【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる)   作:高坂 源五郎

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Ⅰ ベルタ王国統一記 01話 【樹海戦闘編】内戦勃発

ベルタ王国統一記 1 内戦勃発

 

「艦長、ガンツに軍勢が到着しました。この後、アレスに侵攻して来ると推測されます。」

 

開拓民の移動を無事に終えたひと月足らずのその日、イーリスからとんでもない通信が入った。

 

(何だって?)

 

仮想ウインドウ上に画面が表示される。見慣れたガンツの城門前には朝日を浴びて兵士が集結していた。あの軍勢はどこの貴族だろうか?

 

紋章が拡大された。データベースと照合される。

 

(相手はガンツ伯か、人数はどれくらいだ?)

 

「総勢、約3,000名ですね」

 

(多いな。)

 

ガンツ伯はベルタ王国屈指の大貴族だ。しかしそれにしても数が多過ぎる。

 

(宰相と、カリファ伯の軍勢の動きはどうなっている?)

 

「宰相の領内に動きはありません。カリファ伯の軍勢と思われる800名がガンツへ向けて移動中です。こちらはガンツ到着まで約1週間です。」

 

宰相の私設軍は予定通り、エルヴィンが制止したらしい。しかし宰相の私設軍は400から多くて800という見立てだった。

 

(どうしてこんなに人数が食い違った?)

 

仮想ウインドウに地図が表示される。それをみて俺は瞬時に理解した、そうか移動距離か。

 

「ガンツ伯は地元の大貴族ですので、移動にそこまで時間がかかりません。近隣の貴族に声をかけて人数を集めたと推測されます。」

 

バールケ侯爵やカリファ伯の私兵は樹海への移動を考えた数なのだ。移動距離が長ければ長いほど、コストが増大する。だから領地が樹海から遠いと800名が限界というのがそもそものエルヴィンの読みだったのだろう。

 

地元の大貴族のガンツ伯が軍勢を招集した場合、動員可能な兵数の限界値に加えて参戦する貴族の数で軍が膨らむのだろう。

 

(厄介な数だな)

 

こちらの手勢はクランのメンバーの100人程度である。質は凌駕している自信はあったが、それでも30倍や40倍を相手にするのは厳しいだろう。

 

アレスに籠城するべきだろうか?

 

いや、流石にアレスは都市としてまだ完全に機能していない。攻められると雇った職人や開拓民が混乱するだろう。

 

(想定通り樹海で始末しよう、それしかないな)

 

「艦長、100名程度の人数でまともに衝突した場合、ドローンによる支援がなければ勝率は20%未満といったところです。」

 

(作戦は練る、セリーナ、シャロン。)

 

((はい))

 

(サテライトの100名で樹海で迎えつつ。その前提で状況を頭に入れて整理しておいてくれ。俺は会議を招集する。)

 

((分かりました))

 

(イーリス、アレス内で軍を招集した場合の見込み数を表示してくれ。サテライト以外にバックアップの人数がいる。ロベルトの先発隊に護衛役だった層がいる筈だ。正確な数が知りたい。冒険者も念の為、算出してくれ。アレスの防衛協力なら頼めるかもしれない)

 

「算出しました。」

 

仮装ウインドウ上の数字に目を走らせる。約780人か。悪くない数字だ。しかしこれはかなり無理をしている数字じゃないのか。

 

「イーリス、城内で重要度の高い職務に従事している者や冒険者は除外しよう。兵士に専念できる人数で頼む。今回は総力戦の想定でなくていい。」

 

「修正しました」

 

約430人か。先発隊の約1,100人の4割程度だとこんなところだろう。これでも無理をした数字のはずだ。アレスに移動した者全体で2,650名なのだ。サテライトと合わせて約540人。籠城する場合、イーリスも最低でもこの人数は必要と踏んでいるのだろう。

 

(3,000名の攻撃軍に対して500名強なら悪くない数字だな。アレスでの籠城も可能だろう。)

 

(我々のプランは籠城に変更しますか?)

 

セリーナからの質問が飛ぶ。

 

(いや、我々には救援予定がない。そうである以上、籠城は得策じゃない。作戦はあくまで樹海での迎撃だ。100人対3,000人でも指揮官を倒せば勝ちにできるんじゃないかな。)

 

(指揮官の狙い撃ちですね、了解です)

 

セリーナの了解が伝わる

 

イーリスとドローンの能力を駆使すれば、指揮官の特定は容易だろう。ドローンによるガンツ伯暗殺さえ可能なはずだ。ただ、指揮官だけを狙う斬首作戦は諸刃の剣である。今回は天佑ではなく、俺たちが実力で勝ったと敵味方に知らしめた上で敵軍を撤退に追い込む必要がある。

 

(イーリス、不測の事態が起きない限りドローンの役割を索敵と援護に限定する。これは命令だ。シャイニングスターのメンバーに危害が及びそうな場合はこの制限を解除する。イーリスの判断で索敵を行い、危険を阻止してくれ。ただし、なるべく目立たないように実行する事。何か質問は?)

 

「ありません、艦長」

 

 

主だった者を集めて会議を招集する。シャイニングスターの5名にサテライト各班のリーダー、ライスター卿、ロベルトといったいつもの顔ぶれだ。

 

「悪い知らせがある、ガンツ伯ユルゲンが約3,000名の兵を率いてこちらに向かっている」

 

会議室内にどよめきが響いた。

 

「俺としてはサテライトの100名を中心に迎撃部隊を編成して樹海で迎え撃つつもりだ。ただし籠城の備えも一応しておこう。ロベルト、先発隊1100人の中からアレスの防衛部隊を編成して欲しい。数はそうだな400名でどうだろう。」

 

「かしこまりました、アラン様。会議が終わり次第、急ぎ編成を行います。」

 

「総数は500名ですか、3,000名を相手に籠城してもなんとかなりますな」

 

「そうだな、ダルシム副官。ここは樹海で俺たちのホームグラウンドだ。魔物も多い。遠征軍もビクビクしながら進軍しているはずだ。奇襲をかけて敵の数を減らそうじゃないか。」

 

俺はイーリスと検討した作戦を披露した。

 

「長躯遠征した敵を一蹴してアレスに退く、十分可能なように思われます。」

 

内容を検討したダルシムが感想を漏らす。

 

「俺たちにはグローリアもいる。グローリアに腰を抜かしている間に、うまくいけばガンツ伯を討ち取れるかもしれないぞ」

 

「その時は一気にガンツまで攻め寄せますか」

 

班長達は戦意高揚のための軽口として受け取ったようで大いに盛り上がった。籠城前に威力偵察を行うのも常套手段ではあるので問題なく受け入れられる。

 

「それでアレス残留組だが、リアとロベルト頼めるか。」

 

「アラン、私も戦えるわ。どうして?」

 

「リアとロベルトには400名の人間の戦力化をお願いしたい。彼らをよく知るのはロベルトだし、彼らはリアの為に集まった人達だ。ここはリアに旗印になって俺達の帰る場所を守ってもらう必要があるんだよ。これはリアにしかできない事なんだ。」

 

ダルシムもうなずいている。近衛の出身者はリアの安全が気にかかるだろう。状況によって全員でガンツ伯を討つ展開になる今回、リアがいる事で指揮系統が乱れる可能性がある。それにリアに安全な場所にいて欲しいというのは、俺たち全員に共通する思いだった。

 

「クレリア様、アラン様はクレリア様の事を大事に思われて心配されているのです。」

 

ロベルトの口添えにリアもようやく首肯した。

 

「分かったわ、アラン」

 

リアも400名の人間とアレスを預かる責任をに思い至ったのだろう。

 

「ロベルトもリアの補佐を頼む。400人をリアの為に編成するのはロベルトにしか頼めない」

 

「はい、リア様の事お任せください。全力を尽くします。」

 

「我ら親子もぜひ参戦させてください」

 

ライスター卿が参加を申しでる。確かに彼の知識は貴重だ。相手と交渉する展開になれば一番必要な人材だし、敵部隊の編成などにも詳しいだろう。

 

「では、お二人には今回は私の相談役という形で側にいて頂きます。今回、バールケとの対戦まであるかは分かりませんがよろしいですね?」

 

「無論です、我らの剣をお役に立てたい。」

 

彼らとしてもここで俺たちが倒れると行き場をなくす。必死なのだろう。

 

「戦場で絶対とは言えませんが、私の近くに居られる限りは危害が及ばぬように全力でお守りします。」

 

そこで視線を全員に向ける。

 

「今回は、人が足りない。精鋭であるサテライトは全員参加してもらいたい。」

 

「はい、アラン様」

 

「エルナ、君も参加してくれるね?」

 

エルナはチラリとリアの顔を見て確認をしてからうなずく。

 

「アラン、ノリアン卿をよろしく頼む」

 

「リア、俺の力が及ぶ限りエルナも他の皆も守る事を名誉にかけて誓う。」

 

会議に参加する面々を眺める。リアとロベルトを除く全員が迎撃に出る作戦になっている。

 

「綺麗事に聞こえるかもしれないが誰一人欠ける事なく敵を討ち果たして戻ってこよう。俺はこのメンバーならそれが叶うと確信している。」

 

「「「「「はい」」」」」

 

出発の刻限を定めて、準備の為に散会となった。

 

 

(アラン、パルスライフルは持参しますか?)

 

(もちろんだ、危険があると判断したら躊躇なく使え)

 

こんな所で貴重な人材を失うわけにはいかない。兵の数がある程度拮抗するまでは使えるものは使っていく他ないだろう。

 

俺たちにとって幸いなことに、移動の為に馬の数が増えているので全員騎兵となった。騎兵は歩兵より強い。数の差が簡単に縮まる訳ではないが、機動力の違いは重要だろう。

 

セリーナに7班と8班、シャロンに9班と10班をつけて別行動とする。彼女達には予定地点を抑える為に先発してもらった。

 

サテライトは厳密には11班目が存在する事に気がついた。王都で救出したハインツの班がそれだ。これまでは体力回復と訓練に専念させていたので員数外の扱いだったが、もう復帰させて良いだろう。

 

班のメンバーとしては以前所属していたエルナが抜けて9人なので、臨時でエルヴィンの甥のユリアンを入れる。最初に考えた100人ではなく110人か。1割増えたな。ハインツは班長として今後は会議に出席させよう。

 

ユリアンは俺の近くで働くように命じられたらしいが、サテライトに配置ならば十分近いと言っていいだろう。ハインツの班は体力は万全でないと考慮して食料を運ぶ馬車の護衛とする。ライスター卿親子もここに配置した。

 

「ダルシム副官、準備は整ったかな?」

 

「アラン様、我ら一同準備が揃っております」

 

エルナと俺にサテライトが7班で70人。後は、馬車を輸送する御者が11名。先発した2班の42名を足しても125名。それがこの迎撃軍の全容だった。

 

「では行こうか、ダルシム副官」

 

「出陣!、開門!」

 

ダルシムの号令でアレスの正門が開く。サテライトが全員出陣するので、今日からはリアとロベルトの部下がアレス防衛の配置についているはずだ。

 

「みんなの無事を祈ってるわ」

 

リアに見送られながら、俺達はアレスを後にした。

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