私とマリカが
長い下り通路の先に突如として開けた、王城の
その奥側の半分は赤黒い液体──おそらくは
その名は地下迷宮に棲まう牛頭人身の魔物として広く知られていたけれど、実際の目撃例はなくて、大災厄と共に歴史に埋もれた存在ともされてきた。
ひょろりとしていた
「ひどい……」
そう一言だけこぼして、マリカは躊躇なくその修羅場に飛び込んで行った。私も、手近に倒れて呻いている屈強な男子生徒に手を貸す。
「ああ、来てくれたのか聖女マリカ…… そちらは忍びの者か?」
私たちに気付いたリヒトが、
それと同時に、丸太のような剛腕に聖剣の一太刀を浴びせている。相変わらず、隻眼とは思えない技の冴え。
「不甲斐ない、完全に私が判断を誤った。どうか彼らを、安全な場所まで退避させてくれ」
こんな怪物と単騎で渡り合いながら、自分のミスを真摯に認め、そして自分以外の者たちのために助力を乞う。心技体とも、学園最高の騎士と呼ばれるに相応しい男である。
「──時間は、この命に代えても稼いでみせる」
認めたくないけれど、エリシャ様が惹かれるのもやむを得まい。
「
おそらく彼女は、そういうことを知識より直感で理解しているのだろう。
「やつの巨体では
肩を貸して通路まで退避させた男子生徒が、痛みと悔しさないまぜの苦悶を浮かべながら懇願する。
マリカが浄化した女生徒も、自力でこちらに向かってきていた。
彼のことは、彼女に任せればいいだろう。
あと二人。孤軍奮闘するリヒトのすぐ
それを視界にとらえた私は、手前に倒れた細身の男子生徒の方に向かった。
すぐ近くには大きな弓が落ちているから、おそらく
私が走りながら弓を拾い上げた、そのときだった。
ヴモォォォォォ──
凄まじい咆哮が轟いた。
空気を震わせる、とかいうレベルのものではなく、両肩を掴まれて揺さぶられるような明確な圧力を伴ってこちらの行動を阻害する。
聴覚もしばらくは使い物にならないだろう。
咆哮の主であろう
至近距離でそれを喰らったリヒトが、膝立ちになって聖剣に体重を預けている。
しかし
──
足元のおぼつかない魔術師に肩を貸しながら、地響きを上げ突進してくる巨怪と対峙するマリカは、聖なる光の壁を顕現させていた。
「なに、あれ……」
通路の入り口、
「気持ちはわかるが、まずは彼らの治療を」
「あ、うん、そうよね」
そんな彼女に、預けた
ヴモォォォ!
巨体が咆哮と共に、頭部の双角を突きさすように光壁へと激突する。
光壁には無数のひびが走り、次の瞬間、粉々に砕け散っていた。