【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる)   作:高坂 源五郎

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Ⅳ 対バクス戦争の終結 83話 【侵略篇④】 惑星ランセルの戦い

Ⅳ 対バクス戦争の終結 83話 【侵略篇④】 惑星ランセルの戦い

 

トレーダー星系の惑星ランセルには、宙兵隊が展開していた。彼らは星系の駐留艦隊の生き残りである。バグス艦隊の接近に対応して惑星に宙兵を予め展開するのは艦隊の標準手順(セオリー)ではない。だが押し寄せたバグス艦隊と人類艦隊の戦力差は隔絶していた。

 

『艦隊がバグスを喰い止める間に、惑星の防衛態勢を構築せよ』

 

艦隊司令のその決断により、宙兵隊は持てる限りの地上装備と共に惑星防衛の為に展開させられた。駐留艦隊の戦力ではバグスの降下を完全に防ぎきれないのが確定した時、人類はバグスの降下阻止を断念したのだ。

 

艦隊司令の決断は宙兵隊には吉と出た。人類側もそれなりの艦隊戦力は保持していた筈なのだが、実際に交戦すると不可解な程に脆かったのだ。駐留艦隊は数で勝るバグス艦隊の攻勢の前に瞬時に溶けた。

 

駐留艦隊が全滅後に宙兵達が生き残れたのは僥倖だった。ただ、艦から持ち出せた武装だけではバグスの地上侵略軍との戦力差は絶望的だった。宙兵隊は惑星の政府に要請されるまま地表でのバグスの迎撃任務にあたった。

 

状況が変わったのは駐留艦隊が壊滅した翌日である。この星系から出発した別の人類の艦隊が到着したのだ。彼らもギャラクシー級戦艦を欠いた悲惨な艦隊構成だったが、それでもバグスの侵略艦隊をあっという間に殲滅してみせた。

 

ただ、良い知らせもそれまでだった。

 

『艦隊はトレーダー背景に残留する事は出来ません。支援として軌道爆撃を実施しますのて、当該地域の住民は退避してください。』

 

与えられた時間は、着弾するまでの数分しかなかった。それは交戦中の宙兵隊が上陸艇(エアシップ)に飛び乗って離脱出来るギリギリの時間的な猶予だった。

 

 

 

「俺たちまで殺す気か。」

 

第一小隊長のシレン中尉は惑星に降下した宙兵隊に所属している。軌道爆撃の警告を受けて慌てて上陸艇(エアシップ)に飛び乗ってから、散々苦情を申し立てたが効き目はなかった。シレン中尉も艦隊が好意でしてくれた軌道爆撃だとは理解している。そもそもバグスの占領地域で民間人がまともに生き延びられるはずがない。

 

軌道爆撃は予定通りに実行された。艦隊を喪失したバグスに対抗手段はなく、惑星に降下したバグスの戦力の九割以上が消失した。少なからぬ人類も犠牲になったが、軌道爆撃が無ければ今頃この惑星はバグスに完全に制圧されていただろう。

 

一時的にせよトレーダー星系からバグスの艦隊は消滅した。惑星ランセルに残された敵は、地下に潜んで爆撃をやり過ごした僅かなバグスのみである。生き残った者は自身の幸運を喜んだ。そして惑星住民の脅威を排除する為、地下のバグスの掃討作戦が実行される事となった。

 

 

 

「第一小隊、俺に続け!」

 

掛け声と共にパワードスーツを装着した小隊長のシレン中尉が上陸艇(エアシップ)から飛び出すと、部下の宙兵が後に続いた。バグスの地下基地がある地点を目指して上陸艇(エアシップ)からパワードスーツを着用した宙兵隊が続々と空挺降下する。

 

地上車で現地に先着した民兵集団が、RK73突撃銃を振り回して安全な陣地に降下する宙兵を誘導しようと合図していた。

 

(シレン中尉、地元の民兵とは友好的にしたまえ。今日の宿も飯も彼らに頼ることになるからな。)

 

音もなくゆったりとパラシュート降下する第一小隊に対して、中隊長のリックマン少佐から指示が飛ぶ。第一小隊直属の第一中隊長だが、今は大隊長代理を務めていた。

 

大隊長となれば本来は中佐待遇である。だが艦隊が全滅した結果、惑星用AIのみでまともな艦載AIがないトレーダー星系では昇進人事もまともに反映されないのだ。惑星AIに記録はされているが、然るべき軍艦がトレーダー星系に訪れるまでは処理待ちである。

 

(了解しました、リックマン少佐。)

 

シレン中尉は降下しながら着陸予定地点を素早く確認した。ナノムの説明では、どうやら地表のすぐ下に鉄の鉱脈が存在し深く掘れない場所らしい。仮想表示される地下の鉱脈の存在に、地下からバグスに不意打ちされる懸念がないと判断する。

 

(各自、マーカーの地点に集合!)

 

軽く逆噴射を掛けながら上陸艇(エアシップ)から無事に着地すると、降り立った他の部下に通達を出す。友軍との合流を最優先とした。降下した宙兵に挨拶しようと、地上車に乗った民兵集団が近寄ってくる。

 

「よう、俺は民兵を指揮してる。サンダースと呼んでくれ。アンタがリックマン少佐か?」

 

RK73突撃銃を掲げてこちらに挨拶しているのは、兵士と思えぬほど恰幅の良い中年男性だった。下腹が突き出て、サングラスと帽子を被っている。そろそろ子育てがひと段落したような年代で、部下達も似たような年格好である。服装がバラバラなので、戦場には不釣り合いに見えてしまう。

 

仮想表示では“地上軍名誉大佐”として表示される目の前の人物は、暦とした軍人ではない。バグスの襲撃に備えて結成された民兵集団の代表である。彼らは地元のロータリークラブを構成する民間の人材だった。

 

「おいおい、肉屋さんよ。アンタの名前はサンダースじゃないだろう。」

 

「良いんだよ、クラファン。サンダースは俺の民兵隊での通り名なんだからな。こういうのは気分が大事なんだ。」

 

バグスを前にして民兵達はじゃれ合いとも言える会話を展開している。規律もゆるければ、武装もバラバラだった。RK73突撃銃やパルスライフルがあればまだ良い方で、中には農業用と思しき駆除用の火炎放射器を装備している者もいた。

 

“名誉大佐”に率いられた民兵集団というのは宙兵隊からすると、地元の名士のお遊びの役割でしかない。本物の軍隊とは比較にならないが、今回は総力戦である。そもそも上陸艇(エアシップ)で運べる兵数には限界がある。バグスの残存戦力が不明な以上、猫の手も借りたいのが実情だった。

 

「自分は宙兵隊の第一小隊長のシレン中尉です。よろしくお願いします。大隊長のリックマン少佐は上陸艇(エアシップ)から指揮を取られます。」

 

「なるほど、上陸艇(エアシップ)はここに降ろさないのか?」

 

サンダースが指で天を指しながら問う。どう連携を取るかが気になっているのだろう。

 

上陸艇(エアシップ)は虎の子の航空戦力です。まず爆撃を行い、その後で我々パワードスーツを着用した兵で地上を制圧します。」

 

シレン中尉とリックマン名誉大佐は互いの部下達を交えて手早く情報を交換し合った。上陸艇(エアシップ)は軌道爆撃で稼働機体が激減していた。衝撃に耐えきれず破損したのだ。復旧は試みているが、今のところは乗ってきた機体が稼働する最後の一機である。

 

「ここだ、こここそが敵の最大の拠点だ。部下が犠牲を払いながらも包囲を完了した。」

 

サンダース名誉大佐により指し示された地図上の一点を、シレン中尉は帯同した偵察ドローンに偵察させる。問題の場所は牧草地らしく、今立っている地点より遥かに土が柔らかい。簡単に地中に潜り込めそうで、なんともバクスが好みそうな場所だった。

 

旋回するドローンのセンサーも地中に潜むバグスの影を多数捉える。間違いなくバグスの方が戦闘員の数が多い。人類の貴重な戦力を的確に結集しないと、バグスの抵抗を打ち破れないだろう。

 

(リックマン少佐、地元の指揮官が指定したポイントからドローンがバグスの居場所を特定しました。)

 

(該当エリアをこちらでも確認した。地中貫通爆弾(バンカーバスター)を撃ち込むぞ。民兵達が近寄らないように後退させろ。)

 

(了解しました)

 

民兵集団は当然ながらナノムさえ注入されていない。仮想表示による情報共有が出来ないから、声で指示して交代させる必要がある。シレン中尉は素早く地図上に机に備え付けの赤ペンで線を引いた。

 

「サンダース大佐、これが爆撃予定範囲です。このペンの範囲からそちらの部下を遠ざけてください。」

 

サンダースとクラファンは地図を見てしばし唸っていた。どうやら民兵の一部が被害が予想される箇所にいるらしい。

 

「クラファン、やはりザリンスキーの隊は後退させろ。」

 

サンダースがザリンスキーの隊の地図上の位置を指先でトントンと示しながら後退を指示する。サンダースの言葉に頷いたクラファンが、ザリンスキーの隊に連絡をとり始める。

 

「サンダース、後退すると包囲網が緩む事をザリンスキーが心配している。遠くなるとバグスを火炎放射器で狙えなくなる。RK73突撃銃だと効率が悪いぞ、地中から飛び出すバグスを抑えきれない。」

 

「奴らを根絶やしにするチャンスなんだ、良いから後退させろ。ザリンスキーの隊は一番優秀な男だ、死なれる訳にはいかん。」

 

サンダースとクラファンは暫し押し問答をしていた。時間が勿体無いとシレン中尉が割って入る。

 

「宙兵隊を包囲陣に参加させ、火力を増強しましょう。防御の優れたパワードスーツであれば、地中貫通爆弾(バンカーバスター)の予定地点により接近出来ます。サンダーボルトSB-10(ディスラプター)なら射程も長い。」

 

「それは助かる。おい、クラファン。」

 

頷くクラファンがザリンスキーとの交信を再開する。上手く話がついたようでインカムを外してこちらに向き直った。

 

「それでザリンスキーが了解した。宙兵隊が配置につき次第、後退を開始するそうだ。」

 

彼らは素早く兵を再配置する。その布陣は上空で待機する上陸艇(エアシップ)のリックマン少佐から見ても満足できる出来栄えだった。

 

包囲網は少し広がったが、宙兵と民兵が相互支援する形に改まる。宙兵隊は最低でもサンダーボルトSB-10(ディスラプター)を装備している。パワードスーツなら生身より少し踏み込んだ地点に配置できる。バグスを相手に遅れを取ることはない筈だった。

 

(・・・では、開始するぞ)

 

リックマン少佐から通信が入る。仮想で表示される数字をシレン中尉が声に出して伝達する。民兵達の不安を鎮める知恵だった。

 

「3、2、1、着弾!」

 

牧草地に地中貫通爆弾(バンカーバスター)が間隔をおいて何本も突き刺さる。土煙を挙げる地中貫通爆弾(バンカーバスター)は地上では土煙を巻き起こすだけだが、その一瞬後に地中では大爆発が生じていた。爆発による振動が地表に伝わる事で、地中貫通爆弾(バンカーバスター)が確実に作用したと分かるようになっていた。

 

「警戒しろ、生き残りが飛び出して来るぞ!」

 

シレン中尉の増幅された聴覚は重機関銃の咆哮のような重い振動音の接近を捉えていた。

 

「伏せろ、伏せろ。姿勢を低くするんだ。」

 

シレン中尉は横に立つサンダースを突き飛ばした。パワードスーツを着ていると加減が難しいが、倒れ方から見てそう酷くは力を入れていないだろう。サンダースは突き出した腹から着地して、うっと呻いた。クラファンがその様子を見て着席しながら身を屈める。

 

そのクラファンの頭上を重量物が掠め飛んだ。押し流される空気の流れに触れてクラファンがヒィっと悲鳴を上げる。

 

「ビートル型バグスだ、伏せろ!」

 

勇敢にも民兵の一人がバグスと聞いてRK73突撃銃を構える。接近する敵を迎え撃とうというのだ。RK73突撃銃が迫り来る黒い物体に向けて放たれる。炸裂弾は大半が宙に消えた。僅かな命中弾では飛翔するバグスは止まらない。

 

「うわぁあああ!」

 

ヤケになった民兵がRK73突撃銃を乱射する。それは飛翔するビートル型のバグスを誘き寄せる餌でしかない。RK73突撃銃では相当弾丸を集弾させないと相手の装甲に阻まれて効果がないのだ。

 

地上約二メートル、嵩張るバグスの巨体を考慮すればちょうど人の頭が存在する位置を飛翔するバグスが駆け抜ける事になる。ビートル型バグスの角に頭部を引き抜かれてRK73突撃銃を乱射した民兵は絶命した。

 

「・・・あれがビートル型の突撃飛翔か。」

 

地にへたり込んだクラファンが惚けたようにいう。ビートル型のバグスには羽根がある。その羽根はバグスの巨大を支える為に重機関銃のような轟音を奏でる。重量のある身体をぶつけてくるのだ。人に当たれば痛いでは済まない。

 

ツノも突き出ているから、生身で触れればまず一撃で戦闘不能になる。肉体が残れば良い方で、バラバラの肉片にされる事も珍しくない。人の集団に飛び込んで砕いた肉体を地に降りた奴らは貪り食うのである。

 

「各自サンダーボルトSB-10(ディスラプター)を使え。確実に仕留めろ。」

 

指示を出したシレン中尉は既に応射を始めている。ナノムによって知覚が強化され、命中すれば確実に敵を吹き飛ばすサンダーボルトSB-10(ディスラプター)を装備した宙兵にとって飛翔するビートル型も良い的である。だがパワードスーツとて、あの威力でぶつかられたら死なないまでも無傷では済まない。

 

重い重低音がシレン中尉の頭上に響く。宙兵達がサンダーボルトSB-10(ディスラプター)の火線を集中してバグスを叩き落とす。翼を灼かれたバグスは落下する。そこを火炎放射器を抱えた民兵が駆けつけて着火する。

 

「おい、危ないから下がれ。羽根がなくてもビートルは凶悪だぞ。」

 

思わす声に出して制止しようとしたシレン中尉に、クラファンが『大丈夫だ』と引き留める。

 

「あれはバグスに火をつけているんじゃない。バグスを炎で巻いて、呼吸できないようにしているのさ。」

 

「バグスの気門を塞いでいるというのか?」

 

クラファンは頷いて見せた。宙兵が習うのは、バグスは口呼吸しないという事実である。人と違って頭部を破壊してもそれだけではバグスは退治できない。気門を使って呼吸が続くので、エネルギーがある限り生き続ける。なんなら破壊された頭部を再生して見せた個体さえあるという噂があった。

 

バグスは大火力で腹をぶち抜け、というのが宙兵隊の教えである。相手に勝る火力で叩き潰すのが宙兵の流儀なのだ。だからこそこのような搦手の存在は盲点だったといえる。

 

「バクスもあれで体の仕組みは人に近い部分がある。胸と腹にある気門を全て覆えばすぐに窒息する。検証済みだ。」

 

炎は空気中の酸素を消費する。炎で巻かれればバグスの表面の油や皮は焼ける。炙り続ければ炎が酸素を消費するので、バグスはたちまち呼吸出来なくなるという話だった。

 

炎に巻かれてジタバタと脚をバタつかせてもがいていたバグスが動かなくなる。数々の兆候からシレン中尉のナノムがそのバグスを死亡判定とする。

 

「確かに、死んだようだ。」

 

「だろう?だが、たまに蘇生したり死んだフリする事もあるからな。よく炙っておかなくちゃならねえ。」

 

クラファンが合図すると、民兵が火炎放射器の燃料を直接バグスの体に振りかけた。民兵が飛び退くとクラファンがすかさず自身の火炎放射器でバグスの死体に着火する。

 

「こうしておけば安心さ。」

 

「こんな倒し方があるとはな。」

 

「俺達にはサンダーボルトSB-10(ディスラプター)のような効果的な武器はない。RK73突撃銃だけじゃ不安がある。バグスに勝つには頭を使わないとな。」

 

クラファンはコツコツと自分の頭を指してみせた。どこからどう見てもくたびれた中年男にしか見えないが、見かけによらず頭が良い人物なのだろう。

 

「おい、何やってる。上陸艇(エアシップ)にバグスが群がっているぞ。」

 

シレン中尉はサンダースに肩口を掴まれ、振り返る。そしてサンダースが指で指す方向を見上げると、多数の重装虫兵が上陸艇(エアシップ)に向けて突撃飛翔を敢行していた。

 

「くそっ」

 

宙兵がサンダーボルトSB-10(ディスラプター)を構えると応射を始める。上陸艇(エアシップ)地中貫通爆弾(バンカーバスター)発射を受けて味方を支援しようと降下していたのだろう。その隙をつかれたのだ。

 

(リックマン少佐、逃げてください。シレン中尉です。飛翔するバグスが多数そちらに接近しています。)

 

(・・・早く機体を上昇させろ。高高度に逃げるんだ!)

 

リックマン少佐の悲鳴に似た指示が漏れ伝わる。上陸艇(エアシップ)に突撃をかけるバグスの肉体それ自体が武器だが、流石に上陸艇(エアシップ)相手だと分が悪く生身のバグスは弾け飛ぶ。

 

だが、バグスにも火力の備えはある。突撃飛翔で体当たりをかけるだけでなく、同時に上陸艇(エアシップ)の装甲に火力を浴びせて溶かしていく。

 

(リックマン少佐、地上からサンダーボルトSB-10(ディスラプター)で支援します。降下して可能なら着地させてください。)

 

上陸艇(エアシップ)はシレン中尉の願い虚しく高高度に逃れようとする。高度が上がれば地上からの援護は届かない。射程の問題もあるが命中精度が落ちるのだ。地上からの応射を恐れずに突き進むバグスがより行動の自由を得る。

 

上陸艇(エアシップ)のハッチが開き、中から宙兵が飛び出す。内部侵入され始めたので『外で戦え』という指示が出たのだろう。上陸艇(エアシップ)が高高度に逃れたのは、パラシュート降下させる安全距離を保つ為であるにも違いない。

 

しかしパラシュート降下する宙兵など羽根のあるバグスの良い標的でしかない。空中は地獄に変わった。パワードスーツのある者はまだ良いが、全員がパワードスーツを着用していた訳ではない。生身の兵から先にバグスの餌食となっていく。

 

「・・・ありゃ、もう持たないな。」

 

サンダースがぽつりとつぶやく。国宙兵を逃す為に開いたハッチからバグスが続々と内部に突入していく。上陸艇(エアシップ)の内部では当然サンダーボルトSB-10(ディスラプター)を構えた宙兵が待ち構えていた筈だ。

 

しかし相打ちを狙って突撃飛翔するビートル型のバグスに、パワードスーツとはいえどこまで対抗できるのだろうか。上陸艇(エアシップ)に続々とバグスが飛び込んでいく。その数はとてもサンダーボルトSB-10(ディスラプター)で処理できるように見えなかった。

 

(リックマン少佐、上陸艇(エアシップ)を捨てて脱出してください。低高度ならこちらの支援が届きます。)

 

ようやくシレン中尉の声が届いたようで、上陸艇(エアシップ)はグングンと高度を下げていた。上陸艇(エアシップ)に群がるバグスにサンダーボルトSB-10(ディスラプター)の火線が届き始める。民兵もRK73突撃銃の発砲を開始した。

 

上陸艇(エアシップ)は助かるかもしれない。全員がそんな淡い期待を抱いたその時である。

 

(我々は敵の中枢に特攻する。シレン中尉、後を頼んだぞ)

 

高度を下げた上陸艇(エアシップ)はバグスの地下基地目掛けて特攻を開始した。

 

「リックマン少佐は上陸艇(エアシップ)で特攻をかける気だ。部下を下がらせないと巻き込まれるぞ。」

 

「「なんだって!?」」

 

シレン中尉の声にサンダースとクラファンが民兵を慌てて退避させる。地中貫通爆弾(バンカーバスター)の爆破半径より間違いなく被害範囲が拡大する。猶予は見ているが逃げる方が確実だろう。

 

上陸艇(エアシップ)からはバグスとパワードスーツの宙兵が入り乱れるように地上に飛び出す。包囲していた民兵や部下が駆け寄って宙兵を助けてバグスの駆除に回る。パワードスーツがあるのだ。飛び出した宙兵の何人かは助かるかもしれない。

 

(リックマン少佐、機体を捨てて早く脱出してください。)

 

(無駄だ、俺の半身はもう無いよ)

 

上陸艇(エアシップ)地中貫通爆弾(バンカーバスター)の爆撃後に突っ込んだ。それは衝突であって爆発の派手さを生まない。しかしAIが予定通り上陸艇(エアシップ)に搭載された全ての兵器を起爆した。内部からの爆破で文字通りバグスの地下基地が弾け飛ぶ。爆発の衝撃が地を覆った。

 

 

 

 

「・・・生きてるかい、サンダース。」

 

「・・、ああ、宙兵さんが覆い被さってくれてな、なんとか生き延びたようだ。」

 

宙兵のパワードスーツは距離を取ればこの程度の爆撃は耐えられる設計になっている。シレン中尉は部下の宙兵に近くの民兵の盾になるように命じていた。それが功を奏して、バグスの攻撃を生き延びた兵は大半が助かったらしい。

 

「だが上陸艇(エアシップ)を喪失してしまった。俺たちはこれからどうすれば。」

 

上官と上陸艇(エアシップ)を同時に失ったシレン中尉は悲嘆に暮れた。上陸艇(エアシップ)は元々五機あったのだが、喪失や破損であの機体が最後の一機だったのだ。それ以上に指揮官を失って彼は途方に暮れていた。

 

「ま、地下に突入していたらもっと被害が出ていたさ。」

 

バグスの地下基地があった場所に生じたクレーターを眺めながらクラファンが言う。

 

「安心しな、宙兵さんの面倒は俺たちが見るさ。宿と食事の心配はしなくていい。」

 

サンダースももてなしの言葉を口にする。

 

「俺達は大勢いるぞ、大丈夫なのか?」

 

シレン中尉の問いかけに、なぜかクラファンが胸を張った。そしてしたり顔でこう言った。

 

「サンダースは本職が牧場主だからな。しかも大きな食肉加工場を経営しているんだ。」

 

指揮官としては特に良いところのなかったサンダースが、ここぞとばかりに自信を見せる。

 

「バグスは冷凍された肉には興味を示さないからな。手持ちの牛は解体して冷凍庫に全て放り込んだ。今日は全員にステーキを振る舞うぞ。」

 

ステーキと聞いてシレン中尉の腹が鳴った。上司や部下を大勢失っても、生きている限りは腹が減るのだ。

 

「そうか、それは楽しみだな。だか、まずは生存者の救出と敵の生き残りの始末だな。」

 

「だな、暗くなると厄介だ。早速取り掛かるとするか。」

 

爆発は地表の宙兵だけでなく空中のバグスを効果的に始末した筈だった。バグスの羽根は装甲より遥かに脆い。そして高高度から落下すれば、その重さゆえにバクスとて無傷で済むはずがない。

 

爆発の衝撃と落下のダメージの二段構えなら空を飛ぶバグスは概ね駆逐できただろう。だがビートル型のバグスは穴掘りに最適化された訳ではない。地を掘る別系統のバグスがいると見るべきだった。暗くなるまでに始末しなければ、寝首をかかれることになりかねない。

 

「もうひと踏ん張りだ、皆、今夜はステーキだぞ。」

 

第一小隊長のシレン中尉は声を挙げた。部下が応じて声を出す。ともあれバグスの拠点は潰したのだ。これで惑星ランセルで人類が生き延びる可能性はグッと上昇した筈だった。




連隊 四個大隊以上 連隊長は大佐
大隊 500名10個小隊 大隊長は中佐
中隊 200名4個小隊 中隊長は少佐・大尉
小隊 50名 小隊長は中尉・少尉
分隊 10名 分隊長は軍曹/曹長→少尉

戦艦1220 2個大隊1,000名+2個小隊100名
重巡355 1.5個中隊300名(6個小隊)
軽巡255 1個中隊(4個小隊)200名
駆逐艦155 2個小隊100名

艦の宙兵隊以外の乗組員(クルー)は55名を1単位とする。パイロットを含めて三交代制となり、残りの大半は宙兵隊となる。艦載AIの助けを借りればもっと少ない人数での運用も可能と思われる。

典型的な駐留艦隊は重巡洋艦一隻に駆逐艦二隻が最小単位。六+ニ+ニで宙兵隊は一大隊規模となる。

各中隊4個小隊の中で一個小隊は情報小隊。

※ミルトンの戦いで重巡洋艦(テオⅡ 艦載AIは中尉)に所属するアランは中隊のシステムにアクセスしている。この時のアランは情報小隊の所属する分隊長で少尉。

分隊長で少尉なので一般的な軍隊より階級が一段階ズレている。(艦隊士官として勤務する際の階級差の解消目的と判断して艦隊士官側の階級は弄らないものとする)


以上から惑星ランセルの宙兵隊の構成は下記

駐留艦隊=10個小隊500名=2個中隊=一個大隊

重巡洋艦 大隊長(少佐)と6個小隊
 ※重巡洋艦単独は中隊規模だが駐留艦隊で大隊

 駆逐艦 中隊長(大尉)と2個小隊 二 2隻
 ※駆逐艦単独は小隊規模だが駐留艦隊内の中隊

兵2000連隊長(定員0)大佐
兵500大隊長(定員1) 中佐
兵200中隊長(定員2)少佐・大尉
兵50小隊長(定員10)中尉10名
 ※本来は小隊長は少尉を含む
兵10分隊長(定員50)少尉50名 
 ※本来は分隊長は軍曹・曹長

※人類スターヴェイク帝国の宙兵隊はユーミ少尉を指揮官としているため事実上分隊規模でスタートしている。
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