恐らくはガリクソンが元となっているのだろうか?巨大なバイクが如き様相のガンプラが…まるで焦る様に地を駆ける。
今、止まってしまえば…何かに間に合わなくなる、そうとでも言いたげに走り去るのだ。
――――すべては、急に倒れたバイク繋がりの知り合いの為だった。
それまで、もう二度とGBNの世界になど潜らないと思っていた。
彼も嘗ては優秀なガンプラファイターの一人だった、しかし時代がGPDからGBNに乗り移る際…その波に乗り損ねてしまった。
元よりガンプラバトルという種目自体、様子の可笑しな弟に引っ張られて始めたモノだ。
あの日の事はよく覚えている…今のガリクソンも、あの時弟が事前に用意していたガンプラを押し付けられた時からの付き合いだ。初戦闘で、あの場に居た5か6人程の内…2番目に強い、弟のクラスメイトを完封してしまったのが“運のツキ”だった。
…正直、そこまで熱中していた訳でも無かった。
悔やむものなど…何処にもなかった。
それでも彼は戻ってきた…つい1か月前、行きつけのバイクショップで知り合っただけの男の為に。
我慢する事などない、好きでも嫌いでもないのだから。
この男は、バイクで走る事以外に「好きだ」と感じたモノが(自分自身に)無い様に感じて居た。
ただ無限に、ただ早く…それだけで走る事以外への悦びが分からなかった。
――――そうだった、筈なのに。
何を恐れているのだろう?何を熱くなっているのだろう?電子で作られた雨に打たれながら…彼は走り去るのだ。
ダイバーネーム:ソーラ
ダイバールック:とある昭和俳優のような癖毛と、ライダースジャケットが特徴
最近になって姿を見るようになった、凄腕のダイバー。
ガリクソンをベースとしたガンプラ【ガリクロン】を操り、高機動で相手を翻弄する。
「ねえ、貴方少し話を――――ッ!?ウッソでしょ…!?
ごめんアンタ、急で悪いけれどやっぱり来て!お願い!今すぐに!」
全てはここから始まった。
どこかイマドキな雰囲気の女性の声と…その背後で響いた様な爆音、そして焦る彼女。
訳は勿論、分からなかった…だが、いいや、それだから、彼は迷わずにその声に導かれた。
元よりGBNへと再び潜ったのは調査が目的だ。
裏路地に入り、袋小路にて見たのは…通常とは違う、紫の浮遊インターフェース。
触れるや否や身体が浮き、気が付けば見知らぬ広大な大地にいた。
別に驚きはしなかった…仮想現実の世界なのだ、人が想像した事は何であれ実現しうる。
それもかなり容易に。
「…ッ」
よく見れば、自らの立つ場所は古代遺跡らしきものだった。
彼はガンダムを良く知る訳では無いが、それでも疑問に思った。
「ガンダムって…古めかしい雰囲気の古代兵器が出る作品だったか…?」
と。
精々あのシリーズの古代兵器というのは、我々21世紀に生きる者達からすれば十分未来の兵器である事が殆どだ。アステカ文明やマヤ文明の超兵器!といった方向性の古代兵器は無かった筈である。
とは言えだ、創作に置いて元ネタに縛られる事は、あまりよろしいとも言えない。
彼の弟もそうだった、常に何か…新しい物を見つけようとしていた。
主にウケ狙いの為に、だが。
遺跡の外に出ると、自らの愛機ガリクロンが鎮座している。
…にしても先程、己を呼び寄せた女は何処に?そう考えていると、遠方で爆音が響き、黒い煙が上がっているのが見えた。
「ッ!?」
咄嗟に振り向き、それをみた彼はすぐさま愛機へと搭乗しようとすると「ああクソッ…!」という、先の女の声が響いた。
――――姿は此処には無い、もしやAIの類だろうか?
「もう改良が進んでる…っ!
生意気なのよ、私よりポンコツのクセにッ――――っ!丁度よかった。アンタ手を貸してッ!直ぐに自分のモビルスー…ツ……スーツ?バイク?え?」
相変わらず声だけが響く女は、どういう理屈でガリクロンを見ているのやら…そうした途端にやかましい声が一瞬止んでしまった。
「ああ。
どうやら僕のガンプラはモビルアーマーの分類に入るらしい、何か問題か?」
「いぃーーーーや何も無い!
兎も角あの黒煙の所にまだ“奴ら”はいるわ!“集落”を襲う前に全機倒して!」
「防衛ミッションか。
敵の内訳は?」
「タンク脚部3機に、フロート脚部4機!
武装はタンクが実体型の突撃槍にソレに仕込んだ非実体射撃兵装つまりビームガン!それと有線式遠隔操作機構――――ガンダムで言えばインコムね。ついでに3本爪も付いてるから、掴まれない様に!」
「フロートは?」
「ビームだけよ。
けどタンクより何倍も威力強いから、当たらないようにしてッ…!」
「分かった。
急行する…!」
詳しい話を聞く事もなく、彼はガリクロンへと飛び乗りエンジンを吹かして走り出した!
…2輪のタイヤが大地を蹴り、六つの気筒に扮した高出力ブースターが火炎を吐く!
心なしか、感じる風がかなり気持ち良い。6年前にGBNで走った時よりも。
「…これが大型アップデートの賜物という奴か」
「アップデート?あ、あぁ…」
声だけの女は、何か言いたげだったが…あらゆる要因が、彼にそれを問わせる事を忘れさせた。
彼は昔から、ガンプラバトルでいっつもハイになる弟を「馬鹿」と呼んでいたが…間違いなく自分もまた相応の馬鹿だ。
何せバイクにまたがり、そして戦う事に…この上ない興奮を感じて居る。
「ッ!
…奴らがアンタに気が付いたわ、構えて!」
「あぁ!分かっている!」
ガリクロンの格納サブアームを展開し、マニピュレータ代わりに組み込まれたビームマシンガンを撃ち放つ!
牽制目的の適当な射撃だが、距離が近づくにつれ命中率もあがり、双方の距離50m地点で既に1機を撃破した!
「やっるぅ…!」
「まだだっ!」
彼はそのまま止まることなく、敵の編隊へと突っ込んだ。
その際に後方のフロート脚部1機と激突し、推力と剛性に任せてその1機を正面から叩き潰す!
「ッ…!ソイツまだ生きてるわ!
トドメを――――」
女が言い切る前に、ガリクロンが前輪を持ち上げ…そして振り下ろし、フロート脚部を真っ二つに断ち切った。
すかさず今度は後輪を大きく浮かし、前輪を軸に車体を180度回して、こちらに向かってくる残り5機の敵編隊を見据えた。
「…殴り合う前に、もう少し減って貰うッ…!」
再びガリクロンの装甲が開く!
出て来たのは銃身の長いレールキャノンで、1秒すら掛からなかった展開の直後に、電力のチャージを開始した!
…しかし、狙撃を察知した敵の編隊は不規則に動き、中々照準が定まらない。
「クソ、近接は兎も角射撃はブランクが――――ッ!?」
突然、自分が動かしていない方向に照準がガックリと動いた!
それは彼自身が行うよりも正確に、そして素早く敵を捉えている。
「――――アンタは引き金を引くだけでいいわ、私が狙うから!」
「君は…!?」
どうやら声だけの女の仕業であるようだ。
一体如何なる方法を用いたのか、しかし折角の援護に彼は一先ず甘える事にして、彼は迷わず引き金を引いた!
1発目はビームのチャージ途中だった最後方のフロート脚部に当たった!
弾倉には残り2発。
2発目はビームを発射した直後の、最後のフロート脚部に直撃し撃破する!
弾倉は空となり、薬室の1発のみ。
3発目は最右端のタンクに当たり撃破した。
「良し…後は殴って黙らせる…!」
撃ち切ったレールキャノンを格納し、再びブースターに火を付けて車輪を回し、彼は編隊への特攻を開始する!
「後の射撃も全部私に任せる?」
「いいや、そこまで甘えられない…リハビリの機会は残したい…!」
簡易な会話を躱しがてら、すぐ隣を通り過ぎようとしていたタンク脚部をサブアームによるラリアットで叩き、そしてフレキシブルに動く気筒ブースターを用いた加速による後輪の叩きつけでバラバラにする。
直後、間髪入れずに展開したサブアームを背を向けるタンク脚部に向け、ビームを放つ。
今回は当たり所が悪かったようで、10発も当てない内にそれは爆散した。
――――突然、ガリクロンを急な衝撃が襲った!
「ッ!?」
最後の1機、タンク型のタックルを諸に喰らったようだ。
この衝撃は果たして狙ったのか偶然か、側面からのものであった…バイクは側面からの衝撃にはめっぽう弱い。
しかし彼の判断は早かった。
「…本当に殴るか」
ガリクロンがガパリと…先のレールキャノン展開とは比較にならぬ程装甲を開き、そこから何かが飛び出した!
タンク脚部はその1つだけの目でソレを捉えたが、その瞬間には“深緑色の影”が眼前まで迫り、危機を察知した頃には逆に大きな衝撃がタンク脚部を襲う!
「…へぇ、正しく“ライダー”って事」
その“人型”の影――――モビル“ファイター”の名は【ゼータオーガンダム】。
ディープグリーンのボディカラーに、ゴールドのライン。そして各部装甲は丸みが目立ち、そのレッドアイの頭部は昆虫的意匠が見て取れる。
更には、なんと武装は四肢以外には存在していない!
「あぁ。
ライダーだよ」
彼はモビルトレースシステムを使い、ゼータオーガンダムで独特な…武術の型が如き構えを取る。
対してタンク脚部は、インコムによる攻撃で先手を取った!
だがその直線的な攻撃はひらりと避けられ、逆にインコムの先端を両の腕でガッシリ掴まれる!
ゼータオーガンダムは、その痩躯からは考えられないレベルの大怪力でタンク脚部をジャイアントスイングし、遂には空中へと思い切り投げ飛ばした!
咄嗟に女が、空のガリクロンを動かし、タンクを狙撃しようとするが…その前にゼータオーガンダムが跳ぶ!
「せぇええええやぁああああああああッ!!!」
彼の渾身の叫びと共に起動した背部の短時間飛行ユニットが、重力に逆らいゼータオーを(タンク目掛けて)推し動かし、彼は右脚を進行方向へと真っ直ぐ突き出した!
その、必殺の
敵機全滅、ミッションコンプリートである。
ゼータオーは舞う鳥のような優雅さで大地へと足を付け、そして離脱したガリクロンを…そしてその背後に広がる、広大な風景を眺めた。あまりにも風が心地良過ぎる…まるで電子の海に居るとは思えぬ程に。
技術の進化に関心していると「ふぅ…」と、深呼吸する女の声が響いた。
「…ありがとう。
お陰で、多くの命が守られた…」
どうやら一段落のようだ。
此処で改めて…いいや、初めて彼が女へと問いかける。
「此処は…一体何なんだ?
そして君は…」
「ッ!、あぁ、そうね…。
先ず、私の名前は…【スミカ】でいいわ。えっと、そうね…確かGBNには【ELダイバー】って言う電子生命体が発生していたわよね?」
「あぁ…GBNは6年ぶりの再開だが、その話は聞いた事がある」
「ならば話は早いわ。
私は彼女らのような存在…いいや、彼女らのように電子世界ですら決まった形を持たないけれど、私の意思と知覚は大体の場所に移動させられる…幽霊みたいな存在なの」
「随分便利そうだな。
そして、この場所は?」
この質問について、スミカと名乗った電子的存在の女は「あぁ…」何か言い辛そうなそぶりを見せる。
「…ねえ。
もし私が、漫画やアニメの見過ぎみたいな話をしたら…信じれる?」
「大丈夫だ…神秘らしい現象には何度か遭遇している」
「そう…。
ならば話すわ、もう一度念を押すけれど…今から語る事は全て“現実”よ。ソーラ」
突然、自らの“名乗っても居ない”ダイバーネームを呼ばれた彼――――ソーラは流石に狼狽えた。
「何時、僕の名前を…?」
「そりゃ開示情報を見ればいいだけだし。
ゲームのプロフィールなんて碌なプロテクトも無いでしょ?」
「…」
どうやら自分は、とんでもない生命体と関わってしまったようだ…そんな、気の遠くなるような思いを胸に、姿なき彼女の説明を聞いた。
多分相当話詰めるんで、10話もしない内に終わるかな。
でも間違いなく投稿頻度は亀以下になるので…次が何時になるか分かりませんが、よろしくお願いいたします。