──光壁に無数のひびが走り、次の瞬間には粉々に砕け散っていた。
「マリカ!!」
ぎりぎりに手をつかんだ魔術士の女生徒を通路の方角に押し出すように退避させながら、
見れば
その足元、雪のように降り注ぐ光壁の欠片のなか──
「だいじょうぶ」
マリカの声が聞こえた。
そこには、右手の聖剣を掲げてリヒトが立っていた。
首にしがみつくマリカを、盾を捨てた左腕で抱き寄せながら。
──ああ。エリシャ様にはとてもお見せできない。
「やってやりましょう、リヒト先輩!」
「──
応える彼の声と共に、降り注いでいた光の欠片のすべてが渦を成して聖剣の刃に集約し──
光刃は左側の角を切り落として肩を通り、心臓のあるべき位置まで深々と斬り裂くと、粒子になって霧散していった。
深手を負った
その先にたゆたう
「たお……した……?」
信じがたい現実を確かめるように、私は思わず口に出す。
通路の方からパーティの面々の歓声が上がった。
同時に力尽きたように倒れ込むリヒトを、流れるように体勢を入れ替えたマリカが支えて立つ。
「いいえ、まだみたい」
そして彼女は少し困ったように、言うのだった。
「逃げて、影狐ちゃん」
同時に私の全身を襲った震えは、忍びとしての修行で身につけた本能的な「生命の危機」に対する
その高さは、ちょうどいまそこに落ちた
──
私はアリオスの言葉を思い出していた。
巨大すぎる角に続いて、水面を割りながら姿を現した角の持ち主──上半身だけで
ヴヴォオオォォォォ──!!
咆哮はもはや兵器だ。
嵐のように吹き付ける音圧から、聴覚を守るため咄嗟に両耳をふさぐ私の視界の中、
巨大さゆえの錯覚で遅く見えるけれど、実際は凄まじい速度を伴った破滅の一撃だろう。
もう、私にできることはない。
一刻も早く通路に退いて、残る四人を確実に退避させることこそが、最善の選択だろう。
それはわかっている。わかっているけれど足が動かないのは、どうやら恐怖のせいだけではなくて、
エリシャ様以外の人間にそんな感情を抱いている自分が、意外だった。
そのとき。唐突に通路の方角から近付いてきた気配と足音が、傍らを駆け抜けていった。
パーティの四人のうちの誰かだろうか? 命を無駄にしてはいけないと、後ろ姿を呼び止めようとした私の目の前で──
「
その細身の後姿が銀のボブカットを揺らし、そこだけ黒い鎧で覆われた右腕を天に掲げ、高らかに叫んでいた。
「──レイジョーガー!」
全身を包み紫炎の中で、実体化してゆく
そして上空から迫りくる
振りかぶった右腕から紫光の尾を引き、リヒトとマリカの頭上を飛び越えて。
自身を余裕で握りつぶせるサイズの巨拳に真正面から、黒の魔戦士──レイジョーガーは、まばゆい紫光まとう拳を叩き込んでいた。
凄まじい衝撃音が轟き、
対するレイジョーガーは反動で後方に一回転しつつ、マリカたちの前方に片手を突いて着地していた。
忍びの体術においても最も洗練された着地法とされる、三点着地である。
──私は我を忘れ、