「──うん、確かに
ミオリの座っていた椅子に腰かけ、謎魔具を
「これは僕に少し貸しておいてもらえるかな。
そして誇らしげに自身の額を指し示す。
対する私は、話を逸らすことに成功してようやく胸を撫でおろしていた。
やはり父は生粋の魔学者なのだなと、少し呆れつつも安心する。
ちなみに私の体の痛みのほうは、とりあえず動かさなければ平気のようだ。
力を入れると、特に胸から右腕にかけてが突き刺すように酷く痛むが、耐えられないほどでもない。
かつて週一で通っていた駅前のカルチャースクールの殺陣教室も、翌日はこのくらいの筋肉痛に襲われたもの。
おそらくこの痛みもそれと同じで、急激に魔力を放出したことによる「魔力痛」なのだろう。
「……それと、お父様にひとつお願いがあるのですが」
「なんだい? 僕にできることなら──いや、きみの望むことなら、なんとしてでも叶えてみせるよ」
父は、真剣な眼差しを向けてそう応えてくれた。
そして
「──私に、
敵には
しかし、父は眉間に深々と皺を寄せながら答える。
「たしかに
「そう、なのですか……」
私の相槌に頷きながら、言葉を継ぐ。
「ああ。だから
だめなのか。私が私の力で運命をねじふせるには、それしかないと思ったのに。
「それにしても、きみはほんとうにエリーゼに──母さんに、似てきたね」
だが父は落ち込む私に向かって、母の名とともに、なぜか今日いちばん穏やかな表情を浮かべている。
そしてガウンのポケットから、手のひらサイズの黒い箱を取り出していた。
「きみの母さん──エリーゼは生まれつき体が弱かったけど、魔力と心のとても強い、そしてみんなに優しい人だった。それは、きみもよく知っているね」
「幼なじみの僕は彼女に『うちの
父は穏やかに思い出を語る。ゆっくりと、箱の蓋を開けながら。
「彼女はいつも言っていたよ。強くなって、魔物や帝国から自分が
そして開いた箱を私の方に、そっと差し出す。
「いま、きみが
そこには
どことなく、ジブリールの右腕にあった
「
体の痛みも忘れて私が差し出した両手のひらに、父が置いてくれたそれはひんやり冷たくて、思ったより軽い。
よく見ると、側面にはダンケルハイト家の
「
父の声は、誇らしげだった。
「ジョウ……ガ……」
「東方風のネーミングは僕の趣味だけど、
片手を天に掲げた父は、優しく微笑みながら母の
「
──翌朝。私はミオリともに、王都に向かう馬車に揺られていた。
右腕にはもちろん、黒い
その力を振るう機会は、思いのほか早く訪れる。