【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる) 作:高坂 源五郎
ベルタ王国統一記 16 ウルズラの追跡
ウルス・バルテン士爵は馬上の敵を切り捨てた。残った敵は退いていく。味方にも怪我人が出ており、追撃する余裕はない。敵味方互いにギリギリの戦いである。
追いつかれたのは昨夜の事だった。注意していたつもりだが、夜に入って煮炊きした、その闇夜の中の白い煙を察知されたらしい。
最初の襲撃は難なく撃退したが、不眠で警戒して兵が疲れた。馬車で交代で休ませているが士気は下がっている。数はこちらが多い。戦えば敵は逃げる。しかし戦って追い散らされるものの、追撃する余力がないと見てまた引き返してくる。
「このしつこさ、奴らは別働隊の応援を待っているな」
「ええ、この感じだと1日か2日の距離にいるのでしょうね。」
パルテン士爵は傍のプレル士爵と会話する。プレル士爵は金鉱山に来て日が浅い。だが実戦を経て2人は急速に親睦を深めていた。共に戦う軍人として互いに背中を預けられる程の関係性を構築している。
バルテン士爵は豪放磊落に見えて兵の指揮が愛情深い。前線に飛び込むタイプだが、バルテン士爵を慕うよく兵士がついてくるので結果を出す。技術より体力で押し切るように見えるが、実際は全て計算尽くの理性的な行動だった。見た目に似合わず見極めの上手い男なのである。
一方のプレル士爵は剣の名手だった。しかも気配を消すのが得意なので、敵の不意をつくのが上手い。ここ数回の戦闘で、パルテン士爵を囮にプレル士爵が少数の兵と敵の急所を削る、そんな戦い方が2人の間では確立されている。
「惜しいですね、それぞれもっと兵士を率いる立場なら面白い戦が出来そうですが。」
「今は兵の少なさを嘆いても始まらん。が、俺も同意見だ。いずれ大勢の兵を率いる立場になれば、とは思うな。」
敵はすぐに反転してくる。追撃をして痛打したいところだが、流石に兵の疲労も強いし、パルテン士爵も仕留め切る自信はない。
「では、今のうちに逃げませんか?」
「待て、先に負傷兵を馬車に乗せる。休憩してる者から手空きの者を馬に乗せよう。馬が行き渡ったら出発だ。」
兵の信頼の厚い男は、ここでも兵士達の対応を優先した。敵はまた来る。だからこそ簡単に崩れ去らないように兵の手綱は握らねばならない。バルテン士爵はパルテン士爵で兵を宥め、統率するのに必死だった。
(ギニーアルケミンはエルヴィンに託して先発させた。コリント卿が真に英雄足るべき存在なら、そろそろ救援の兵を寄越してくれても良い筈なのだがな。)
この敵は本気だ。鉱山に篭っては到底助からなかっただろう。
(ギニーアルケミンだけでも救えたのは幸いと言える。だが、良い話ばかりを聞かされていると英雄のあるべき姿に期待しすぎていかんな)
もし今本当にコリント卿が救援の兵を率いて登場したら、部下達は皆歓呼の声で出迎えるだろう。コリント卿が自分達が日々思い描く理想を体現する程のカリスマなら、バルテン士爵もコリント卿を救国の英雄として支持し、忠誠心を捧げる事になる筈だ。
(コリント卿が噂通りの男なのか、果たしてどうなるか、だな。)
ウルズラは騎兵を率いて敵部隊を追跡していた筈だった。だが、気がつくと地面に突っ伏して昏倒していた。馬から前に投げ出されそのまま地面に激突したらしい。
「敵の指揮官をこちらへ」
何者かがそう指示する声が聞こえる。落馬の衝撃でひしゃげた兜を脱がされる。血が溢れ出した。目も良く見えない。後ろに束ねた黒髪を持つようにしてウルズラの顔が敵の指揮官に晒される。
「あっ」
息を呑む女の声がした。兜は見栄えを重視した簡易的なものだった。顔から落ちたのだ、ウルズラの顔は酷いことになっているのかも知れない。ぬるぬると血が流れている気配はした。どこか切れているのだろう。顔中がきっと血だらけだ。鼻で呼吸がし辛い。この美貌と頭の回転だけがウルズラの武器なのだ。醜女になってしまえば、あの大嫌いなルージ王太子からさえ捨てられるだろう。
回復魔法が間に合うだろうか。後に残るような事がなければ良いのだが。いや、この雰囲気では傷跡は残るだろう。今は命ながらえることを優先すべき時かもしれない。恐ろしい未来に陥る恐怖に、涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「治療する、天幕に連れて行こう」
「そうね、この顔を部下の兵に晒させるのは気の毒だもの、エルナ」
「はい、リア様」
女の騎士が指示する声が遠くに聞こえる。
「(失敗した)」
ウルズラの心を後悔が苛む。
「(敵の伏兵になぜ気がつけなかったか)」
指揮官の自分が捕まったのだ。麾下の兵も被害を受けていると見て間違いないだろう。セシリオ王国でも屈指の精兵中の精兵である。それがここまで見事に打ち果たされるとは信じられなかった。敵将の名は何というのだろうか。彼女を出し抜く可能性がある男。それはこの近辺ではガンツを制したコリント卿しかあり得ないだろう。
少し意識を失っていたのだろう。傷口を洗われる刺激で覚醒した。天幕の中に運び込まれ、机のようなものにそっと仰向けに寝かされていた。スラリとした指揮官らしき男が近づいてきた。あれがコリント卿だろうか。
ウルズラはその時に大きな力の差を感じた。自分はこの男に何をされても、恐らく全く抵抗する事ができないだろう。
「犯すなら、犯せ。だが私は王家に連なる血筋、私を望むなら王家に連なる王女として扱え。我が夫となれば、王位も夢ではないぞ。」
コリント卿らしき人物は、何やら側近と顔を見合わせていたがゆっくりとウルズラに近づいてきた。
「まず治療を施す、話はそれからだ。それに、王女はもう間に合っているから。」
王女は間に合っている、どういう事だ?ベルタ王国には王女などいない筈だが。
不思議に思っている間にぶつぶつと何か詠唱するコリント卿らしき男の声が聞こえた。
「〈ヒール〉」
詠唱が止むと同時に温かな光に包まれる。魔法の発動が予想より圧倒的に早い。それにみるみる傷が塞がっていくのを感じる。
「(なんだ、この魔法は)」
普通の〈ヒール〉はもっと効きが弱い。あくまで自然治癒を早める魔法なのだ。それにこのような何もかも治すような魔法ではない。
「これはまるで、奇跡の力ではないか」
気がつくと思いが言葉に出ていた。先ほど話しにくかったのは恐らく血の塊以外に鼻も歯も酷く傷ついていたのだ。しかし、今はそれすらも見事に治ったようだった。
「良かった、綺麗な顔をしていたのね。あの顔のままならあんまりだったもの」
可愛らしい声の女性がウルズラに近づき顔を覗き込む。
「リア様、捕虜なのです。あまり近づかれては。」
女騎士がリアと呼ばれるコリント卿の側近を諌める声が聞こえる。妻を戦場に伴うとは信じ難い。そしてコリント卿が既婚者とも聞いていない。その点はウルズラが常に念入りに確認させる点である。調査でそんな重要な要素を漏れていたとは思えない。
恐らくリアというのはコリント卿の愛人だろう。側近は魔法使いの女性が多いとは聞いている。魔法を使える女性兵士を側近兼愛人にするのは間々ある事だった。
「治療には礼を言う、コリント卿でいいのかな。」
ウルズラは自分を見下ろす男に礼を言う。
「ああ、俺がアラン・コリント。ベルタ王国の辺境伯にして護国卿だ。」
コリント卿の手を借りて立たせて貰う。やはり天幕の中に連れ込まれたようだ。周囲を固めるのは女の兵士ばかりである。ウルズラを犯すにはその方が都合がいいのだろう。
「覚悟は出来ている。私はセシリオ王国のウルズラ・ドプナー女伯爵だ。降伏する。殺すなり犯すなり好きなようにしろ。だが兵はなるべく助けてやって欲しい。兵を助ける条件ならば私は抵抗しない。コリント卿に協力すると貴族の名に賭けて誓おう。それに私はセシリオ王国の王家の血筋を引く。粗略に扱うのではなく、私を妻として大事にする方がそちらも得な筈だ。」
「分かった、ウルズラ・ドプナー女伯爵。そちらの降伏を受け入れる。指示に従う限り君の安全は保証するし、君の兵には既に降伏を受け入れると伝えている。かなりの兵が君が捕えられたと知って降伏に応じている。君の身柄を今後どうするかについては、あーその、これから話し合いをしようか。」
「降伏の受け入れと我が兵への配慮に感謝する、コリント卿。」
鎧を脱がされたウルズラは大量の茶を飲まされ、トイレに連れて行かれる。身綺麗にしておけということだろうか。
「大量に出血していたから水分を取る方がいいわ、それに戦場にいるとトイレになかなか行かれないでしょう。」
リアが女騎士に指示をして取り計らってくれる。血を拭き取って貰い、清潔な衣服も与えられた。貴人用に清潔なトイレが用意されているとは素晴らしい。きっとコリント卿と愛人のリアの為に用意された物だろう。
人心地ついた。これからの事を考える。コリント卿の力は本物だろう。セシリオ王国の総力で勝てるかどうか。
「(無理、であろうな)」
護国卿であればセシリオ王国の侵攻に対して周辺貴族の動員が可能だ。加えて気配も悟らさずに主将であるウルズラの位置を正確に捕捉して強烈な攻撃を加えるあの強さである。セシリオ王国が勝つビジョンが思い浮かばない。ルージ王太子は征服戦争の為の軍備増強に熱心だが、実戦慣れしているという話は聞こえてこない。1:1では対抗出来ないだろう。
「(となれば、このまま取り入り仲間になるか)」
王家の血筋のウルズラの利用価値は高い筈だ。幸い領土もガンツには比較的近い。元々ルージ王太子は虫がすかない。ガンツ伯よりずっと若いのだが、優秀な英雄なら若い方が良い。
「(強い方につく、それしかない)」
「誰でも良いので部下を1人呼んで頂けまいか。話をして落ち着かせたい。私が無事と知れば、我が兵も動揺しないでしょう。」
ウルズラの希望は、リアにより叶えられる。
「良いでしょう、エルナ。誰か彼女の配下を1人連れて来て。」
「(やはり彼女はこの集団の中で一定の決定権を有している)」
「姫様、ご無事で。」
天幕内に導き入れられたのは古参兵の1人だった。無害そうに見えたのだろう。実際、忠義は厚いが才走った方ではない。だがこの状態ならそのような朴訥な兵士の方が安心できる。ウルズラは椅子に腰掛けたまま、テーブル越しに部下と対面した。
「アヒム、私は無事だ。皆にそう伝えてくれ。顔も治療して貰った、問題ないと伝えて欲しい。大事にして貰っている。私の為にも皆に大人しくするように伝えてくれ。特にロベルタを暴れさせないように。」
「はい,はい,かしこまりました。」
もう何か付け加える事はないだろうか?
「アヒム、私はコリント卿の庇護を受けその慈悲に縋って生きることになるだろう。皆にそう伝えよ」
アヒムはハッとした顔をしたが、すぐに強く頷いた。
「かしこまりました」
『我が庇護を受けて、慈悲に縋って生きよ』とはルージ王太子の殺し文句である。女を落とす時の口説き文句であり、『言いなりにならなければ酷い目に遭わせる』という最終警告のようにして使われる。ウルズラはその文句が大嫌いだった。そして家臣は皆その事を知っている。ここで使えばルージ王太子から離れ、コリント卿に本気で従うというウルズラの意図が伝わる筈だった。そこにはコリント卿との婚姻の可能性も示唆されている。以後はコリント卿の配下と無用な軋轢は生じにくくなるだろう。
アヒムが退室する。入れ替わりでコリント卿が入ってきた。ウルズラが身嗜みを整える間は席を外していたのだろう。
「(戦場では傲慢な男だが、私生活では礼儀正しい紳士なのだろうな)」
コリント卿の評価を修正する。礼を知る相手は、話し合いも通じるだろう。少し未来に希望を持てた。
「さて、ウルズラ・ドプナー女伯爵と言ったね。もう、落ち着いたかな?」
「ああ、人心地ついた」
「それは良かった。」
そう返すとコリント卿はウルズラの前の椅子に腰を下ろした。ウルズラとはテーブル越しに正対する形となる。
「それでは、どうしてセシリオ王国の君の兵がベルタ王国内でアマド国王陛下の金鉱山を守護する兵を襲っていたか教えてもらおうか。」
ウルズラは全て正直に告白した。自身の領土は知られていない未開拓地を突っ切る事で簡単にベルタ王国に到達できること。その為に、ルージ王太子よりセシリア王国とベルタ王国の境目の偵察と侵攻の事前準備を委ねられていること。金鉱山とその中に位置するアーティファクトについてはルージ王太子に存在を教えられていた事。ガンツでの騒乱を知った為に,国境の警戒が手薄になったのでアーティファクト強奪の賭けに出た事。
「ガンツの騒乱をどのようにして知ったのだ?」
「商業ギルドの通信網はベルタ王国内だけではない、大陸内を網羅している。近隣国の動向を知りたい領主に、めぼしい情報があれば報告に来る職員は珍しくない。予め褒賞を与えて手懐けておくものだ。」
コリント卿は「納得した」という様子で頷いてみせた。先を続けろという意味だと解釈してウルズラは話を進める。
先発隊を発進させ、確実を期す為に本隊を自分で率いたこと。金鉱山は既にもぬけのからだったが、ルージ王太子と決別する選択肢としてアーティファクト入手を決意したこと。
「ちょっと待ってくれ、ルージ王太子とはどのような間柄なのだ? 最初は随分と親しげな印象だったが」
「血筋の上では従兄弟にあたる。血縁としては親しい。私が王家の血筋というのも嘘ではない。父は国境の伯爵に叙せられた王弟であり、私はその娘で唯一の後継者にあたる。だが、ルージ王太子は何もかも自分の思い通りになって当然という傲岸な男だ。次期国王である以上、指示に従わない訳にはいかない。我が父母の亡き後は都合の良い駒として扱われている。だが、私は奴に話かけられる度に胃がムカムカとする。」
「なるほど、複雑な事情は理解した。それでアーティファクトを入手すると、ルージ王太子から独立できるのはどうしてだ?」
「アーティファクトのギニーアルケミンは国家の証明そのものだ。王家の血筋と組み合わさる事で支配の正当性を生む。つまり王家の血筋である私とギニーアルケミンが組みわされば、私と結婚する有力者は王を名乗る資格を得る。下剋上も思いのままだ。それは私が組む相手を自由に選べるという事を意味する。」
「君の目的はセシリオ王国での王位なのか?それともベルタ王国も含まれるのか?」
「いかな私でもルージの支配するセシリア王国の中で十分な支持を得るのは難しい。だから私としては、ベルタ王国内の然るべき有力者と結託するのが最善と判断していた。セシリオ王国の侵略の危機は現実のものだし私が生き証人でもある。セシリオ王国に対抗するベルタの貴族に私が手を貸せばルージ王太子に対抗できる戦力になるはずだ。」
「なるほど、状況は理解した。ベルタ王国での同盟相手を探しているのだな」
「違う、私が探しているのは私を女王にしてくれる婚姻相手だ。私を手に入れろ、上手くすればベルタ王国もセシリア王国も手に入るぞ。」
コリント卿は腕組みして考え込んでしまった。何がまずかったのだろうか。野心的な男なら即答するところだろう。ウルズラは自分でも自身を美人だと考えている。王族の血筋にこの美貌なのだ、これまで結婚を渋る男が居るなどと考えた事はなかった。
「遅くなりました」
その時、2人の娘が入室して来た。同じ顔をした娘が2人、双子だろうか。こんなにそっくりな双子は見た事がない。しかも2人とも美しかった。金髪に青い目、白い肌。しかも若い。ウルズラは自分の自信が打ち砕かれるのを感じる。こうして見るとリアも美しい娘だった。コリント卿のハーレムは質が高いらしい。自分が劣っているとは思わないが、割って入るのに障害が多いのは理解出来た。
「わ、私としてはコリント卿の妻の数を制限するつもりはないが。」
妥協するつもりはなかったが、妻の座を独占できない可能性は織り込む必要はありそうだった。
「ウルズラ、それでは君が求めるものは何だ。ルージ王太子から離れる事か?それとも女王になる事か?前者であれば手を組む事は可能だが、後者であれば話が折り合わないな。」
ふむ。女王の座は予約済みという事だろうか。或いは国王への忠誠の建前は崩さないとう事か。どちらも考えられた。横目でリアが緊張を解いたように息を吐くのが見える。
「私の希望は前者だ。女王になるのはルージから離れる手段でしかない。だが、ルージと対峙するには支配者である必要があり、支配者たるには後者が必須と考えている。王族である私の血がもたらす支配の正当性が、だ。」
「なるほど、理解した。君が俺につくのであれば、俺は君と部下や領民に庇護を与える事は出来る。」
「コリント卿の手腕が優れているのは分かった。しかし近道があるのにそれを通らないのは理解出来ない。私たちの結婚に何か障害があるのだろうか?」
リアが何か話したそうにしているが、女騎士に止められている。やはりリアはコリント卿の妻に近しい存在なのだろう。妻の前で婚姻の話を進められない、その事は考慮する必要がある。
「こちらにも計画がある。それをまだ味方でもない君に全て伝える訳にはいかない。」
「なるほど。」
「アラン、彼女を味方にする必要があるのかしら?」
遂にリアがこの話題に参加することを決めたようだ。この質問の答えはウルズラとしても聞いておきたい。コリント卿はどう回答するのだろうか?
「リア、俺達はまだ圧倒的に人手が足りない。セシリオ王国のルージ王太子とは相入れないのは分かっている。それに彼女は嘘はついているように見えないだろう。だからセシリオ王国の中でルージ王太子の事を良く知り、かつルージ王太子から離れたがっているウルズラの存在は好都合だ。兵の質も忠誠心も高い。こういう相手とは手を組みたい。」
「確かに、嘘はついていなさそうだけれど」
そう返すリアの語尾が小さくなる。もやもやと語尾を濁すのは、結婚の部分が気になっているのだろう。
「それではどうだろう?私達は手を組む。コリント卿はルージ王太子やその他の危機から私を保護する。私はコリント卿の同志となる。いや、コリント卿の庇護を受けるのだ。私は忠誠を誓おう。婚姻の事は必要となったらで構わない。コリント卿の求めがあれば私は応じる。必要な時に必要な選択肢を取れるように可能性を留保しておくという事でどうか。」
リアが口出しをしそうになったようだが、女騎士がリアの口出しを制止したようだった。
「良いだろう。俺達の目的はベルタ王国の統一に留まらない。セシリオ王国も平らげる。君が協力を惜しまないなら庇護を与える。ただし、条件がある。樹海に切り拓いた俺達の都市アレス、君も領民もそこに移り住む事が条件だ。セシリオ王国の中にいては流石に俺も君達を守り切る自信はないからな。」
「樹海か、悩ましいところだがルージのお膝元にどどまるよりはマシか。領民を飢えさせない。セシリオ王国を平らげた際は領地を復興するのに手を貸して貰う。その条件で従おう。」
「良いだろう。」
コリント卿が片手を差し出す。
「それは何だ?」
「俺の故郷の風習では、誓い合う時に手を握り合うんだ。」
「なるほど、ではこれで手を組むという事だな。」
コリント卿とウルズラは手を握りあった。
「俺は忠実なる同盟者のウルズラ・ドプナー女伯爵とその領民に庇護を与えると貴族の名にかけて誓う」
ウルズラも応える。
「同盟者であるコリント卿の庇護に対し、叛かず忠義を尽くすことを私は女神ルミナスに誓う。」
コリント卿とウルズラは手を握りあった。女神に誓いを立てたウルズラの身体が光る。その様子を、リアやエルナ、セリーナやシャロンはやや複雑そうな様子で眺めていた。