【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる)   作:高坂 源五郎

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Ⅰ ベルタ王国統一記 09話 【ガンツ迎撃編】リアとの再会

ベルタ王国統一記 9 リアとの再会

 

空の旅を経て俺達はアレスに降り立った。王宮の規模はこちらがはるかに大きいが、今の所整地されただけの地面が多い。よく言えば公園、悪くいえば野営地の佇まいだ。正直に言うと内堀の中身は面積の大半が原っぱでしかない。

 

アレスはいずれ惑星の首都に相応しい100万人規模の大都市になる。中心となるこの場所には宮殿を建てるべきなのだろうが、今は宮殿ではなく兵舎としての機能を優先していた。具体的にはガンツの拠点を参考にしている。ここは宮殿設置後も引き続きサテライトの宿舎とする方針だった。同じ構造の建物を複数用意して、1つは文官用に当てている。各自市内にも家を割り当てるが、待機状態で詰めてもらう宿直用の部屋は必要だろう。

 

モニュメントは必要との判断から、イーリスが宮殿ではなく議事堂を意識した石造の荘厳な建物は建設済みだ。配置としては宮殿のある内堀のすぐ内側にある。議会という概念はあまり馴染みがないようだが、貴族院、国内の貴族を集める大会議場と説明したら理解された。

 

現在のところ、こちらを都市アレスの中央指揮所として使用している。議事堂の中心に机を持ち込んでリアやロベルトの政務を処理する場としたのだ。

 

今の所、内堀内は完全に生活空間という雰囲気だが、城の構造としてはおかしくないらしい。堀は王族の生活空間を守る構造としてかなり万全なようだった。

 

グローリアが着陸したのは内堀内だった。グローリアの扱いに慣れている人間がいないのでシャロンに世話を任せると、俺とエルナは歩いて一階層降って議事堂に向かった。陽の落ちていないこの時間ならリアはまだそちらにいる筈だ。

 

ドラゴンの到着を見張が知らせていたのだろう、リアが議事堂から駆け出してくる。

 

「アラン、エルナ!」

 

「リア様!」

 

エルナとリアが駆け寄る。作戦上そうした方が良いと思ったとはいえ、リアとエルナを引き離したのは良くなかったかもしれない。今後は出来る限り改めよう、二人を眺めながら俺はそう考えていた。

 

「それでどうなったの?」

 

「大丈夫だ。ガンツ伯は樹海で討ち取った」

 

「今日、エルナの手紙を読んだわ。捕虜達を含めた徒歩の軍勢が到着しているの。だからそこまでは知っているわ、アラン。」

 

「昨日、アランが交渉してガンツを無血開城させました。」

 

「それは凄いわ、やったわね。」

 

「しかも今日はグローリアで王都に移動して王に3年間のガンツ領有を認めさせました」

 

「ええ、王都までもう往復して来たの?!?」

 

「立ち話もなんだから、中に入って話をしようじゃないか。」

 

議事堂の一角で俺達はリアとロベルトに事情を説明した。王との会談内容に加えてカリファ伯やバールケとは戦闘になる可能性がある事。だが王のお墨付きのある今、王権に楯突く展開は考えにくく、兵を引く可能性の方が高い事を説明する。

 

文官達が会話の内容を記録している。アレス代官のロベルトの名前で事情を民に説明するのだという。確かに王のお墨付きを得た今なら大々的に広報すべき時かもしれない。

 

「ガンツ伯が攻め寄せると知った時は、こんなに上手くいくとは思わなかったわ」

 

「私も、グローリアを連れてセシリオ王国に行く可能性があるのかと考えました。」

 

確かベルタ王国で貴族になれなかったらセシリオ王国に行こうと言った記憶があるな。

 

「それで祝勝会はいつ開くの?」

 

「それなんだけど、リア。ガンツの今後のことを決めないといけないから、今からロベルトとガンツに来てもらえないか?」

 

「なんと、私もですか。」

 

「アレスの事情に詳しいのはロベルトなんだ、外す訳にはいかないだろう。」

 

「しかしアレスに誰も残らないというのも良くないのではないでしょうか?」

 

「グローリアに乗れば一時間かからない。無理にとは言わないが、可能なら来て欲しい。」

 

「なるほど、それでしたら」

 

捕虜を含めた軍勢が到着しているが戦意は高くないと見ている。もう3日分の食糧は配ったそうだ。彼らが攻める気になってもそうそう簡単にアレスの城壁が抜けると思えないし、今日中に戻るイメージならまず問題はないだろう。

 

「アラン、流石にロベルトには残ってもらう方がいいのではないか。」

 

「リアは慎重だな」

 

「ガンツを得たとはいえアレスは貴重よ。失ったら取り返しがつかない。ドラゴンの移動は目立つ。指示を出す人間がアレスに残っていなければまずいでしょう。」

 

確かにリアの言う通りかもしれない。リアもかつては国を失った過去があるだけに、その提言には説得力があった。

 

「ロベルトすまない、撤回させてくれ。ガンツにはリアだけを連れていく。」

 

「アラン様すまないなどと恐縮でございます。私も務めは心得ております。」

 

「ガンツの今後を決めてサテライトのメンバーと戻る。恐らく数日で戻れる筈だ。だか長引くかもしれない。カリファ伯の動向次第だな。」

 

アレス市内には明日ロベルトから詳細を通告してもらう事にする。ケール男爵への連絡も明日朝と打ち合わせた。

 

「ケール男爵にはガンツまで来てもらおう。」

 

今から命令書の写しを複数枚作成するそうだ。それを渡した上でガンツの現状を見た上で判断してもらおう。

 

兵の少ない現状ではアレス内に彼らを入れるのは避けたかったし、城外からでもアレスがハリボテではなく稼働する都市であると分かっている筈だ。

 

「アレスの詳細はまだ公開したくないしな。」

 

俺の言葉に一同がうなずく。王の使者が到着する三ヶ月後。そこがアレスお披露目の場になる筈だ。

 

「ロベルト、明日以降時間のある時に、倉庫にあるはずの国王への献上品を確認させておいてくれ。確認したら厳重に保管して欲しい。リストはそちらに渡しておく。」

 

「心得てございます」

 

物はある筈だが早めに確認しておくべきだろう。

 

「では、他になければリア行こうか?」

 

「お待ちください、この書類の複写にまだ時間がかかります。」

 

「私も剣くらいしか持って来ていないから、荷物は取りに行きたいわ。」

 

ふむ。今、俺がケール男爵と話をつけてくる方が早いかもしれない。

 

「分かった。この時間を利用して俺が直接ケール男爵と話をつけてこよう。俺が直接話す方が話が早い筈だ。リア、俺はグローリアとシャロンとケール男爵に会ってくる。そちらの準備が終わったら先ほどグローリアが降りた場所に迎えにいくからそこで合流しよう。エルナが場所は分かるはずだ。エルナ、リアについていてくれ。」

 

「分かりました。」

 

「その方がゆっくり支度できそうね。」

 

「ロベルト、すまないが急いで写しを作成してくれ。先に俺がケール男爵と話をしてくる。俺が直接説明してから、後でリアとエルナを迎えに来る際にそちらから書類を貰いたい。それまでに複製を作成してケール男爵に届けて欲しい。エルナには、誰か書類を受け渡し係を同行させて欲しい。」

 

「かしこまりました。」

 

「それでは先にケール男爵と話をしてくる。リア、エルナ、またグローリアの所で会おう。ではロベルト、よろしく頼む。」

 

俺は足早に移動しながら、シャロンとセリーナに事情を説明した。

 

(セリーナ、シャロン、この後でケール男爵とガンツに移動してくれという話を詰める。そのあたはリアとエルナを連れてガンツへ戻る。シャロンはグローリアがすぐに飛べるように準備してくれ。セリーナは夕方に俺が戻る想定で班長達を集めておいてくれ、簡単な結果報告会を行いたい。)

 

(分かりました)

 

(了解、今日もご馳走を作ってもらいます。)

 

セリーナは宴会の支度を進めてくれるようだ。俺は首尾よくシャロンと合流するとグローリアに運ばれてケール男爵の野営地に移動する。

 

兵が騒いでいるが、俺とグローリアの存在を彼らは把握している。降伏を受け入れた以上、攻撃する意図ではないと理解はしているようだった。

 

慌てた様子でケール男爵が飛び出して来た。幾人かの貴族を連れている。

 

「護国卿閣下」

 

ケール男爵ほか一同が深々と頭を下げる。

 

「当然の来訪ですまない。食糧は行き渡っているかな?」

 

「はい、全員の3日分の食糧を頂いています。」

 

アレス•ガンツ間は徒歩で5日の行程だ。3日分だとギリギリガンツ行きに足りないだろう。ガンツを俺たちが押さえた今、無断で脱走しても樹海に迷うことになるだろう。

 

いや、ケール男爵は戦闘していない。馬車の食料も渡していたし、輜重を含めて部隊を温存したのなら捕虜を除いた彼ら自身の食料には余裕があってもおかしくはないな。

 

「まず、俺がドラゴンを手懐けているのは見ての通りだし、先の戦闘でも知っているだろう。」

 

「はい」

 

少し不安そうにケール男爵が答える。

 

「今日はドラゴンで王都まで行き、国王陛下の許可状を得た。」

 

「なんと」

 

王都まで徒歩で四週間の行程だ。こんなに早く行って帰るとは思いもよらなかったのだろう。だがドラゴンの背中から降り立ったばかりの姿を見た直後だと信じない訳にはいかないと言うところか。

 

「俺たちはガンツを開城させた。陛下は後継者を定めるまでの三年間はガンツを俺の支配下に置く事を認められた。ガンツ伯に従っていた諸君はこれ以降の三年間は俺の指示に従う事になる。」

 

「分かりました、護国卿閣下の指示に従います。」

 

「本件ついての許可状は、明日の朝に写しを届けさせよう。それを受け取ったらガンツへと移動して欲しい。俺もドラゴンでガンツに移動するのであちらで待っている。特に何も問題がなければガンツ市中で宿を用意させよう。ガンツに滞在する間は俺の方で支払いを持つ。」

 

兵の中から歓声が上がった。皆、野営に飽き飽きしているのだろう。

 

「ガンツまでの食料は明日朝に余裕を持った数を届けさせる。何か必要があればガンツで打ち合わせをしよう。」

 

「あの、護国卿閣下。お預かりしていた捕虜はどうしましょうか?」

 

「出来ればガンツまで届けて欲しい。捕虜の分の食料も当然用意させる。残留希望がなければ彼らはガンツで解放する。アレスに残りたい捕虜がいるなら明日朝に受け入れさせよう。兵士か開拓民として受け入れ可能な筈だ。」

 

「かしこまりました。」

 

この辺りの話はロベルトと詰めておく必要があるな。

 

ケール男爵とはガンツでの再会を約して早々に別れた。ドラゴンがいると兵が落ち着かないと言う現実的な理由もあり、あまり話し込む雰囲気ではなくなる。

 

(グローリア、使い立てしてすまないが、リアとエルナを乗せてガンツに戻りたいんだ。頼むよ。)

 

(分かりました)

 

グローリアも昨日今日と俺に酷使されて疲れただろうにそれを微塵も感じさせない。相変わらず元気いっぱいの少女っぽい声で俺とシャロンを和ませてくれる。

 

(グローリア疲れたんじゃないか?カリファ伯の軍を撃退したら数日休暇を取るといい。)

 

(えー、こんな楽しい事久しぶりです。もっと楽しみたいです、休暇だなんてとんでもない!)

 

そうか。ドラゴンにとっては思う様に暴れて遠くまで移動して、俺達の役に立つ今の状況は楽しいらしい。人間にも戦争好きはいるが、ドラゴンは原則戦争好きなのかもしれないな。

 

(分かった。こんな感じで忙しい日々が続くかもしれないから、休みたくなったら早めに教えてくれ。グローリアに休みを与えるタイミングが俺にはよく分からないから)

 

(はい、ありがとうございます!もっと戦争したいです。)

 

 

内堀のグローリアの着陸場所に戻るとリアとエルナに加えて数人の文官を従えたロベルトが待機してくれていた。

 

「ロベルト、来てもらって助かる」

 

俺はアマド国王の命令書を受取ながら感謝の言葉をかけた。

 

「はい、やはり私もケール男爵の動向を把握しておきませんと。」

 

「そうだな、ロベルトの機転にはいつも助けられる」

 

「私はアラン様とリア様をお助けする役割ですから」

 

褒められて嬉しかったのだろう、ロベルトはそういうと淡く笑った。俺は手早くケール男爵とのやり取りを共有した。

 

「では捕虜はこちらで預かる可能性があるのですか。」

 

「そうなる。だが全員でも数十人だ。武装解除もさせておけば、特に入城させて問題はないと思う。ロベルトが不安なら俺達が戻るまで今の野営地にそのまま待機させてくれ。」

 

野営地は本来は開拓民受け入れ用だった。アレスの城壁と比べると簡易的だが堀も壁もある。竈や滞在用の小屋のほかに井戸やトイレも揃っている。まず危険は無いはずだった。

 

「アラン様が戻られるまでは、城内に入れるにしても武装した兵士にどこかへ隔離させるようにしましょう。」

 

「その辺りはロベルトに任せるよ。ただ、こちらへ合流を希望するようなら良くしてやって欲しい」

 

「募兵の件ですな。」

 

国王のお墨付きを得た今、大々的に募兵が可能となった。敗兵とはいえガンツ伯の部下なら地元の人間が多いだろうし、訓練された兵士が応募するなど今回のような事情がなければ考えにくい。

 

ガンツ伯家が今後どうなるにせよ、俺たちが3年以内に挙兵したら既存のガンツ伯家は無くなる可能性が高い。彼らにも募兵に応じるメリットはそれなりにあるはずだった。

 

「忠誠心の問題もあるだろうから全員ではないだろうが、生活の為に応じる兵士は受け入れたい」

 

「そうですな。金で忠誠心が買えるなら、そちらの方が我々にとって手堅いかもしれませぬ。」

 

我々の目標はリアを擁してのアロイス王国の征服、スターヴェイク王国の復権だ。募兵する兵が金目的の方が、こちらの目的と折り合いがつきやすいだろう。

 

「人の評価はロベルトの眼力を信じるよ」

 

「かしこまりました、そのように信頼頂けるとは働きがいがありますな。」

 

兵士の待遇についてはガンツ伯と同じ待遇を保証するとした。ただし地位は保証しないので、高位にいたものは下がる可能性がある。こちらとしては指揮官より一般の兵の補充を行いたいし、昇進は使えると判断した人間を対象にしたかった。あとはロベルトに任せれば上手くやってくれるだろう。

 

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