【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる) 作:高坂 源五郎
ベルタ王国統一記 4 ガンツ駐留
ガンツ入りした俺達はクランの拠点を宿舎に定めた。拠点には4人部屋だけで28室あり112名は宿泊できる。11班だと110人。拠点改築の時には先を見越して余裕を見たつもりだったがギリギリだったな。4階には2人部屋もある。シャイニングスターのメンバーは元々そちらに部屋を割り当てているからなんとか全員収納可能だった。4人部屋を男女混合しない運用だと、現在の形で限界だ。
馬車を操作する御者の宿はカトルに別途手配させる。10人いたはずだが、4人はアレスに帰還させたので残りは6人。これくらいなら市中で問題なく宿泊できるはずだ。馬車は拠点前の広場に置いておけば良いだろう。
警戒も必要だな。
「ヴァルター、ケリー、2人の班は拠点周囲の警戒に専念してくれてくれ。ヴァルターが正面広場、ケリーが裏庭だ。今は捕虜がフラフラと外に出ていかないようにしよう。班の全員は必要ないから、適当に休憩させながら間違いが起こらないようにだけ頼む。」
(イーリス、敵軍と捕虜の動きを警戒して何か問題がありそうなら報告してくれ)
「了解です、艦長」
「さて、問題は捕虜か」
負傷兵は人道的な見地からも受け入れた。我が軍にヒールの使い手は3人いるし、怪我を負った身で魔物の襲撃をかわしながら近隣の街に辿り着けるとも思えない。足手纏いとして置き去りにされた可能性が高いだろう。
今回は負傷兵を捕虜として受け入れる事に双方納得して矛を納めあった形になっている。あちらとしても身内の命が助かるのなら、と引き上げた格好だ。
現在は食堂の机を端に寄せて、そこが野戦病院のような形として捕虜を運び込んでいる。優先度の高い負傷者にはセリーナとシャロンのヒールをかけてもらっている。人手が足りないようなら、俺も回復役として参加しないといけないだろう。
「セリーナ、捕虜の人数は何名いる?」
「137名です」
多いな。俺たちと大差ない、むしろ多いくらいいるじゃないか。部屋を割り当てて収納するわけにはいかないだろう。
「ダルシム副官、知恵を貸してほしい。捕虜を収容したいんだがセリーナが確認したところ137名いるようだ。」
ダルシムも腕組みして考える。
「通常、捕虜は城の中庭などに雑魚寝させますね。」
「やはり、それしかないか」
馬車から天幕を出して、建物前の広場に設置させよう。
「アラン、女性が63名もいるわ」
半数近くが女性か、多いな。いやむしろ男性が少なすぎないか。女性は軽傷者も投降させ、男性は多少の怪我だと同行させたか。
「回復は後で俺も手伝う。軽傷者以外の負傷兵は皆回復させよう。それで食堂を女性用の宿舎にする。雑魚寝になるが贅沢は言えないし、彼女達もその方が安心だろう。男性陣は、外の広場の天幕で寝泊まりさせる。」
先にトイレも用意する必要もあるな。拠点には裏庭がある。俺が土魔法の腕前を披露する他ないだろう。
「怪我を治すと良からぬ考えを持つものも出るだろう。武器や防具は改めて取り上げて物置に収納して見張を立てよう。ダルシム、エルナ、そちらを頼めるかな。ダルシムは男性の捕虜、エルナは女性の捕虜。それぞれ手伝いを募って武装解除を進めてくれ。」
「早速取りかかります」
「アラン、鎧を脱がせるとなると女性の兵士には何か服を与えた方が良いと思うのだけれど」
「エルナが判断して必要なものをカトルに調達させてくれ。支払いはこちらで持つ。必要なら男性用の衣服も手配させよう。女性の鎧は衣類が届いてから取り上げる形で構わない。」
「了解しました、アラン」
手配はざっとこんな所だろうか。今後の事があるから商業ギルドに顔を出さないといけないだろう。
魔石を握りしめて裏庭にトイレを設置する。男性用と女性用は離しておくほうがいいだろう。念の為、簡単な土壁を作成して簡単に行き来出来ないようにする。敷地の仕切りにも壁がある方がいいな。結局表にも回って土壁を構築する。お互いの安全確保のためにこれくらいはガンツ市民に許してもらおう。
ここを出てもそうそう行き場があると思えないが、ガンツも大きな街だ。俺たちの思いもよらない敵が潜んでいる可能性もある。それにガンツ伯の館は未占拠のままだった。あそこに立てこもられると厄介かもしれない。
ガンツ伯の館を占拠する案も出たが、イーリスの報告によるとロクな兵士は残っていない様子だった。市街戦の想定もしていないので放置するように指示を出している。ただ武器が揃っている筈なので、武装解除した捕虜が城兵やガンツ伯の館の兵と合流して再武装する警戒は必要だろう。
「アラン様、いえあの、閣下。お食事はどうしましょうか」
振り向くと拠点を任せているサリーさんがいた。よくこの喧騒の中を俺のところまで辿り着いたな。
「簡単なもので構いませんので、今夜は140名分用意できますか?」
「あの、140名分で足りますか?」
ああ、捕虜の分を計算していないと思われているのか。
「今日は捕虜の分だけの食事を用意してください。我々は交代で外に食べに出ます。」
食堂を捕虜に使わせる以上、その方が賢明だろう。
「分かりました」
サリーさんはどこかホッとした様子で従業員を指揮しに向かう。
やはり食堂をちゃんと使えないこの体制は無理がありそうだ。捕虜をいつまでも閉じ込めておけないし、負担もかかる。明日にでも対策を取る必要があるだろう。しかし今日のところは手配が間に合わないだろう。これでいくしかない。
「御者の宿の手配終わりました。もう移動させていいですか?」
ちょうど良いところにカトルが戻ってきた。
「カトル、良いところに来た。3つ頼みたい。御者はもう移動させて欲しい、食事は予算内で各自宿で取るようにしてくれ。拠点は人で溢れている」
「分かりました。」
「2点目だがセリーナに確認して捕虜用の衣類を頼む。鎧を脱がせると代わりに何か着せる物が必要になりそうだ。簡単なものでいい。男女ともに頼む。支払いはこちらで行う。」
「なるほど、古着で構いませんか」
「古着でいいと思う。3点目だ。拠点は俺達だけで使う形にしたい。捕虜の収容場所について商業ギルドのカリナさんに相談してきてくれ。多分安い宿に分散させる形になる。支払いはこちらで持つ。」
「捕虜を解き放つんですか?」
カトルは驚いている。
「要は俺たちの害にならなければいいんだ。ガンツ伯もいない、武器もないだとそうそう抵抗できないと思う。立ち去るならそれで構わないし、武装蜂起するようなら正面から打ち破るさ。むしろ、同じ宿舎でウロウロされる方が邪魔だろう。」
「そ、そんなものですか」
「抵抗するようなら相応の措置を取る。俺たちがそう出来ることはわかっている筈だ。今は寛大な措置をしてどうなるか見てみようじゃないか。いずれにしろ、宿に分散させるのは明日からだ、そうだな明日から3日間としよう。」
それだけあればカリファ伯の軍勢がどうなるかわかる筈だった。3日後の俺たちはアレス目指し敵中突破しているかもしれないし、カリファ伯が黙って捕虜を引き取って立ち去ってくれるかもしれない。
いや、やはりガンツは今後の計画に必須だ。どんな手段を使っても維持するべきだろう。
「男74名、女63名の計137人だ。大部屋に詰め込んで構わないが、男女は別の離れた宿にしてくれ。トラブルはごめんだ。宿の手配は商業ギルドのカリナさんに手助けしてもらうと割引が受けられる筈だ。」
「分かりました」
これでもう全て終わっただろうか?捕虜の代表には今後の予定を伝えておく方がいいだろう。食事の時に予定を伝えれば皆安堵するのではないか。
(セリーナ、シャロン、ヒール要員は足りているかな? ちょっと色々挨拶して回りたいんだが)
(こちらはひと段落しました。アランは優先する用事をどうぞ。)
(私たちのどちらかが同行しますか?)
(そうか、負担をかけてすまなかった。同行は必要ないから交代で休みをとってくれ。ただ、どちらかは必ず拠点にいて指揮が取れるようにしておいてくれ。拠点の食事は捕虜に回すから、後で食事を食べに行こう)
(了解)
「さて、ライスター卿、ハインツ班長、俺と同行してガンツの主要人物に会いに行きませんか?」
ハインツ班を護衛にする。ライスター卿息子のアベルを加えて総勢13名となった俺達は馬に乗る。まず、正門のギード隊長の元を訪れた。ハンスの班に臨時で入ったユリアンには護国卿の盾を持たせている。
「やあ、ギード隊長」
ギード隊長以下衛兵隊は、護国卿の盾の前に一斉に跪いた。流石に護国卿の威光は凄い。
「護国卿閣下」
馬から見下ろすとかなり低いな、声も張り上げないといけないし表情も読めない。
「誤解が生じないように確認しにきた。ガンツは王命があるまで、衛兵隊、冒険者ギルド、商業ギルドの三者の協議で運営される。個々の役割はこれまで通り。街の防衛についてのみ、護国卿である俺が指示を出す。俺の部下は街にとっての客人で、俺達は法を守るし何か必要なものがあれば対価を支払う。それでお互いの認識に相違ない筈だな?」
「はい、相違ありません。護国卿閣下」
「それは良かった。君たちの仕事の邪魔をするつもりはない。怪しい者がガンツに押し入ろうとした場合はこちらに連絡してくれ。そういうのは君たちの方が詳しいだろう。後は通常通りにしてくれて構わない。」
「閣下はその、捕虜を取られたと聞いたのですが、彼らが逃亡した場合はいかがでしょうか?」
顔を上げてギード隊長が質問を投げかけてくる。不安げな顔だ。捕虜の中にはガンツ伯の家中で高位の者もいるのだろう。ギード隊長の上司もいるとなると、色々ややこしいのは想像できる。
「護国卿の指示に従っていると伝えて欲しい。まぁ、こちらも捕虜であろうと拘束する意思はない。樹海の魔物から負傷者の保護をしたまでだ。ガンツから出る分には自由にさせていい。それなら上手くやれるんじゃないかな。」
「はい、それで問題ありません」
ギード隊長は見るからにホッとした様子だった。
「ガンツ伯を討ち果たしたコリント卿は、主君の仇です。解放した捕虜や衛兵の中にも付け狙うものが出るかもしれませんが。」
衛兵の1人が声を上げる。見るからに強面の男だった。
「それはそれで別に構わない。挑んでくる者がいれば討ち果たすだけだ。だがよく考えて欲しい。これは俺が仕掛けた話じゃない。」
俺は自分の話が衛兵に浸透するのを待って、しばし間をあけた。
「ガンツ伯は護国卿の任にある俺を襲い、反撃されて死んだ。これが全てだ。どちらが王国の敵か明白ではないかな。恨むなとは言わないが、ガンツ伯の軍勢を正面から打ち破った俺達に挑戦するのは賢明ではないと警告しておこう。こちらとしては、問題がなければ事を荒立てるつもりはない。」
強面の男はある種の感銘を受けた様子だった。それ以上、誰も発言しようとしない。俺は見渡して異論のありそうな者がいないことを確認する。
「では、今の内容を冒険者ギルドと商業ギルドにも念押ししておく。頼んだぞ。」
おっと、ハインツ班長とライスター卿を紹介するのを忘れていた。
「おっと、忘れる所だった。こちらはハインツ班長。サテライト11人目の班長だ。覚えておいてくれ。それからこちらは同志のヴェルナー•ライスター卿だ。名前は聞いた事があるだろう、先代の宰相を務められた方だ。」
俺の言葉に、衛兵がひれ伏す。おいおい、護国卿より恐れ入ってるんじゃないだろうか。まぁ先代の宰相と聞くとそうなるか。
「我々のそうだな、本気が伝われば幸いだ。こちらの邪魔をしなければ君たちを敵視はしない。それではな。」
潮時と判断した、そろそろ冒険者ギルドに移動しよう。
「私の身元を明かして良いのですか?」
商業ギルドに向かって並んで馬を走らせると、隣に馬を寄せてライスター卿が質問してきた。
「ガンツはバールケの力の及ばぬ都市となりました。ライスター卿に存分に働いて頂く為にも、積極的に身元を明かして同志を募っていきましょう。」
あちらが公然と攻めてきたのだ。ガンツを実行支配した今、ライスター卿の存在を隠す意味はもうないだろう。むしろ昨日今日の反応を見る限り、ライスター卿の名声を利用して仲間を増やせないかと俺は考え始めていた。
「なるほど、そうですか。これほど早く顔と本名を晒して生きれるようになると思わなかった。」
ライスター卿が感慨に耽る間に、俺達は冒険者ギルドに到着した。
「護国卿閣下の来訪である」
馬を降りると、盾を持ったユリアンを引き連れたハインツ班長が受付へ突き進む。2回目になるとだいぶ呼吸が飲み込めたようだ。元々、ハインツ班長は近衛だけにこのような王の権威を誇示する場面に慣れているのだろう。
ギルド長のケヴィンが飛び出してきた。
「これは護国卿閣下、お出迎え出来ず申し訳ありません。」
俺も馬を降りて手綱をサテライトの1人に渡すと、手を軽く振って挨拶をする。
「気にしないでくれ、先ぶれを出さなかったのだ、こちらが悪い」
「それでは、貴賓室にお通りを」
大勢では貴賓室には入り切らないだろうな。
「俺とライスター卿、ハインツ班長の3名でいい。後は馬と共に待機してくれ。」
ケヴィンに案内されて貴賓室に向かう。
「それでご来訪の目的は?」
「合意した内容について諸々の確認だ。衛兵隊とも話をしてきたが、王命があるまでガンツは衛兵隊、冒険者ギルド、商業ギルドの3者の管理下に置く。君たちはこれまで通り普通にそれぞれの役割をこなしてくれればいい。街の防衛についてのみ、護国卿である俺が指示を出す。部下に法は守らせるし、必要なものに対して正当な対価は支払う。民や冒険者の出入りはこれまで通り自由だが、街を攻められると中に入れない可能性はある。死体漁りで魔物も活発化しているから、城門の外に出るのはあまりおすすめ出来ないな。ここまでで何か質問はあるか?」
「何もございません、護国卿閣下の指示に従います」
「商業ギルドにはこの後で話をしに行くが、ガンツを離れる者がそれなりに出るだろうから、護衛の依頼を優先的に受けてもらう形になるだろう。冒険者が食うに困る事態は我々も望んでいない。もしそうなりそうな場合はこちらに相談してほしい。簡単な依頼を出す事を検討しよう。ただ、おそらく長くても数日でこの状況は終わるはずだ。」
「寛大なお言葉、ありがとうございます、閣下。」
「最後に、こちらはサテライト11班のハインツ班長と先の宰相を務められたヴェルナー•ライスター卿だ。今後、やり取りしてもらう可能性があるから見知っておいて欲しい。ライスター卿から何か依頼があれば、護国卿である俺の頼みと思ってくれ。」
「こ、これはご尊顔を拝し、恐悦至極です」
冒険者ギルドの一同が平伏する。可哀想に、冒険者ギルドの代表のケヴィンも流石に元宰相と顔合わせすると恐れ慄くんだな。
「何かあれば拠点に使いをよこしてくれ。では次は商業ギルドに行きましょうか、ライスター卿。」
「はい、コリント卿」
商業ギルドに顔を出す。中に入るのは俺とハインツ班長にライスター卿親子と、盾を持たせたユリアンだけだ。
「控えよ、護国卿閣下の来訪である」
堂に行った様子でハインツ班長が周囲を睥睨しながら商業ギルドの受付に乗り込む。奥から慌ててカリナさんが飛び出してきた。
「アラン様、いいえ、護国卿閣下。」
「突然の来訪ですまないな、ギルド長のサイラスはいるかな。」
「すぐに呼んでまいります、貴賓室でお待ちを。」
良かった、サイラスさんはすぐ近くにいたようだ。貴賓室に通され着座してサイラスさんを待つ。カリナさんがお茶を出してくれるが、いつもと違った雰囲気にちょっと緊張した様子だった。
「これはこれはコリント卿、いや護国卿閣下。よくお越しくださいました」
サイラスさんが揉み手しながら現れた。ハインツ班長がサイラスさんをどやしつけようとするのを目で制する。
「ギルド長、紹介しよう。サテライトの11人目の班長のハインツ班長と、先の宰相のヴェルナー•ライスター卿だ。」
「げぇ」
ここまで驚愕の表情を浮かべるサイラスさんを見る機会などそうないだろう。
「さて、今日来たのは他でもない。先日の取り決めについての確認だ。」
「はい。ガンツの通常業務は、商業ギルド、冒険者ギルド、衛兵隊に任せていただけるお話でしたね。」
「その通りだ。ただし、王命が出るまでだな。ガンツ伯の後継者が決まれば、ガンツの統治権はそちらに引き継がれる。まぁ、王が裁定を下すのに時間はかかると思う。それまでの繋ぎだな。後は街の防衛については俺が指示を出す。」
「はい、承っております。」
「俺は無論、部下にも無法な真似はさせない。法を守り、欲しい物があれば正当な代価を支払う。俺達は客人であると弁えているので、街の者が普段通りの生活を送れるようにギルドが努めてほしい。何か問題はあるかな?」
「ご配慮感謝致します。何も問題ありません。」
「ガンツ伯の遺体の確認は済んだかな?」
「家令のデニス様はじめ町の主だった者が遺体を確認しました。商業ギルドは義務がありますので、王都へ訃報をお知らせしています。」
そうか、商業ギルドにはアーティファクトによる各地のギルド間の通信設備があったな。
「差し支えなければ通信内容を教えて貰えないだろうか」
「はい、護国卿閣下のお求めとあらば」
サイラスさんがカリナさんにうなずく。カリナさんが紙に書かれた通信文を渡してくれた。
『ガンツ伯がコリント男爵領に3,000の兵で侵攻し、敗死。ガンツは護国卿の庇護の元、後継者の襲爵まで衛兵隊とギルドの管理下に置かれる。』
記載内容は完璧に事実に則していた。
「(先にサイラスさん達と手打ちしておいて良かったな)
商業ギルドの保身込みだとは思うが、中立的な報告をしてくれたのはやはり俺たちへの好意や期待はそれなりにあるのだろう。ライスター卿に通信文を手渡し回覧する。
「それで捕虜の引き受け先は候補がありそうですか?」
「はい、宿は手配可能です。お困りのようですので、今夜からでも受け入れは可能です。」
「今夜から、それは助かりますね。捕虜の代表とは戻り次第話しますので、女性だけでも宿に移動させるかもしれません。その際は使いを出せば良いですが?」
「はい。この時間ですともう料理の手配は間に合いませんが受け入れの体制はとらせています。戻られてすぐに使いを頂ければ、今夜からで大丈夫です。」
「助かります。」
トイレやテントの手配も無駄になってしまったかな。いや、これは捕虜の出方次第だろう。
「その先に必要な場合に備えて、兵舎として使える物件は探させてています。」
「兵舎か。確かに必要になりそうですね。手配頂けると助かります。」
「はい、護国卿閣下の為に」
俺の言葉にカリナさんも嬉しそうだ。ガンツの街として、俺を後押ししようという意志を感じるな。
「ではよろしく頼む。他になければこれくらいで。」
「その、皆様をお招きして一度宴席をと考えていますが。」
サイラスさんもそんなに気を遣わなくて良いのに。
「今は捕虜もいて少し立て込んでいます。少し落ち着いたら、是非。」
「閣下のご来訪をお待ちしてあります」
サイラスさんカリナさんに見送られながら、俺達は商業ギルドを後にした。
「コリント卿はあのギルドの女性と親し気ですな」
ライスター卿に話しかけられる。確かにカリナさんは話し易いので素の口調が出ていた気がする。
「俺は冒険者上がりなので、一緒に旅をした間柄だとついあんな口調になってしまうんですよ。以前にサイラスさんの娘の護衛をした事がありましてね。」
「ほう、それでですか。彼女には随分と慕われているのですな。」
ライスター卿にはカリナさんを上手く手懐けているような印象を持たれたようだった。