【二次小説】航宙軍士官、星を統べる (原作:航宙軍士官、冒険者になる)   作:高坂 源五郎

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Ⅰ ベルタ王国統一記 08話 【王都請願編】王都出発

ベルタ王国統一記 8 王都出発

 

樹海を目指して飛び上がったグローリアは王都上空を飛行していた。俺はエルナの事が気になっていた。シャロンがドラゴンに食べられそうになったのを目撃した後で、今度は俺が連れ出したばかりにアマド国王に言い寄られたのだ、いい気はしていないだろう。アマド国王もエルナがガンツ伯を魔法で仕留めた本人と知っていたらあのように言い寄ったりしただろうか?

 

しかしながら高速で飛行するグローリアの背中は込み入った会話をするのに適していない。俺やシャロン、グローリアは通信で意思疎通できるが、ナノムの無いエルナとは話ができないのだ。

 

グローリアに降下するよう指示を伝える。俺達は王都近郊の森にある丘に降り立った。グローリアは長距離飛行をする際に魔石を食べる必要があったし、長時間の移動の前後には我々も食事やトイレを済ませておく必要もある。

 

往路でも立ち寄った場所なので、設置しておいたトイレも隠しておいた魔石の袋も無事だった。ウォーターで水を出し手を清めてから水分を補給する。王宮での食事も期待していたが、流石にドラゴンがいてはそれ無理だった。持ち込んだ食糧で簡単に食事をしたためる。今日は念の為、サンドウィッチを持参していた。人心地ついてから俺はエルナに声をかけた。

 

「エルナ、先ほどはすまなかった、アマド国王があのような不埒な真似をすると思わなかったんだ。」

 

「一国の国王とはいえ女性にあの様な扱いをするとは信じられませんね」

 

シャロンが珍しく憤っていた。ドラゴンの鼻先に立たされていたシャロンが俺でなくアマド国王に怒る事に驚いたエルナが、ポカンとした表情でシャロンを見ていた。

 

「良いんです、実はあれは芝居でした。アラン宛のメッセージを耳打ちされていたんです。それに、私も国王に直々に言い寄られて悪い気はしませんでしたし。」

 

「メッセージだって?」

 

俺もシャロンも完全に国王がエルナに言い寄ったのだと思っていた。周囲に悟られない様に女好きを装ってエルナにメッセージを託したのか。

 

「『無体してすまぬ、余はクレリア王女の事を承知している。宰相の監視があり表立って動けぬが、出来る限りの支援はするとコリント卿に伝えてくれ』との事でした。」

 

「うーん」

 

俺は腕組みして考えた。俺もアマド国王は嫌いじゃ無い。何よりリアに顔が似ているし、今回も宰相のバールケがいないからとはいえ、スムーズに事が運んだのは彼の援助が大きい。

 

「彼としてはアマド国王に危害を加えずに済むならそれが良いと思う。ただ、政治的な事情がそれを許すかどうかだな。」

 

「危害を加えたくないのはやはり、アマド国王の顔がリアと似ているからですよね。」

 

シャロンが意見を述べる。シャロンの目から見てもそっくりの顔に見えるな。

 

「アランが私を連れて謁見した意図が分かった気がします。近衛の私達からみてもクレリア様に似ていると思うか知りたかったんですよね?」

 

やはりエルナも同じ思いだったようだ。

 

「そうだよ。リアと付き合いの長いエルナがどうも思うか知りたかった。」

 

「たしかにそっくりだと思います、双子でもなかなかあそこまで似ている方はいないかと。」

 

「仮にだけれど、スターヴェイクの人はアマド国王を自分達の王族として迎えるだろうか?」

 

「はい、私もその点を考えました。血筋も確かですし、何よりお顔立ちが王家の皆様と似ています。仮にアマド陛下がアロイス王国に攻め入る場合、リア様と合流できていなければ我々も協力を申し出たと思います。それだけにハインツ班長達を牢に入れたのは許せないですね。」

 

「俺としては勿論その逆を考えている。アマド国王に似ているリアを女王として立てる。リアの存在は大きな切り札になるはずだ。」

 

「はい、そうですね。リア様が立ち、アランが軍勢を指揮すればアロイス王国など簡単に滅ぼせます。」

 

エルナは俺たちが首尾よくガンツ伯を討ち果たし、ガンツの管理権を得た事で自信を深めた様だ。ただ、アマド国王がリアの正体を知っている点は気になった。クレリア王女の存在は宰相のバールケは知らなかった筈だからだ。

 

「(ハインツ班長は取り調べに口を割っていないと言っていた、バールケとアマド国王に別の思惑があるにせよ、どこから情報を導き出したかは把握しておく必要があるな。)」

 

「アマド国王はリアの親戚、いや身内として扱う。アマド国王が敵として王都に立て篭もる状況となっても、女王であるリアの身内ならぞんざいな扱いを受けないと分かるはずだ。」

 

「このまま行けば、王都まで攻め上がる展開になるとアランは考えているのですね」

 

エルナが感心したようにいう。俺もそう言ったが計画としてはあっても実感はまだない。いずれにせよそうすぐそんな状況にならないだろう。まずはカリファ伯を退けてからだ。

 

「それでこの後なんだけれど、ガンツではなくアレスに戻ろうと思う。少し遠回りになるがリアに事情を説明しておきたい」

 

「賛成です」

 

「良かった、早くリア様に報告をしたいと思っていました。」

 

そうだイーリスのモニターも解除しておこう。

 

(イーリス、王宮を出たのでモニターを切ってくれ。以後は通常通りのドローン経由の監視で頼む)

 

「了解しました、艦長」

 

(シャロンは念のためセリーナにこちらの事情を説明しておいてくれ、アレスでリアを拾ったら今日中にガンツに戻るつもりだ)

 

(了解しました。)

 

休息と小用を済ませると、魔石を多量に飲み込んだグローリアに乗って、俺たち3人はアレスへと飛び立った。

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