

 

 

 

フゥリという意思は必要ないのだと。

 

誰もフゥリを、私を見てくれないのだと。

 

オオヒメ様を神降ろしすれば私の意識は眠り、オオヒメ様が表に出てくると。

 

 

お願いします、オオヒメ様。

私は家の言いつけで貴女の舞を惑わし鳥の舞にて完璧に模倣します。

 

だから

 

 

 

 

 

それは間違いだと私に伝えて認めないでください

 

 

 

 

 

いつものようにニニとハレをからかいつつ私はいつもの一人になれる秘密の場所へ向かっていた。

そこで私は密かに家の意思とは関係ない自分を表現する舞の模索を行っているのだ。

 

誰かがいることに気づいた。

 

しかも御巫とは違う荒々しい力を放っているのもわかった。

もし敵対的だったらどうしよう、と思いつつも好奇心の方が勝ってしまった。

 

「あれ?こんなところに人が来るとは思わなかったよ」

 

実際ここは森の奥にある綺麗な木漏れ日が差すちょうどよく木々が生えてない場所だ、私以外が来れるわけがない。

 

それは男の人だった、ただなんというか。

纏っている荒々しい気配がそのまま形になったような甲冑をつけた武者?みたいな人だったのだ。まぁ油断はしないけども。

 

「ならばなんだ小娘、ここで死合うか?」

 

うわ怖い、少なくとも対応間違えたらマズいかもしれない。

 

「いやいやそんなつもりは一切ないよ、おにーさん。ここに人がいるのは珍しいからさ」

 

「俺とてここに来たくて来たわけではい、それよりオマエは誰だ」

 

「私?私はみた・・・いやちょっと待って、うん、フゥリ。フゥリでいいよ名無しのおにーさん」

 

私のことを知らない?不本意ながら結構有名な方だと思ってたけど。だったら家のことは言わなくていいよね、うん。

 

「誰が名無しだ!俺はライズハートだ、無礼な奴め!」

 

「あ、ごめん名前知らなかったからつい」

 

「オマエは俺に喧嘩を売りたいのかどうなのかわからん」

 

今の流れで理解した、このライズハートという人はホントに私の事を知らないのだ。むしろ名前だけ聞くと外の国の人なのではと思う・・・でも甲冑は割りとこの国のに似てるし、もしかしてこの国かぶれの外の人?なのかな?うんそう思っとこう。

 

「ところでオマエ」

 

「フゥリって呼ばなきゃ話聞かないよ?」

 

「グ・・・ふ、フゥリ、聞きたいことがある」

 

「ん?なにかな?」

 

「ここはどこか答えろ」

 

さっきの考察に使った時間返してほしい上に想定以上になにかありそうなこのライズハートおにーさんに私は思わず空を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっきり言って馬鹿馬鹿しいと最初は思ったが、ちらほらとこの小娘に似た気配が存在するのとコイツ自体にもなにか強い力を持ったヤツが傍にいることがわかり嘘はついてないとわかった。

 

ただ、

 

オオヒメ様?知らん

御巫?知らん

神降ろし?知らん

 

知らん知らんの知らん尽くしであり、俺が知っているライフォビアやペルレイノとも全く異なっていた。

少なくとも理解できたのは俺は完璧に別な場所へ引きずりこまれたということだけだった。

 

ああ、クソ。話を聞いても意味がわからんしフゥリとか言う小娘も飄々とした態度で掴みどころが無い。

 

 

しかも何かを隠しているようだ。

 

 

コイツ明らかに自分の話題になると話を反らす、無理矢理にでも口を割らせてやりたいが今はコイツだけが情報源だ。ああ、面倒くさい。

 

「まさか本当に何も知らないとは思わなかったよ」

 

「黙れ」

 

「説明してても思ったけど沸点低いねおにーさん、蜜柑食べるといいらしーよ。御巫だけに」

 

「お前が事あるごとにそうやって煽るからだろうが!」

 

「私はオマエって名前じゃないからねー」

 

「お前と話してると怒りよりも疲れる・・・」

 

疲れる、とにかく疲れる。

俺が怒りの感情を忘れるくらいには疲れる。

 

「じゃあ次はおにーさんの番ね」

 

「何がだ」

 

「私は聞かれたことを話したよ、次はおにーさんが私の質問に答えるべきだと思うんだよ」

 

「断る」

 

「えー、普通ここでダンマリするー?」

 

「俺がおま・・・フゥリに話す理由がないぞ」

 

「ふーん、やっぱり血の匂いがするから?」

 

何?

 

「おにーさんの甲冑割りと傷すごいしさ、あと霊獣が教えてくれたんだ。血の匂いがするって」

 

ふと姿を見るとフゥリには九本の黄金の尾と狐の耳が生えて、いや、先程まで傍にいた強い力のヤツをフゥリが纏っていることに気づいた。コイツいつの間に!?

 

「自分で言うのもなんだけどこれでもエリートってやつなんだよね。一応危険な奴とか報告しなきゃいけないの」

 

「・・・俺を脅すつもりか?」

 

「いやぁ?私としてはおにーさん気に入ってるからあんまりそういうことしたくはないかな?・・・でも」

 

「せめて対等な相手ではいたいかなーって」

 

俺は少し評価を変えねばならないと思った。

この小娘は、フゥリという御巫は。

 

戦士と違わぬ圧力を持っているのだと。

 

ならば。

 

「・・・条件がある」

 

「・・・なに?」

 

 

 

「俺のあとでいい、だがフゥリが隠していることも話してもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は正直焦っていた。

まさか隠し事があると見抜かれていたなんて、このおにーさんはからかいがいがあるクセにかなり鋭いらしい。

妖狐をこそこそ降ろして気づいた血の香りでさらに興味が湧いた。

いまこの国では家ごとの小競り合いは起きているものの流血沙汰になるのは極めて稀で。

だからこそ彼が一体何者かを本気で知りたくなった。

 

「はぁー・・・わかったよ、でも誰かに絶対言わないならいいよ」

 

「俺の考えが合っているのならば話せる相手などこの世にはおらん」

 

「え?それってどういう」

 

「フゥリ、お前も俺のように意味が分からん情報で苦しむがいい」

 

そしておにーさんから話しを全部聞いて私はちょっと後悔することになった。

 

え?自分がとある男の怒りの感情?

え?これでも『ぺるれいの』と『らいふぉびあ』を侵略して目的を果たした?

え?そのある男に吸収されそうになったときここに飛ばされた?

 

正直その辺の想像を形にした書物のようなことをずっと言っていると思っていたけど本当にそうならこの国のことについて一切知らないと考えるとまぁ筋は通るなと思った。

 

あれ?ってことは?

 

「ねぇもしかしてこの世界侵略しようとか考えてたりするの?

 

「お前の最初の対応次第ではそれも考えてたが、尖兵が何故か作れぬ以上厳しい、少なくとも今はこの世界についてはどうこうというのはない」

 

わーお、私しれっとこの世界救っちゃったよハレちゃんとニニちゃん・・・。

 

「そういえばフゥリは俺と同じような顔した男を見たことはあるか?」

 

「おにーさんみたいな顔は他に見たことないよ、強いて言うなら目の前にいるけど」

 

「そうか···いや、それならいい」

 

もしいたらその『ぶいさすすたふろすと』って人が来るかもしれないってことだからかな、それにしても横文字って言いにくいね。

 

「ところでさ」

 

「なんだ」

 

「なんで侵略なんてしてたの?」

 

「・・・先も言ったが俺はあくまでヴィサス=スタフロストから散らばった怒りの感情だ、だが俺はそれを認められなかった。ふざけるな、俺があの抜け殻のような男に吸収されて消えてたまるか。俺が本物だ!俺が本物のヴィサス=スタフロストだと!!」

 

おにーさんはどんどん語気を荒くして顔も怒りと憎悪の感情に染まっていくのがわかった。そして彼が怒りの感情なのだというのが少し理解できた。

 

「だから俺はヤツと同じように他の感情を吸収することとした!最初は人魚の世壊で不死を求めた哀しみの感情を!次は弱肉強食の獣の世壊で強さを求めた恐怖の感情を吸収した!」

 

でも話を聞いていると、どこか他人事のようには思えなかった。

 

「だがヤツに敗北し吸収されかけたときに思ってしまったのだ」

 

「・・・なにを?」

 

「俺は所詮ヤツの、ヴィサス=スタフロストの感情の一つだと。俺という、ライズハートという存在は世壊には必要ないのだと」

 

ああ、そういうことなんだ。私が他人事に思えなかった理由。

 

「ヤツにはヤツのことを認めてくれる奴らがいた、だが俺には俺を認めてくれるやつはいなかった。生み出した尖兵も何も言わずに俺の指示を聞くだけの機械のような存在だった」

 

おにーさん、ライズハートという存在は私と同じなんだ。

誰も自分という存在を必要としてなかったんだ。

 

「俺は吸収もされずヤツにも認識されない歪な存在だ、今話しているうちにそう思ってしまったのだ。だから安心しろ、最早世壊の侵略なぞしても意味がない」

 

「・・・本物、ね。それってホントに大事なことなの?」

「・・・何?」

 

 

だからだろうか、なんとなく最初から放っておけなかったのは。

 

「本物のか偽物だとか関係ないじゃん、ライズハートはライズハートなんでしょ?」

 

 

「私がさ、その『ぶぃさすすたふろすと』って人知らないし。だったら本物とか関係なくライズハートとしていればいいんじゃないの?」

 

同情だと、哀れんでいると思われてもいい。だけどちゃんとこう言っておかないといつの間にかいなくなってそうで。

 

・・・ああ、私もこう言ってもらいたいなぁ。

 

「お、あ、え、いや。ありがとう・・・?」

 

「ねぇ私結構頑張ったよ?なんでそこで疑問符になるの!?ねぇっ!?」

 

私の意図は伝わらなかったけど私の気持ちに少し整理がついた、これでも感謝してるよ?おにーさん♪

 

 

 

 

俺は全てを話した。

信じてもらえるとは到底思ってなかったが案外あっさり受け入れられた上に変なことを宣いやがった。

 

俺は俺のままでいい、だと。

 

実感が湧かなかったが、なるほど、存外、悪い気はしない。

恐怖の俺や人魚がヴィサス=スタフロストに向けていた感情はこんなもんだったのだろうか。

 

そしてヤツの隠していたことも聞いた、聞いたのだが・・・。

 

最初のうちは俺に似ていると思った。

 

フゥリという存在を見てほしい。

 

友人の立場が羨ましい。

 

 

だがしかし、フゥリには俺には無いものがあった。

 

自分の立場への期待と責任。

 

それにより本当の自分を出すことができない。

 

 

何が俺と似ている、だ。

俺にはそんな制約など無かった。

自分の感情の赴くままに訪れた世壊で破壊した。

 

 

 

俺と、真逆ではないか。

 

 

「御珠の家はね、伝統を重んじるとか言ってるけどその実はただただ排他的なだけなんだよね。オマケに御巫候補生の選別も厳しいし。あーあ、ニニちゃん・・・御鏡の家の娘なんだけどあそこは逆に色々取り入れてるお父さんお母さんの姿勢が好きで洗練された舞踊はホントにニニちゃんって感じなんだ」

 

俺にはない大きいものを、その小さい身体に背負わせているというのか。

 

「ハレちゃんは御剣の家の娘なんだけどあそこは力こそ正義みたいなところがあってね、霊獣はそんなに力がないしそれで色々言われたりするらしいんだけどそれでも彼女はそんなものを気にせずに信念を貫いて候補生になったの」

 

話を聞けば聞くほどその御珠の家の奴らによるしがらみが、とても目の前にいる小娘に耐えられるものだろうか。

 

否、そんなわけがない。

 

自分の思うがままに動くことができないのは、ガキからすれば苦痛だと俺にでもわかる。

 

「ふたりとも凄いんだー、私というエリートがいなかったら今代の御巫はニニちゃんかハレちゃんのどっちかだったろうねー」

 

「おい」

 

「ん、なーに?」

 

「結局お前はその今代の御巫になりたいのかなりたくないのかが分からん」

 

「・・・」

 

さっきから茶化したりはぐらかすから面倒くさくなり恐らく重要な所を直接聞くことにした。変に手綱を握らせるとコイツは無意識のうちに隠そう隠そうとしやがる。

 

 

「・・・わかんない」

 

「・・・は?」

 

少しの沈黙から放たれた言葉は疑問を抱かせるには十分だった。

 

「わからないんだよね、家の事を考えたり今までやってきた修行が無駄にならないようにとか考えて頑張ってきたんだけど。いざなりたいのかと言われると・・・どうなんだろ」

 

「そんな曖昧ならばなる必要性が無いだろう」

 

「そういうわけにもいかなくてさ、先代の神降ろしを行う前に酷い飢饉があったんだ。なんとか先代のお陰で大事には至らなかったんだけど、それでも爪痕が残っててね。だから今回の神降ろしは成功させる必要があるの。」

 

なるほど、なんとなくだがコイツが置かれている状況はある程度理解できた。

 

「――――だから私がそんなフワッとした理由で降りるわけにはいかないんだ、なんせ陰じゃ私が駄目なら今年は駄目だろうって心無い事言われてたりするしね」

 

 

最早自分を圧し殺すことで、周りに使われるだけの機械のような存在になるしかなかったのだと。

 

そうか、いまなら多少は理解できる。

 

これが『哀しみ』という感情か。

 

俺はコイツに少し心が高揚する『言葉』を貰った。

 

俺がフゥリにかけられる言葉はあるのだろうか?

 

あぁ、クソが。

 

今までこんな事考えもしなかったのに、考える必要も無かったのに。

 

いざ思案すると、こんなにも思いつかない俺に『怒り』が湧いた。




御巫舞踊ー六世邂逅 装備魔法
「御巫」モンスターにのみ装備可能。
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

①このカードが装備されている場合、1ターンに1度、相手が発動した魔法・罠の効果を無効にできる。「クシャトリラ」モンスターがフィールドに存在する場合、そのあと裏側除外する。
②自分メインフェイズ1に装備されているこのカードと手札1枚を除外して発動できる。手札・デッキから「クシャトリラ」モンスター1枚を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したモンスターはレベル7になる。


「つまりおにーさんはこの世界に迷い込んじゃったんだよ、所謂、『神隠し』ってとこかな?」
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