正直世界観を守って書けているのかどうか不安ですが、暖かい目で見てください。
今回は村篇です。
「ふぅ…結構時間かかったな」
はてさて、中央諸国グレーゼ森林に辿り着いたフィールたち。
「村まではもうすぐだ」
「そう。ならさっさと…」
そこまで言いかけてフィールの言葉が途切れる。
「どうかした?って…なにをしてるんだ…?」
不思議に思ってヒンメルが振り返ればフィールは茂みに上半身を突っ込んでいる状態だった。
ごわごわと生えた茂みからは下半身だけが見えている。
その状態を見てヒンメルは嘗てともに魔王を倒した仲間、フリーレンのことを思い出した。
よくミミックに食われていたフリーレンもこんな感じだったな、なんて思い出しながらフィールに近寄ればバッとフィールが勢いよく茂みから体を起こした。
「見たことない草、発見したっ!!」
頭に葉っぱやら折れた枝やらを乗っけたフィールはキラキラと目を輝かせる。
その手には青緑色の草が握られている。
「効能は後で調べるとして、一先ずメモしないと」
言うなりフィールは地面に座って分厚い紙にペンを走らせる。
ふとフィールの鞄を見るヒンメル
中身は何ともごちゃごちゃしており、魔道具やら薬草が詰まった瓶やらが入っているのだが、その奥には何冊もの紙の束が入っていた。
その全てが年季が入っており非常に分厚い。
「これ全部君が?」
フィールは薬草の絵を描きながら頷く。
「自分は記憶力があんまりよくないから記録するようにしてるんだ」
フィールの傍には五枚の紙が落ちている。
それは先程フィールが持っていた紙だ。
五枚の紙にはそれぞれ右上に中・東・西・南・北の文字が掛かれており、どうやら諸国の地図が書かれているらしい。
ヒンメルが知っているものより細かく、聞いたことのない村の名前や湖のことまで書き込まれている。
そのくせ、有名な村や大きな町の名前などは一切書かれていない。
「成程、行ったことのある場所を書いてるのか」
実際に村や町に立ち寄って地図に書き込む。自身の足取りを残すようにそうしているのだろう。
記憶力が低いから後の自分のためにこういった手段をとっているのだろうが…。
「あ!あっちのも見たことない!」
楽しそうに植物を採取し調べるフィールは矢張り魔族らしくないとヒンメルは思うのだった。
そうして寄り道をしながらフィールはやっと村へと到着する。
村の情報や名前を自作の地図に書き込みながら村をぐるりと見回す。
特に目ぼしい物もない、ごくごく普通の村だ。
きょろきょろとしていると一人の男性が近寄って来る。
「おや、一人旅ですか?珍しい」
「まぁ最恐だからな!一人で十分!」
「そうですかそうですか。すごいですね」
どや顔でいうフィールに対し男はにこやかに頷く。
フィールの見た目が幼いことからフィールの言葉をあまり真剣に受け取っていないのだと傍目から見ればわかるのだがフィールはそのことに一切気づいておらず「もっと褒めろ」と言わんばかりの態度だ。
「それで最強の旅のお方がどうしてここへ?宿をお探しですか?」
男の言葉にフィールは思い出す。ここへ来た理由を
「下手に言うと怪しまれるからここは宿を___」
「クヴァールの封印を見に来た!」
「…え?」
一瞬で空気が凍った。
フィールは空気が一変したことを感じ取って首を傾げる。
その隣、ヒンメルはため息を履いて頭を抱えた。
対する村人は先程の歓迎ムードから一変し、怪訝な表情でフィールを見る。
フィールはその反応に首を傾げる。
「クヴァールがここに封印されていることを知っているのは基本的に村の人間、そして僕らくらいなんだ」
ため息交じりにヒンメルが解説を入れる。
要するに突然他所から来た人間がクヴァールについて言ってきたものだから警戒されているといことだ。
先にいってよッ!!!
そんな事前情報を聞かされていなかったフィールは内心叫んだ。
「…どうしてそのことを?」
「あ、えっと、えとえとえと」
こちらを警戒しているのか少し声を低くする男にフィールは汗をダラダラ流しながらしどろもどろになる。
正直死ぬほど怪しい。更に疑惑に満ちた目で見られる。
「あ、ああ!そう!勇者!自分は勇者に頼まれてきたんだ!なんかあれでしょ。あれ!生前は毎年ここに来てたんでしょ!さっき本人から聞いて…じゃなくて!前に聞いたから!!!」
「ヒンメル様に?ですがあの方が最後に来た時、次はフリーレン様が来るだろうとおっしゃっていましたが…クヴァールを倒すためにと」
「……」
「……」
男の言葉にバッと音が鳴りそうなほど勢いよくフィールがヒンメルを振り返ればヒンメルは空を仰ぎ「今日も天気がいいなぁ」とほざいていた。
「あの、えっと…!あっブレーメンにも頼まれて!」
「ブレーメン?」
「フリーレンね」
「フリーレン!!!」
「……フリーレン様にも…」
「そう!」
こくこくと首がもげそうなほど頷くフィール
魔族は”言葉で人を欺く”生き物だ。
だが残念ながらフィールに言葉で欺く才能はなかったらしい。
言葉で人を欺くにはある程度の知力が必要だ。そもそも知力が低いフィールにできるわけがなかった。
それでも足りない頭を必死に回してそれっぽいことを言ったおかげか少しだけ疑いの目が薄まったのがわかる。
男は他の村人とひそひそと話したあと「そういうことでしたら…」とクヴァールが封印されている場所に案内してくれるらしい。
ほっとしてフィールは男についていく。
「ふ、ふぅ…何とかなった」
「なった…のかなぁ」
男の後ろを歩きながらフィールが小さい声で呟けば隣を歩いているヒンメルは苦笑いしていた。
この村の人たちがいい人たちだったから信じて貰えたものの、場合によっては門前払いを食らいかねなかっただろう。
「ここです」
男が指をさした先、そこには巨大な魔族の石像があった。
「うわでか」
実物を初めて見たフィールは目を丸くして封印されている魔族、クヴァールへと近寄る。
「うん。封印に淀みは見られない。まだ持ちそうだな」
クヴァールを見てヒンメルがいう。
同じようにフィールもクヴァールを見る。
封印、ということは戦闘後に隙を見て封印したのだろう。
だが勇者一行と戦ったという割に目立った傷もなく、表情も愉快そうな笑みを浮かべている。
それだけでクヴァールがどれほど強かったのかが予想できる。
しかし封印されてる。恐らく油断したところをやられたのだろう。
封印されているだけで死にはしない。きっとクヴァールも封印される直後にそう思ったのだ。だから余裕の笑みを浮かべている。
だが、できてしまった時間によってクヴァールは殺されるのだろう。
「助けようとは思わないのかい?」
「え、なんで?」
じっとクヴァールの像を見ていたからかヒンメルが聞いてくる。
だがフィールにとって助けるメリットがなかった。
「確かにこの封印なら、5年研究すれば解けそうな気はする。封印も少し劣化してきているし…でもそんなことしたら魔王になるライバル増えるじゃん」
フィールの夢は魔王になること。
魔王になって他の魔族を服従させ、ついでに人間も支配し最恐として君臨することだ。
その際強い魔族はライバル候補なので正直邪魔なのである。デメリットこそあれどメリットがない。
別に自分から進んで狩りに行こうという気は起きないが、わざわざ5年という月日を使ってまで封印を解いてやる気もない。
そういうとヒンメルはやっぱり苦笑いを浮かべただけだった。
・・・・・・・
封印の確認も済み、地図を制作するため、そして薬草研究をするため一週間ほど滞在したフィール
その際村の人たちに嫌がらせをして遊んでやった。
フィールの実力、そして邪悪さに打ちひしがれたのか一日目に感じていた疑念の目は気づけばなくなり、村の人間もフィールの言うことにホイホイ頷くようになった。
人間は心を折られると従順になる生き物だと聞いたので彼らは今その状態に違いない。
なんて極悪。恐らく初日の子供を魔法で空へ投げ飛ばしたことが効いているに違いない。
実際後ろで見ていたヒンメルは笑顔で剣をちらつかせてきていた。
勇者があんな反応をするくらいだ。きっと相当悪いことをしているのだろう。
まぁ?少し疲れてきたし、満足もしたから子供は降ろしてやったが。
断じてヒンメルが怖かったわけじゃない。断じて。
後はアカギレとかいうもので指を赤くしていた女を最近覚えた回復魔法の実験体にしたり、近くにいた獣から素材を入手するべく腸を引きづり出して堂々と持っていたりした。
人間は血が苦手で臓器などのグロイ物に
その後食事を献上されたのだが、その中で特に自作したらしいソーセージというのが美味しかった。やっぱりお肉は美味しい。
そして地図も薬草についても研究できたのでこの村を発つことにした。
一年後また来るとだけ言い残してさっさと村を出た。
「ところでフリーレンってあのめっちゃ怖いエルフ?」
村を出たところで村での一週間を思い出しフィールが尋ねる。
村に泊っていた間村の人たちから耳にタコができるほど勇者一行の話をされた。
主にヒンメルの話で、当の本人であるヒンメルは若干恥ずかしそうな、気まずそうな顔をしていたが。
そしてヒンメルの次によく出てきたのは魔法使いフリーレンだった。
「フリーレンは怖くないよ。優しいエルフだ」
「……人間にはっていう言葉が抜けてると思う」
今でも思い出す。
勇者一行と初めて出くわした時、即座に逃げようとしたフィールをフリーレンは何処までも追いかけまわしてきた。
滅茶苦茶真顔で、そのくせ目だけは冷たい殺気を漂わせて。
正直エルフに会ったのが初めてだったので生態を観察したかったのだが、あの目を見た瞬間即座にその考えは切り捨て逃げることだけに集中した。
お陰で何とか逃げ切れはしたものの次出くわしたらどうなるか。
「……そもそもどうして魔族だってばれたんだろ」
自身の角を隠している帽子に触れる。
何度も直した後のある麦わら帽子、これを被っておけば大概の相手は魔族じゃないと思ってくれるというのに、どういう訳かバレたのだ。
「フリーレンは勘が鋭いからね」
「鋭すぎて怖い」
思い出すだけで身震いしてしまう。
傷は治っているはずなのにお腹が痛くなったような気がした。
「それで、これからどうするの?」
「北側諸国の方を回る」
「北を?」
「北は寒い所って聞いた。寒いの苦手だから今まで行ったことがなかったけど…」
「けど?」
「魔王城って北にあるんでしょ」
「あぁ…」
その言葉でヒンメルはフィールの言いたいことを理解した。
「それに歴代魔王たちも皆北に城を構えていたって本で読んだ。
険しいところに身を置くこと、そしてやってきた人間たちをそこで追っ払うためにあえて険しい場所に身を置くって…!
つまり、魔王になりたきゃそこで生活できるようにならないといけない!!」
「南に城を構えてもいいと思うんだが…」
「あと北の方に言ったことないから行ってみたい!!!」
「本音はそっちか」
割と好奇心が強いフィールは殆ど行ったことのない未開の地が気になって仕方がなかった。
あと本物の魔王城を見て見たいというところもあった。
将来自身が魔王になったとき、デザインを参考にしようと思ったわけだ。
「あ、あとヒンメルって魔王様倒したんでしょ?魔王様ってどういう格好してた?紫とか緑のマント羽織ってた?」
「いや全身鎧姿だった」
「鎧…重そう」
「でも魔王になるには…参考にはしとくべき?」なんてブツブツ呟くフィール
「どうして君は魔王になりたいんだ?どうして憧れる?」
一先ず細かいことは実際に魔王城に行ってから考えるか、と早速北へ行く準備をしようと考えたところでヒンメルに尋ねられる。
単純な疑問だったのだろう。どうしてフィールがそうまでして魔王になりたがっているのか、その理由が知りたかったのだ。
だがヒンメルの疑問にフィールは首を傾げた。
その顔は”どうしてそんな当然のことを聞くのか”と言いたげだった。
「ならどうして人間は英雄や勇者に憧れるの?」
立場が違えば見える景色は変わる。そう偉い誰かが言っていた。
人間にとって魔王は”排除するべき悪”で、勇者は賞賛されるべき素晴らしい存在だ。
それなら魔族にとっての勇者は?魔王の存在は?
魔族と人間は価値観が違う。
生きている環境、生まれ持った考え方が違うのだから仕方ない。
だからきっと、その考え自体は間違っていないのだろう。だが
「かっこいいから憧れる。強いからなりたいんだ」
「……そうか」
根本は近いのかもしれない。
「と、その前に」
「ん?」
「路銀無い。ヤバい。こうなったら人間から毟り取るか…北の状態もわかんないし、多めに貯めとこ…何年かかるだろ。その間に準備品揃えないと」
人間から毟り取るなら一か月もかからないだろ。そもそも魔族が路銀って…。
だがヒンメルは空気が読めるのでその言葉は呑み込んだ。
フィール
極悪魔族。魔族のくせに人を言葉で欺くのは苦手らしい。
よく見たものをメモする癖がある。薬草を集めて調合したりするのが結構好き。楽しい。
フリーレンが苦手。怖すぎる。
魔王といえば紫とか緑とかのマント羽織って北のクソ寒くて崖ばっかの不安定な場所に城を築いているイメージがある。あと雷とか鳴らして高笑いしてそう。
実は高笑いの練習して、ヒンメルに目撃されて引かれたことがあったりする。
色々変わっている感性を持っているがやっぱり魔族に変わりないので割と欲に忠実なところはある。
次の回があるなら恐らく只管人間から路銀を毟り取る回だと思う。働く魔族様…じゃなかった、極悪魔族様なので。
ヒンメル
村の村長にフリーレンの話をしたことをド忘れしてた。
それはそうと村の人たちの元気そうな顔が見れてよかった。
魔族だからやっぱり浮遊魔法得意なんだなぁってフィールを見て思っていたが、子供を浮かした時は流石にひやひやした。遠回しに脅した。
村の人から自分たちの話を聞いて内心恥ずかしかった人
自分で言うのと相手に言われるのは違うから…。
でも村の人たちからの話を聞いて昔を懐かしんだ。仲間たちに会いたいとは思うが今の状況じゃ会えないだろうなと思っている。
銀髪のエルフ
人間には優しい、魔族は絶対殺すマンなエルフ