【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる)   作:高坂 源五郎

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外伝3 ウルズラの創意

【セシリオ王国 王宮】

 

セシリオの王宮、豪奢な調度品で埋め尽くされた宮殿の深奥。この地の支配者たるウルズラ女王は、ゆったりと寛ぎながら呟く。

 

「映画を作るべきじゃな。」

 

彼女のその声を聞いているのは、側近にして親衛隊長のアヒムのみである。アヒムは何も答えず、黙って主人に視線を送った。そうする事で言葉の続きを促す。無口な男なのだ。

 

「映画を作るべき理由ならある。」

 

ウルズラは再び思考を口にした。彼女は声に出す事で、考えをまとめるタイプである。自ら発した言葉を耳にする事で、自分を説得しようとする。次第にその気になるのだから、彼女には実際に効果がある。彼女の声は次第に明瞭で、確信に満ちたものへと変化していく。

 

「それはセシリオの国民に知らしめる為じゃ。妾が女王として即位した経緯、そしてルージ王子がこの身を継いで国王に即位する理由を。」

 

そこまで耳にして、アヒムはようやく彼女の意図を理解したらしい。『同意でございます』とばかりに重々しく頷く。ウルズラも腹心の同意に笑顔を向けた。

 

「今のままでは、民は『誰が現在の王か』という浅い理解に留まってしまう。それに細かな経緯とは、常に忘れられがちなもの。今すぐに手を打たねば、それこそ妾とルージ殿が夫婦と思う民が出かねん。」

 

ウルズラが必要としているのは周知という事である。当事者にとって自明でも、経緯を知らなければ理解できない事柄は多い。ウルズラからルージへの代替わりは説明なしで理解される事柄ではない。新聞という公告手段はセシリオでも流通されつつあるが、識字率が追いついていない。初期教育の充実も、既に大人であるものには意味がないからだ。

 

だがウルズラにせよルージにせよ、セシリオの王権について事実に即した正確な内容を今すぐ理解して貰わなければ困るのだ。ウルズラは皇帝アランの妻であり、だからこそセシリオの女王として即位したのだと。従兄弟のルージに王位を譲るのは、謂わば借りていた王位を清算する為だ。

 

「話は円満にまとまったのだ。だから後はそれをどう喧伝するかじゃ。そうであろう?」

 

両者間では、王権にまつわる問題を円満に解決した。それはウルズラが新たな支配する星を得て、王国が2つに分割される形である。だからこそ、無理解な外野が王統について理解を拗らせる恐れは看過できなかった。セシリオの前進を、些細な躓きで挫かせたくはない。今後の統治の瑕疵となり得る。

 

「物事の流れとは、つまりは物語。これを周知するという点で、映画は実にいい。文字を理解出来なくとも、話し言葉と映像で物語が進む。」

 

映画は同時に複数の箇所で上映可能だ。どの劇場でも上映される映像も内容は同じ。役者の体調不良もなければ、彼らの演技の内容も常に最善と言っていい。国内のどこでも機械だけで提供出来る。それらは画期的な事なのだ。

 

そしてセシリオの国内でも映画を用いて民に伝えるべき映像を周知した事実がある。それはルージに対してウルズラとアランが勝利した野戦や、クレリアやウルズラの戴冠式についての映像である。その再現、いやこれら全てを網羅した集大成こそが今必要とされる映画だろう。

 

「我らの即位の経緯を国民に広く知って貰えれば、それはもはや建国神話となる。妾の事績が王家の冒すべからざる新たな神話として、セシリオが存続する限り燦然と輝き続ける事になるだろう。」

 

そう自身の思い描く計画を腹心に披露したウルズラは、最後にそっと言の葉を付け加える。

 

「新たな王家の伝承を綴ると考えると、この身が引き締まる想いじゃ。」

 

セシリオ国内の最高権力者であるウルズラに、映画を作成するにあたって障害は何一つ無い。映画を撮影するセットすら不要だろう。セシリオの王宮や実際の戦場をそのまま使えば良いのだ。アヒムに代表される軍部も完全掌握しているので、セシリオの全軍だって自由に動かせる。

 

「…ウルズラ様。」

 

夢想に浸るウルズラの背後から、錆びたアヒムの声が重々しく響いた。

 

「まずは皇帝陛下、それにルージ殿下の同意を得られるべきかと。」

 

「ふむ、あの二人は快く協力してくれる筈じゃ。」

 

アランについては心配は要らない。ウルズラはこう見えてもアランの妻であり、全面的な信頼と支援を勝ち得ている筈だ。内容的にも他の女王を刺激する不安もない。セシリオ国内の事はウルズラの専決で良く、アランに話を通せばすぐに同意してくれるだろう。

 

ルージの全面的な協力も得られる筈だ。何故なら、これはルージが国王に即位する経緯が詳らかに語られる映画なのだから。それは彼の王位継承の正当性を担保する内容だ。つまりこの映画制作では、誰も損する者はいない。これはどう転んでも、そうなる筈の話だったのだ。

 

 

 

 

 

【セシリオ王宮:玉座の間】

 

数日後、ウルズラは首尾よくアランとルージの協力を取り付けていた。人員の手配も取り付けてある。しかし、映画制作における抵抗勢力は意外なところに潜んでいた。

 

「反対でございます。」

 

「どこの馬の骨とも分からぬ者の指示で、セシリオの女王たる御身が軽々に動かれるなど前代未聞でございます。」

 

普段は居場所も定かでは無い老臣達が、一斉に玉座の間に詰めかけて来たのだ。最初の障害は、彼ら先王の側近たる遺臣達の反対というウルズラには思いもよらぬ形で現れた。

 

「平民の指示で王族方が動かれ演技される。更にはその姿を民草に公開されるなど、到底認められるものではありません。何故なら、王室の権威を大いに傷つける事になるのですから。」

 

老臣達はそう主張した。実際、彼らうるさ方の発言には耳を傾けるべき点がある。王家に物申す立場というのは、高位貴族や有能なる臣下が努力して勝ち得た権利なのだ。それを平民如きが王族の一挙手一投足に気軽に口出しをする事など、セシリオの王宮においてはまずあり得ない。王家の支配に対する挑戦、権威に楯突く行為を容認していると捉えられかねない。

 

「妾も小さき頃より、父母より指導役の教師などをつけられはしたが。」

 

「それらはすべて貴族位を保持する者達であった筈です。」

 

「ふむ、確かに。」

 

教師役は女性が多かったが、思い返せば貴族家の妻や子が多かった。平民出は軍人に限られるし、取り立てられていて例外なく騎士の位にある。彼らも騎士という身分を与えられたからには平民のままであり続けた訳ではない。

 

「相分かった。女王としてその点は配慮しようぞ。映画の技術者はアレスから連れてくる必要があるが、それも然るべき身分の者に限ろう。」

 

「指導役だけの話ではありません。女王陛下やルージ殿下が演技されるのが、そもそも宜しからず。」

 

「何故じゃ。戴冠式の映画には、我等も共に姿を見せて居る。」

 

心底不思議そうにウルズラは尋ねた。肖像画というものが既にある以上、映像があっても差し支えない筈ではないか。

 

「女王たる御身を映画で記録することと、御身が演技される事の間には深い溝があるのです。」

 

そう説明されて、ようやくウルズラは理解する。

 

「なるほど。映像化は良いが、王位にある者が演技するのはまずいというのじゃな。」

 

老臣達は口々に説明を開始した。

 

「はい。役者などと下賎な者と同一であると示すのは良くありません。」

 

「また、平民の俳優に演じさせるのもいけません。」

 

「特に、役者の顔を本物の陛下と間違えなどしては。」

 

「ご尊顔を偽る偽物が生じるとなると、これは目も当てられませんな。」

 

老臣達が口々に説明する。公爵だの伯爵だのの爵位を嫡男に譲っている隠居達だ。早めに隠居する事で、先代当主として気軽に振る舞う。うるさ方として王政に口出しするのが役目と心得る連中である。ある意味では忠誠心に篤いが、これまでウルズラは無用の長物と疎んじてきた。しかしこのような形で王の無謀を止める役回りだったらしい。隠居ばかりなのは、仮に不興を得て斬られても当主に類を及ばせない為だろう。

 

「そうか、なるほどな。思えば記録映像は遠目に見た映像である。役者の顔を、王家の者の顔として人々の記憶が上書きされる不安はあるかもしれぬ。」

 

ウルズラは『これは計画を修正せねばならない』と悟った。確かに、女王たる彼女が俳優を務めるのは軽率と言える。俳優に役を任せるのも、考えてみれば彼女の顔も朧げな国民に対する措置としてみれば危うい。

 

「皆の真意、あい分かった。皆の懸念を払拭する様に配慮するであろう。不安を払拭すべく、計画を練り直す。今はこれで下がるが良い。」

 

ウルズラは老人達へとそう計画の修正を言い渡した。そしてどうすべきか頭を回転させる。諫止を成功させた老人達は互いに目配せし合うと、満足そうに退室していった。

 

「…ふむ。」

 

早くもウルズラの計画は、滑り出しと共に大規模な修正を余儀なくされていた。この難題をどう解決すべきかについては何も思い付かない。だが、誰に相談すべきかは分かる。ウルズラはこの問題を解決できる人物が誰かを良く承知していた。

 

 

 

 

【セシリオ王宮 ウルズラの控えの間】

 

「ルージ殿、ここは知恵を貸して貰いたい。」

 

困ったウルズラはその言葉でルージを巻き込んだ。臣下を黙らせる為に、従兄弟を抱き込まざるを得なかった。これはルージとウルズラの両者が得をする話である。だから受益者のルージにはこの障害を秘密にする必要もない。それにそもそもルージは、この手の王宮内容における事柄に限れば極めて有能な男なのだ。

 

「ふむ。父上の治世の残骸達の言か。しかし、奴らのいう事も一理あるか。王家の威信とは、その様な細かな配慮の積み重ねで維持されるものだからね。」

 

事情を聞いたルージはウルズラにそう返してから、考え込む素振りを見せた。ウルズラはルージが何か良い知恵を出すと期待した。ルージに対する評価は、アランやルミナス達からは今一つのようではある。

 

だが、ルージは彼女の世代では飛び抜けて優秀と見られていた男なのだ。王子の立場でありながら、軍備増強による侵略戦争の準備を入念に行っていた。もしも戦う相手がアランでさえなかったのなら。ルージの率いるセシリオ王国は、今頃はベルタ王国を征服していた筈である。

 

「女王陛下、いや従姉妹殿。それでは、こういうのはどうだろうか。」

 

ルージはそこまで言って、すぐに考えを披露せずに沈黙した。少し苛々しながら、ウルズラは黙って頷いて続きを催促する。ルージは勿体ぶっている訳ではない。脳内に得た着想を言語化するのに時間を要しているのだ。ここでは彼が考えを披露するのをじっと待つしかないのだ。こういう時に口を挟むと、想いを説明出来ずにルージは何も言えなくなる。ここは黙って待つしか無い事を、付き合いの長いウルズラは熟知していた。

 

「貴族の子供達が、新年に劇を披露するだろう。」

 

この一言でもう分かるだろう、とばかりにルージが指を鳴らす。そして続けた。

 

「題材は殆どが過去のセシリオの業績で、国王や彼らの祖先が登場する奴だ。あれを、そのまま真似しよう。」

 

ルージにそう言われて、『ああ、そんな風習もあったな』とウルズラは思い出す。甘やかされた貴族の子供が、棒読みの演技をするくだらない芝居である。いやあれは芝居ですらない。芸術として見るべきはなく、貴族の社会性の発露である。限られた特権階級に褒められる事を前提にした、貴族子弟によるおままごとの様なものだ。

 

「というと、どういう事になるのじゃ?」

 

ルージの真意を図りかねて、ウルズラは尋ねた。今の所彼女は、ルージの着想を図り兼ねていた。

 

「子供のした事だ。だから国王の真似を、いや女王の真似をしても一切を不問とするのさ。」

 

ルージにさらりとそう説明されて、ウルズラの脳内で情景が再現される。確かに子供の演技なら、老臣達も目くじらを立てられないだろう。何故なら、その様な風習は既にあるからだ。撮影班は、謂わば少し大掛かりにした新年の行事を撮影するという立て付けとなる。

 

「なるほど、貴族の子に我らの役を演じさせるか。」

 

ウルズラは思わず膝を打った。ルージやウルズラでは監督の指示を聞いての撮影は出来ない。演技も指示される事も良くないからだ。撮影自体は可能だが、映像で記録されたものの利用に限られる。だから、過去を再現するような演技を自分で行う事は難しいのだ。

 

だが、役者の起用もまた難しい。それは国民の多くはウルズラやルージの顔を良くは知らない為だ。役者を使えば、偽の顔が広まる恐れがある。それは治世の妨げである。それこそが老臣達が指摘した別の問題点でもある。

 

「子供は無垢な存在だから良いな。それに演技が拙くても、大抵は『子供のする事だから』で済まされる。」

 

ルージのアイディアは、過去の再現シーンを全て子供の役者に演じさせようというのだろう。子供、それも貴族の子弟が王家の業績を称えるという形式を踏む。そうしておけば、臣下達の反論はまず起きない。演じる子供が自分や同僚の子や孫なら尚更だ。むしろ間違いなく喜ぶ。

 

人選はするにしても、子供なら演技の拙さも目立ちにくい。それらは愛嬌と見做されるだろう。何より子供を本物のウルズラやルージと見違える者はまずいない。記録映像という形式をとれば、即位するウルズラの映像は併用可能だ。つまり子どもが演じる箇所は、再現された箇所と自然に理解が得られる筈である。

 

「なるほど、流石はルージ殿は知恵がある。そのような手があったか。」

 

ウルズラは納得した。褒め言葉に気を良くしたのか。ルージはなおも子供を役者とする利点を述べる。

 

「活躍しても、褒めて金貨を褒美として与えでもすればそれで済む。子供は成長するから後腐れはないしな。それにその貴族家との関係も深みを増すだろう。」

 

貴族達も、王家との関係を良くする事それ自体が目的なのだ。自分の子や孫を褒められて、悪い気がする筈がない。子供達にして見ても、主君や大人達の喝采は嬉しいだろう。

 

褒美を得るという金銭的な動機もまぁあるだろうが、子供であれば大人の役者よりも安く上がりそうである。いや金の問題では無い。目的は貴族の顔を立てる事なのだ。面子、それも貴族のそれは単なる金の問題では解決しないのだから。そこを解決するのだから、この策には価値がある。

 

「これは正に八方丸く収まる良い話ではないか。流石じゃな、ルージ殿。」

 

ウルズラは賞賛の声をあげた。俳優が子供であるという事が、『これは演者ですよ』と観客に明確に認識させる事につながるだろう。流石に大人と子供の見分けがつかない者は居ないだろう。仮にいたとしても、それは治世においては無視できる存在である。

 

「いや、なに。」

 

ルージは手のひらを振るって謙遜して見せた。こういう時のルージは、気障な身振りが実に板についている。

 

「映画を作るという従姉妹殿の素晴らしい発意に、ほんの少し手助けさせて貰ったまでの事さ。」

 

ルージとウルズラは暫し互いを褒め合った。互いの存在が人生の障害であった頃は、密かに敵意を向け合う仲であった。しかしお互いに結婚し、王権の継承について整理ができると相手を許容できるようになった。意外にも、王族として互いを利用できる程良い関係に落ち着いたのだ。

 

ウルズラもルージも男女の違いから王族として期待される役割が異なるだけで、本来は同じ価値観を有する似た性格なのである。仮に生まれた性別が逆であったなら、2人は役柄を交代しても違和感なく務め上げただろう。

 

「となると、ルージ殿と私の2人の役者が必要じゃな。いや、最低でもアラン役も必要だ。子供は幾人必要なのだろう。」

 

「こちらが選ぶより、老臣達に人選を委ねてはどうだろう。それで彼らの面子も立つ。難があれば現場で子供を交代させよう。多めに集めておけば、役の代わりも候補の中からすぐ見つかるさ。」

 

役者は王家の侍女や小姓として推挙された名家の子弟から選抜される事に決まった。数が必要なので、容姿は似ていなくても良い。むしろ顔を似せる必要は全くなく、木製の王冠を被るなどの視覚的に分かりやすい差別化が為されていれば良い。この場合、一種の記号化された存在であれば良いのだ。

 

「それを成立させるには、子役を吟味する必要があるだろう。当然、美しくなければならん。」

 

「ああ、それは当然な事だな。従姉妹どの。」

 

二人はそう言って共感しあった。つまりはうるさ方の老臣達に人選を任せるが、顔が気に入らなければ拒否をする構えである。それは当然だろう。役とは言え王家を演ずる以上は、演じるのは美少女と美少年であるべきなのだ。

 

「ここまで計画されれば、成功したも同然。」

 

ニンマリと笑みを浮かべるウルズラに、なおもルージはアイディアを披露する。

 

「王族であるかをどう示すかについて私に考えがあるのだが、聞いて頂けるかな?」

 

「勿論じゃ、ぜひ聞かせて頂こうルージ殿。」

 

「我らの役を演じる子供の髪を、青く染めるのはどうだろうか。」

 

「なるほど、流石はルージ殿。」

 

ウルズラは舌を巻いた。セシリオの王家には青色の髪が伝わる。人類スターヴェイク流に言えば、これは遺伝的特徴である。ウルズラやルージも本来は青色の髪をしている。ただし、王位につくまではこの髪色を別の色に染めていた。

 

理由は、単に髪色が周囲から浮いてしまうのだ。世の中に、髪色の青い人間はそうはいない。服色との合わせにくさと言ったらない。それに王家の血筋を誇示できる長所と、刺客に狙われやすいという短所がある。別の理由もある。地毛は言うほど澄んだ綺麗な青ではなく、ちょっと濁った見栄えの悪い色なのだった。

 

「この機会に、互いに髪の色を戻そうでは無いか。」

 

ルージはそう告げる。ルージが髪色を変化させたのは、ウルズラの即位に遠慮した面もある。次期国王位が決まったこの機会に、髪色を戻したいのだろう。

 

「我らの王族の血を高らかに示すのじゃな。ならばこの機会に、アランの手を借りよう。むしろ我ら好みのより綺麗な青色に塗り替えてしまうのはどうじゃ。」

 

ウルズラとルージは更に相談しあった。一応、ウルズラは即位の後は髪色を直している。それは伝統であったからだ。しかしまあ、これが青空を泥で汚したような微妙な髪色なのだ。青空を映した水たまりといった風情の色である。泥水色ともドブ水色とも言えそうである。近くで見なければ青とは見なされないだろう。どうせなら、見映えするようにもっと鮮やかにしたい。何せ記録として残るのだから。

 

「俺が王族たる証の髪色を示して目立つことは、もはや暗殺の懸念がないという意を示す事。これは従姉妹殿との和解を臣下に示す事にもなる。」

 

最近までウルズラとルージは王の地位を巡って暗闘し合う間柄であった。ウルズラの即位が、ルージに与する者を刺激したのだ。ウルズラが新たな惑星を得て、セシリオの王位はルージのものとなる。そこまで至った現在になって、ようやく折り合いがついた。2人を推戴する各派閥を構成する貴族が、ようやく妥協し合える成果を得たのだ。暗殺される事への不安も、ここにきてようやく消えていた。

 

「では、分担して事に当たろう。私はアランを説得する。映画への支援、特に髪色の調整には万全を期したいからな。」

 

「では俺は老臣を説得して、彼らの一族から見目麗しき子役を提供させよう。」

 

ルージとウルズラは頷きあった。

 

「ルージ殿、失敗は許されぬぞ。」

 

「任せておくれ。王室の威信をかけたこの様な大仕事、必ず成功させると私も誓おう。」

 

ウルズラとルージはガッチリと手を取り合った。映画が完成すれば、王家の威信は高まる。何より王位の継承については正しく周知されるべきだ。新たな国分けの神話は、彼らに都合よくそして美化して国民に記憶される事になる。それはこの二人の治世を円滑にしてくれるだろう。

 

 

 

 

【セシリオ王宮 鏡の間】

 

遂にウルズラとルージを演じる二人の子役が選び出された。今日は内々のお披露目の日である。

 

「コレモ伯爵家の次女ベアトリーチェにございます、ウルズラ女王陛下。」

 

ウルズラは挨拶するベアトリーチェを満足そうに眺めた。『演者を貴族の子弟に限る』と言った所、老臣達は乗ってきた。むしろ貴族層を活用する機会だと大歓迎し、積極的に一族の者を送り込んできたのだ。

 

ウルズラ役に決まったベアトリーチェは、10代に入ったばかりの幼すぎない少女である。容姿はまるで似ていない。顔立ちの系統がまるで違うのだ。ウルズラの特徴である平たい胸が、少女の未成熟さで再現されているくらいだろうか。後ろ姿はそっくりと、なぜか老人達からの推薦の言葉が付けられていたが。ただウルズラは思う。後ろ姿は、体格の近しい若い女であれば似るものだろう。まぁ老人達がそう決めたのならそこは何も言うまい。大切なのは前に進める事だ。

 

「まぁ、あれだ。従姉妹殿の美しさの再現とは、いかないな。」

 

同席しているルージがそう評価する。因みにルージもウルズラと同じ系統の、少し個性的な顔立ちをしている。目つきが鋭すぎる為に、キツさを与える印象なのだ。ルージが太り気味なのも、目の鋭すぎる印象を緩和する狙いだろう。けして自堕落なだけではない。こうしてみると王族とは骨格よりも精神性の違いが顔立ちの違いに出るのかもしれない。

 

「そこは似せないで良い、という話ではなかったかな。むしろ子供らしい健康美こそ、観客を喜ばせるのでは無いか。」

 

ウルズラはそう返答する。

 

「確かに顔を余りにも似せてしまうと、成りすましを狙ったとして王族への不敬罪にもなり得るか。」

 

王族の偉業を子供が再現するのだ。この場合は似ていなくていい。無論、醜い子供に演じさせるのは侮辱になる。だから愛らしい子供である必要はある。

 

「それで戦闘の場面は過去の記録映像とやらがあるのだろう?」

 

ルージが問う。今尋ねるのは、子役が再現映像でどこまで担当するか決める必要があるからだろう。ウルズラの落馬するシーンだけは撮影する必要がある。魔道具で安全に配慮して落馬できるよう準備は進められている。

 

「それはアランの記録した物だな、空中から撮らせた映像も使えると聞く。」

 

「ならば子供の劇だけを撮影して、過去の映像と編集して繋げればいいだけの筈だ。」

 

セシリオでの会戦は映像の記録がある。過去に公開した映画に盛り込まれなかったシーンも多い。不使用だったシーンは使徒と呼ばれるドローンの空撮映像だ。それに映画のフイルムも回されていた。それらを組み合わせて使えば、戦闘の撮影はほぼ不要だ。

 

「これはもう、事がなったも同然だな。」

 

ルージが笑顔を見せる。そして次の子供を手で呼び寄せた。この少年は、ルージ役なのだ。

 

「コレモ伯爵家の三男オルフェウスにございます、殿下。」

 

ルージが愛らしい少年を見て満足そうに頷く。今回採用したオルフェウスとベアトリーチェと兄妹である。これは意図してそうしたのだ。間違っても恋人同士だと観客に邪推されないようにだ。良く似た兄妹なら、その意味する所は観客にも明白に伝わる筈である。ウルズラとルージは、実際のところ兄妹の如き存在であると。

 

 

 

 

 

 

【撮影地 樹海のほとり】

 

アランに派遣された撮影監督はクリスティアン・バールケと名乗った。

 

「私が監督として、本日より撮影を担当致します。」

 

「うむ。よろしく頼むぞ。」

 

ベルタの宰相家の出身と聞いて、ルージが満足そうにしている。本当の貴族は映画の撮影などしない。しかし貴族でない者を王族に近づけるのも支障がある。ウルズラはそれらの妥協点として、アランに刃向かい没落した貴族家の者を使用する事にしたのだ。聞けば嫡流を外れたものの、貴族籍は残っているらしいと知りルージは安堵する。

 

「かのベルタ宰相バールケの子か。いや孫だったか。爵位は伯爵だったか。いや、かつては侯爵だな。」

 

侵攻を狙っていただけあり、ルージはベルタ王国の貴族については詳しい。ただ流石に没落した家の知識などは、彼の脳から滑り落ちていく。些かあやふやに話すのは、その方が都合がいいからだ。クリスティアンの身分を盛れるし、いい気にもさせてやれるだろう。

 

実際、貴族というのは当主だけを意味するわけではない。侯爵家嫡男して育っていれば、今回のような場合は及第点であるだろう。監督の人選に、老臣達の反対がないのがその証拠である。

 

「我が手による脚本は既に完成している。役者達も台詞は既に頭に入っている。後は撮るだけでいけるはずだ。」

 

ルージがそう説明すると、クリスティアンは驚きの表情を浮かべた。脚本は目にしていても、ルージの作とは考えていなかったのだろう。

 

クリスティアンも準備を終えてこの場にいる。実際に俳優をテストして、完璧に台詞が入っている事は既に確認してもいる。子供達の演技自体は実に拙い。とは言え、それも子供の演じる演劇としては及第点であろう。何より熱意があるし、役者として光るものがある。

 

「まさか、これ程までご準備頂いているとは。」

 

演者は本物の役者ではないのだ。ルージに対するクリスティアンの賞賛は本物であった。

 

「そうかな。これ位は普通だろう?」

 

本心から不思議そうにルージが問い返す。ルージは用意は苦労とも思わず万全を尽くせる人種である。今回のように興が乗れば、シナリオの作成も演技の指導も手ずから行う。根は器用な努力家なのだ。玄人ではない分、手を抜く所も分からず全てに全力を尽くすのみである。いや、王家の新たなる神話の為なのだ。元より手を抜く気などルージにはない。

 

「これは、実に良い作品となりそうです。」

 

「そうか。さ、光線の具合もある。早く子供の芝居する様子を撮り始めたまえ。」

 

成功を予感するクリスティアンに、ルージは優しく言葉をかけた。ルミナスに同行した惑星アデルでは、暇を持て余したルージはサブスク映像にドップリと浸かった。今のルージは、惑星アレス随一の映像通なのだ。

 

 

 

「セシリオの為に、樹海の中に建設される都市をこの目で見定める必要があります。それでは行ってまいります、お兄様。いえルージ殿下。」

 

アレスの技術で髪を青く染めたベアトリーチェが乗馬服姿で凛々しく宣言する。

 

「気をつけるのだぞ、妹よ。」

 

オルフェウス演じるルージが妹を気遣う。実際には従姉妹だが、劇中では一貫して妹として扱う。アランに嫁ぐ前に先王の養女の形式を取っており、これ自体は嘘というわけではない。普段から兄妹と呼び合う仲ではなかったが、結婚の際など必要とあらば来賓の前で自然にそう演技し合える間柄ではある。

 

ベアトリーチェが騎兵を率いて樹海の奥へと向かう。ベルタ貴族が樹海に都市を築いたのだ。どのような男かを、今から彼女は見定めに行くのだ。

 

樹海を騎兵が駆けている。伏兵が現れて、騎兵が襲撃された。投げ出された小柄な影が宙を飛び、鎧姿の敵将の腕の中に収まった。見つめ合う少年と少女、その様子は正に恋に落ちた様子であった。

 

「…カット!」

 

監督のカットの声がかかり、撮影が中断した。

 

「…いかがでしょう?」

 

「実に、実に良いではないか。」

 

問いかける映画監督に、ウルズラは上機嫌で答えた。新進気鋭の監督のクリスティアンとしては、依頼人で金主のウルズラの需要を十全に満たす必要がある。費用はいつものように自分の新聞社の支払いではない。これは謂わば国策映画なのだ。CMでありプロパガンダである以上、注文主を納得させる為のフィクションと割り切っている。

 

今撮影されているウルズラとアランの出逢いは、実際はウルズラが惨めな敗将であり捕虜となる展開だった。殺されなかったのは恐らくは女性だったからだ。それも顔から落馬して大怪我をした。治療してもらえたのも、クレリアの同情が寄せられたからこそだ。だが脚本上ではの辺は丸っと誤魔化されている。ルージ曰くボーイミーツガール形式のフォールインラブである。これぞ映像化の妙である。

 

「本作にはクレリア女王は登場しない。このまま存分に、恋愛映画として演出して欲しい。」

 

力強くウルズラはそう宣言した。クリスティアンは黙って頷く。これは人類スターヴェイク帝国の総意ではある。映画を構成する余分な要素はカットされるのだ。クレリアが登場すれば、疑問の余地なく彼女がヒロインの物語となってしまう。ここでは物事を単純化する為に、ヒロインとしてはウルズラのみが映画に登場すれば良いのだ。長い映画など国民は見ないし寝るだろう。だから必要な要素のみに映画を絞り込む。

 

「アランとの出逢いはこの映画の要じゃぞ。手は抜かぬようにな。何回か撮影した方が良い。」

 

恋愛要素は婚姻関係の成立を明示する。周知の為には極めて重要であり、理想的な恋を演出しなくてはならないのだった。アラン役もまた、外見の良い貴族の子弟を役者としている。

 

「いえ、光線が変わる前に次のシーンを撮影させて頂きたく。」

 

「そうだ。完璧な映像だったと思うぞ、従姉妹殿よ。」

 

段取りを気にするクリスティアンに、ルージが素早く同意する。こういうのはやる気に満ちている間に終わらせてしまう方が良い。やる気こそ、有限の資産である。

 

「ふむ。」

 

ウルズラが頷いたのを見て、ルージが話をまとめにかかる。

 

「監督、従姉妹殿も良いとの事だ。さ、次のシーンの撮影の準備を進めたまえ。」

 

クリスティアンがルージに感謝の眼差しを向け、撮影シーンの変更を伝えに移動する。脚本の出来といい、ルージの造形の深さは本物である。俳優のやる気は兵の士気に等しい。だから軍事に通暁している事も、この場合は円滑な撮影の進行に寄与している。

 

「これは間違いなく、歴史に残すに相応しい作品となるであろうな。」

 

ウルズラは円滑な映画の進行に満足していた。その傍で、少し大きなひそひそ声の会話が漏れる。

 

「…アラン様役は、あまり似てないわ。」

 

ウルズラの横で撮影に同席しているアリスタ女王が、側近にそう溢しているのだ。今はルージ、ウルズラ、アリスタと席を並べている。ただ、それぞれに侍女や護衛がつくので間隔は広めだ。アリスタの側近であるカリナはアリスタの横に立っていた。

 

「アリスタ様。ウルズラ様によれば“似ていないから良い”と、そのようなお話なのです。」

 

カリナが女主人をそう嗜めている。アリスタ女王が立ち会うのは、今回の撮影が国策、それもセシリオの国策ではなく人類スターヴェイク帝国全体の肝煎りという証左である。撮影に纏わる事柄は、全てアリスタの口からクレリアを筆頭とした他の女王に報告される。

 

この映画制作が上手くいけば、新任の女王であるアリスタやタラの伝記映画も新たなる王家の神話として作成される。それに手回しの良いアリスタ主従の参加は、諸々の手配に好都合だった。同じ女王という地位にいても、ウルズラ単独では早々に限界を迎えていたに違いない。

 

「ではカリナ、私達の場合は他の役者を探すべきね。」

 

「はい。これはやはりそれぞれの王国の貴族の子弟から、選抜するという形となりましょう。」

 

カリナも頷きながら答える。二人とも、もう映画制作を前提に話をしていた。

 

「出会い方からして、こちらの映画には私と貴方だけでなくクレリア様やセリーナやシャロンにも出演してほしいわ。双子を探すのは大変よね。セリーナやシャロンなら気軽に本人役で出演してくれないかしら?」

 

「それはどうでしょうか。盗賊に対してご本人達では強すぎるように見えるのでは?」

 

アリスタとカリナは実に真剣に討議している。この2人は実務派なのだ。そんな彼女達が映画の価値を認めた。それはウルズラには、映画の成功を確信した言動であるように思われた。

 

「ウルズラ女王陛下、いかがだったでしょうか?」

 

ウルズラに扮した服装のベアトリーチェがウルズラ目掛けて駆けてくる。撮影場所変更で、役者に休息が許された為だろう。こちらに駆けてくる様子は年相応の元気さである。ウルズラは彼女の貢献を讃えようと立って出迎えた。防衛用の柵の出入り口を護衛に開けさせる。座りっぱなしで立つ機会を伺っていたのだ。彼女がこちらに来れるなら、次の撮影はすぐにはないだろう。

 

ウルズラとベアトリーチェは急速に仲を深めている。そもそも相手は年端の行かぬ可愛い少女であるし、自分の役を演じてくれているのだ。これで仲良くならない方が不思議というものである。

 

「さ、こちらで暫し寛ぐが良い。今、席の用意をさせよう。」

 

ウルズラの目配せで、護衛の親衛隊騎士の一人がベアトリーチェの為の椅子を取りに向かう。もう一人の騎士が見送り、容易に近づかせない為の柵を閉じる。ウルズラとルージの護衛が2人から1人に減る。護衛は共用なのだ。騎士の姿が見えない程遠ざかり、天幕の中に消える。その時、剣が抜き放たれる不吉な音が周囲に響いた。人々の耳目がその発生源に集中する。

 

「皇帝陛下の妻に相応しいのは、クレリア様はじめルミナス様の血胤のみ。」

 

それは堂々たる大音声だった。女の声だ。そう言いながら剣を抜いたのは、ウルズラの親衛隊の護衛騎士である。

 

「御覚悟!」

 

そう叫んだ不埒者は、抜き放った剣を構えると問答無用とばかりにウルズラ目掛けて突っ込んでくる。幸い柵を閉めるのを優先したからまだ数歩の距離があるが、解き放たれた剣身が金属の輝きを帯びているのをウルズラは確かに視認した。

 

「逃げよ。」

 

そう告げて、ドンと手の中の子供を押し除けた。ベアトリーチェがウルズラにより突き飛ばされ、回転しながら不埒な反逆者の進路上から外れる。

 

「ウルズラ様!」

 

悲鳴を上げながら回転するベアトリーチェが遠ざかり、視線が反逆者そしてウルズラの順に交差する。ベアトリーチェの表情に状況への理解の色が浮かんだ。驚愕で少女の表情が凍りつく。悲劇的な結末を予期したのだろう。

 

トンと軽い音がしてルージがベアトリーチェを抱き留める。少女が安堵したのも束の間、良い盾が来たとばかりにルージは少女の背後に隠れた。柵の中には隠れる場所がないとはいえあんまりだ。ウルズラは思わずルージを睨む。ルージは実に素早い、そして小狡い。

 

ベアトリーチェを逃した事で、ウルズラが逃げる為の貴重な一瞬が失われた。横にいた筈のアリスタはちゃんと逃れているのが見える。今は親衛隊騎士が二人も賊とアリスタとの間に立ち塞がっていた。賊の口上からすると、アリスタが狙われても不思議はない。それを踏まえて行動したアリスタの親衛隊騎士は、かなり優秀なようだ。ウルズラも腕に覚えはある。ただ今身につけている女王としての衣装には、剣の用意がないことをウルズラは残念に思う。

 

「せめて短剣でも備えてあれば、な。」

 

「必要ないでしょう。こうして備えてはいたのですから。」

 

ウルズラと賊の間には侍女がただ1人立ちはだかっている。護衛の1人が去り、1人は族となっても侍女はまだそこにいたのだ。彼女の両の手に光るナイフが握られていた。袖口から手を突っ込み、肩口の下の二の腕にくくりつけた鞘から抜き放ったものだ。賊が足を止めたのも、この侍女を警戒してである。

 

反逆者の剣が侍女越しにウルズラに向けて振り下ろされる。侍女の得物は短い。鎧を貫くには不足していると判断されたのだ。だが、彼女の得物は全てを切り裂く魔法の短剣である。それはミスリルの鎧さえ貫くのだ。その魔法の武器の名を、電磁ブレードナイフという。

 

侍女服姿のままでマシラが反逆者の懐に飛び込み。右手のナイフを賊の腹へと突き立てる。まるでバターに突き立てたかのように易々とミスリルの鎧が貫かれる。驚愕の表情が反逆者の顔に浮かぶ。完全武装の親衛隊騎士の鎧が、ナイフ一本に貫かれるとは考えもしなかったのだ。

 

対するマシラは躊躇なく電磁ブレードナイフでそのまま反逆者の身体を切り裂いた。そして両腕を煌めかせて、賊の両手の腱までを切断する。容赦ない手口であるが、敵を無力化するには効果的な一手だ。力を失った賊の手から剣が地に落ちる。そして賊はマシラの誘導するままに地に両膝をついた。

 

「大丈夫か。ベアトリーチェそれにルージ殿。」

 

ウルズラが顔を向けると、涙ぐんだベアトリーチェと、ホッとした様子のルージの顔が見える。ウルズラは重い衣装の裾を持ち上げて、ベアトリーチェとルージの元へ駆け寄る。ベアトリーチェを起用した映画の撮影は済んでいないし、ルージには無事に王位を継承しなければウルズラの仕業と疑われかねない。二人に死なれてはウルズラが困るのだ。それに賊から離れる為でもある。

 

「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう、従姉妹殿。こうしてベアトリーチェも私が守っていたぞ。」

 

ウルズラは気取った口調のルージからベアトリーチェを自らの手に取り戻した。そして少女に優しく声をかける。

 

「怖かったであろう。もう少しで終わる。見なくて良いように、妾が其方の眼を塞いでおいてやろう。」

 

そう言ってウルズラは両の手で少女の視界を遮る。これで何も見えない筈だ。少女が不快な物を見る心配はない。ベアトリーチェは戸惑った。もうこれで、危難は終わったのではなかったか。

 

「やれ。」

 

ウルズラが口でそう合図する。マシラは躊躇なく反逆者の喉を切り裂いた。喉から鮮血が噴き出た。反逆者が喉を押さえて地に滑り落ち、のたうつ。即死ではないが、ものの数秒で死を迎えるだろう。

 

「…背後関係を、自白させたかったのですがな。」

 

ルージの背後を固めていたアヒムの声が漏れる。ウルズラとアリスタの視線が交差した。アリスタに指示されて、親衛隊騎士の1人が飛び出す。スッとマシラが場所を譲った。その女騎士は賊の元に滑り込みながら回復魔法(ヒール)を発動させる。

 

(どうやら間に合ったようじゃな。)

 

遅れてアヒムが駆け出したのを見て、ウルズラはそう判断した。アヒムは無駄な事はしない。アヒムが動いたという事は、賊はまだ生きているのだろう。ウルズラはアリスタに感謝の視線を向ける。2人は暫し微笑みあった。

 

「よくやりました、騎士イヴェリナ。それに騎士マティアスも。」

 

「「ハッ!」」

 

アリスタの褒め言葉に騎士達が同時に答える。そして定位置に、アリスタを守れる位置へと戻った。

 

「もう大丈夫、怖かったであろう。」

 

ウルズラはベアトリーチェの目から手を離した。賊の存在を把握して今回の行動を意図的に誘発したとは言え、ベアトリーチェに現場に立ち合わせたのはウルズラの本意ではない。

 

「ウルズラ様。」

 

ウルズラを見上げるベアトリーチェの顔が涙で濡れている。そしてキッとルージを睨んだ。盾代わりにされた事を良くは思っていないのだ。ウルズラ役を務めるだけあって、気が強い娘なのだろう。いや、これはきっと役柄を演じる間に性格が似てしまったのだ。剣を振るい馬を駆れば、性格も昂るだろう。しかし今のウルズラは彼女を嗜めねばならない。

 

「こらこら、ルージ殿を睨んではならん。ルージ殿が身を守るのも、王族としては当然なのだから。」

 

ルージを擁護する言葉を発する振りをして、ルージの行為を改めて皆に印象づける。この場にはセシリオの者が多い。噂は、すぐに国中を駆け回る筈だ。

 

「殿下、これは我が妹が失礼を致しました。誠に申し訳ございませんが。どうやら、気が動転しているようで。」

 

慌てた様子でベアトリーチェの兄のオルフェウスがルージに駆け寄る。こちらもルージ役の衣装のままである。

 

「良い良い。怖かったのだろう。水に流すさ。危難を共に潜り抜けた仲ではないか。」

 

ウルズラの擁護に気を良くしたルージが鷹揚にオルフェウスに頷いている。そんなルージを一顧だにせず、ウルズラを守り抜いたマシラがウルズラへと近づいて来る。

 

「これでルミナス様が、この件に無関係と証明したぞ。」

 

電磁ブレードナイフを弄りながらマシラはそう宣言した。チラチラとナイフの刃に太陽の光を反射させているのは、電磁ブレードナイフの力を回復させているらしい。電磁ブレードナイフを使えば魔力が減ると知らなかったマシラは、かつて役に立たないとナイフを投げ捨てた事がある。太陽の光を当てさえすれば回復すると知ったので、今はこうしてこまめに手入れしているらしい。

 

「それでは報酬を弾んでもらうおう。」

 

「うむ、分かっておる。」

 

ここからは子供には聞かせられない話なので、ウルズラは今度はベアトリーチェの耳を塞ぐ。耳の周囲を手で覆うだけではない。耳の穴を指で塞ぐ本気のやり方だ。協力の対価が対価なだけに、子供にはちと聞かせづらい。

 

マシラはルミナスの家臣であり、ウルズラやルージからは本来他の王家の臣下である。ただウルズラの母方の叔母にして臣下、ルージの妻であるロベルタは同じルミナスの臣下なのだ。今回は横の繋がりで呼ぶ事が出来た。ロベルタでないのは、叛く筈の相手の油断を誘う為だ。

 

「こうなると知っていたのですか?」

 

談合するウルズラとマシラを横目に見ながら、親衛隊騎士を両側に従えたアリスタがアヒムに尋ねている。

 

そう、最初から挙動の怪しい者が居ると分かっていたのだ。罠にかけた形である。ベアトリーチェの演技に見惚れて本心から油断はしていたが。

 

「帝国の法では証拠固めだなんだと時間がかかります。この様に先に罪を冒させ、その場で処断するのが手っ取り早いですな。」

 

アヒムが大いに頷いている。手間をかけさせられたのは、人類スターヴェイク帝国の法が問題だからとでも言いたげである。アリスタはその様子に軽い呆れを見せながらも、危険を見抜いたアヒムの眼力に感じる物があるようだ。家付の家臣がいない為に、羨ましいらしい。さり気無く、移籍する気がないかとアヒムに誘いをかけていた。

 

 

 

 

 

【首都アレス 天空城】

 

「それでは賊の正体は不明ですか。」

 

不服そうにエルナが尋ねる。

 

「いや、アラム聖国の出身とまでは判明した。」

 

沈黙が場を支配した。ルミナスとその血統を礼賛するアラム聖国は元々関与が疑わしい存在である。疑惑は更に深まったというところだ。

 

「では、前回のようにカレイド卿を頼っては?きっとまた結果を出してくれるでしょう。」

 

アリスタの問いかけにウルズラは首を横に振る。

 

「試した。ルミナスに疑惑のかかる話なのでマシラを通して無償で。何も出なかった。エルヴィンの報告では、そもそもカレイド卿の術の効きが悪かったそうだ。」

 

狂信者にはフェロモンが効かないのか、そもそもカレイド卿の術が女には効果が薄いのか。集団による増幅効果というのもあるらしく、一人の狂信的な女相手というのはカレイド卿も苦手としているらしい。だから今はエルヴィンの手の者で尋問を進めさせている。

 

「え、無償なのですか。」

 

アリスタはショックを受けた顔をしていた。これはカレイド卿の術を使えない対象がいるというよりも、「マシラを通じれば無償」という部分に反応してのものらしい。彼女はそう見せないが、金銭の方により反応する。やはり根は商家の娘なのだ。

 

「ルミナスが疑われる状況だからじゃろうな。それをマシラを通じて聞かされれば、という話だ。」

 

「それで、マシラにはどのような報酬を?」

 

「どうも夫に側室を持たせてやりたいらしく、その世話をな。」

 

エルナもアリスタも意外そうな表情を覗かせる。

 

「意外ですね。」

 

「アダーにそのような存在が出たら、浮気者としてまずマシラに殺されるのが先かと思っていました。」

 

マシラは嫉妬心と独占欲が強いのは衆目の一致する所である。

 

「マシラは男の体面を気にしているのだ。」

 

ウルズラは紅茶を飲み、口内を湿らす。

 

「側室を多く持つのは男の余裕の表れと見る向きもある。それなら、夫の好みで仲妻の好みで側室を選ぶ者もあろう。」

 

エルナやアリスタに理解の色が浮かぶ。イリリカは惑星アレスでも側室文化が色濃い。マシラはマシラで気苦労がある、ということなのかと。

 

「しかし、アダー殿がそれを受けるのでしょうか?」

 

アリスタが疑問を呈する。彼女達の知るアダーは愛妻家である。

 

「アランを例にすれば、妻を愛するのと側室は両立する。とまぁ、そういう話ではないかしら。」

 

エルナが手をひらひらさせ意見を述べると、ウルズラやアリスタの顔に苦笑が浮かんだ。アランと自分たちの関係が正にそうなのだ。それを考えれば、臣下が主君に倣おうとするのもまた当然なのか。

 

「話がそれたようじゃな。当面、我らは今回の反逆者に続く者が出ることを警戒せねばなるまい。」

 

ウルズラが仕切り直すと、エルナとアリスタが重々しく頷く。三人とも知られている限りルミナスの血統ではない。つまり賊に仲間が居れば狙われる可能性がある。

 

「しかしセシリオの親衛隊員にまでなっていたとは。選抜の基準はどうなっていたのです?」

 

そう尋ねるアリスタに、ウルズラはしかめ面で答える。

 

「忠誠心については合格をしていた。しかし試験で問われたのはアランやクレリアへの忠誠心なのでな。」

 

「「ああ」」

 

ウルズラのその説明に、アリスタやエルナの理解の色が浮かぶ。確かにクレリアに忠誠を捧げていても、側室を喜ばない者は出るだろう。正妻たるクレリアが認めた存在であってもだ。

 

「この辺りは見直しが必要だろう。AIも駆使して、身体の反応から嘘を見破るように出来るそうだ。」

 

「すぐにでも親衛隊への確認は必要ですね。ただ、彼らの忠誠を疑ってはいないと示さないと。」

 

アリスタの反応には危機感がある。累代の家臣などいないアリスタが一番苦労して親衛隊を構成するメンバーを掻き集めている。その際は、理解しづらい思想によって命を狙われる所までは考えていなかったに違いない。

 

「まあ、こちらは怪しいと目ぼしをつけていたのでな。予め対策を打てた。」

 

ウルズラはそう明かした。その辺りはウルズラというよりは実際はアヒムの眼力である。それでも、セシリオの地力に違いはない。

 

「組織があるかもしれませんね。」

 

「ある意味では、親衛隊を必要とする理由が出来たのではないかしら。」

 

アリスタとエルナが口々に頷き合っている。

 

「詳細な報告書は追ってアランの妻達全員に送ろう。ただ、当面は信頼できる者に周囲を固めさせてほしい。」

 

ウルズラはそう締め括った。アリスタとエルナは頷いている。アリスタにはウルズラへの襲撃に同席した二人の騎士がいる。エルナはそもそも麾下の部隊を手ずから鍛えている。しかも本人も魔法の使い手だ。剣を帯びてない時でも、常に強力な武器を携えているに等しい。

 

「当面、連絡を密に取り合いましょう。」

 

エルナの言葉にアリスタと共にウルズラは大きく頷いた。

 

 

 

 

【セシリオ王国 ウルズラの私室】

 

映画の完成により、セシリオ国内においてルージ王太子の評価が急上昇していた。契機は映画内の戦闘シーンである。セシリオとスターヴェイクの戦闘を正面から描いたこの作品は、会戦を指揮したルージの株を上げたのだ。

 

惑星アレスでの戦闘において、王族が正面からアラン・コリントと戦った事例は他にない。ベルタ国王は正面戦闘を回避して降伏したのだ。軍勢を率いたのは、あくまで宰相バールケである。他の国家も似たようなものである。アラン・コリントの最大の敵といえばジノヴァッツ元帥であろうが、ルージの果たした存在感も少なからず大きいのだ。

 

人類スターヴェイクとの戦闘の契機は国防である。セシリオを守る為に戦ったルージの行為は、“堂々たる敗北”と称された。しかも一度の敗北にも挫けず、ルージは抵抗を継続した。敗者となるもウルズラを介した交渉により、王家の命脈を保ち国王即位の道筋を残した。

 

抵抗を選んだルージ、敵の懐柔を計ったウルズラ。対照的な両者の対応もセシリオ王家の存続策として評価された。乱世において敢えて王家が敵味方に分かれてどちらが勝利しても存続を図る。人類スターヴェイク帝国が宇宙を制した結果から逆算して、全てはセシリオ王家に都合よく解釈された。

 

だがウルズラとしては不満である。企画者はウルズラなのだ。ただ、脚本の問題もあった。ウルズラはヒロインとして描かれ過ぎたのだ。アランとの理想的なラブストーリーである為に嘘くさく、いや結婚は嘘ではないのだが。ともかく王道であり過ぎて意外性がなかった。多くの女性の共感を得たのだが、女性をトロフィーと見做す勢力の前には好都合過ぎる物語で軽く見られたのだ。

 

 

「ウルズラ様、お願いがあります。」

 

物思いに耽るウルズラを、侍女を務めているベアトリーチェの声が引き戻す。気がつくとベアトリーチェがウルズラの前に傅いている。ウルズラは何の様だろうとそちらに目を向けた。そして優しく尋ねる。

 

「何か。其方の望みは尊重したい。まずは言ってみるが良い。」

 

「お願いする前にお伝えします。両親はウルズラ様に従い移住すると決めました。」

 

ウルズラは瞠目した。ウルズラに従い移住するとは、新たな星の植民への参加である。先祖伝来の土地を離れるのを嫌がる者も多い。貴族は特にそうだ。ベアトリーチェだけは連れて行きたいと考えていたが、格式ある大貴族が本心からウルズラに同行するのは歓迎できる。

 

「コレモ伯爵家の決断を歓迎しよう。陞爵はせぬが、良き土地を世話させよう。」

 

ウルズラとルージは国分けの作業に入っている。主だった領主は均等に分けて、民もそれに応じて配分する。貴族家を転封すると言っても、領地の公収はしない。分家を立てさせて、どちらかを分家に委ねさせるのだ。先祖伝来の土地を取るか、新たな星で更に広大な領地を得るかは当人次第だ。しかしウルズラとルージの勢力バランス維持のためにもそれなりの貴族家当主が来てくれる方がいい。いやこの場合に重要なのは、むしろ眼力の方で有る。ウルズラが勝ち馬と信じて彼女に投資する者こそが、新たな星で栄達するに相応しいだろう。

 

「それでウルズラ様、私からのお願いなのですが。」

 

ベアトリーチェが願いを切り出す。

 

「私は剣を振るいたいんです。どうか、私を親衛隊騎士の見習いにしてください。」

 

ウルズラは意外に感じた。本来のベアトリーチェは、お淑やかな貴族の子女である。戦争も終わっている。本来は幸福な結婚こそ目指すべきではないのか。

 

「無理をせずとも良いのだぞ。我が侍女をしながら好みの相手を探してはどうか。其方が同意しない相手には嫁がせたりしないと約束する事も可能じゃ。」

 

ウルズラは好意を口にする。そもそもベアトリーチェを護衛に取り立てたら、ルージよりウルズラを立てたコレモ伯爵の支持を失いかねない。

 

「騎士になる事については、両親は説得しました。それに私、今よりずっと強くなりたいんです。」

 

そう言ってベアトリーチェはうっとりとした仕草で、マシラの技やイヴェリナの魔法の技について語り始めた。なるほど、彼女達に憧れたということか。確かに女王になど簡単にはなれない。そう考えると、護衛騎士を目指すのは分かりやすくはある。マシラは無理にしても、イヴェリナの様にならなれる可能性はある。

 

「そうか。そう決意したのなら帝国宰相のイーリスがアレスに築く士官学校に推挙しよう。費用も国費から出す。卒業すれば、イヴェリナにも負けない実力を得られる筈だ。」

 

ベアトリーチェは目を輝かせた。

 

「嬉しい。ありがとうございます。」

 

中空に浮き上がらせた士官学校の資料に、ベアトリーチェは目を輝かせて見入っている。

 

「いや、何。イーリスからは然るべき者を選抜してほしいと頼まれていたから丁度良い。」

 

そう答えながらも、ウルズラは思案を巡らせた。ウルズラは知っている。ルージはベアトリーチェに側室の誘いをかけたことを。彼女が成人した後の話なら、ウルズラは何も言わない。ただその話を蹴るのなら、コレモ伯爵家当主がウルズラに与するのも理解できる。後難を恐れるのは当然の事だ。それにオルフェウスはルージの側近のままなので、大きな問題はないだろう。

 

(やれやれ。ルージ殿は相手が喜ぶとそう考えたようだが、この状況は利用させて貰うぞ)

 

伝統派の貴族なら、娘を次期国王に請われれば喜んで差し出して忠誠を誓う筈だ。正室が定められているとは言え、未来に何か生じるかもしれないからだ。兄が継いだ王位を、妾腹の弟が後継として継ぐ未来はあり得る。

 

だがウルズラが必要とするのはその様な価値観の者ではない。より開かれた新しい人種だ。ベアトリーチェの様に素直に強さに憧れて自分もそうなりたいと願う者。そういう者達こそ、新時代のウルズラの治世を支えるに相応しい。それに、何といってもウルズラはベアトリーチェを気に入っている。この少女には少し利用されても構わないと考える程度には、溺愛しているのだ。ベアトリーチェがそれに応えて側近になると決めてくれたのなら、何も言うまい。

 

(やはり人は、忠誠心こそ寛容だからな)

 

共に危難を潜り抜けたベアトリーチェがウルズラを裏切ることはまずない。彼女の家族を引き立てれば尚のことだろう。ウルズラには彼女より若い家臣が必要である。アランの子を授かった今、王統を次代に繋ぐ必要があるのだから。

 

「イーリスの布石は人材を未来に繋ぐ為か。流石は帝国宰相じゃな。」

 

ウルズラの家臣、特に能力の優れたものは年齢が高い。ウルズラより先に寿命を迎えるだろう。やはり年下の家臣は必要と言える。

 

「ベアトリーチェ、其方の友人で興味があるものが居れば呼ぶが良い。其方の紹介なら、学友として共に士官学校に通わせよう。」

 

ベアトリーチェは目を輝かせた。ウルズラは満足そうに頷く。これで良いのだ。女が家の為に利用される時代はまだ続くだろう。そうしたいものはそうすれば良い。ただ、せめてウルズラの国では自分で進む道を選んで欲しいと思う。それが自分が女王になった甲斐があるというものではないだろうか。彼女の国は、イリリカの様な閉鎖的な国ではないのだから。




お待たせしました。外伝はアラン以外の埋もれたキャラクターを取り上げる意図が強いのですが、クリスティアンを出せてホッとしています。

また本編ではあまり出せなかったルージの有能さも出せたのは良かったなと。ルージの欠点もただ漏れている気はしますが。

能力の高い低いではおそらくルージは比較的能力が高いのです。しかし方向性が間違うとそもそも目的を見出せません。ウルズラは何もしていないのですが、正しい方向性を決める役回りです。これは完済させるのと等しく重要な要素です。

今回は発案するウルズラ、問題を指摘する老臣、知恵を出すルージ、演技するベアトリーチェとオルフェウス、華を添えるアリスタ主従となりました。外伝らしい作品になったと思います。マシラは意外とオチ担当でしたね。

あいうえお順なので自作は「え」で始まります。こちらが難産で「え」を先に進めたらそちらの方が大変でした。多分また時間を要すると思います。
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