仮面舞踏会【前篇】
聖騎士任命式典。
王国に
それは建国三英雄のひとり、聖女ミレイアの生まれ変わりとされる。
前回の顕現は百年ほど前、辺境で
聖女は強力な聖魔紋の使い手にして、
しかしその力は元来、護りと癒しに特化したもの。その中で唯一にして最強の「攻撃」の力が、聖女ミレイアが聖騎士パラディオンに授けた逸話で知られる「
百年前の
ただし、
で、有事に備えてその加護を受ける「聖騎士」を選んでおくのがまさに、いま王国を挙げて執り行われている聖騎士任命式典なのである。たしかに、いざという時そんな惚れた腫れたの話をやってる場合ではないから、理屈はわかる。
つまりだ。聖女は公衆の面前で、聖騎士になってほしい人の名前を
よく考えると罰ゲームみたいな儀式だけど、マリカ本人は楽しみにしていたようだから、まあ、いいのかな。
で、
──色々と複雑ではあるけれど、今は
かくいう私は、王城の大庭園に設置されたいくつものテーブルセットのひとつに、いつもと同じ紫の、ただしいつもより豪奢な典礼用のドレスを身にまとい腰かけていた。──これ
抜けるような晴天の下、白砂利の敷き詰められた会場前方に
その上に、空と同じ
なんだか本物の聖女っぽい、そう本人に言ったら大笑いしていた。ほんとに、いい子。だから、彼女にも幸せになってほしい。誰を「聖騎士」に選ぶとしても。
「──さあ、聖女マリカよ。騎士の名を」
彼女の傍らで、長い白髭をたくわえた高位神官が促す。
舞台下からは、数人の候補者たちが横並びでマリカを見上げていた。
白い礼服が似合い過ぎるほど似合うリヒトは、もちろん最有力候補。その傍らにはラファエルの姿も見えた。さすがにユーリイはいないが、端の方には黒いジンくんの姿もある。
ここにジブリールも並ぶ可能性があったということに、漏れそうになる苦笑を私は必死に噛み殺した。
マリカは、そのひとりひとりに順に、丁寧に目を合わせていく。リヒトのときだけ少し時間が長かったように感じられたのは、
最後に彼女は、空を見上げる。もう、心は決まっているはず。しかし、彼女はなかなか口を開かなかった。視線を上に向けたまま、すこし首をかしげる。
釣られて候補者も列席者もみなが見上げた青空。悠然と飛ぶ一羽の鳥の傍らに、黒い
──来た。
黒点はなめらかに拡がって、黒円になる。そして、真昼の青空に口を開けた、そこだけ夜空に繋がるかのような黒い穴の向こう側から。
「……あれは、何かしら?」
誰かの疑問に応えるように、紅い何かが産み落とされて会場のど真ん中に落下した。
響く破壊音と悲鳴のなかテーブルの残骸の上に立つのは、血のような紅色の鎧姿。
ジブリールの
お父様いわく、設計段階でジブリールは
──