次はちょっと苦手な部類の描写を書くので遅くなります。
それでは今年はこれでターンエンド!
御巫の数日の合同修練を終えた次の日、私はおにーさんのところに向かっていた。結局ケイについてはこれ以上どうしようもでなくなった事とヤバい話が飛んできたのでそれを伝えに行く、ついでに重苦しい環境にいた気分転換も兼ねている。
なんか私が本を開いて調べ物している姿を見て勘違いしたのかあの後の修練を見にいったら皆の舞の修練が白熱していた。理由は私がまだ上を目指す為に読み物をしていたからだとか。もしかして私、勘違いさせちゃいました?
そしてヤバい話ってのが妖怪化した熊が集落を襲っているって話とそれを討伐する人数を集めるとのこと。
まぁ御珠のは案の定、自衛はするけど御鏡なんかに力を貸すわけ無いだろう!という頭の悪い判断だった。
もうね、馬鹿かと。阿呆かと。
なんだろうね、なんか懐かしさを感じたよ・・・。
呆れを通り越して寧ろ鼻で笑うような考えで反吐が出ちゃう。
妖怪というものは放置すればするほど凶悪なものになりやすい。理由は『噂や恐れによる一種の神格化』だ。
神様は信仰されることによって力を得て、それを行使することで様々な形で人々に受け入れられ、崇められて更に力を増すのが普通だ。
妖怪にも似たような特性がある。特に恐怖のような本能を刺激するような悪感情による『畏怖』というものは信仰よりも強く、長く、伝播しやすいというのもあり、一度有名になってしまった妖怪はとても厄介極まりないんだ。
その結果歴史にも名を刻んだ妖怪は国崩しや世の崩壊もさせうる力を持っていたりする。
だから妖怪の討伐において重要なのが『出来うる限り見つけた瞬間始末する』ということ。私のお父さんもそれを実際に行っている。
だけど今のご時世、どうしても退魔師達の処理よりも妖怪の生まれる速度のほうが勝っている。今はなんとか食い止めてはいたものの、今回の妖怪熊は最初の集落がほぼほぼやられてしまったのとそれで生き残った人たちが散り散りに他の集落に逃げ込んでそのことを伝えたからか一気に妖怪熊は恐怖の対象として認知されちゃったんだ。
はぁ・・・とにかくお父さんも頑張っているしこれでも退魔師の子供だからね。護身用の札やら退魔道具は持ってきているよ。
御剣と御鏡の討伐隊がうまく、やってくれると信じようかな。
「おにーさーん!来たよー!」
そんなわけで元おじいちゃん兼おにーさんが住む木こり小屋にたどり着いた。
ウソだ。
そんな、ありえない。
焼き魚の良い香りがする。
そんなわけがない。
私と似たような料理技術を持っている(技術があるとは言っていない)おにーさんがこんな胃に直撃するような香りを放つ焼き魚を焼けるわけがない。
クッ・・・まさか朝早くから来るために朝ご飯を抜いたのがここで仇になるとは思わなかった。
これは罠だ、きっと森の奥に潜む食人植物のような女の子が仕掛けた罠に違いない。
そう自分でも意味不明な思案をしていると小屋のなかから誰かが出てくる。
「・・・朝方で大声を出すんじゃない」
そう言いつつおにーさんが出てくる・・・ん?なんか身支度がされてる?
「・・・あれ?どこか行っちゃうの?」
「ん?あぁ、少し行くところがあってな」
あっそうなんだ。
よかった。
んん?いまなんで安心したんだろ?
・・・よくわかんないからいっか。
「で?せっかくこのフゥリちゃんが朝からやってきたのにどこに行こうというのかね?」
「お前が来なかった間、とある縁が出来た。そこに頼んでいた物を取りに行く」
「い、いつの間に・・・」
あれ?てっきりおにーさんって殴って解決する性格だと思ってたけどそういうやり取り出来たんだ、いや凄い失礼なこと考えてると私でも思うけどさ。
「暇ならお前も来るか?」
あー、どうしよう。この近くの集落ということは『一応』御珠の集落になる。
ぶっちゃけちゃうと『御珠の御巫候補生』という立場で畏まられたり、そもそも外行きの性格だと凄くもの静かにしてるのでニニちゃんの言葉で言うなら『ぎゃっぷ』?で変なことになったら困るから。というか宗家の耳に入るとめんどくさい。
「じゃあ行こっかな!」
でもそれよりもせっかくこんな朝早く来たのに直ぐに返されるのも癪という感情がその心配を殴打して気絶させたので行くことにした。
まぁなんとかなるでしょ、きっと。
ちなみに魚を焼いてたのはケイだったらしい。
・・・霊獣とはいえ鶏に負ける料理技術ってなに?泣くよ?
でも包丁も触らせてもらえないし・・・なにかいい方法ないかな?
魚は完璧な焼き具合で私は膝から崩れ落ちた。
花嫁修業とかしてないけども勝てる気がしない!
「もうお嫁にいけない・・・」
「コケ?」
「たまにお前が何を言っているのかわからん時があるぞ・・・」
ネタがおにーさんに通じなかったので更に惨めになった気がする。
森を歩き始めてしばらく後、集落の人達との切っ掛けを聞き終わった。
普段見ないような大きなイノシシ・・・か、少なくともこの近辺の山や森は緑豊かな方だからそういう個体がいても可笑しくはない。
問題は執拗に人を仕留めようと追いかけ回してたこと。
話を聞く限り、その人が落とした食料は無視して人を殺そうとしたということ。
つまり何かしら餌関係で何かあって痛い目にあったのかもしれない。
まぁもうその件のイノシシは解体されちゃってるしもう真意はもうわからないんだけども。
そしておにーさんが言っていた集落に辿り着く。
・・・結構、端。というか御鏡との境目付近じゃん。
そういやなんかお父さんの手紙にあったけどとある集落の支援を打ち切らされたことがとても悔しいみたいなこと書いてあったっけ。
・・・あー・・・ここだね。集落の名前確認して思わず頭を抱えたくなる。
これ恨まれてても何も言えない奴じゃん。
「おっ!あんちゃんじゃねーか!例のブツ、出来てるってよ」
そう言いつつ話しかけてきたのはおにーさんと親しそうな人だった。
「その様子だと体は大丈夫のようだな」
「おうよ・・・って今日は連れがいる・・・ん・・・だ?」
あ、不味いこれ。
「・・・あんちゃん、あんちゃん。ちょっとこっち来てくれないか?」
あれ、そっちに話しが行くの?
「いきなり引っ張り出してどうした」
「どうしたもこうしたもあるか!あんちゃんフゥリ様と面識あるとか、もしかして立場かなり上なのか?」
「いや、偶然会っただけだが」
「ハァッ・・・あんちゃん、フゥリ様の立場。知らないとは言わせないぞ」
「御珠の御巫候補生だ」
「そんな偉い立場の御方をこんなところに連れてくるとか言いたかないがマジで何考えてんだ!?」
「付いてくるかと聞いたら着いてくると言われたからだが?」
「あんちゃん、もしかして馬鹿なのか?」
なんだと?と言いたいところだがまさか付いてくるとは思っていなかったというのが本音だ。
かといって駄目だと言っても絶対引く気のない顔見た瞬間諦めた。無理やり帰そうものなら何されるかたまったものではないからとも言うが。
こればっかりは判断を間違えた俺のせいなので甘んじて罵倒は受け入れる他あるまい・・・。
「あんちゃん勘弁してくれよ・・・いまただでさえフゥリ様を始め候補生たちが一番大事にしたい時期にフゥリ様に何かあったら俺たち首飛ばされるくらいで済めば良いほうなんだぞ?」
「本人が付いてくると言ったのだ、止めてもアイツはそうそう筋を曲げんぞ」
「恐らくフゥリ様をアイツと呼べる奴はそのへんの民衆には居ねぇよ・・・というかフゥリ様がずっとこちらを見てくるんだけど」
「それはお前がいきなり俺を引っ張り出したからだろうが。扱いに困ってると思われてるぞ確実に」
「いいから様子見てみろよ・・・」
そう言われたのでフゥリの方をチラッと見てみる。
(<◎>)(<◎>)
違うな、あれは『何時まで私をほっぽり出してコソコソ話してんだコイツら、私も会話に混ぜろ』という目をしているな。流石に放置しすぎたか。
「とりあえず一回話を切り上げて解体の話をしないか、というかアイツは放置されてるのが気に食わないらしい」
「あ、ああ。わかった。多分俺達とフゥリ様の姿はとっくに見られてるからもう集落内で情報は伝わってると思う」
「把握した」
「ねぇそろそろコッチをチラチラ見ながら話すのやめてほしいんだけど」
「あ、も、申しわけございません!」
「お前、自分の立場をわかってて付いてきたのか・・・?」
「当たり前じゃん。それとそこまで畏まらなくても大丈夫だよ。ここに来てるのは宗家には秘密にしてあるからさ?」
「だ、そうだが」
「か、かしこまりました。フゥリ様」
それからフゥリの訪問で集落内がざわついたものの陸之助の説明とフゥリからの少し意味は違うが無礼講により、落ち着きを取り戻した。
そのフゥリ様は今、子供たちに即興の舞や芸を披露している。
憑依させている妖狐の力で生えた狐の耳や尻尾に子供たちは興味を示していた。
それはまぁ良いとする、が。
フゥリから良くない話が出た時は流石に雰囲気が死んでいたが。
「今兄さんが肉を持ってくるってよ、ついでに夜ちょっとした宴をするからあんちゃんもどうだ?」
「ぬ、ならば頼む。調理はからっきしなのでな。フゥリにも後で聞いておくとしよう」
「フゥリ様に対してその対応出来るあんちゃんがこえーよ・・・そうだ、討伐の報があるまで兄さん含めだ狩人達も見張りの交代に入るってよ」
「実際、討伐出来るのか?」
「正直わからねぇ、御剣の家は確かに他と比べると退魔師としての力も武力も頭一つ抜けている。御鏡も力は劣るものの精鋭だ」
すでにいくつかの集落が襲われ、被害も大きくなっている此度の事件。
もし対峙した場合、俺は仕留められるのだろうか。作りあげた宇宙のような左手を握り締めるがかつてのような輝きは無い。
そんなこと、その御剣と御鏡の討伐隊が始末すれば杞憂になるだろうに。だが何となくではあるが嫌な予感しかしないのだ
「ほ〜らこれが御珠の御巫の超高速お手玉だよ〜!」
「おねーちゃんすごーい!」
「えっそれほんとにどうやってんのそれ?」
いや本当にどうやってるのかわからん、明らかに2桁の数の玉を高速で投げては掴み投げては掴みを繰り返している。しかも会話もしつつちょっとしたパフォーマンス、でいいのか?をしながら。
「何事もなけりゃ、このまま平和な様子を見ていたいんだがね」
「俺も同感だ」
そう返した瞬間、眼の前にお手玉の玉が飛んでくる。咄嗟に右手で掴み取り、投げつけてきた元凶を見やる。
おお、そこにはニタニタと笑う御珠の御巫がいるではないか。はははこやつめははは。
「フゥリィイイイ!!!」
「あっははは!鬼さんこ〜ちら!」
ライズハートは激怒した。
あの跳ねっ返り娘を一度分からせねばならぬと決意した。
「陸之助、肉を持ってきた・・・す、凄いことになってるな」
「そうだな兄さん、あんなにそこらの子供のようにはしゃぐフゥリ様は俺見たことないよ」
「まぁ、だろうよ」
「そういや兄さん、一時期宗家で働いてたんだろ?」
陸之助の兄、信五はその言葉に思わず無言になってしまう。
「・・・兄さん?」
「・・・ホントに、ライズハートの兄さんはフゥリ様に懐かれてるんだな」
「は?」
「俺が宗家に居たときのフゥリ様はな、分家から連れてこられたばかりだったんだよ。それから先代当主が亡くなって今の当主になってからフゥリ様の修練が始まったんだ」
陸之助は少し様子がおかしい信五の顔を見る。
「あれは俺の常識が正しいのなら、あんなの修練じゃない」
信五は自然と握り拳を作る、それも血管が浮き出るほどに。
「フゥリ様は本当に、天才だったんだ。だがそれでも、それでも毎日泣き続けて、日も山から顔を出す前に修練場に引きずり出され。間違えるか師範の機嫌を損ねるとキツい罰が行われて」
信五の顔はまるで、般若の様な憎しみを含んだ怒りを露わにしていた。
「そして、そこにいたのは。感情という仮面を付け替えて周りに心配させないように惑わす」
「やっぱりおにーさんとの時間は楽しくて仕方ないよ!」
「今更おだてても無駄だ!絶対ひっ捕まえてやる!」
信五は今も鬼ごっこをしている二人を見やる。その表情はいつの間にか穏やかなものになっていた。
少なくとも、彼は宗家に居たときには、フゥリが年相応に遊んでいる姿を見たことはない。
最初にライズハートの姿を見た信五は余りにも見慣れない姿からずっと警戒をしていた。この集落や家族に危機が迫ったときは自らが守らねばならない、そう誓っていたからだ。
だがフゥリがライズハートに心を許しているのを見て彼は安堵した。それと同時にライズハートに密かに期待をし始めたのだ。
彼は、きっとフゥリを。宗家に振り回され、人形であることを強いられた女の子を。
変えてくれると信じて。
「ケイ!行け!フゥリを捕まえろ!」
「コケーー!!」
「えっちょっ!?ケイはおにーさんの味方なの!?」
いつの間にかその様子を見ていた大人達も、子供達も。
自然と笑顔になっていた。
「いけー!おにーちゃん!」
「フゥリ様捕まっちゃやだー!」
「あっはっは!若いのは元気だね!」
「俺にもあんな時期があったなぁ・・・」
そんなささやかながらも賑やかな時間が過ぎていった。
その頃、御剣と御鏡による討伐隊が熊狩りに出立した。
馬を走らせ目標地点に向かう。どうやら近場の生き物の密集地を感知して手当たり次第に襲っているらしく容易に次の目標が割り出せた。そこに到達する前に仕留める算段だ。
次の襲撃予想地点は
御鏡と御珠の境界付近の集落――――。
しかし、彼らはとあることを見誤っていた。
あくまで追っている妖怪熊は普通ではない。
『既に多くの人に畏怖された妖怪熊』であるということを。