魔王になりたい魔族と死霊の勇者(完)   作:発狂する雑草

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今回オリジナルの街や魔獣、呪文が出て来ます。
また自己解釈が入っている部分があるのでそういうのが苦手な方は回れ右をお願いします!

今回”魔法使いの杖”について自己解釈を入れています。
雑草は駄目な雑草なので本誌を全然読み進められていない状態で書いてます(金がないんです(;´Д`))
最新刊まで読んでいる方の中には「は?そんな理由じゃねぇし」となる可能性もありますが暖かい目で…どうか暖かい目で見てください(;^ω^)

また何度も言いますが脳みそを空っぽにして読んでください。小難しいこと考えちゃ駄目です。雑草もノリで書いてるだけなんで。
雑草ワールドでは考えた奴から(精神が)死にます☆

合言葉は”考えるな、感じろ”


ふーふっふ、さぁ俺様を崇め奉れ人間どもぉ!!!

晴れた空!爽やかな風!瑞々しい木々!

そして

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

まるでお手本のような絶叫!

 

現在最凶魔族、フィールは全速力で道をかけていた。

何故かというとフィールのすぐ後ろに魔獣が迫っているからだ。

ただの魔獣ではない、体が非常に硬い大型の魔獣…その"大群"だ。

まるで地震かのような地響きと振動が魔獣の足元から響く。

振り返る余裕もなくフィールはただただ走った。

 

さて、どうしてこうなっているのか。

それは遡ること1時間前

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

中央諸国シェーン

そこは小さな街ではあれど活気で溢れた華やかな街

そこへフィールはやってきていた。

街の中央広場にはヒンメルの銅像が立っており、ヒンメルも生前来たところだと分かったフィールはヒンメルに宿の場所を聞いた。

というのも初めて来た場所には最低でも一週間は居座るようにしているフィールは当然この街にも一週間居座る気満々であった。

そうしてヒンメル案内の元宿屋にやってきたのだが…。

 

「すみません。現在満室でして」

 

宿屋が満室で部屋を取れなかったのだ。

ここは小さな町だ。他に宿もなく、これは野宿か。

でも魔王は野宿なんてしない。

どうしようか、なんて思っていると老人が声をかけてきたのだ。

「一週間程度なら家に泊まれ」と。

なのでフィールはその誘いに乗ってやった。

 

そして将来魔王になる魔族として老人にその威厳を見せるべく、人間のできないことをやってやることにした。

老人はどうやら一月ほど前に道中で魔獣に襲われ荷物を取られたらしい。

もう歳で、魔獣に立ち向かうこともできないため、自分では到底取りに行けず、だからといって人に頼めるほど金を持っていないそうだ。

 

魔獣に荷物を取られるなんてなんと間抜けな、とフィールは老人を嘲笑った。

そしてその荷物を持って帰ってきてやればこの人間も今までの人間のように自身に尽くし屈服するに違いないとフィールは早速街を出て老人が言っていた魔獣を探しに向かった。

 

老人が言っていた魔獣はロブスト

非常に硬い皮膚を持ったイノシシみたいな魔獣だ。

その皮膚の硬さは竜の牙を折った、なんていう逸話が流れるほどだ。

ということでロブストが生息している洞窟に入る。

ロブストは朝に弱い生き物だ。現在時刻は午前5時

予想通りロブストは健やかに眠りについているのでそーっと抜き足差し足忍び足で近寄る。

ヒンメルが物体に触れれば代わりに行かせるのだが、どういうわけかヒンメルはフィールにしか触れないため仕方無しにフィールがいく。

 

そうして老人のものであろうリュックを発見し、そーっと手繰り寄せる。

 

「あ」

 

その際、リュックから水筒が落ちた。

狭い洞窟に水筒の金属音が高く響く。

 

「………」

 

体をこわばらせて静止する。

ぴくんっとロブストの耳が動いて……だがまたぺたんと耳がたれた。

どうやらなんとか起こさずに済んだらしい。

 

「あー、よかった〜」

 

安堵したフィールはほっと息を吐き……。

 

「ん?」

 

足元から違和感を感じた。

その感覚に導かれるようにフィールは視線を自身の足元へとずらす。

 

そこには茶色の紐、否、紐というには分厚く、毛深いような…。

 

「フィール、今すぐ逃げた方がいい」

 

そばで見ていたヒンメルの言葉がすべてを物語っていた。

 

 

そうして冒頭に戻る。

 

 

リュックを抱えフィールは大量のロブストの群れから逃げ出していた。

一体やそこいらなら何とかできたが流石に大群はヤバい。

 

「ひぎゃぁぁぁ!!!!」

 

フィールの悲鳴がそれを物語っていた。

というか魔族にあるまじき声が出た。

 

だが仕方ない。フィールは欲に忠実なので恐怖にも忠実である。

考えてみて欲しい。

自分よりでかい生き物が大群になってどこまでも追いかけ回してくる恐怖を

しかも魔法を使うにもクソ硬い皮膚に全部弾かれているのだから絶望でしかないだろう。

 

「ヒンメル助けろぉ!!!」

「無理」

「諦めんなよ勇者だろ?!」

「時には諦めも大事なんだよ」

「それ死ねってこと?!」

 

ダメ元でヒンメルを頼ってみたがとてもいい笑顔で断られた。

なんてやつだ。というかヒンメル、ロブストに座ってるし。

乗馬みたいに乗ってるし、フザケンナこっちは命がけで走ってるってのに何優雅にしてんだ。

てか死霊だから実際乗れてないんだろうけど!なに遊んでんだ。

 

絶対殴る後で殴る……想像の中のヒンメルを!!!

 

涙目になりながら只管走る。

なにか打開策をと考え、必死になって記憶を絞り出す。

 

「あっ!」

 

そこで一つ思い出す。

そういえばロブストはリーダーの指示に忠実な生き物だと。

そのリーダーを倒してしまえば止まる可能性が高い。

ロブストは外側が非常に硬いが、恐らく体内は固くないはずだ。

それなら食いちぎられる可能性があるが口内に腕突っ込んで魔法をぶっ放せば何とかなるかもしれない。

いや腕食われるのは怖いが、一体だけなら食われる確率も低いだろう。というか食われないことを祈るしかない。

そうと決まればさっさとロブストのリーダーを倒そう。

 

「ってリーダーどれだよ!!!」

 

全く同じ大きさに全く同じ顔、性別すらわからない魔獣を見てどうやってリーダーを見つけろというんだ。普通に無理である。その手の魔法が使えればいいのだろうが、残念ながらフィールはサポート系の魔法は全体的に苦手なので使えるわけもなく。

 

「こう、なれば」

 

ききっとフィールは足を止める。

先程まで勢いよく走っていたものだから突然の停止に靴底が地面を軽く抉った。

 

「全員ぶっとばしてやらァっ!!」

 

涙目になりながらフィールは叫んだ。自棄である。

その声は震え、上ずっていたと後にヒンメルは語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ふぅ…」

 

数十分後、フィールはダラダラと汗を流し、肩で荒く息をしながら立っていた。

地面には黒くなって消えていくロブスト

フィールは何とかロブストの群れを倒すことに成功したのだ。

そして腕も無事である。ちょっと…いやかなり血が流れているし、なんか今にも引きちぎれそうなくらいプラプラしている気もするがきっと気のせいだろう。

 

半泣きになりながら地面に座り込む。

 

「今まで魔獣の背に乗ったことはなかったけど、結構楽しい物なんだね」

「乗ってないじゃん。実際…」

「でも気分は味わえた」

 

汗抱くになりながらフィールは魔法薬を飲む。

死ぬほど苦い。言葉に言い表せないほど苦い。暫く何食べても味がわからなくなるくらい苦い。

本当は飲みたくないのだが、飲まないと痛いので仕方なく飲む。

顔をしわしわさせながらなんとか飲み切ればヒンメルが「ところで」とフィールに声をかけた。

 

「前からずっと思っていたんだけど、君は杖を持っていないのか?」

「杖?…ああ、魔道具か」

 

魔法使いは魔法を使う際、魔道具を使用する。

魔道具の形は魔法使いによって違うが、大抵は杖の形をしていることが多い。

特殊な魔道具を媒体にすると魔法を使うのが難しくなるのだ。

だが魔法を作る際、特殊な魔道具を利用した方が作りやすくはあるというメリットもあるにはあるので一部は特殊なものを使用している。

 

別に魔道具を使わなくても魔法を使おうと思えば使える。

ただ、コスパが悪いというか…魔力消費が激しくなりがちなうえ、複雑な魔法が使いにくくなる。

魔法使いにとって魔力はなによりも大切なものであり、簡単に魔法を使える手段があるのに敢えて自身に枷を嵌めるやつはいない。

素手で戦うなんてデメリットしかないことはしないだろう。

 

「いや持ってるぞ」

 

そしてそれはフィールも同じだ。

ただフィールの場合は色々と特殊だが。

 

「ちょっと手握って」

 

フィールはずいッとヒンメルに手を差し出す。

ヒンメルは首を傾げ乍ら言われた通りフィールの手を握って

 

「……固い…?」

 

フィールの手のひらは見た目通り子供らしい小さくて柔らかい手なのだが、手の下の方、手首との境目辺りが異様に硬いのだ。

よく目を凝らしてみてみれば白い手首から肘まで、腕の中に太い黒い影のようなものが見える。

 

「これは…まさか」

「そ、これが杖!」

 

フィールは魔道具を自身の腕に突っ込んでいたのだ。

 

「魔法使うたびに手のひらの皮膚ぶち破るからクソ痛いし、指動かしにくいけど超便利

手ぇ塞がんないし嵩張らないし、なにより手のひらから強力な魔法ぶっ放せるのかっこいい!人間には到底できない芸当、魔族だから出来ること!」

 

いや絶対魔族でもやるやつはいない。

 

ヒンメルは誇らしそうに胸を張るフィールを見ながら思った。

思っただけで口に出さなかった。彼は空気が読めるので。

 

とはいえ、だ。

フィールのこれは魔法使いにかなり有効な手といえるだろう。

なんせ魔法使いの共通認識は”魔道具をもって魔法を行使し戦う”

魔道具を使用しなければ魔法の操作が難しくなり、魔力の消費も激しい。

だが実際は腕の中に杖を入れており、痛みは伴うものの強力な魔法も魔力の消費だって激しくない。

 

初見殺しにもほどがある。

 

しかも魔法に関して特に正々堂々戦いたがる魔族がそれをやっているのだからたまったものではない。

所謂”卑怯な戦術”といえるだろう。

 

だがフィールにその感覚はないのだ。

魔族らしくない魔族であるフィールにとってこれは”卑怯”ではなく”便利”

魔法使いを出し抜くのではなくフィールからすればかっこよくて色々便利だからやっているだけだ。悪意はなかった。

ただ、もし仮に卑怯である自覚があったとしてもフィールはどや顔で言うだろう。

 

”騙すのは魔族の専売特許だ”と。

 

フィールにプライドなんていう言葉はないのだ。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

さて、老人に荷物を渡し、自分が如何にすごいかを見せつけることに成功したフィールに頭を下げ老人は食事を献上した。

やはり威厳を見せれば人間は簡単に屈服する生き物らしい。

老人の家を占拠し、献上された食事を貪りながら

着々と人間を支配下に置けているという事実にフィールは機嫌をよくした。

 

 

そうしてシェーンに泊って5日

あと二日でこの町を出るし、とフィールが町にて珍しい薬草などが無いかを見て回っていると、上空から鳥の姿をした魔族が飛んできて町の人間を襲っていた。

そこまで大きな魔族ではないのだが速度をもって人に襲い掛かる。

別に魔族が人間を襲おうがフィールには関係ない。

 

「あっ!薬草の店壊すな!!」

 

のだが、フィールが今から入ろうと思っていた店を襲うのはいただけない。

あとフィールが占拠している家を壊そうとする不届き者を見逃すほどフィールは優しくない。

強風を吹かせて追っ払おうとするフィール

そんなフィールが邪魔に思ったのだろう。魔獣の群れが一斉にフィールに襲い掛かった。

ということでフィールは魔族を全部炭にした。

 

「ああ、なんてことだ…」

「どうしましょう」

「困った…」

 

魔族を炭にしたフィールは薬草を人間から奪い取り店を出る。

そこで住民がなにやら嘆いていた。

 

「どうしたんだろう」

 

ヒンメルが住民たちを心配そうな顔で見る。

 

「さぁ?」

 

フィールは早速手に入った薬草を調合することで頭がいっぱいであった。

今は機嫌がいいので人間たちで憂さ晴らしをする気もなく、放置して、さっさと家に戻ろうとする。

 

「魔王は嘆く民の話を聞くものだ」

「どうした人間!なにがあったのだ!!!」

 

…が、気が変わった!!

将来魔王になる魔族なので、仕方ない。少しなら話を聞いてやろう!

 

「実は今晩、この町でお祭りをするんですが…」

「先ほど、魔獣によって装飾品もすべて滅茶苦茶になってしまって」

 

言われてみれば確かに飾り付けらしきものがズタズタになって地面に落ちている。

 

「もう一度飾り付ければイイじゃん」

「祭りは今日の夜です。装飾の素材もありませんし購入するにしたって時間がないのです」

 

そういって嘆く彼等

 

「じゃぁ諦めるしかないな!」

 

時には諦めがいるとヒンメルも言っていたし、フィールは住民の話を聞いた。

さぁ、家に帰って今度こそ薬草の調合を…。

 

「偉大な魔族なのに問題1つ解決ができないなんて…魔王には程遠いね」

「仕方ない!俺様が解決してやろう!!」

 

だがまた気が変わった!

仕方ないので解決してやろうとフィールが宣言すると住民は「本当ですか!?」と嬉しそうな声を上げる。

 

「ふふん。俺様は偉大な魔法使いだ!それくらい余裕」

「ありがとうございます。ありがとうございます!」

「それでは早速お願いします!」

 

そう頼まれ、フィールは魔法を使おうとして…。

 

あれ、これどうすれば解決になるんだ?

 

固まった。

勢いに任せて”解決する”といったはいい物の、フィールはなにをどうすれば解決になるのかイマイチよくわかっていなかった。

装飾を作ればいいのか?どんな装飾?見本になりそうなものは悉くボロボロになっていて原形をとどめていない。

一応人間の祭りごとに参加したことはあるが、その多くは華美な飾りつけなどしていない。おいしいご飯食べて終わり、みたいな質素な祭りばかり参加していたので想像が出来なかった。

 

「どうしました?」

 

住民の一人が聞いてくる。

フィールはそれに「集中しているのだ」とかっこつけていった。

だがその手前滅茶苦茶焦っている。

 

今更無理とかいうのは格好悪いし、なにより解決できなきゃ魔王になれないらしい。

絶対にどうにかしないといけない。だがいい案が思いつかない。

く、どうすればっ!と思った時だった。

 

「!」

 

ふと住民たちの奥、花屋が見えた。

その花を見てフィールは一つ、案を閃く。

 

「……装飾は花でもいい?」

「え、花ですか?別に構いませんが…」

 

住民が頷く。

フィールがまず魔法を唱える。

街中に糸のようなものが張りめぐらされる。

建物から建物へとつながったそれはまるで蜘蛛の糸のようだ。

 

もとは相手を拘束するための魔法なのだが、魔法はイメージだ。

使い方次第ではこういうこともできる。

そうして次に花

フィールはサポート魔法。そして実践向きではない魔法が苦手だ。

ちょっとした火種を生んだり、鍋一杯分の水を出すなど、少しならできるが大それたものは大抵失敗する。

当然花を出すのも苦手である。だが一つだけ、成功する花があった。

 

それはフィールが一番目にした光景だ。

故に、完璧で、それでいて簡単にイメージができる。

 

「エァインナルン」

 

魔法を唱える。

瞬間、先程張り巡らせた糸に一瞬で花が咲き乱れた。

美しい紫の花、光の当たり方によって色味が変わり花弁が僅かに赤や青っぽい色に変化している。

その様はまるで宝石のようでキラキラと光り輝いて見える。

 

「これは…」

「まさか紫蝶花(しじょうか)!?」

 

目を見開いて声を上げたのは先程見た花屋の店員の老婆だった。

老婆はしわしわの目を大きく見開いた。

 

「まさか、生きている間に見れるとは…ありがたやありがたや」

 

そういって老婆はフィールを拝む。

拝まれたフィールはどうして拝まれているのかイマイチよくわかっていないが、まぁ悪い気はしないので「まぁ俺様だからな!」と胸を張った。

ほかの住民を見ても特に不満らしい不満も見受けられないので問題解決、ということでいいのだろう。

 

これでまた魔王に一歩近づいた。

 

フィールはニコニコ笑顔で家に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

夜。中央諸国にある町、シェーンでは”夜祭り”が行われていた。

シェーンは元々大きな町であった。

だが魔王軍に襲撃されることとなる。勇者ヒンメルたちが魔獣を倒したことにより住民は無事だったものの町は半壊

それでも住民は絶望に屈することはなく、街の復興に立ち上がった。

街は三分の一まで縮んでしまったものの、住民たちの頑張りにより何とか再起

そんな自分たちの頑張り、そして街を救ってくれた勇者ヒンメルたちへの感謝を表すため、毎年”夜祭り”が行われるようになった。

 

だが今年の夜祭りは一風変わっていた。

夜空に浮かぶ月光に照らされ、淡く輝く紫蝶花(しじょうか)

見る角度によって色味を変える不思議な花は見るものすべてを魅了した。

日中の住民たちの嘆きなど嘘のように、静かな夜に楽し気な人々の声が響く。

 

「よかった」

 

ヒンメルはその様子を家の二階の窓から見下ろしていた。

フィールは住民たちからお礼として渡された食事をたらふく食べ、眠くなったのか現在部屋で爆睡している。

 

紫蝶花(しじょうか)の花言葉は”幸福で満る”なんですよ。知っていましたかヒンメル様」

「……矢張り見えていたか…」

 

声をかけてきたのはフィールを自宅へ止めてくれている老人であった。

彼の言葉にヒンメルは苦笑する。

 

「少し前に勇者ヒンメルが生き返った、という話を小耳に挟みましてね。

嘘だと思っていたのですが…まさか貴方様を見た時は自身の目を疑いましたよ」

「驚かせて済まない。だが僕は…」

「ええ、生き返ったのではなく”死霊”となったのでしょう」

 

老人はヒンメルの足元を見て言う。

ヒンメルの足はない、これが死霊であるもっともな証拠だ。

 

「いいんですか。皆様に会いに行かなくて」

 

老人のいう”皆”というのは旅の仲間であるハイター、アイゼン、そしてフリーレンのことだろう。

ヒンメルは緩く首を横に振る。

どこか寂しそうな、それでいて諦めたような笑みを浮かべて。

 

「野暮な質問でしたね。すみません」

「いいや、構わないさ」

 

そういって二人は窓の外を見る。

綺麗な月に人の笑い声、美しい紫蝶花。心が安らいでいくのがわかる。

老人が「あのかばんは」と沈黙を破る様に口を開く。

 

「あれは、死んだ息子が買ってくれたものだったのです。

病死でした。もう何十年も前の話で、色が褪せて、穴も開いていて、布も草臥れていて。

買い替えた方がいいんでしょうが…魔法の研究にばかり心血を注ぎ寂しい思いをさせたというのに、そんな駄目な父親である私に息子が初めてくれたものでして。

私にとってはとても…大事なものだったのです。

ただ、ロブストに襲われ、奪われた時…もう諦めるしかないと思っていました」

 

老人は目元を和らげ、ヒンメルを見る。

 

「正体がなんであろうと、あの子は私の恩人です。

感謝してもしきれません。だからこそ死んでほしくはないのです」

 

それは彼の願いだった。

 

「ヒンメル様の噂が最近流れております。

信憑性が低く、本格的に信じる者はそうそういませんがこのままいけば…」

 

それは彼なりの忠告だった。

 

「きっと、ヒンメル様に言うべきことではないのでしょう。

わかっております。ですが…少しでいいのです。どうかあの子を守ってあげてください…」

「……最善はつくそう」

 

ヒンメルは人間の勇者だ。

人の頼みは聞いてやりたいと思う。だが魔族に肩入れすることは勇者としてやってはいけないことだと彼は自覚している。

だからこそ、彼は返答を濁した。

老人もそれを理解しているだろう。

だが彼は笑みを浮かべる。安堵したような笑みでただ一言「ありがとうございます」というのだった。




フィール
最近ビジュアルが解禁された極悪魔族!いえぇぇいやったね!!
腕に魔道具ぶち込むイカレた魔族でもある。
頭が弱いので大抵最後は自棄になりがち。でも偶には頭使って戦闘することも…あるかもね。腐っても大魔法使いの銀髪エルフから逃げおおせた魔族なので。

実践向きではない魔法は大概苦手。ただ紫蝶花の花だけはいっぱい出せる。
何度も見た光景なので、文字通り目に焼き付くくらい何度も。
なのでこれだけは百パーセントで成功する。


ヒンメル
相変わらず今日も叫んでいるフィールに「元気だなぁ」ってのほほんとしている。
自身の無力感に苛まれてはいるが、そこはポジティブ勇者
今の自分にできることをしようとフィールを”立派な魔王”にするため今日も助言してる。
因みに彼はフィールには触れるのでロブストに襲われた時、ロブストを倒すことは出来なくともフィールを抱えて逃げることくらいは出来た。やらなかったけど。

彼はいい人なので色々と苦悩しているもよう。
これからも苦労すると思うけど頑張れ勇者、負けるな勇者!フィールの明日は君にかかってるぞっ!!


銀髪のエルフ
まだ噂を信じていないので動き出してはいないが徐々に増える目撃情報に「……どうせ目的のない旅だし、行ったみようか…?」と悩んでいるらしい。やばい


老人
ファーストコンタクトでフィールが魔族だと感じ取った実はすごい老人
人間と魔族じゃなんかちょっと違うらしい。
ただ死臭も悪意もしなかったので様子見も兼ねて自宅へ招いた。
勿論ヒンメルにも気づいていた。
ヒンメルとフィールの会話を聞くのがここ一週間の楽しみだったらしい。
鞄を取り返し、街を魔獣から救ってくれたフィールに感謝しているらしい。
フィールの路銀が入った袋にこっそり金貨を入れてたりする。
なおフィールは馬鹿なので気づいていない。とてもいいひと。






雑草
作者です。二次創作書くの初めてで”これでいいのか”と思いながら上げた本作が思ったより読んでもらえて滅茶苦茶喜んでいます。
皆様のコメントが本当に嬉しくて励みになっています(*'ω'*)
評価の方もありがとうございます。見るたびニヤニヤしています(≧▽≦)
雑草は結構飽き性なので、正直どこまで続くかはわかりませんが
アイデアが尽きるまでは頑張って更新しようと思うので、よければのんびりお付き合いくださると嬉しいです。
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