「──
私の宣言を聞き、さらに後ずさる
きっと彼らは、今日の任務を容易いものだと思っていたことだろう。対抗手段のない最強の魔鎧の力で、祭りに浮かれた王城を奇襲し、蹂躙し、制圧する。
そのはずだったのに。
「……ッ……怯むなっ!」
絞り出すように、兵長が檄を飛ばした。
「ジブリール殿の言葉を思い出せ、我らが
同時に四方の
なぜならそれらを統括する額の
「──あら、こちらのほうが
両サイドから挟撃する紅い拳を、それぞれの手首を掴んで止める。私の黒く鋭い魔爪が、紅い装甲に喰い込む。
二人の
そして、前後から迫っていた残り二体がその
「な……!?」
眼前で四人の部下を瞬時に無力化され、呆然とする兵長。彼が状況を理解し切る前に、間合いを詰めて紅い鉄仮面が覆う頭部を右手で鷲掴みにした私は。
「くっ、離せバケモノッ!」
両手で必死にそれを引き剥がそうとする兵長の、ご立派な金ラインが走る胸部装甲に──
「ダメでしょう、
──込めた魔力の紫光を纏う、左拳の乱打を叩き込む!
「
ボコボコに凹んだ胸部装甲が、その周辺から薄赤い光の粒子になって消滅していく。魔鎧が機能を失ったことで戦意喪失した兵長から、紅い兜を引き剥がし、顕わになった青年の怯え切った表情に、私は告げる。
「どうぞお見知りおき、くださいませ」
あとは近衛騎士に任せればいいだろう。周囲の状況を把握すべく、私は額の
そこに新たに埋め込まれているのは、私が五歳の誕生日から肌身離さず身に着けてきたお母様の形見──
──
そして視界に浮かぶ様々な情報。敵味方の数と位置関係、行動予測が半透明の3Dモデルとして投影される。パニックにまで到ってはいないが、参列者たちの避難はあまり上手く運んではいないようだ。
マリカとリヒトは舞台上、その奥には王妃様もいる。
マリカは
ならば、
身を屈め、両手を地面に着けた私は、クラウチングスタートのように大地を蹴る。ただしダッシュではなく、上空への跳躍──の頂点から、
「貴公は──!」
「待ってたよ、エリオットくん」
対するマリカは
そして、会場に背を向けた恰好で屈んでいた私は、ゆらりと立ち上がりながら振り向いた。
参列者は約百人と聞いている。対して第一陣の
「落ち着くのです、パラディウムの民よ」
鋭い牙並ぶ
「そして、よく聞きなさい」
魔力で増幅した音声には当然、魔力が乗る。
この半年でさらに磨き上げた魔力に伴って、強まった
私は、右手に掴んできた
その姿は、さぞや恐ろしく、忌まわしく映ることだろう。
それでいい。ダークヒーローが大好きな私は、よく知っている。
向けられる畏怖が大きければ大きいほど、深ければ深いほど──
「魔戦士ダンケルハイトの御名のもと──王国に仇なす者どもは、このレイジョーガーが討ち砕く!」
──味方になった時、最強に心強いということを。
そして私は
低い歓声が、ざわめきのように会場を包む。
「だから落ち着いて、この子たちの誘導に従いなさい」
集まる視線のなか、たったいま敵を砕いた手で指し示した先には、いつの間にかふわふわと白く光る球体がいくつか浮かんでいる。
その真下、舞台の前方で魔杖を掲げるラファエルが生み出した、メラるんたちだ。しかも彼らは事前に会場中のテーブル下に潜んでいて、このタイミングでラファエルの命を受け、一斉に活動を開始したのだ。参列者たちを、避難場所に導くために。
そして、これで
「ダンケルハイト、だと……どういう、ことだ?」
混乱しながらも、リヒトは剣の切っ先をゆっくりと降ろす。マリカはその
彼女たちには騙していたことを謝らなければいけないだろう。でも、それは後の話だ。運命に打ち勝つことが出来たら、その後で土下座でもなんでもしよう。
だから今は、舞台前方に集結しつつある二十体超の
私は再び額の
そして両手を左右からそれぞれ、額に指先そえるように構える。
「
さあ! 一網打尽にしてあげる!
「