【完結】聖女勇者見習いたちと追放された魔界最恐王子のハーレム性春記   作:アニッキーブラッザー

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第15話 ゆるい

 私たちは幼馴染でいつも一緒だったけど、クラスまでいつも同じだったわけじゃない。

 だから、私やディーちゃんの居ないところで、アネストちゃんは……

 

『男子! どうしておおきなこえで歌わないんですか! 合唱会まで時間ないです! まじめにやってください!』

 

 アネストちゃんは優等生で、そして真面目だったから、いつも正しいことをしようとしていた。

 でも、正しいことなのに、押し付けられると皆それを敵みたいに見るときがある。

 

『うるさいなー、アネストは! せんせーみてないんだからいいじゃんかー!』

『せっきょうババアあっちいけ!』

『ぶーす! やーい!』

 

 その日、アネストちゃんは泣いていた。あとで男の子たちは私がとっちめてやったけどね。

 でも、その日がキッカケだった。

 

『先生! さっき、ウラミちゃんが花瓶を壊してそのまま逃げました! 注意してください!』

 

 私はアネストちゃんによく怒られてるけど、私たちは昔からそういう関係だったし、どんなに怒られても私はアネストちゃんのことが大好き。

 でも、他の子たちにとってはそうじゃなかった。

 男の子だけじゃなく、女の子も……

 

『アネストちゃんって、告げ口魔だよね』

『聖勇者の娘だからって、えらそうだよね! きっと、先生にも気に入られようとしてるんだよ』

『もうさ、アネストちゃんを遊びに誘うのやめようよ~』

『無視しちゃお、無視』

 

 私たちの見てないところで、色々とトラウマができちゃったみたい。

 

 

『『『『アネストちゃんって、うざいよね』』』』

 

 

 それから、魔法騎士団候補学校に入ってからは、男の子とも女の子ともトラブルを起こさないようになって、立ち直ったように見える。

 でも、それは単純にアネストちゃんが他の子を注意したり、トラブルを起こしたりするのを怖がっているから。

 セカイくんのように、昨日今日出会ったばかりの人ならまだしも、これまで一緒に過ごして、これからも付き合いがあるクラスの子とか友達とかに「うざい」って思われないようにしている。

 

「セカイくん……」

「んだよ」

「あなたの発言や意識は……正しいです……でも、あまり皆に強制しても仕方ないと思います。むしろそれは……返って周りとの軋轢や溝を生むことになります」

「なに?」

「みな、考えやモチベーション、目的意識はそれぞれです。あなたの意見は正しくとも、それが皆にとっては正解ではなかったりするのです」

 

 屋上で二人きり。

 普通なら、好きな人に告ったりするようなシチュエーションで物凄い重い話をしているアネストちゃんとセカイくん。

 私とディーちゃんはそのシリアスな空気を扉からコッソリ覗き見て見守っていた。

 

「なんだお前。厳しい真面目な奴かと思ったら、ワケわかんねーことを。正しいなら貫きゃいいんだよ」

「……セカイくん……」

 

 そしてセカイくんは、アネストちゃんの過去のトラウマやら経験からの発言を一蹴しちゃったよ!?

 

「つうか、オレンジとピンクは将来他にやりたいことあるからってことで納得したが、それ以外のこの学校の奴ら……気になったんだが、覇気も無けりゃピリついた空気も感じねぇ。一体どういうことだ? あいつら、帝国兵になって戦争行くんじゃねえのかよ?」

 

 そして、セカイくんの疑問は、今のこの学校の現状に対しても思うところがあるみたいだね。

 っていうか、私たちの名前をいい加減憶えてよ。

 

「さっき話した男子共も、ギラついてるわけでもねぇし、ガッツく気配もねえし……どうなってんだ?」

 

 やっぱ、編入早々に「魔王軍を倒す」宣言するような意識高い人には変な感じなのかな?

 でも……

 

 

「そうですね……確かに今の私たちは……『三ゆる』と呼ばれていまして……」

 

「……は? ゆる?」

 

「御存じありませんか? 今の私たちの世代は、『三つのゆるい』があるのです」

 

 

 そう、セカイくんは本当に今の私たち世代が呼ばれている、三ゆるを知らないんだ。

 そのことをアネストちゃんが言うと……

 

「うわ……」

「セカイくん?」

 

 セカイくんは物凄いドン引きした顔を……え? なんで?

 

「やっぱお前ら……ビッチだったんじゃねぇか……」

「はい?」

 

 はっ? ビッチ? なんで三ゆるの話をしていてビッチって……ゆるい……ビッチ……ん?

 

「股と口と……尻の穴がゆるいとは……」

「…………ッ!? ちょ、そうじゃありません!?」

 

 そっちかい!? いや、違うしぃ! 思わず私もディーちゃんも噴き出しちゃったじゃんか。

 アネストちゃんも理解したようで、顔を真っ赤にして怒ってるよ。

 

「え? 違うの? つまり、お前ら全員ビッチなのかと……」

「そんなわけないでしょう! だいたい、私は経験ありません! 挿入(い)れられたことも、咥えたこともありませんし……お尻でなんて……そんな別世界の行為など知りません!」

 

 いやいやいやいや、アネストちゃん、正しいけど否定の仕方が間違ってるからね? 

 

「あ、そ、そうなの……? いや、そこまでガッツリ言わなくても……お前、経験なくてもかなり耳年増というか、ムッツリというか……」

「あ、あなたが言わせたのでしょう! だいたい、私はムッツリでもありません!」

 

 いや、アネストちゃんはムッツリだから!

 私が小さいときに「にひひひ~、お父さんの部屋で見つけちゃった~」って持ってきたエッチ本を「お下品です!」なんて怒って没収しておきながら、数年経っても未だにその本を部屋のベッドの下に隠してるの知ってるんだからね!?

 

「そ、そもそも三ゆるというのは、『ゆるい教育、ゆるい世代、ゆるい精神』と呼ばれ、私たちの世代から適用されている文化なのです」

「……はぁ?」

 

 そして、話はとりあえず元に戻って真面目に。

 

 

「まず、あなたのおっしゃる通り、一昔前までこの学校はまさしく養成学校……日々厳しい授業や訓練を受け、戦争のためだけの兵士を育成することを重視していました。しかし、あまりにも厳しすぎる環境ゆえ、自主退学者が増加し、さらには教職員の体罰などが激化して生徒たちの事故死……保護者達からのクレームなどで、年々育成方針が変わってきたようなのです」

 

「いや……強い兵士生み出すためには仕方ねえじゃん……」

 

「そうかもしれませんが……しかし、それは今の私たちの世代には合わないのです」

 

 

 よく、お父さんたちの時代の話を聞くと、別世界過ぎると思ったものだ。

 先生には沢山ぶん殴られたとか、校庭を1000周とか、演習中は水を飲んじゃダメだとか、先生にバカだのクズだの死ねだの罵倒されたりとか……

 

 

「魔王軍とそれほど激しい戦争も近年ない中で、そんな環境に耐えてまで兵士にならなくてもいい……そう思う人たちも増え、魔法騎士候補者の激減を防ぐためにも教育方針の抜本的改革を―――」

 

「あ~、もういいや。大体分かった」

 

 

 そんな説明に溜息吐きながらも理解した様子のセカイくん。

 すると、呆れたように笑いながら……

 

「なるほどね。どうりで、どいつもこいつもギラついてねぇわけか。死に物狂いにならねぇ、切羽詰まっても無けりゃ追い込まれてもねぇ、なったところで大した見返りもない。だからどいつもこいつも燻ってるのか。たとえば……魔界の魔王が攻めてきて……なんてことにでもならねぇ限りな」

 

 うん……まぁ、そうなんだよね。戦争も魔王軍もピンと来ないし、他にやりたいこともある。

 

「笑わせるぜ。ゆるい? 俺から言わせれば、『ぬるい』ってもんだ。生温いぜ」

「……ふふ……なるほど……そうとも言えるかもしれませんね……」

 

 世間体のためとか、就職のためとか、そういうのが目的でこの学校に通っている人は多い。

 真面目に魔王軍と戦って人類のためにって思ってる人は……何人ぐらいいるのかな?

 

「どちらにせよ、あなたのやる気を削ぐようなことを言って申し訳ありませんが……ですが、周囲との意識の差などが目立つと、浮いてしまったり、クラスメートたちと溝や軋轢が出来たり、喧嘩になったりしてしまいそうで……つい、声を……」

 

 セカイくんは正しい。でも、私たちは正しいかどうかじゃない。「やりたくない」。

 そんなセカイくんにこんな話をするのをすごく申し訳なさそうにしているアネストちゃん。

 その気持ちは届いたのかな……?

 と、思っていたら……

 

「はぁ? ガキの頃から喧嘩ばっかの俺が、今更そんな人の顔色伺ってどうすんだよ。軋轢だ? 俺は友達作りにここに来てんじゃないんだよ。同じ意識を持った強い手駒……仲間を探しにやってきたんだよ」

「え……?」

 

 ん? ん~? でも、セカイくんはガッカリしてもへこたれてはいない?

 すると、

 

 

「ブルームッツリ。ところでテメエはどうなんだよ? 三ゆるがどうとかじゃなくてよ」

 

「え? わ、私ですか? ……ムッツリ?!」

 

「周囲がどうとか以前に、テメエも昼のオレンジやピンク、そしてクラスの奴らと同じでやる気なかったり、その発表会もテキトーで良い派か?」

 

 

 そこでセカイくんは重要なことを聞いた。

 

「お前はアソコも口も尻もゆるいのか~?」

「ゆ、ゆるくありません!」

「じゃぁ……どこかゆるいのか?」

「ッ……そ……それは……」

 

 世代がどうのではなく、アネストちゃん自身はどうなのかと。

 

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