空には更にいくつもの黒円が出現していた。
そこから同じ姿の、紅い
会場の各所に配備されていた近衛騎士隊が、訓練通りの見事に統制された動作で斬りかかり、その刃をあっさりと装甲に阻まれる。
そして次の瞬間には、いつかの私が
そのたび会場は、怒号と悲鳴がないまぜの喧騒で包まれていった。
「──聖女様、私めの
舞台上、ひらり跳び乗ったリヒトが凛然と言い放ちながら、マリカを背にかばう。胸のどこかで、ちりりと羨望がくすぶるのを感じた。
それらをぐるりと一瞥してから、ひとりテーブルに腰かけたままの私は、優雅に紅茶のカップを口元へ寄せる。ミオリが淹れてくれた、
──いつもありがとう、
別命を果たすべく、すでに傍らにはいない彼女に、心の底からの感謝を捧げる。
あの日、アニメで見たこの日の光景を、脳内で幾度リプレイしたことだろう。そのおかげもあってか、私は自分でも意外なくらい平常心だった。──さて、そろそろかしら。
「いたぞ! こいつが侯爵令嬢だ!」
暴力に酔い痴れた声が響く。重い足音と共に、五体の
「我らに従っていただければ、あなたの命
装甲に金ラインの走る兵長用
「そ、ご丁寧にありがとう。けれど、お断りさせていただくわ」
私は悠然とカップを置きながら、丁重に、そして毅然と吐き捨てた。
それを聞き届けると同時に、噴出した彼らの強烈な殺意が私の白肌を粟立たせる。
複製時の魔紋の変質により
しかしジブリールは、強き兵士のための
ああ、それで思い出した。アニメを見て私は「特撮なら絶対に同じ技術で変身して反撃する展開なのに」などと、そんなことを思ったのだ。今まさに
流れるような優雅さで椅子から立ち上がり、
「──まさか、それは?」
「そのまさか、かもね」
長い黒髪が紫の燐光をまとって背にふわりと拡がり、ドレスの裾がはためく。
「
そして私は、運命に抗う力の
「レイ!」
紫の炎が全身を包み込み、燃え上がったドレスは濃紫の
「ジョー!」
燃え盛る炎は凝結して黒い装甲となり、悪魔の如き姿を組み上げて。
「ガーッ!」
最後に炎は散華するように消え、兇々しき
「──どうなっている!? 王国に魔鎧は存在しないはずだ!」
「なんて禍々しい姿……それにこの凄まじい魔力は……」
浮足立つ
「これは……我々の魔鎧が……
「兵長、
「落ち着け、相手は一人だ! 全員で掛かれば負けることは……」
ジブリールの
同様に、
じわじわと後ずさる
「さあ──」
そして人数も体格も
「──