第1話 恋だな、きっと(張が自分の気持ちと向き合う話)
怪我をしたエレンを、
手元の書類を揃えながら、
彼は、先程から黙って書類に目を通している。その横顔はなぜかとても楽しげに見えて、劉は首を傾げた。
「
思わず声をかけると、彼は書類からちらりと目線を上げて口元を笑みの形に歪めた。
「ああ、そうか?」
「……何かいいことがあったんですか?」
そう問うと張は書類を机に置いて、頬杖をつくとどこか優しげに、そして遠くを見るような眼差しを宙に投げている。
張の目は書類から離れ、窓の外を見つめていた。その眼差しは遠くを捉えているようでありながら、どこか内省的で、心の中に秘めた感情を探るかのようだった。劉は張の唇が僅かに緩んでいるのを見て、彼が内心で何か温かい感情を抱いているのではないかと推測する。しかし、張はその感情を言葉にすることはなく、ただ静かに微笑んでいるだけだった。
「……いや? 何もねえよ」
そんな張とは反比例するように、劉の表情には翳りが差した。
あの場には居合わせなかったのだが、怪我を負ったエレンのことを張が救ったことは、劉だって耳にしていた。もしかして、彼女に関係のあることかもしれない。
劉は頭を過ぎった考えに何となく決まり悪さを覚えた。
「……そうですか」
「ああ、そうだ」
張はそう答え、再び書類に視線を落とす。そして、劉に聞こえるか聞こえないかというくらいの声で、独り言のように呟いた。
「ただ……そろそろ怪我も治ったって聞いたもんでな、またエレンのやつに仕事を依頼してみるかと思ったのさ」
それを聞き逃さなかった劉は、思わず書類から目を上げ張を見つめた。先程とは打って変わって瞳が輝いている。
「そ、その仕事って……
「ああ、まあな」
張は書類をめくりながら、どこか上の空で答える。だが劉はそんなことなどお構いなしに前のめりに続ける。
「じゃあ俺、行きます!」
「いや……今回はいい。もう選任してある」
「…………そう、ですか……」
張の返答に劉はあからさまに落胆した様子を見せた。が、すぐに気を取り直して言う。
「エレンさん、怪我したって聞いたときはびっくりしましたよ……本当に、生きててよかったです。
やっぱり、二人一組の方が安全ですよ! 俺が組んでたら、エレンさんだって怪我しなかったかも……なんて思っちゃいましたよ、あはは」
口にした後で、劉は内心しまったと思う。これでは、エレンひとりに任せた張の判断が間違っていたと言っているようなものだ。しかし、意外なことに当の張は気にする様子もなく、ただ淡々と作業を続けていた。
「ふぅむ……どうだろうな。ああ見えてあいつはどっか抜けてるところがあるからな」
ペンを走らせながら、何ともなしに言った張のその言葉は、やけに親しげで劉の心を波立たせた。
小さな棘が刺さるようにちくちくと心の底が疼くのを感じるものの、いつも通りに喋ろうと劉は笑顔を作ってみせる。
「……じゃあ、また次のときは俺に声をかけてくださいね?」
そんな劉をちらりと一瞥し、張は鼻で笑うように答えた。
「ああ、わかったよ。……しかしお前、ずいぶんとエレンのことを気に入ってるんだな?」
「えっ!? いや……まあ、まあ……、いえ、そりゃ、……エレンさん……その……すごい格好良いなぁって……」
張の言葉に動揺して、劉は訳の分からない答えを返してしまう。そんな彼を横目に、張は灰皿で煙草を揉み消すと、どこか愉しげな声で言うのだった。
「なんだそりゃ? お前まさかエレンに惚れてるのか?」
その言葉に、劉は勢い余って手にしていた書類をくしゃくしゃに握り潰してしまう。
「惚れ……!? い、いえそんな、そんなこと! 違います、いやその! ……ち、違うんですよ大哥!!」
劉の反応が意外だったのだろう、張はサングラスの向こうでその目を丸くして、そして呆れたように笑ったのだ。
「なんだよ、はっきりしねえ奴だな? まあいいさ。ただ、エレンを口説くなら、それなりの覚悟を持ってやんな。あいつは、お前の言葉の裏まで読んでくれるほど器用じゃないぞ」
まるで、ごく近しい身内のことのように語る張に、劉はまたも動揺を隠せない。思わず唾を飲む。
だがすぐに彼はいつもの調子に戻り、へらりと笑って言った。
「あ……はは……大袈裟ですよ大哥! 俺はただ……その、エレンさんと……その、と、友達になれたらなぁ、なんて……いえその……深い意味はないんです、本当に……」
劉は顔を真っ赤にして必死に否定している。
その様子は、どうやらこの年若い青年はエレンに恋をしているらしいと、張に理解させるのに十分なものだったようだ。
「まあ、……確かにあいつは容姿も悪くないし、すっとぼけてるところを除けばいい女だからな」
「そ、そうですよね! 俺、あんな美人に会ったことないですよ! しかもエレンさん、銃の腕もすごいし、美人なのにちょっと天然っていうか変わってるけど、それがまた可愛いっていうか、それにですね───」
「ああ、わかったわかった。お前がエレンを気に入ってるのはよおっくわかったよ」
張はそう言って劉の言葉を遮ると、彼が握りつぶしてくしゃくしゃになった書類を奪い取り、それを丁寧に伸ばし始めた。
「あ……すみません、大哥……」
そんな劉の謝罪に答えることなく、張は書類を伸ばしていく。ふと手を止め、彼は言った。
「まァ、お前が誰に惚れようが自由さ。
お前もまだ若いもんな。恋愛も人生経験の一つだ、大いに楽しめばいい。ただし、仕事に支障のない程度にな」
その微笑みは余裕に満ち溢れていて、弟分を見守る年上の男の態度そのものだった。
しかし、それを見た劉の表情がわずかに曇る。
──彼の脳裏に焼き付いている、いつかの光景。それは、楽しそうに話しながら廊下を歩くエレンと張の姿だ。
少し離れたところを歩いていた劉に気づくこともなく、エレンは微笑みを浮かべ張を見ていた。彼女のその眼差しは劉にとって、春の陽射しのように穏やかで美しく感じられたのだが、同時に特別なものを見つめるときの高揚感が見て取れた気がしてしまったのだ。
だから、──もしかしてエレンは、張のことを密かに想っているのではないだろうか? 劉はそう思った。あのあと彼らは共に食事に行ったと聞いて、とても羨ましかったことを覚えている。否、羨ましいという無邪気な感情だけでない、ずるいだとか悔しいなんてマイナスな感情も出てきたもので、自分の醜い部分が少なからずショックだったくらいなのだ。
だがしかし、エレンが張を見る目は特別なものだったとしたところで、張自身の気持ちはどうなのか。
張がエレンに目をかけていることは知っている。
嫌っていないのはもちろん、むしろ好ましく思ってはいるはずだ。
そうでなければ、あの張がただの殺し屋を食事になど連れて行くはずがないのだから。
だが、それは恋愛的な意味なのだろうか? 単なるお気に入りであってほしいと、劉は密かに願っていた。
劉にとって張は上司であり、尊敬できる男だ。そして、もしも張がエレンのことを自分の女として手に入れたいと思ったとしたら、若造の自分に勝ち目がないことは明白である。
だから、張に直接尋ねることはできなかった。エレンのことをどう思っているのか、などと。この耳で聞いてしまったら、もう後戻りできない。
もし彼らが同じ気持ちでいたら。それは辛い。自分が割り込む隙などないことを思い知らされる。
そんな思いを抱え込んでいるからこそ余計に、劉は張のその余裕のある態度に苛立ちのようなものを覚えてしまうのだ。
「あ……あの! 大哥!」
「ん? なんだ?」
劉は言葉を詰まらせる。だが次の瞬間には急に真面目な顔になって、張のサングラスの奥をじっと覗き込みながらはっきりと答えた。
「俺は大哥のことを尊敬しています……でも、それとこれとは別なんです……俺、エレンさんのことが……好きです!」
そんな真っ直ぐな眼差しに射抜かれ、張は目を丸くして彼を見つめ返す。
「……んん? 告白する相手を間違ってないか?
いまいちお前の言いたいことがわからないんだが、それが俺に何の関係があるってんだ? 別に、お前が誰を好きになろうが、俺とは関係ないだろう」
「関係なくないです! 俺は大哥のことを尊敬していますし、もし大哥に好きな人がいるなら全力で応援します! でも……、そうできないこともあるんです……」
張は椅子の背もたれに深く身を預けながら、まだ見つめてくる劉のその視線を躱すかのごとく手を振って、呆れたように笑い飛ばす。
「おいおい、何わけの分からんことを言ってるんだお前は。勘弁してくれよ」
「大哥! 俺は本気です!」
「わかった、わかった」
「張大哥!」
しかし彼は引き下がらず、なおも張に語り続ける。
「俺はエレンさんのことが好きです! だからもし、……もしもエレンさんが大哥のことを好きだって言うなら、哀しいけど俺は全力で応援します! でもそうじゃないなら……俺にだってチャンスはあるはずですよね!?」
その勢いと言葉に、張は呆気に取られた表情を浮かべている。
「俺は俺のやり方で、エレンさんを好きでいますから……!」
そう言うと劉は手元の書類を手早くまとめて、勢いよく頭を下げるとそのまま背中を向け足早にその場を去っていった。
***
一人になった張はポケットから煙草を取り出すと、口に咥え火をつける。
そして、ふと思案気な表情を浮かべると煙を吐き出した。
(劉がねえ……。エレンに、恋をねえ)
張は、そんなことにやっと気付いた自分に苦笑してしまう。
(あいつ、俺がエレンのことを女として見てると言いたいのか……? 劉にはそう見えてたってのか?)
ひょっとすると、あれは宣戦布告というやつなのだろうか、と張は考える。
(劉のやつ、まさか本当にエレンを好きになっちまったとはな……)
それにしても──思わずエレンにキスしてしまったことを劉が知ったら大変だ。
否、あんなものはキスのうちに入らない、あくまで、彼女に解熱剤を飲ませたかっただけだ。
いや、あのとき自分がしたことは──
──誰に対して何のために言い訳しているのか、馬鹿馬鹿しくなって自然とため息が零れた。
張は顎に手を当てて考え込む。
あれは何だった? 自分の気持ちがわからない。
そう、どうかしてたのだ。
これまでずっと、彼女とはこのままの関係でいいと思ってきたのに。まさか、自ら踏み越えるとは。
──心の中で芽吹いた想いが、あのとき、突然溢れ出したような気持ちになったことが鮮やかに思い出された。
心の動揺を隠すように、さっと蓋をする。それでも、またしてもため息が零れた。
どうやら、自分で思っていたよりエレンという女を気に入っているようだ。それは確かに気付かされた。
「──とはいえ…… 」
劉は実直でいい部下だし、年齢もエレンと近い。
自分のような歳上の男より、ひょっとしたらエレンだって劉のほうが話が合うんじゃないか?
(だが、劉はまだガキだしな……)
しかし選ぶのはエレンだ。考えても仕方がない。
そう、たとえ劉がエレンと恋人同士になったとしても、それは自分ではどうすることもできないことなのだから。
そうしたら張はまた元の生活に戻るだけで、別段の変化はない。何かを失うわけではない。
──否、本当にそう思うことができるのか?
突如、エレンの楽しそうな笑顔が浮かぶ。あんな微笑みを、劉にも向けるのだろうか?
なぜだか、面白くない気持ちになっている自分に戸惑いを感じていた。
「……いやいや、俺はただ単純にあいつに会いたいだけだ」
そうして考え事を切り上げると、もういい加減に見え始めたその感情の正体──それに気付かないふりをして執務室から出ると、エレベーターホールに足を向けたのだった。
***
「なぁ
「なんですか、急に。酔っ払っちまうにはまだ早い時間だと思いますがね、大哥」
いつも通りの彪の対応に、張は内心ほっとするような気持ちになる。彼の目は張の顔をじっと見つめているが、その視線は何かを探るようでありながらも、あえて何も見つけないふりをしているかのようにも見えた。
「あーいや、まあそう堅苦しい話じゃない。どうだ?」
「さて……どうと言われましてもねぇ。俺にはわかりませんよ」
そう答えると、彪は僅かに肩をすくめてみせた。
「そうかい……まァ、そうだよな」
張はため息を吐くように呟く。
「ただまあ……大哥がエレンさんを気に入ってることは、 誰でもわかってると思いますがね」
「それはまぁ……な。……しかし、まあ……そうだな……」
張は天井を仰ぎ見ながら頭を掻く。
その姿を見る彪の瞳には、張が自分自身にもまだ認めたくない何かを抱えていることを理解しているような深い光があった。しかし、彼はそれを言葉にすることなく、静かに目を伏せた。
「張大哥、そんな話をしてる暇があるなら、もっと仕事に集中してくださいよ」
その言葉を最後に、彪はまた自分の作業に戻り、それきり口を開こうとはしなくなった。
張は煙草の煙を天井に向けて吐き出す。彪に問いかけた言葉は、まるで遠く霞むような、他人事のように感じられた。彼の心の中では、自問自答が渦巻いている。他人に尋ねたところで、自分の心の奥底にある真実を見つけ出すことはできない。それは、確かに確認できたのだ。むしろ彪に問うことは、それを確認するための儀式だったと言ってもいいかもしれない。
彼の目は遠くを見つめていたが、その視線の先には何も映っていない。ただ、自分自身と向き合うことの重要さが、今更ながらに鮮明になった。
彼は深くため息をつき、手に持っていた煙草を灰皿に押し付ける。その動作には、ある種の決意が込められていた。他人に頼るのではなく、自分自身の感情と向き合い、自分で答えを見つけ出すしかない。
それが、彼にとっての唯一の道なのだと。
**
自室に戻った張はベッドに寝転がり、天井を見つめてひとり考え事に耽る。いつも考え事をするときには、煙草とウイスキーが欠かせないものだが、今はどちらもないし、ほしいとも思わなかった。
──エレンに対して、興味ははじめからあった。
しかし、彼女が怪我をしたことがキッカケになり、これまで以上に気持ちが引っ張られ始めた。思えばそれは、まるで引き寄せられるようだったなんて張は思う。彼女の存在が、無意識のうちに自分の心の中で大きな場所を占め始めていたのだ。
腹部から血を流し、意識すらないエレンを抱き上げたときの感触、気持ち──こんな形で彼女に初めて触れることになるとは。
張は深く息を吐いて目を閉じる。記憶を反芻するように、あの感覚を思い出す。柔らかい肌の下を流れる血の温かさを指先に感じたとき、エレンがまだ生きている証だと安心した。同時にもっと触れていたいと思った。この手を離したら、恐らくもう二度と彼女が生きている姿は見られない。あのとき助ける以外の選択肢などなかった。そんな感情が自分の中にあったことに驚いたのだが、それは決して嫌な感情ではなかった。むしろどこか心地良さすら感じていた。
エレンと過ごしていくうちに彼女が見せた、いくつもの表情は張にとって新鮮で眩かった。怒って笑って落ち込んで驚いて、そのどれもが瑞々しい輝きに溢れている。この闇の世界の人間らしくない、生き生きした生命力すら感じさせた。それは暗い場所だからこそ光るものかもしれない。月の光を浴びて夜にだけ咲く、芳しい大輪の花。
心惹かれていたのは紛れもない真実だ。
なんにせよ、ただひとつ言えることは、自分はエレンを側に置いておきたいと思っているということだけだ。
(俺はこれからもあいつに会いたい)
ただそれだけだ。
ふとした時に、彼女の顔が見たくなる。
側に置いておきたいし、側にいなくとも、気配を感じていたい。
側に置くことに彼女自身の気持ちは関係ないはず、無視してやっても構わないはず。これまでだって欲しいものは手に入れてきた。女に限らず、何でもだ。
エレンが自分に好意を持ってくれているんだろうと何度か思ったことはある。しかし、直接言われたわけでもない。そもそもにしてその好意の種類だって色々ある。友情に信頼、尊敬に憧れ、敬愛に親しみ、単なる興味、ただの好奇心という可能性だってある。期待通りじゃなかったとしたら、とんだ大間抜け、クソッタレの自惚れ野郎だ。
「……まったく、俺らしくもない」
それでも、考えることをやめられない。広がる考え──叶うなら、あいつの髪や、頬に触れたら、どんな心地だろうか。腕の中に閉じ込めて、誰も見たことのない表情を見てみたい。
心の奥底に隠していた欲深い願いが、ここぞとばかりに溢れ出した。
まるで、長い間土の中で眠っていた種が、太陽に向かってその身を伸ばし始めたかのように。
彼女の髪の柔らかさ、頬の手触り、それらを想像するだけで、張の心は高鳴る。彼女をこの腕に抱きしめたとしたら、どんな表情を見せるのだろう。誰も見たことのない、彼だけが見られる、特別な
そんな願いが、今までの自分では考えられないほどに、心を支配していた。
──劉はエレンのことを好きになどならなければ良かった。そして、彼女にも劉のことを好きになってほしくないと張は思った。もし彼女が誰かと恋に落ちたとしたら? それを考えるとなんとも言えないモヤモヤしたものが、胸の底に溜まっていくようだった。
そして同時に強く思うのは、エレンが自分と同じ気持ちでいてくれればいいと──―あのヘイゼルの瞳が、自分だけを見つめていればいいということ。
「……っ」
張は頭を振った。
「……何だこりゃ。まるで思春期のガキじゃねえか」
そう思いながらも、一度自覚した感情は、消えることなく胸の奥で燻り続けている。
「……参ったな」
こうなってしまった以上、後戻りはできる気がしない。
『興味』で片付けていた感情の後ろにあるものに心が気づいてしまった。
見て見ぬふりをしていたその感情に、
目覚めたばかりの子供のようにぼんやりした想いではあるけれど────
「──俺はあいつを、手に入れたいと思っているみたいだ」
ようやく、認めることができそうだ。
これが
「……まったくもって世の中ってやつは、手前の思惑だけじゃ進まないもんだ」
それでも、まだ十分に迷いはある。
ガツガツ行くのは年上の男として格好がつかないし、立場だってある身だ。現状を維持する方がはるかに楽なのだ。そんな思いが張の心に制限をかけている。
「──まったく、歳を取ると言い訳ばかり慎重になりすぎて良くないな。劉のような勢いみたいなもんも、かつては俺にもあったはずなんだがな」
だが、自分の心はわかった。あとはエレン次第だ。
張はようやく煙草を取り出すと口に咥え、天井を見上げた。そしてどこか楽しげな眼差しを浮かべて静かに微笑んだ。
「……あとはまァ……行き先は風に任せて……、彼女とちょっとした駆け引きを楽しむのもいいかもしれんな。さて、エレンはどう出るかね」
呟いた言葉は、煙草の煙に混じって空中を漂ったあと、ゆっくりと天井に吸い込まれるようにして消えていった。煙が消える瞬間、そこにエレンの顔が浮かんで見えたような気が──していた。
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(Deus nos iunxit.)
(神が私たちを結びつけた)