魔王になりたい魔族と死霊の勇者(完)   作:発狂する雑草

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お久しぶりです皆さん
待っててくれた方はありがとうございます!
ようやくできました!!つかれた…つかれた!!!
今回で最終回。フィールの運命や如何に…!

今回も捏造と自己解釈満載です。
苦手な方は観覧を控えてくださいね。
それではどうぞ!!


さらばだフィール、また逢う日まで…!!

「あばばばば」

 

痴女系ピンクロリを撃破したフィールは月を背に浮かぶ少女をみてついに己の死を悟った。

 

数十分前、突然始まったピンクロリことアウラとの戦闘を何故かわからないがミラクルで大勝利したフィールは一息つこうとして途端に走った悪寒と、次いで飛んでくるやべぇ攻撃魔法を感じ取り咄嗟にその場から逃げ出す。そうして自身を攻撃してきた人物に目を向けようとして

 

「急いできてみたら驚いたよ」

 

その声を聞いて固まった。

顔からさっと血の気が引き、足がガクガクブルブルと震える。

そろりと顔を上げて振り返ればそこには

 

「あ、あばばばばっ」

 

尖った耳、長い銀の髪、そして冷たい殺気を帯びた瞳

トラウマ装置(フリーレン)がそこにいた。

彼女は感情の薄い声でいうが、驚いたのはこちらのセリフだと普段のフィールなら叫んだだろう。というか害意で気づけたからいいものの、下手すれば背後から発射されたくそやば魔法で焼き払われていた。無表情で怖すぎる。

その恐怖からかはたまたトラウマスイッチをガン押しされたせいかフィールの思考能力が百低下した。ただでさえアホなのに。

だからか先程から「あばばばば」としか言っていない。せめて言語能力は喋られるレベルまで思考を回復させてほしいが、ソレも無理な話だろう。

なんせ自分にとって最大の地雷が飛んできたのだから

 

そんなフィールの様子に気づいていないのかフリーレンはフィールの側で消えていく黒い粒子に目をやる。

 

「まさかアウラを殺すとは…それもそんな方法で」

 

そんな方法、というのはフィールの戦闘方法ではなくフィールが魔力を押さえつけていることを指す。

フリーレンはフィールの元の魔力量を知らないし、ドーピングしていることも知らないので自身と同じ魔力を抑えることで魔族を欺き、その意表をついて勝利したと勘違いしたのだ。

まぁ実際間違ってはいないが。

 

(…魔族にしてはずる賢いタイプか)

 

今まで自身と同じように魔力を抑えて戦う魔族など見たことがなかった。

更に先程の高火力の魔法

原理はわからないが素手であんなものをぶっ放しておきながら魔力の減量は見られない。あの程度じゃ減量しないほどの魔力量を誇っているのかそれとも何かカラクリがあるのか。

 

(どちらにしろ警戒したほうが良さそうだ)

 

葬送のフリーレンなどという通り名がつくほどに魔族を殺してきた彼女の勘が告げる。だがその勘は…。

 

「あばばっばばばー!!!!」

 

大外れであるが。

 

フィールはトチ狂ってるだけで微塵も狡賢くないし、フリーレンなら高火力の魔法数発連続発射するだけでフィールを秒殺できる。

このひでぇ勘違いがフィールの生存時間を伸ばしていた。

 

まぁ、伸ばしていただけだが

 

「ゾルトラーク」

 

途端に発射される魔法

思考能力が低下していても普段頭を使って戦闘しないフィールは獣のような勘で攻撃を交わす。

しかし一度交わしただけでは終わらない。次いで放たれる無数の魔法からフィールは必死に逃げ惑う。

 

過去に一度フリーレン含む勇者一行から逃げ仰せただけあって逃げ足だけは早かった。

だがこの場から離れることは出来ない。何故か。フィールの勘が言っているからだ。この場から離れれば死ぬと。

 

実際フィールの勘は正しかった。フリーレンはフィールがこの場にいる限り広範囲高火力の魔法が使えないからだ。

理由はすごく簡単。アウラの操っていた騎士の死体だ。

アウラが死んでも彼女が使っていた死体はアウラの魔法で作られたものではなく実在したものだ。故に彼女の魔法から開放されても死体はそこにあり続ける。

過去、死体を吹き飛ばしてヒンメルに怒られたことのあるフリーレンは死体を巻き込むような攻撃ができなかった。

 

彼女が死んだヒンメルの言葉など無視できるようなエルフであればこんな面倒な真似しなくて済んだのだろうが、彼女にとってヒンメルは大切な存在で、彼の言葉を無視することなどできなかった。

それよりもフリーレンはますますフィールに対する不信感が募る。

 

(死体を盾に逃げるなんて…嫌なことしてくるね)

 

勘 違 い で あ る

 

フィールはただ逃げているだけで死体を盾になんて考えていないし、そもそもフィールは未だに騎士の死体を魔族だと勘違いしている。

なんなら(寝てないで助けてよ魔族くんたち!!!)と内心叫んでいた。アホだ。とてもアホ

 

アホなフィールのアホさ加減など知らないフリーレンは僅かに顔を歪めた。

魔族嫌いなフリーレンにはフィールの存在そのものが不快なのでどんな行動をとろうが不信感が募ってしまうのだ。どんまいフィール

 

「ヒンリヒトゥング」

 

ある程度逃げ回って少しだけ気持ちが落ち着いたのだろう。フィールはべっしょべしょに泣きながらもトラウマに立ち向かうべく魔法を放った。

無数の光線とフィールの光が激突する。

辺り一帯がその余波を受けてか風が吹き荒れ、眩い光がその場の全てを飲み込んだ。

3秒ほどそんな状態が続く。拮抗するお互いの魔法。

だが力の均一が崩れた。

フリーレンが魔法の出力を上げたからだ。

それによりフィールの魔法が押され、そのまま吹き飛ぶ。

着弾寸前で魔法を切り替え厚めの防御魔法を展開したお陰でほぼ無傷だがその代わり魔力消費が激しい。

ドーピングのおかげもあり、魔力切れを起こすことはないが、フィールはこれをやりすぎると明日グロッキーになるどころか死ぬと直感していたので下手に消費できない。

 

フィールはダラダラと汗と血と大量の涙を流しながらフリーレンを見上げる。

アウラより魔力が少ないのに一切勝てる気がしない。

トラウマだからというのもあるが、魔法の発射速度、魔法の操作精度、なにより質が違いすぎる。同じ魔法を使っても術者の練度で魔法は意外と違ったりする。

あれだけの魔法を一斉放出しておきながら魔法の揺れが一切なく、かつ一つ一つが丁寧すぎる。

フリーレンの年齢は知らないが魔法の練度が高すぎる。どう足掻いても今のフィールには百パーセント勝てない相手だ。

だからこそフィールは泣いた。

 

「な、なんで攻撃するのっ!!この済まし顔ー!!あほー!!!ばーかばーか!えるふー!!!お前なんて孤独に死ねばいいんだー!!!!!!!!」

 

ぎゃぁわぁ!と子どものように騒ぎ立てるフィール

子供らしい見た目をしたフィールが泣きながら騒ぎ立てている。

その様子を見れば多少は申し訳無さなどが募ることだろう。

だが残念ながら相手はフリーレン

固定概念と価値観がガッチガチに固まった彼女にはそれが本心からくるものではなくただの演技に見えた。彼女は千年以上生きてきた大魔法使い。面構えが違う。

 

「なに騒いでるのかわからないけど、早く死んで」

 

無表情に告げられた言葉と同時に先程とは比べ物にならない速度と手数で魔法が迫る。

フィールは「あくまー!!!!!!」と大声で叫びながらそれら全てを捌く…が

 

「!!」

 

ふと目の前で銀の髪が揺れた。

フィールは魔法を捌くことに集中していて気付けなかったのだ。フリーレンが目の前まで接近してきていることに。

フリーレンの翠の瞳に魔法の残光が反射して白っぽく光る。その中には目を見開いたフィールの姿がはっきりと映った。

 

下に降りてきてしまった以上フリーレンは死体を避けて攻撃する必要がなくなった。

ゼロ距離からフリーレンは広範囲の魔法を打つことができる。

そうして彼女の杖に光が集まる。

僅か1秒にもみたぬ早業

しかしフィールにはその行動が驚くほどゆっくりに見えた。

 

避けなくてはいけない。そう思うのに体が動かない。

と、フィールはこんな状況なのにも関わらず、懐かしい記憶を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さいフィールはとある人物に頭を撫でてもらっていた。その人はよくフィールに物事を教えてくれた。

人間のことも魔族のことも。取り敢えずわからないことがあれば何でも教えてくれた。

あまり外に出たことがなくてもその人のお陰でフィールは外を知ることができた。

そうして上手くできると頭をなでて褒めてくれるのだ。

 

不器用ながらご飯も作ってくれたし、麦わら帽子をくれた。

なんでもその人には子供がいたが死んでしまい、その子に送る予定だったものをくれたそうだ。

暑くても人前では脱いではいけないと何度も念を押されてフィールはよく頷いていた。

 

そうだ。フィールに名前をくれたのもこの人だった。

 

魔族以外の生物は皆生みの親や育ての親が名前を与える。子供にとっての初めてのプレゼント。それが名前だ。

だが魔族は違う。文字通り産み落とされた魔族は服と同じように自分で自分に名前をつける。

フィールも本来ならばそうなるはずだった。だがフィールにはプレゼントをくれる相手がいた。

必死に考えてつけてくれた優しい名前をフィールは気に入っている。

 

あの人はどんな名前と顔と声をしていたっけ。

 

フィールがメモを取るようになったのはあの人のことを思い出せなくなったと気づいてからだった。

あの人が死んで、冷たい墓の下に埋まって…もう二度と会えないと知ったあとだった。

初めのうちは覚えていた。名前も顔も声も

だから実感がなかったんだろう。死ぬとはどういうことなのか。

人間と暮らしていてもフィールは魔族だ。そういった感情にはやはり鈍い。

あの人が死んでも明日は変わらず来るしフィールだっていつも通りだ。ただすこし、違和感があるだけで。

 

それだけだった。

 

でも次第に声が分からなくなって顔が霞んできて………遂に名前まで忘れて

そして次第になんとも言えない感覚に襲われた。

今までにないぐちゃっとした気持ちの悪い感覚

"一人は嫌だ"とは思えても明確に"寂しい"とか"悲しい"という感情までは理解しきれないフィールにとってソレはただの嫌悪感となってフィールの中に残り続けた。

 

必死に思い出そうとすればするほど記憶から遠ざかっていって嫌悪感が増す。吐き気がした。気持ちが悪かった。ぐらぐらした。自分の記憶力の悪さにあれほど苛立ったのはきっと後にも先にもあの一件だけだろう。

 

どうすればこの嫌悪が消えるのか答えが知りたい。そもそもこの嫌悪感はなんなんだ。

 

わからないことはあの人に聞けば大抵解決した。

だから死霊魔法を作った。

死体操術にしなかったのは死体が残ってるかわからなかったからだ。

死霊は本来触れないけど触れるように開発段階で設定した。理由は…多分頭をなでてほしかったのかもしれない。

頭を撫でてもらいつつ、知りたいことをきこう。ついでにもう忘れないようにメモでも取ってみるか。

 

 

だが残念ながら魔法は失敗に終わった。

 

 

出てきたのはあの人がよく着ていた服を身にまとった顔のない"ナニカ"だった。

触れるけど喋らないし動かない。

 

こんなものが欲しかったわけじゃないのに

やっぱりあの人のことが思い出せない。

 

 

 

きもちわるい。

 

 

 

 

 

ああ、でも今なら思い出せる気がする。

 

 

 

 

 

 

眼の前に迫る濃厚な死を前にしているというのにフィールは酷く穏やかな気持になれた。そうしてあの人の顔を声を…名前をゆっくりと思い出す。そうだ。あの人は確か……。

 

 

 

 

 

『腰が痛いのぉ』

 

 

 

 

 

 

隣のそのまた隣に住んでいたゴロウじいさん……。

 

 

 

 

「そういやいたなそんなやつ!!!!!でも思い出すやつ違うだろ!!!!」

 

フィールはどこまで行ってもフィールであった。

シリアルは作れてもシリアスは作れないのだ。

そんなアホの嘆きをBGMにゾルトラークが放たれる。

膨大な魔力はフィールの体を包みこみ……消し去った。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

そうしてその場に残ったのは死体と、無表情で杖を構えるフリーレンのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ありがとうございますフリーレン様」

 

フリーレンは多くの騎士から感謝を述べられていた。彼女が今回のアウラ討伐を行ったのだと彼らは勘違いしたからだ。フリーレンはそれを訂正しようと思ったが、彼らにとっては誰がアウラを殺そうがどうでもいいのだろうとわかったので、何も言わず大人しくしておいた。

 

「フリーレン様?どうかしましたか」

 

軽く食事を貰うフリーレン

彼女は無表情だ。だがどこか雰囲気が重い。

アウラという五百年以上生きた大魔族を葬ったとは思えないほどにピリピリとした空気を纏っている。

それを必死に押し隠そうとしているようにも。

騎士の質問にゆるく首を振って立ち上がる。

 

「もういかれるのですか?」

「うん。やることがあるからね」

 

かちゃりと空の食器にフォークを置いて立ち上がる。

そうして一言二言彼らと会話を交わしフリーレンは街を出るために門へ向かう。

 

「…」

 

無言で道を歩く彼女は顔をしかめる。思い出すのは先の戦闘でのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

フリーレンは一般魔法を放った。

ゼロ距離からの高火力広範囲魔法

フィールは咄嗟に防御魔法を展開するが突然の出来事に間に合わず大した厚みのない防壁が展開された。

それは僅か1秒すら防ぐことの出来ない脆い防壁だった。

フリーレンの魔法を前に防壁にヒビが入る。砕け散るまであと0,3秒

そうして、防壁が……壊れた。

それによりフィールの片手が吹き飛ぶ。

 

 

そう、片手が…だ。

 

 

防壁が壊れると同時にフィールの体がなにかに引っ張られるように横にずれたのだ。それにより全身を消し飛ばすはずがズレて肩から先が飛んだ。

人間にすれば致命傷にもなるが相手は魔族

この程度では死なない。

 

光に混じって鮮血がキラキラと宙を舞う。

フリーレンの目がフィールを追う。

そしてすぐに杖を構え………。

 

「………ぇ」

 

固まった。

体制を崩したのかフィールは座り込んでぽかんとしている。

殺せるチャンスだ。だがフリーレンの瞳はフィールのすぐ隣りにいる青年に向けられていた。

白いフードからは空を落としたような鮮やかな青い髪と澄んだ瞳、目元には黒子があって、優しそうな雰囲気を纏った青年

 

目を見開く。

 

彼は…間違いない。

ヒンメルだ。一瞬アインザームが脳裏をよぎる。

狡猾で貪欲で人しか捕食しない偏食家

死者の幻影を見せて人を誘い込む。

しかしフリーレンは「違う」と切り捨てる。フリーレンが間違うわけがない。あれは精度の低い幻なんかじゃない。フリーレンが会いたかった…大切だった彼がいた。

 

しかし彼はフリーレンに目を向けなかった。

いつもこちらを優しげな目で見ていたのに、彼の目は憎き魔族に向けられている。そもそも彼がフィールの腕を掴んで引き寄せ庇ったのだ。

 

なぜ? 

 

どうして??

 

あれだけ散々魔族は人とわかり合うことのできない生物だといったのに、どうして彼は魔族を庇っている?

どうして助けたの。どうして、どうして

 

 

どうしてこちらを見てくれないの…?

 

 

「ひんめ…」

「フィール!」

「っ、ハイマート!!!!!」

 

フリーレンの声は彼の声に掻き消され、ハッとしたように名前を呼ばれたフィールは魔法を唱えた。

途端にフィールの体がブレる。これは、ワープ系統の魔法だ。

フリーレンは逃がすかと魔法を放とうとする。だが間に合わない。

 

「……」

 

そして完全に姿が消える寸前

ヒンメルが顔を上げたのが見えた。

その表情は、どこか苦しそうな申し訳無さそうな…………そんな表情だった。

 

 

 

 

 

 

歩きながらフリーレンは考える。あのヒンメルの正体を

死体使役?あれは実態がなかった。暗くてよく見えなかったが足元が透けていた。

なら死霊使役?それもきっと"違う"

そもそも死体と死霊は"相手を従わせる"以外でも共通点がある。それはどちらも"死んだ時の姿"であることだ。

なのにあそこにいたヒンメルはフリーレンのよく知る若い頃のヒンメルだ。

若返っているのは可笑しい。というか死霊ならフィールに触れている時点でおかしいし。

なら他には…。

 

「"降霊魔法"の類か…」

 

死者の魂を入れ物に"縛り付ける"魔法だ。

任意の器に魂を引き寄せて縛り動かすことのできる魔法

恐らくこれだ。でも疑問がある。

 

「…降霊魔法は死体を器に魂を縛るのが一般的なのになんで1から作った?…それもヒンメルの見た目をしているの」

 

降霊魔法は禁忌の魔法だ。故に発動コストが高く、死体、次点でぬいぐるみなどに魂を入れるのが一般的だ。

無から有を作るより、モトからあるものを使ったほうが魔力消費を抑えられる、というのもある。

なのにフィールはヒンメルの全盛期の姿を、態々1から作ってそこにヒンメルの魂を縛り付けているのだ。

 

確かに死霊のように透過しているうえ、その他様々なオプションをつけられるというメリットはあるが、魔力を節約したほうがいいとされる現代においてそのコストは果たしてメリットと釣り合っていると言えるのか?

どうしてそこまで苦労するようなことをする?

 

「………ああ、なるほど、そういうこと」

 

ふとフリーレンの目に五十年前に作ってもらった勇者一行の石像が目に映る。あれは平和の象徴で一人残されるフリーレンのことを思ってヒンメルが建てさせたものだ。

みんなヒンメルを最高の勇者として覚えている。

勇者ヒンメルは五十年たった今でも愛されている。

何故か、魔王を倒したのもあるがなにより彼は誰よりも他者に優しかったからだ。強く優しい勇者ヒンメル

 

 

 

そのヒンメルと全く同じ顔をした人間が魔族とともに人を襲えばどうなる?

 

 

 

彼が勝ち取った平和だけでなく彼の積み上げてきた優しさも綺麗な思い出も全部全部踏み躙られる。

きっとフィールは最初からヒンメルの皮を使って人を襲うつもりだったのだろう。

そうして降霊魔法をつかい…引き寄せられたのがたまたまヒンメル本人の魂だった。

そしてフィールはこれ幸いとヒンメルの魂を縛り付け、彼の意思を無理やり魔法でねじ伏せ悪さの加担をさせている。

 

それならあの行動も、そして苦しそうな申し訳無さそうな顔も…納得がいく。

 

「……反吐が出る。最低に趣味の悪い魔法だ」

 

すぅっとフリーレンは目を細める。

 

「噂はずっと北上し続けていた。なら北の方に行ってみるか」

 

フリーレンは歩き出す。

特に目的のない旅をしていた彼女はこの日、確固たる目的を手に入れた。

 

フィール(あの魔族)を殺しヒンメルを開放する。

 

彼の思いを無駄にしないために

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「こ、こわぁぁああああ!!!やっぱ怖いじゃん!何あれ怖い!!うわぁぁぁあん!!!!」

 

さてさて、ヒンメルのアシストのお陰でどうにか逃げ延びたフィールはとある古い小屋の一角で千切られた肩を抑えビービーと泣いていた。

その側ではフィールと一緒に飛ばされたヒンメルが困ったような顔でしゃがみこんでいた。

先程まで自分の気持を優先しフィールを助けた結果フリーレンと敵対するような形を取ってしまった事実に罪悪感を含む様々な複雑な感情が溢れていたのだがフィールのギャン泣きにより自分の感情よりこの状況をどうにかしなくてはいけないと気持ちを切り替える。

 

一先ず肩を抑えているせいで涙も涎も鼻水も拭うことができないフィールの変わりにそれらを拭ってやりつつヒンメルは安堵の息を吐く。

 

ヒンメルはフィールが戦っている間、避難誘導の手伝いを少しだけしていた。

霊体である彼が見えるのは魔術を使える人間くらいだ。おまけに触れることもできないのでできることは限られているが、ヒンメルが見える人間に声をかけ

表では現在強い魔法使いが戦っているから兎に角避難誘導に尽力してほしい、ということを伝えて回った。

 

彼らの中には戦ったほうがいいんじゃないかという葛藤があってどうにも避難誘導に力が入っていないものも居たので効果は多少あっただろう。

普段なら深いフードを被った怪しい男の言葉など疑って聞きもしないだろうが、混乱状態にあるからか彼らはあっさりと信じて走り回ってくれた。

 

そんな時だ。

 

「な、なんで攻撃するのっ!!この済まし顔ー!!あほー!!!ばーかばーか!えるふー!!!お前なんて孤独に死ねばいいんだー!!!!!!!!」

 

そんな間の抜けた声が聞こえた。間違いないフィールだ。

また何を叫んでいるんだと呆れていれば、ふとヒンメルは気づく。"えるふ"という言葉に。

 

「……フリーレン?」

 

ヒンメルは魔力感知があまり得意ではない。ただなんとなくフリーレンが来ている気がした。

そして急いで見に行ってみれば大当たりだったわけで。

 

フリーレンの邪魔をした。

しかしそれでも、ヒンメルはフィールを生かすべきだと判断した。それがどれだけ愚かなことだと罵られようと彼は曖昧な"もしかしたら"に賭けたのだ。

 

フィールの試作品だったワープ魔法はどこに飛ぶかわからなかったがどうやらフィールがもともと住んでいた西の町に落ちたらしい。

町には普通に人が住んでいたが人と生活することに慣れているフィールは特に目立った問題を起こすこともなく魔王らしい悪事を働いて生活していた。

 

あのクソ薬の効果も切れ肩を直したフィール

これで冒険に生ける……わけだが

 

「いやだぁ!!もういや!こわい!!!!ブルーベリーが死ぬまで外でないもん!!!!!」

「フリーレンね」

「やだぁぁ!!!!ワープ魔法成功させてあの村には行ってあげるけどソレ以外はいかないぃぃぃ怖いぃぃぃ!!!!」

 

びぇぇぇぇん!と泣くフィール

新たなトラウマの追加に完全に外を怖がってしまったらしい。

だがフリーレンは生粋のエルフ

死ぬまでというが確実にフィールのほうが先に死ぬだろう。

駄々っ子のように泣くフィールにヒンメルは苦笑いする。

 

 

こりゃ次の旅に出るにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

こうしてフィールの魔王になるための旅は銀髪エルフに遭遇したことで(一旦)強制終了することとなったとさ。

 

 

 

 

「フィール。恐らくハイターが死んだかもしれない。会いに行きたいんだ。旅に出よう」

「えっ」

「後なんとなくだけどフリーレンがこの村に向かってきてる気がする」

「え"ッッッ」

 

 

 

なお、あくまで一旦である。

フィールの旅はまだまだ終わりそうにない。




フィール

今回死にかけた極悪魔族フィールさん
本人の知らないところで勘違いが加速してる。どんまい。トラウマがさらなるトラウマ拵えてやってきた。トラウマのハッピーセット。こわい。
因みにこのあとヒンメルに引っ張り出されてまた旅に出るけどフリーレンに命狙われてるうえに
やべぇ魔族に追いかけ回され監禁されかける。

ヒント 人間のことを知りたい魔族様がいるらしい。

どこまで行っても不憫。どんまい


ヒンメル

実は裏で避難誘導の手伝いしてたしなによりフィールを助けた方
ヒンメルからの好感度と信頼度が高くないとフィール死亡エンド直行だったのでセーフ
今回の一件でフリーレンに顔を合わせにくくなった。
彼の行動次第ではフリーレンの勘違いが更に悪い方向へと悪化する可能性大
そうなればフィールの死亡率が上がっちゃう!?がんばれヒンメル!フィールの命運は君に託された!!!


フリーレン

魔族が嫌いすぎてヤベェ方向へ勘違いしまくっているエルフ
フリーレンの考察自体は大体あってるけどフィールとヒンメルの思考だけが大外れしてる。
本誌まだ途中までしか読めてないけどなんか拗らせてそうだなこのエルフ、ということでクソ重感情を芽生えてもらった。
現在フィール絶対殺すマンになっているので遭遇したら間髪入れずに魔法ぶっ放してくる。こわい。
オレオールにいったところでヒンメルの魂はフィールのところにいるのだから先にアイツ殺さなきゃと思ってる。まじこわい




降霊魔法

死体でも死霊でもなくフィールが使ってたのはコレ
でもフィールの創作魔法なので完全にコレというわけでもない
効果は死んでから"四十九日"を超えていない現世に残った魂を創作した体に縛ることができ、相手を服従させる能力。喋れるし動ける。
更にオプションも付けられるがフィールはただある人に会うためだけに作ったので特にオプションはなく強いて言うならフィールが触れることくらい。
でもオプションあんまりついてないからこそ、魔力を四分の一食われるだけに済んでいる。

因みに器を1から創作するには魔法を発動した段階で誰かの姿を想像していたらその人の姿が出来上がる仕組み
フィールがヒンメルの皮を作れたのは大量に立並ぶヒンメルの銅像を見るたびに過去のトラウマがフラッシュバックしてヒンメルの姿が常に連想できてたから
さらにフィールが従僕を作ろうと思った理由もヒンメルが死んだことが関連しているのでそこでも無自覚でフラッシュバックしちゃっただけ、だからフィールの知る全盛期の姿で生まれた。悪意はない。

なお、場合によっては見た目がフリーレン、中身がヒンメルというやべぇ生物が爆誕する恐れもあった。
その場合、ヒンメルは自分の姿を鏡などで見るたび、とんでもなく複雑そうな顔をすることになってた。

余談だがフィールがヒンメルを従えることができなかったのは単純にフィールがヒンメルを従える姿を想像できなかったから。
せめて中身がヒンメルじゃなければ半年で従えることができたかもしれない。でもミラクルにミラクルが重なり皮も中身もヒンメルだから無理だった。


この魔法、使う人間が正しく使えば情報戦では頂点取れるし精神攻撃だけでなく、そのほか幅広く応用できるやべぇ魔法だったりするがフィールはアホなので宝の持ち腐れ感が否めない。





雑草

一応この話はコレで完結です。
ぶっちゃけまだまだ考えられそうなんですが頭空っぽにして作っちゃったからネタ切れでして…てへへ
気が向いたら番外編という形で出そうと思います。

また【教えてフィール!】みたいなフィールに向けての質問や、こんな話が読みたい!みたいなのがあれば気軽にコメントしていってください。勿論感想もお待ちしております。

それではここまでのご観覧ありがとうございました!


すっごい今更だけど表紙的なアレ↓

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