「……誰って、エリシャに決まっていますでしょう。
「いいや。見りゃあわかる、
私の婚約者、本気でめちゃめちゃ切れ者なのかも知れない。
とりあえず眉間にぐっと力を込めて、目つきを悪くしてみる虚しい努力とともに否定の言葉を重ねるけれど、
「
彼はさらに言い募る。ライラはクラスメイトのひとり、物静かな少女だ。
「あのこは家の格は低いが、才能が有って勉強熱心だから、成績もすごくいい。それが面白くないイザベルたちのグループが、彼女になにかと
そのへんの事情は知っている。イザベルは伯爵令嬢で、ライラの家は爵位と縁のない下級貴族だ。
「そのうち、きみもライラに
そこで一瞬、ガタリと私の斜め後方の机が動く音がした。
おそらく、そこに潜んでいる
「イザベルたちよりきみの家のほうが格は上だし、言いつける
ユーリイは淡々と話を進める。
「だから、それでイザベルたちの溜飲も下がり、ライラにちょっかいを出すことはなくなった」
それを聞きながら、私は私自身の内面を改めて深く顧みていた。
溶けあってひとつになった、とは言え、たぶんお互いのいちばん深いところまで理解しあえているわけじゃない。
だいたい、自分の内面を完璧に把握できている人間なんてそうそう居ないだろう。
もとが別々の人格ならなおさらだ。
「そうして、読書が大好きなライラは仲のいいメアリと楽しくおしゃべりしながら図書室に行き、自分の読みたい本を借りるついでにきみの用事も済ませ、帰ってくるわけだ」
エリシャという少女はずっと孤独で、誰も信じていなかった。
ひとりでダンケルハイト家を守らねばならないと思い込んでいたから。
三英雄の一角であるダンケルハイトは、家の格としてはパラディオン王家に次ぐものである。しかし同時に根深いやっかみが存在することは、以前にも述べた通り。
特に、当主であったお母様が若くして病没し、現当主であるお父様は入り婿、
いつ足元をすくわれるかわからない。
だからエリシャは、クラスメイトにであろうと決して
けれど彼女本来の優しさと気高さは、ライラのように立場の弱いものが虐げられることを、どうしても見過ごせなかった。
同時に、イザベルたちの不満を家の格で抑えつけたとしても、しょせん彼女たちがやっているのと同じ不毛なことだと理解していた。
──だから。
「わかるか? それがきみの──いや、エリシャのやってきたことだ」
弱いものを守りつつ、クラス内の不満も解消する。そのために
──まさしく「悪
「けど、今のきみはそれらをすっかりやめてしまった。あの編入生──マリカのことも、不自然にスルーしてるだろ」
そう。つい先日とうとう、
ゲームとして描かれている
そしてユーリイの指摘通り、現状の私は、なるべく彼女に関わらないよう行動している。
「イザベラたちが徐々に陰口やらちょっかいを始めてるの、気付いているか?」
もしかして、ゲームにおける「
かつての
そして今の
だから私は気づかぬ間に「クラスでエリシャが担っていた役割」を放棄することになっていた、ということか。
ユーリイに感謝しなくてはならない。
おかげで
そして改めて、誓うのだった。
──決して