TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」放送10周年と「魔王様、リトライ!R」アニメ化始動を記念して、本作品を書きました。
タイトルを見ていただいたらお分かりいただけるとおり、完全な魔王つながりの出オチです。
ラノベの主人公だけた作品から持ってきて、原作通り話を進める作品って、何が面白いの?と思ったりしたので、ならば、書いてみたら面白さが分かるかも、と思って書き始めました。
なので、基本お試し、原作準拠、アニメ1期の1話を3回くらいに分けて書いて打ち切り予定です。
打ち切りの際の合言葉はもちろん「アレ」です。
この作品は面白くなくても、「魔王様、リトライ!」の方を応援いただければ幸いです!
-DIVE TO GAME-
帝暦2XXX年――
世界の大半を支配した通称“大帝国”は恐るべきGAMEを開始した。
征服した国々の支配を磐石にする為、反逆の芽を摘む為、見せしめとも言える残酷なショーを大々的に開催したのだ。
狂気としか思えぬ、その内容とは――
属国となった国々からランダムで“プレイヤー”と呼ばれる国民を集め、最後の一人になるまで殺し合わせるというもの。
大帝国はそれらを世界中に放映し、公のギャンブルとした。
誰が勝ち残るか、二番目に残るのは誰か、最初に死ぬのは誰か?
残虐かつリアリティ溢れる内容はある種、映画などを遥かに超えたものであり、大帝国の民――神民の心を鷲掴みにしていったのだ。
全世界へ流されるGAME――そこでは幾多のドラマや悲恋が生まれ、生き残る為に、何の恨みもない他人を殺す“剥き出しの人間”の姿を見る事が出来た。
人間競馬、人生ゲーム、蜘蛛の糸、GAMEには様々な呼び名が与えられ、暇を持て余した大富豪達がGAMEへと注ぎ込む莫大な賭け金は、次第に国家の重要な資金源と化していった――
選ばれる側の“国民”は日夜、恐怖に怯え。
見る側の“神民”は、狂気の娯楽に酔い痴れた。
「GAME」
勝ち残った一人に与えられるのは莫大な財産――そして、神民への切符。
但し、それ以外の参加者に待っているのは例外無く、死であった。
(小説家になろう「魔王様、リトライ!」(作者:神崎黒音)より)
「短い趣味だったわね」
ぽつりと、消え入りそうな声で私は呟く。
このゲームが始まったのはわずか一年前、私が大学2回生の時だった。
国立大学の工学部に通う女子が実習で得た知識を基に、退屈しのぎで作ったゲーム。
周りの学生数名から始まり、徐々に口コミでプレイヤーが増え、今では全国にかなりの数の者がこのゲームに興じるまでに至った。
だが、それが私にとって不幸をもたらした。
まさかお母さんにバレちゃうなんてなあ。
私の家は県内では大手の建設会社であり、父親は県会議員を務めている。
もちろんこのゲーム上において実名を出すことも身元がわかるようなヘマをしたつもりもなかった。
だが、どこからか情報を得て母はこのゲームのゲームマスターが私であることを知り、このゲームをやめるよう命じたのだ。
曰く、県議の娘がこのような殺戮と狂気に塗れたゲームの主催者だということが知られれば、改選を控えた父親の選挙運動にも影響が出る、そういうことらしい。
0時になればサーバーの契約が切れ、ゲーム会場は丸ごと消し飛ぶ。
私が卒業した県立高校に通う妹はマンションの一室を与えられ、好きなようにさせてもらえるのに自分は常に家の用事で使われて、こうやって趣味すら奪われようとしている。
私自身は諦めと共にそれを受け入れてはいるが納得しているわけでもない。
友人たちに囲まれ青春を謳歌する妹に嫉妬することだってある。
私には仮想空間での自由すら許されないというのに。
「GAME」──そこにあるのは自由なき民が自由を求めて戦い、残酷に殺されていく姿。
私はその愚かな者たちを笑い、そして羨んだ。
今回のゲーム終了だって、抗うことすらせず易々諾々と従うことしかできなかったのだから。
「あなたもお疲れ様」
私は画面の中のキャラの男に話しかける。
その男は、歳は軽く40を超えているが、その肉体は極限まで鍛え抜かれたものであり、その容貌は何処までも鋭い。
設定では大帝国の高官にして、この悪名高いGAMEの主催者でもある。
このGAMEによる犠牲者――41,437人という膨大な流血と嘆きを生み出した、大帝国における魔王。
世の中の全てがつまらないと言わんばかりの視線は、私が普段見せることのない心の内をこのキャラクターを通して表したものに他ならなかった。
このゲームの中で、現実世界の薄っぺらい嘘以外のものを見つけることができたら……。
希望でも絶望でもいい。私の心を動かす存在が現れるとしたら……。
そんな想いも0時になれば全て消し飛ぶ。
(そっか。現実世界でただ一人、私のこの顔を見抜いた男の子がいたわね。このゲームのことを「彼」に伝えたら、「彼」はどうしたのかな。案外、斜め下な方法で攻略されてしまったかもね)
私は初めてほんの少し笑みを漏らした。
それでも、終わりの時は私の顔を再び諦めに満ちたものに戻す。
寝て起きれば、また「雪ノ下陽乃」としての生活が始まる。ただそれだけ。
本当の表情を隠し、偽りの仮面で過ごす毎日が繰り返される。
「何か不満そうな顔してるわね。あなたがラスボスだろうと魔王だろうとリアルには勝てないのよ。そして……」
23:59:50
「ここで終わりを迎えるあなたの方がきっと幸せよ。だから、じゃあね……」
00:00:00
私は、ただ静かに目を瞑る。
そこは神が見放し、天使が絶望する世界。
どうか驚かないで。
そして、聞いて欲しい。
耳を澄ませば聞こえる筈。
0時のベルはいつだって、“君”の始動を告げる音色なのだから――――
何よ、これ……?
目の前に広がる、鬱蒼とした大森林に私、雪ノ下陽乃は息を飲んだ。
あまりの景色に、驚きというよりも呆れが気持ちを支配した。
そりゃ、母や家に縛られる日常から逃げ出したいとは思ってたけど、なんで大森林? どうせ夢を見るならこんな大森林じゃなくてのんびりとした南の島がよかったなぁ。
「つか、大森林ハンパないわね……ちょっとグリーンすぎない?」
明日はまた家の使いで朝から地元の支持者廻りがあるのよね。
帰ったらゼミのレポートも書かなきゃならないしゆっくり寝たいんだけどなあ。
こんな夢を見るくらいだから、きっと眠りも浅いよね。
それにPCの前で寝てるとしたら足とかむくんじゃって大変じゃない?
たまには雪乃ちゃんが代わってくれてもいいと思うんだけどな。
「それにしても、夢とは思えないくらいリアルね……」
木々の間から差し込む日差し、辺りをすいすいと飛ぶトンボ、しゃわしゃわと鳴くセミの声まで聞こえてくる。
こんなとこに逃げるのが私の願望だとでもいうのかな。
たしかに、木々の間に隠れることができて、逃げ出すには最適かもしれないけど。
すぐ近くにあったキラキラ光る湖の水に自分の姿を映してみる。
「よし、いつもと変わらない雪ノ下陽乃だ」
自分の姿がオッサンとかになっていなかったことに安どしながらも、自分が見るために自分の姿を映しているにも関わらず、どこかよそ行きの外面を作ってしまっていることに思わず苦笑する。
湖の底から見てる人がいるかもしれないしね。何があろうと私は雪ノ下陽乃を演じなければならないのだから。ま、ありえないだろうけど。
それよりも、ここは一体……。
改めて自分の様子を確認する。
ん、着衣の乱れはない。
寝ている間に拉致されて乱暴されたとかではないようだ。
ただ、私の最後の記憶は夜の0時を過ぎたあたり。一体何時間寝ていたんだろう。
それにしても、この森……どう見ても日本……少なくても千葉ではない。
なんか、植生とかもそうだし、なにより空気が違うんだよねー。
はっ、ひょっとして、心臓麻痺とかでとうに死んじってて、死後の世界にいるとか?
まあ、普通に考えて夢、なんだけど。
それでも先ほどから五感に響くすべてがリアル過ぎたため、そうとは思えなくなっていた。
どこへ連れてこられたかは分からないけど、パソコンのストレージの中を整理してからにしてほしかったなー。
あの中に保存された雪乃ちゃんコレクションと、彼の盗さ……ゲフンゲフン写真は人に見せられたもんじゃないんだけどな。
とにかく情報……何か見つけないと……。
しばらくの間あちこちと歩き回ったけど、情報と言えるようなものは何も入ってこない。
人、家、その他の建造物も無く、ただ森。
それでも、木々の間を抜けて降り注ぐ日の光、森を伝い身体に触れる風の感覚は、この世界が夢ではないという意識をさらに強くする。
何なの、この世界。ヒント、何かヒントを……。
とにかく敵であろうと味方であろうと、誰かと接触しなければ話にならない。
ちょっと令嬢としてははしたないかもだけど、この際なりふり構ってはいられない。
「誰かー!誰かいませんかー!」
────静寂の中でわずかに小鳥のさえずりが聞こえるだけだ。
「ドロボー!人殺しー!チカーン!」
────やはり木の枝が風に揺らされてサワサワという音を立てる以外、何の反応もない。
ひょっとして富士の樹海とかに連れてこられちゃったのかな……。
私、このままここで朽ち果てる……の?
助けて……お父さん、助けて……お母さん、助けて……雪乃ちゃん、助けて……比企谷くん……。
「……助けて」
ついに心の声が口をついて出る。
「助けてー! ヘルプミー!」
そして、一段と大きな声で叫んだ。
「へーーーールプ!!!」
すると、不意に空中に黒いパネルが現れ、[ブレイヤー][マイページ][キャラクター]などの文字が並んでいる。
「は?」
宙に浮かぶその中の一つをタッチするとさらにサブメニューが開く。
「何これ……ヘルプメニュー?」
それはまるでゲームのような……ゲーム?
なら───
「ADMINISTRATOR(管理者権限)────」
──ビンゴ!
飛び上がりたいくらいの喜びを抑え、現れたキーボードを操作し目の前に広がったパネルに管理者IDとパスワードを打ち込む。
「あれれ?」
開いた画面に現れたのは、真っ黒に塗りつぶされた無数のコマンド。そこに書かれていたのは《規定条件を満たしていません》という文字の羅列……。
「んもう……どうしたらいいのよ……」
それでもこの世界が普通の世界ではないことは分かった。
これって異世界ってやつ?
わたし……死んじゃったのかな……。
こんなことならもっと比企谷くんにラノベ借りて読んどくんだったよ……。
軽く絶望していると荒っぽい足音が森の奥から聞こえてくるのに気づいた。
……人がいる?
その足音は徐々に近づいてきて、ついに目の前に現れた。
子供……? 随分と汚れているみたいだけど。
どこかで転んだのか、顔や服は泥で汚れてる。髪の毛は金髪で、瞳は綺麗な赤色だった。
日本語は通じないだろうけど、 英語通じるかな……?
「Hi! Nice to meet you.(ハイ! 初めまして)」
「逃げてくださいッ!」
「は?」
見ると、子供の後ろには剥き出しの骨で出来た翼を持つ化け物がいた──
その体はくすんだ灰色をして、ファンタジー世界などによく出てくるガーゴイルに酷似している。
やっぱりここは日本ではなさそうだ。いや、世界のどこを探してもこんな生物いるはずがない。
「あのー後ろの可愛くない化け物は君のペット? なら大人しくするように言い聞かせてくれない?」
「早く逃げてください! これは悪魔です!」
悪魔って……変な生き物とは思ったけどまさか悪魔とはね……。
「──矮小なる人間、血肉を捧げよ」
血の底から響くような低い声に恐怖を感じた。
真っ赤な目をした化け物が、”食い物”を見る眼でジリジリと近づいてくる様は、控えめに言ってもホラーだ。
もう一刻も早く逃げ出したい。叫び声を上げながら逃げ出したい。
でも……わたしが逃げ出したらこの子は?
雪ノ下陽乃がこんな子を見捨てて逃げ出すことなんてできるわけないじゃない。
……話し合い通じるかしら?
わたしが考えを巡らせていると、化け物が大きな手を振りかぶり、凄まじい速度で顔面へ爪を叩きつけてきた。
額に鋭い痛みが走り、目の奥にチカチカと赤い光がほどばしる。
「──ちょっと……あんた何のつもり?」
今まで出したこともない、相手の声に負けないほど低い声が喉から漏れた。
餌だと思っていた相手からの思わぬ反撃に化け物は戸惑っているように見えた。
その瞬間、
────自動反撃発動!
え、体が勝手に……!
全身からいく筋もの光が現れ、化け物の体に吸い込まれていく。
反撃開始!
「リベンジ」──判定成功! 反撃ダメージ増加!
「必殺」──判定成功! クリティカル率30%増加!
クリティカルヒット!
致命的ダメージ──悪魔王グレオールは消滅した!
──熟練度5000 OVER!
「強制突破」「極連撃」────判定失敗! 相手は既に斃れている!
──戦闘スキル発動!
「覇者」────判定失敗! 相手は既に斃れている!
「開眼」────判定失敗! 相手は既に斃れている!
「粉砕」────判定失敗! 相手は既に斃れている!
──生存スキル発動!
「瞑想」────判定成功! 「魔王」の体力が回復した!!
頭の中に次々と"戦闘ログ"が流れ、その内容に眩暈を覚えた。
って、何よこれ。まるまるGAMEのままじゃない!
そして魔王って私のこと!? そりゃGAMEのラスボスを「魔王」と定義付けたのは私だけど、こんな乙女を捕まえて魔王だなんて……そんなこと言うのは、私の知る限り一人だけよ!
……会いたいな。