「
肌を焼く熱気のなか、私は声を絞り出した。
はじめて
ついに結末は変えられなかったけど、この物語の
こうするしかない。だからこれでいい。これで──
……いい……のか……?
──いやだめだ! いいわけがない!
私は気付く。絶望的な状況のせいか、すこしエリシャの自己犠牲思考に引っ張られ過ぎていたかも知れない、と。
そうだ。
不器用だけど、誰よりも優しくて賢い、愛すべき孤独な少女。ハッピーエンドのための生贄にされ続ける彼女を、守れるのは私しかいないのだ。
──なにが「諦めないこと」だ! エリシャの
『だから、
そのとき聞こえたのはあの日、
そして火球の表面からするりと
その意味を、私は不思議なくらいすんなりと理解していた。
魔力を拳に込めるのではなく、開いた
「──
私の中に、まだこんなにも
そして、衝撃波を放った反動で私の体は高速落下をはじめる。起爆した火球の爆風から逃れるように、真っ逆さまに落下する。おかげでドレスのスカートがめくれないのはありがたい。
もう何をする力も残っていなかった。けれどこのまま地上に頭から激突する心配はないと、私は知っている。
「
空中で私の体を抱き止めたのはもちろん、仮面の下でめちゃくちゃに泣いていると思われる
「ありがとうミオリ、大好き!」
「だっ……わっ、わたたしもっ、だっだだいだだい……」
心の底から出た感謝の言葉に、戦隊モノの
頭上、空は火球の爆発で真っ赤に染まっていた。吹き下ろす熱風に庭木が燃えている。
傍らで天に両手を掲げたマリカが、ドーム状に光る
しかし、直撃より遥かにマシとして、これでは市街地の火災も免れないか。そう落胆して目を向けた城の外郭、城下町との境界にあるお堀からは、水と光の壁が立ちのぼって熱風を王城内に押しとどめていた。
城内に残った宮廷魔術師と神官たちが、城郭防衛用の大規模魔紋を起動したのだろう。本来は城内を守るための仕組みを、城下に被害を出さないため使う。この
「──ねえ、マリカ」
そして私は、彼女の傍らに歩み寄った。
彼女は上空に向けていた瞳を、私の視線に合わせて微笑む。
「あなたに私の最後のわがままを、聞いてほしいの」
アニメで見たエリシャの、最後のわがままは、
上空。薄れゆく赤光の向こう側に、漆黒のドラゴンは健在だ。
翼や体の一部から紫の粒子が微かに漏れ出しているから、無傷ではなさそう。しかし、
その考察を裏付けるように、開いた顎の奥には再び紅い光が点った。早くも第二射が来る。やはり魔力は有り余っているらしい。こちらには、もう対抗手段はない。
──そして私は、ものすごく腹が立っていた。
なにが
だったら! そんなものより遥かに熱くて熱い
「──絶聖の加護、私にちょうだい!」
「うん」
一瞬の躊躇もなく、満面の笑みで応えた
彼女の全身が淡い白光を放ち、その背中から左右に出現したのは、巨大な光の掌──いや、ぐんぐんと巨大化するそれは、まばゆい白光の翼となって、彼女と私をまとめて包み込んでいた。
光の中。私とマリカだけが向き合って立っている。
周囲にふわりと舞う光の羽根が私の体に触れるたび、マリカの想いが流れ込んできた。
みんなを守りたい、そのために自分の力を使いたい。根底にあるのは、幼いころに魔物から弟や妹を守れなかった、深い哀しみの記憶だった。
そしてあの日、エリオットに出会い、
はじめて学園でエリシャに会ったとき、すぐにエリオットと同一人物であることは気付いていた。何よりも、一緒のクラスで過ごせることが嬉しかった。
自分と同じように、誰かを守るために生きるエリシャが
だから、教団の偉い人がどんなに怒り狂っても関係ない。リヒト先輩からの告白もお断りした(……って、え……!?)。というか恋だの愛だの、まだよくわからないしどうでもいい。
彼女の想いと共に、無数の光の羽根が私の右手に、黒い
同時に、周囲の光も一瞬で消え、元の戦場に戻る。眼前には、目を閉じて胸の前に腕を組んだマリカがいて、頭上では、再び太陽のように膨張した紅き火球が輝く。
「マリカを、お願い」
「御意」
後方から、当然のように
尽きていたはずの魔力は、全身に
私はゆっくりと右腕を頭上に掲げる。その手首の黒い輪具には、輝く白い輪具が融合して二重構造になっていた。
「
高らかに、言い放つ。瞬間、輪具から溢れだし私の体を包んだのは、轟々と激しく燃えさかり絡みあう紫炎と白炎だった。
形成されてゆくのは、兇々しい漆黒の装甲に、神々しい白銀の装甲が融合した新たなる姿の魔鎧。背には純白のマントがはためき、淡く光る羽根がまとわりつく。
「──レイジョーガー、
その勇姿に相応しい名が脳裏に浮かび、私は迷わず名乗っていた。
背のマントをばさりと