──そうして私は今、
苔むした長い階段を降りた先に待っていたのは、冷たい空気で満ちた石造りの迷宮。
壁には等間隔に魔力灯が配置され、照らし出された通路の天井も幅も三メートルはあるだろうか。閉塞感はあまりなかった。
そこに挑む我ら攻略パーティのメンバーは四人。
前衛は
魔術士は、お父様のような魔学者とは別の存在で、
杖から火球やら冷気やら放つ、イメージ的にはまさに
「
で、このなんとも
ユーリイの兄にしてリヒト──ことミハイル──の弟でもある、第二王子殿下だ。
「呑気なこと言ってる場合じゃないですよ! はやく先遣隊のみなさんに追いつかないと!」
そして、先輩にして王子であり、魔術士としても学園トップの実力を誇る彼に、これっぽっちも物怖じせず説教かましているのは、肝の据わりっぷりに定評のある
はじめて会ったときと変わらない栗色の二つ結びで、
──いったいなぜこの
発端は数刻前、リヒト率いる学園の精鋭五人パーティが、調査のため
迷宮入口の重々しい石扉の横には、銀のコップ状の円筒が突き出していて、これが迷宮内部に点在する
これを使った連絡の間隔が、一回目から二回目、二回目から三回目と次第に長くなり、四回目はいまだに届いていない。
通信機前に張り付いた、迷宮に興味津々な魔学専攻組の先輩がた(ちなみにうちのお父様の直の後輩ということになる)に届けられた最後の連絡は──
「迷宮内の魔物は『弱体化』されているのではなく、こちらのレベルに合わせて『調整』されているようだ」
──というもの。しかもその通話は半ばで途切れてしまった。
迷宮の入口から数体の
そこで不測の事態に備え控えていたラファエルと、生徒ではただひとり魔瘴侵蝕の治療ができるマリカが呼び出された。
しかし、前衛を任せるべき騎士専攻の先輩方は学園内に散った
同じく騎士専攻の担当教師は、現役引退済みのご老体で実戦からは二十年離れているので、こちらも頼れず。
刻一刻と時間が過ぎるなか、再び地下から出現した
その脳天を苦無で貫き次々と瞬殺したのは、ちょうど屋根裏をショートカットして中庭に到着した影狐だった。
──ちなみにマリカの村では彼女、正義の忍者としてすっかり
そして私の方は、子供の
それはもう、ダークヒーロー通り越して
というわけでマリカから感謝責めにされていた影狐と、遅まきに駆け付けた私もろとも、引きずられるようにダンジョンに突入する羽目となったのである。
「久しぶりエリオットくん! 私を狙ってるのなら、
顔を合わせた途端に、朗らかに言い切りながら満面の笑み浮かべ、ぐいぐいと腕を引かれた。なんて強引な子だろう。なのに、これっぽっちもいやな感じがしないのだから嫌になる。
この巻き込み力には、やはり実感させられる。
と、まあそんな
「──先輩、そこの角の先に
「はい、りょうかーい」
勘が良いというレベルを逸脱したマリカの危機察知に、応じたラファエルはその長身と変わらない長さの杖を颯爽と掲げ。
「紅蓮と燃やせ──」
湾曲した杖の先端に並んで埋め込まれた五つの
「──メラるん!」
すぽんぽぽん──と間の抜けた音を伴い
そのキュートなメラるんたちは、それぞれ軽やかに角の向こうへと飛翔してゆく。
私たちが角を曲がるころ、そこには火だるまでのたうちながら消えゆく
そんな調子で後衛が優秀過ぎるため、私と影狐はすっかり手持ち無沙汰である。
──最初の