魔王になりたい魔族と死霊の勇者(完)   作:発狂する雑草

4 / 12
四話!
まさか見切り発車の気力がここまで続くとは、驚きだぜ!!
それはそうと魔族の死体って残らないモノだってことに最近気づきました。
他のゲームやマンガじゃ魔獣とかの肉を食べたり骨を材料にしたりするからそっちに引っ張られちゃってたぜ!!
相変わらず原作のヒンメルがいい人すぎて…。
はぁぁぁあああああ…辛


君が泣こうが喚こうが自分は食わせることをやめないっ!

「はぁ、はぁ…豚人間ごときが…て、手間取らせよって…」

 

激しく息切れをしながらフィールは足元に転がる魔獣をぶっ飛ばした。

 

さて、村を後にしたフィールは北へ行くことを決めたのだが、北は酷く寒い所だと聞くのであったかい服とか色々揃えるべきだろうと考えた。

だがそうすると当然路銀がいる。

一応人間から献上された路銀があるにはあるがそれでも少々心もとない。

なので路銀を人間から毟り取ったり献上させたりするべく、魔族としてその実力を人間どもに見せつけているのだ。

たった今人間が豚みたいな顔の魔獣に襲われていたので追っ払おうとしたら襲い掛かられたのでぶっ飛ばしたところだ。

数が多かったが…こんな雑魚も倒せないなんて人間は実に弱い生き物だな、とフィールはゼーゼーと息を吐きながら思う。

 

うん。すごく余裕だった。余裕だった!!

 

フィールの実力を前に屈したらしい人間から献上された路銀を袋に入れた。

 

 

 

「ふふふ…人間は愚かしい生き物だ。散らかしたものを自分で片づけることもできないなんて!整理整頓ができないのは気が緩んでいる証拠だ!」

 

またある時は人間の散らかした粗大ごみなどを処理してやる。

人間は非力な生き物であり、とても愚かしい生物であるため、大きなゴミを捨てるくせに処分や片づけは出来ないらしい。

更にそのゴミが腐って空気の汚染、植物を枯らすほどに被害が拡大しつつあると来た。

なんと愚かしい。仕方がない。綺麗にしてやろうとフィールは魔法を使う…が。

 

「…明日やる」

 

フィールは魔法において天才的ではあるが、魔力量自体は滅茶苦茶多いわけではない。

ただでさえ今はヒンメルに魔力を食われている状態なのだから余計だろう。

なので流石にこの量のゴミの片づけ、それにプラスして空気の洗浄、植物の再生には一週間以上かかる。

先程まで高笑いしそうなほどにふんぞり返っていたというのに今じゃとてもげっそりとした様子で本やら薬草やらで死ぬほど散らかっている宿の部屋に戻っていた。

 

 

 

 

「ふ、ふーはっはっ!成程?これも魔王になるための試練という奴か

ふふふ、恐怖を克服して見せろと、そういいたいんだな?」

「あの旅のお方、別に無理にとは…」

「無理じゃない!!!」

 

恐怖を克服するためフィールは”勇者一行”の銅像を磨くこともあった。

見ているだけで正直切られた腹がとても痛い。

しかし自分は誇り高き魔族!将来魔王になる存在!

そんな存在が勇者一行なんぞに…それもただの銅像を前に屈するわけがない。

 

銅像を一瞬でピカピカにする魔法があればこんな思いをしなくて済むのだろうが残念ながらそんな魔法覚えていないので直に拭くしかない。

正直、勇者ヒンメルの銅像と僧侶ハイターの銅像はすんなり終わった。

なんせ勇者は本物を毎日見ているし…なんなら真後ろで「今日も平和だ」とか言ってるし、ハイターには何かされた記憶はないので。

ただ問題は魔法使いフリーレンと戦士アイゼンの銅像であった。

 

浮遊魔法で浮いて磨いてもいいのだが長時間の浮遊は疲れるので梯子に乗ってビクビクしながら銅像を磨いていく。

アイゼンの銅像をやっとこさ拭き終わり、最後はフリーレンの銅像だ。

 

「ただの銅像ただの銅像ただの銅像ただの銅像」

 

自分に言い聞かせるように呟いて只管無心で銅像を磨く。

大丈夫大丈夫、こいつは所詮ただの金属。絶対に動いたりしないから大丈____。

 

「フリーレン」

「ひっ、あ、ぎゅわぁぁ、あぎゅッ!!!」

 

”フリーレン”という単語を聞いた瞬間大袈裟に体をびくつかせるフィール

その弾みで梯子が揺れ、そのまま地面に落っこちた。

ゴンっという音が後頭部でなる。

正直滅茶苦茶痛いがそんなこと気にしている余裕はなくフィールはしゅばっと銅像の後ろに隠れた。恐る恐る銅像から顔を出す、と。

 

「フリーレンのこと怖がり過ぎ」

 

先程まで平和に和んでいたヒンメルがクスクス笑って立っていた。

 

「べ、別に!フリーレンなんて怖くない!ただほら!エルフってあんまり戦うことを好まないって聞いたから、仕方なく避けてやってるだけ!」

「どうだか…まぁでも。確かに君はフリーレンと遭わない方がいいだろうね」

 

「会ったら多分殺されるよ」とヒンメルが不穏すぎる言葉をいう。

そんな穏やかな声と顔で不穏なことを言われても怖いだけだ。

フィールは泣きそうになりながら絶対にフリーレンと遭わないでおこうと心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 

勇者ヒンメルの死から2年

 

去年宣言した通りフィールは律儀にクヴァールの封印を確認し、ついでに路銀を巻き上げたフィールは金の入った袋を揺らす。

去年よりかなり重たくなった袋。道具などを揃えてもなおこの量だ。

これならそろそろ北側を目指してもいいだろう。

ただ、保険のためにも道中で金を搾り取りはするが

 

北がどうなっているのかわからない以上、一年後に戻ってこれるかどうか。

ヒンメルに言われているのもあるが、この村はフィールにとっていい食糧庫であり金ずるだ。

逃げられたり死なれたりしたら溜まったものじゃないのでクヴァールの周りに結界魔法をかけ、村全体にもかけてやった。

 

人間を道具のように思っているその冷徹さ。

とても邪悪で魔王っぽいとフィールはふふんっと鼻を鳴らした。

 

さて、これで食糧庫兼金ずるたちの心配も要らないだろう。

ということでフィールはいつも通り寄り道しながらも北を目指すことにしたわけだが、ふと細い道を発見したのでそちらにふらっと向かう。

意外とこういう寄り道をした結果、レアな薬草が手に入ったりするのだ。

そうしてそのまままっすぐ歩いていけば土砂崩れがあった。

凄く邪魔だったので吹き飛ば___。

 

「吹き飛ばした土砂が人に当たったら危ないだろ?」

「そんなの気にしたって」

「危ないだろ?」

「……はい」

 

吹き飛ばそうとした…が魔力の消費が激しそうなのでやめておいた。

決してヒンメルにビビったわけじゃない。

 

地道に土砂を崩して道を開拓する。

そうして漸くすっきりした道を進んでいけば小さな家が立ち並んでいた。

どうやらここは集落らしい。

それもかなり古臭い。家は保全されることなく罅だらけだし、屋根だって強風でも吹けば崩れ落ちそうだ。

そして人間はというと皆痩せこけて居たり怪我をしていたりしている。

ヒンメルが顔を歪め、人が生きているのか確かめて回っているのを横目にフィールは笑みを浮かべた。

 

人間に力を見せつけ服従させ、金を献上させることには成功しているが憂さ晴らしは長らくできていないのだ。

ここの人間どもはどうやら生きてはいるものの虫の息

金を献上できるなら見逃してやってもいいが、どうせ金目の物など持っていないだろう。

それならば息絶える前に楽しませてもらおう。丁度いい物も持っていることだし

 

鞄の中に入れているとある袋を取り出してフィールはあくどい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ヒンメルからみてフィールという魔族はそれは変わった魔族であった。

ヒンメルは過去に魔族の少女に同情し、人間を襲ったことへの反省のチャンスを与えることにした。

フリーレンは後悔する、といったのに、彼はそれを振り切った。

 

結果魔族の少女は街の人間を襲い、一人を殺める結果となった。

魔族の言葉は人と交友関係を築くためのものではない、人を欺くための物だ。

生まれた時から孤独に生きている魔族に”人を思いやる心”など存在しないし”罪の意識”なんてものもないとその時に彼は思い知った。

 

それからはいくら命乞いをする魔族を前にしても容赦なく切り捨てた。

魔族は人の言葉を喋るだけの獣だと。そう割り切った…はずなのだが

 

「なにしてるの?」

「ふふふ、人間に苦痛を味わわせるための準備をしているんだ!あ、止めるなよヒンメル!

俺様は偉大なる魔王になる魔族!誰の言葉も聞き入れないのだ!はーはっはっは!!」

「……」

 

苦しそうに地面に力なく倒れている村人は生きてはいたものの、危ない状態になっていた。

傷と飢えによる衰弱。水分も取れていない様子だった。

しかし今の自分には何もできない。ただの死霊である自分は彼等を介抱することは疎か声をかけて励ますことすらできない。自身の無力化さに苛まれる。

唯一この状況を打開できる可能性を持つフィールにどうにか頼んでみようとフィールが入っていった村人の家に入り

 

何故かフィールが料理を作っていた。

 

そもそも魔族に料理という概念があること事態驚きだった。

ヒンメルの言葉に何故か高笑いをするフィール

見た目が子供の姿をしているからか一ミリもセリフが似合っていないが本人が楽しそうなのでヒンメルは突っ込まないでおいた。

 

「人間が到底食べられないモノを作って無理やり食べさせる。流石自分…最高に魔王してる」

 

フィールは袋から取り出した赤黒い塊を白い液体の中に入れる。

ぽちゃんっという音と共に白い液体にぷかりと塊が浮く。

その他にも緑やオレンジ、黄色といった色の物体が浮いている。

それを大きなスプーンでぐるぐる混ぜる。

大量の煙がもくもくと立ち込め、液体の表面がまるでマグマのようにぐつぐつとしている。

 

「はーはっは!人間ども絶望しろ!!これを食べてな!!」

 

そういってフィールは上機嫌に鍋の中身をよそいぐったりとしている人たちに渡す。

それを村人たちは勢いよく食べ始めた。

一口食べた村人たちは涙を流し、ソレに…”クリームシチュー”にがっついている。

 

そう、フィールがさっきまで作っていたのはクリームシチューだった。

赤黒いものは半日前に受けた仕事の報酬で渡された動物の肝だし、色とりどりの物体は切られた野菜だ。特に変なものが入っている様子はない。

ただ調味料があまり揃っていないのか少々味気なさそうではあるが、飢餓に苦しむ人々にとってはご馳走といえるだろう。

 

「さぁ口内を火傷し苦しみ藻搔け!」

 

フィールの言葉を聞いて「ああ」とヒンメルは思い出す。

 

そういえばフィール、かなりの猫舌だっけ

 

熱々の物は中々食べられなくて、前に仕事を受けた際、依頼主の好意で食事を貰っていたが、その時に出されたスープ一杯を飲むのにも一時間以上かかったことを思い出した。

 

「そんな腐った雑草を口にする羽目になるとは、哀れな人間だ!」

 

更に言うとフィールは野菜が大嫌いであった。

見た瞬間刻んで調合の素材に変えるくらいには嫌いだ。

その為、野菜を”腐った雑草”と呼んでいる。

 

「動物の肝なんていう貴様ら人間にとって悍ましい物を食べるなんて、さぞ不快だろう!泣いたって無理やり食べさせてやるわ!」

 

あとなんの偏見なのか人間は動物の内臓などに並々ならぬ恐怖を抱いているものだと思い込んでいるらしい。

実際は別にそういう訳ではないし、なんなら普通に食べるのだが…それを知らないフィールは腕を怪我しているらしく食べられずにいた人にシチューを食べさせてあげていた。

 

「苦しみ藻搔いた人間に追い打ちをかける。どうだ苦しかろう!」

 

全員がシチューを食べ終わったところでフィールは緑色の液体を村人の口に突っ込んで回った。

呑まされた村人は全員顔を真っ青にして藻搔いている。

まさか、と思いヒンメルは村人に駆け寄る。

場合によっては即刻フィールを倒さないといけない。

例え自分も消えることになったとしても…それが何もできない自分の務めだ。

 

「……治ってる」

 

だがどうやらそれは杞憂だったらしい。

見れば村人の体にあった傷が急速に癒えていた。

そこでフィールの手を見る。

フィールの手に収まっているものは魔道具で、それには見覚えがあった。

それは”回復促進の魔法薬”を入れた魔道具だった。

 

「良薬は口に苦しってことか…」

 

よかった、とヒンメルは脱力する。

ただ相当苦いのか村人たちは呻いているがそれで命が助かるなら安い物だろう。

ヒンメルたちの旅には僧侶であるハイターがいてくれたおかげで魔法薬を飲んだことはないがそんなに苦い物なのか。想像が全くできない。

生前に一度くらい飲んでみてもよかったな、とヒンメルは思った。

 

「あ、薬草とりにいこ。なんかさっきあっちの方にそれっぽいの見つけたし。ついでに魔獣も邪魔だし追っ払おう」

 

フィールは薬草探しに行く。

その際、使役の関係上あまり離れられないのでぐいっと体が引っ張られる感覚がしてヒンメルは村人から離れ、フィールが消えた方へ歩いていく。

 

魔獣を魔法で吹っ飛ばして薬草を採取する姿が見える。

かれこれフィールと一緒にいて二年と少し。

自分が絆されてきている自覚はあった。

この魔族なら、信じてもいいんじゃないか、と。

人間と魔族が共存することは絶対に不可能だと言われていたがフィールのような魔族がいるのなら可能なんじゃないだろうかと、そう思ってしまうほどに。

 

「……フリーレンに怒られてしまうかな」

 

もう会うことが出来ないであろうエルフを思い出して、ヒンメルは苦笑する。

それでもやはり彼は願わずにはいられないのだろう。

誰も傷つくことのない平和な世界を。たとえそれが幻想だと言われても。

 

願うだけなら、罪ではないのだから。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

大量に魔獣をぶっ殺し、近くにあった薬草を採取

毎日人間に到底人の食べるものではないであろうゲテモノを食べさせ、精神を削り、死んだ目をした人間どもで遊び気づけば3か月が経過していた。

 

人間は弱いが逆境に立ち向かえる強い心を持つ生き物だということはどうやら本当らしい。

あんなに虐め倒し苦痛を与えたというのに人間たちは気づけば生気に満ちた目で慌ただしく走り回っている。

 

この集落は森に囲まれており、魔獣がよく生息する場所らしい。

今までは魔獣に襲われても購入した武器などで追っ払っていたそうだが、土砂崩れが発生し、近隣の村や町へ行くことが出来なくなってしまっていたらしい。

土砂を崩すにも時間が必要

その間に食料はそこをつき、武器もとうとう壊れてしまい、侵入してきた魔獣に家が滅茶苦茶にされた、ということらしい。

 

正直その話をフィールにして何の意味があるんだ、という感じだが、その後見たことのない薬草を献上されたのでまぁいいだろう。

ついでにこの新しい薬草と今まで持っている薬草を組み合わせて前々から気になっている薬品でも調合することにする。

 

そうして試行錯誤を重ねて薬品が完成したのは更に2か月後のことであった。

薬品も完成したし、もうこの村に用はないので先程からチラチラと目障りな魔獣を粗方吹っ飛ばしてから村を出る。

 

「魔王城魔王城」

「魔王城にそんなワクワクして向かうのは、君くらいだろう」

「魔族なら皆行きたがってるはず!」

 

思ったより面白い薬品が出来たことに機嫌をよくしながらフィールは北を目指して歩きだす。

 

 

 

魔族と死霊の旅はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヒン、メル…様…?」




フィール
この度人から金を巻き上げて回った極悪な魔族
魔法に関しては天才的だがそれと魔力量は関係ない。
魔力量は多い方ではあるが飛びぬけて多いわけではない。更に言うと現在四分の一くらいをヒンメルに食われている。
魔力が尽き果てればヒンメルを維持できなくてヒンメルを強制的にお帰り願うことが出来るのだが、本人は思いっきり忘れているため普通に魔力セーブしてる。
魔族にとって魔力は命のみなものみたいなものなので故意でもない限り基本的に使い切らないようにストッパーかけてる。
荷物の整理とかするの苦手なのですぐごちゃごちゃする。
やっぱり勇者一行は苦手らしい。
薬品作りが楽しくて好き。だからか料理も割と得意
究極の猫舌。野菜が大嫌い。食べずに捨てたいが”食の恨みは恐ろしい、呪われるぞ”と昔言われたので食べない代わりに薬品の材料に変えるようにしているらしい。


ヒンメル
大分絆されてる。
過去の失敗から魔族と人が共存するのは無理だと分かっていつつも、それでもどこかで”もしかしたら”を願ってしまう。
生前行けなかった村や町、見たことのない場所にも行けているので割と死霊ライフは謳歌してる。
最近はフィールの珍行動を見るのにハマっているらしい。


銀髪のエルフ
まだまだ一人旅をしているエルフさん。
魔族と人間の共存?何を言っているの、無理に決まっているでしょう?
1000年以上生きたうえでの主張。言葉の重みが違う。
このエルフ淀みない澄んだ瞳で魔法ぶっ放すと思う。こぁい。

それはそれとして最近ヒンメルを見たっていう噂が流れてきてるんだけどどういうこと?

今のところは半信半疑なので様子見しているが、このエルフが本格的に動き出すとフィールと出くわす確率があがるゾ!大変だ!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。