魔王になりたい魔族と死霊の勇者(完)   作:発狂する雑草

7 / 12
イラストのコンクールに参加することが決定し、これから20日間で絵を1から完成させないといけないということが今日判明した雑草です。
やべぇ小説書いてる場合じゃねぇ死ぬ。(;^ω^)
ということで暫く投稿が出来なくなります。多分


この世で一番辛い痛みが何か知ってるか?筋肉痛だ(迫真)

勇者ヒンメルの死から3年

 

フィールは現在城塞都市ヴァールに来ていた。

 

「痛いぃ痛いぃ」

 

そして借りた宿の一室のベッドにうつ伏せで倒れたフィールは枕を涙で濡らしてビービー喚いていた。

理由はフィールの脚だ。

二日前にフィールはダンジョンを攻略し、ヴァールにやってきたわけだが、その日からずっと足が痛いのだ。

特にふくらはぎ。滅茶苦茶痛いのかフィールは先程からずっと泣いているのだ。

この足の原因は

 

「呪われたー呪われたー!」

 

そう、呪い。

ケーキを不味いといった食の恨み、そしてあの巨大骸骨を倒したことについての呪い…。

 

「いや、ただの筋肉痛だよ」

 

ではなく、その後のクソ長い階段による筋肉痛が原因であった。

最凶魔族も筋肉痛の前には屈せざる負えないらしい。

筋肉痛は怪我ではないので回復薬は全く持って意味をなさないのだ。

この痛みに耐えるしか今のフィールに取れる手段はなかった。

 

「痛みが引くまでじっとしてる…」

 

フィールはしょぼしょぼとした顔で項垂れた。

それを見てヒンメルは苦笑いする。

そうしてスッと窓の外を見た。

 

「…まぁ、そのほうがいいだろうね」

 

窓の外では鎧を着た男たちが慌ただしく走り回っている。

 

2日前にフィールたちはこの町にやってきた。

時間が夜だったため人通りは少なかったもののゼロではない。

ただの人間はフィールを旅人だと思ったのか少し好奇心を抱いた瞳を向けていた。

だがその中の魔法使い。その魔法使いらしき男はヒンメルを見ていた。

その時は声を掛けられなかった。

時間が暗かったため足がないことに気づいていなかったからだろう。

あとは他人の空似と思われた。

そりゃそうだ。ヒンメルは人間、顔が同じでもまず同一人物だとは流石に思わない。

 

だが翌日から表が騒がしくなっているところを見るに誰かがヒンメルの"あの噂"を聞き、真偽を確かめるべく探している可能性が高い。

 

暫く歩き回らない方が安全だろう。

幸い、フィールは魔族であり食事をとらなくても死にはしない。

人との関わりを避けて暫く大人しくしていれば探し回っている彼らも諦めるはずだ。

 

「いたいぃ…いたぁい」

 

ヒンメルが今後について考えるなか、フィールの何とも情けない声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「俺様完全復活!」

 

あれから一週間、フィールは足の痛みに呻いていたが、漸く筋肉痛が収まったのか元気にベッドの上で仁王立ちしていた。

 

「ということでちょっと街を観光して、人間からものを奪ってくる!」

 

荷物をしょったフィールは声高らかに宣言すると部屋を飛び出す。

よっぽど筋肉痛が辛かったのだろう。痛みから解放されたフィールは非常にテンションが高く、今のフィールを止めることが出来る者はそういないだろう。

 

「…あんまり目立ったことをしなければ、大丈夫か」

 

ヒンメルはちらりと窓の外を見る。

前まで慌ただしかったものの、ここ数日は落ち着いている。

ヒンメル探しを諦めてくれたらしい。

まぁ元々根拠のない噂だ。そりゃ何日もいるかどうかもわからない存在に人員を割くわけにも行かない。

だが、また目立ったことをすればすぐに捜索隊が出てくる可能性は捨てきれない。

フィールが大人しくしてくれればいいが、なんて思いながらヒンメルもまた宿を出た。

 

 

 

人はそれをフラグという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールは元気に街中を歩いていた。

大きな町なだけあって色んな薬草が販売されているし、見たことがないような魔道具や魔導書なんかもあってみていて楽しかった。

だが一つだけ不満がある。それは

 

嫌がらせが出来てない!

 

ダンジョンとかいう人のいない、トラップ塗れのクソ空間から漸く抜け出せたと思えば筋肉痛とかいう呪いに蝕まれ、毎日枕を濡らすことになっていたフィール

漸く呪いを解呪した今、フィールがやりたいことといえばストレス発散、要するに人間への極悪な嫌がらせであった。

 

そしてフィールは早速行動を起こす。

 

地面に小さな箱が大量に転がっていた。

見れば老婆が一人でそれを集め、籠に入れているところだった。

フィールは知っている。人間は物を集めるのが好きだということを。

フィールには一切理解できないが”これくしょん”とか言って、明らかに同じだろ、と言いたくなるようなものを拾い集めるのが好きなのだと。

そしてそれを邪魔されるのが嫌いなのだと。

実際、老婆の周りの人間は老婆の邪魔をしないように老婆を避けてあげているのがわかる。

あの老婆はどうやら箱を集めるのが好きなようだ。

それならば、フィールがやることは一つである。

 

それら全部を回収することだ。

収集の邪魔をされるのが嫌ならそれを邪魔すればいい。

全部回収してやれば老婆はぽかんとした間抜け面を晒した。実に滑稽な表情である。

あまりのフィールの極悪さに言葉も出ないらしい。

ふふん、とフィールは鼻を鳴らした。

 

 

次に子供が一人で蹲っていた。

周りに人はいない。ぽつんと蹲っている子供は小さく嗚咽を漏らして泣いていた。

子供が泣いている。これは泣くのを我慢させ、ストレスを与えさせるチャンス

しかしフィールは現在食べ物を持っていない。

持っていれば前と同じく子供の口に突っ込んで無理やり泣き止ますことが出来るというのに、非常に残念だ。

なので、代わりに子供を空へ吹っ飛ばすことにした。

驚いたのか子供は間抜けな顔で泣き止んだ。

 

フィールはそのまま子供を浮遊させ遊んでいると女が走って来る。

どうやら子供と知り合いらしい。

大方「これ以上この子に酷いことをしないで!」という懇願でもしに来たのだろう。

 

フィールは今機嫌がいいので言われる前に子供を投げ渡してやった。

子供が女に縋りつくように抱き着いている。

人は恐怖を感じたり心細くなると人に縋りつきたくなるものだと聞いた。

やはりしっかり恐怖を感じていたらしい。

ふふん、とフィールは機嫌よく鼻を鳴らした。

 

 

また、屋根に上っている男がいた。

なんかカンコンカンコン金槌みたいなもので屋根をぶん殴っていた。

何をやってるんだ。人間が石橋を叩く生き物であるのは知っているが、どうやら屋根も叩く生き物だったらしい。

人間はなにかを叩くのが好きなのか…なんて思っていると男が突然屋根から飛び降りた。

 

それを見て、そういえばと思い出す。

 

人間は”度胸試し”をすることがあると聞いた。

高い場所から飛び降りることで自分が如何に勇敢で素晴らしいかを周囲にアピールするのだと。

 

ということでフィールは浮遊魔法をかけて邪魔してやった。

勇敢さを示すために勇気を振り絞って飛び降りたというのに浮遊魔法で邪魔されるとは、あの男も哀れだ。

全てはフィールに目撃されてしまった己の運の悪さを呪うことだ。

そのまま男を地面に降ろしフィールはふんふんと機嫌よさげに鼻歌を歌いながらその場を後にした。

 

 

その後もフィールは悪を全うした。

非常に楽しく、ストレスがいい具合に発散された。

本当はそのまま宿に戻ろうと思ったのだが、ヒンメルが突然「そろそろ北に向かった方がいい」と言ってきた。

フィールとしてはもう少し街を見て回りたかったのだが「帰りに見て回ればいい」と言われる。

民の言うこともたまには聞いた方がいいとか言われた気がするのでフィールは仕方なく北へ進むことにした。

それはそうと

 

「勇者ってフード被るのか…」

 

フィールは振り返ってヒンメルをみる。

ヒンメルはフードを深々と被っていた。

というかそもそも勇者のマントにフードってついているものなのか

 

「元は冒険者だからね。険しい環境とかになるとフードがある方が便利なんだ」

「ほぉ」

 

そこでフィールは思い出す。

そうだった、ヒンメルは勇者以前に冒険者だった、と。

勇者の称号がデカすぎてすっかり忘れてたなぁ、なんて思いながらフィールは北側諸国へ入国するのだった。

 

 

 

 

 

ふぅ、と街を抜け、ヒンメルは息を吐く。

フィールが悪逆非道の限りを尽くすために普通に魔法を使うものだから変に目立ってしまっていた。

町中で魔法を使うことは別に悪いことじゃない。

だが人が沢山いる中で魔法を使えば嫌でも人目を引くのは当然のことだ。

しかもフィールは魔法を使った後さっさとその場を立ち去っていくため、悪逆非道の被害にあってしまった人々はハッと我に返ったあと、去っていくフィールの背に向かって「ありがとー!!!」とそれはもうでかい声で叫ぶものだから余計だろう。特に子供がそう。

 

ヒンメルはフィールと限界まで離れていたこと

そしてフードを被って顔を隠していたことでバレはしなかった。

マントにつけられたフード

ヒンメルは長らく被っていなかったため、思いっきりその存在を忘れていたのだが、寸前で思い出せたのだ。

死霊である彼は物質に触れることができないので自分の身につけているもので対処するしかない。

最悪マントを顔にかける、という不審者丸出しな格好でも…なんて考えていたので本当にフードがあってよかったと心底思うのだった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

北側諸国、エング街道

 

 

 

「わぁぁぁ!降ってきたー!!!」

 

街を出たフィールたちは次の町へ行くためにえっさほいさと歩いていると、途中で天候が崩れ、大雨となってしまった。

ずぶぬれになるのはまずいとフィールは走り出す。

しかし、足場の悪い道、視界の悪い中走るフィールは何とも危なっかしいとすぐ後ろを歩くヒンメルは思う。

こんな場所で転べばすぐ横の崖から真っ逆さま、なんてことになりかねない。

いや、流石に大丈夫だとは思うが如何せんフィールは前科が多すぎた。死にはしないと思うがこの手のことに関しては信頼が低すぎるのだ。

だが魔族が風邪をひくのかどうかは置いておいて、ゆっくりとこんな道を歩かせるわけにもいかない。

 

「マントを貸すことが出来るならいいんだが…」

 

残念なことにヒンメル本体以外はフィールの手を抜けてしまうことは検証済みだったりする。なのでマントを貸すことはできないだろう。

 

「都合よく雨を防げる魔法とかがあれば…」

 

ぼそっとヒンメルが小声で呟く。

その言葉がフィールにも聞こえたらしい。

「そんなピンポイントな魔法あるわけ」とフィールは言いかけ、そして

 

「あっ、あるわ」

「あるんだ」

 

雨が遮断される。

 

「…これ防御魔法」

「雨を防御してんの」

 

上を見ればそこには見慣れた六角形

魔法使いなら誰もが使える防御魔法だった。

まさか、防御魔法を頭上に張って傘代わりにするとは思っていなくてヒンメルはぽかんとするがフィールは「発想の勝利!」と何処かドヤ顔でいう。

兎に角、これでフィールが濡れることも崖から落ちることもなくなったわけだ。

 

そうして暫く道を歩いていると大きな町が見えた。

 

「あれ、なんかすごい馬車入ってんね」

 

街の門をくぐっていくのは大きな馬車だった。

荷台に何かを積んでいて、恐らく商人あたりの馬車だろう。

何かあるのだろうか、なんて思いながら街に入る。

まず目に入ったのは銅像

それは、まぁヒンメルが「懐かしいな」とか言っていた時点でなんとなくわかってはいたが勇者一行の銅像であった。

その銅像には花冠や花で作ったネックレスが掛けられていた。

周りには敷き詰めるように花が敷かれており、とてもきれいだ。

 

ただ、天候はあいにくの大雨

しかもドンドンと勢いが強くなっている。

折角の綺麗な花が雨に打たれてひしゃげていた。

 

「今年の解放祭は難しいかねぇ」

「こんな大雨じゃぁねぇ」

 

ふと町の人間がこそこそと話している声が聞こえる。

 

「さっきまで晴れていたのに、急に降ってきて…」

「この荷物どうすんだ!?」

 

先程の馬車から出てきた男がなにやら怒っている。

 

「大方何か祭りをする予定だったんだろう。

この祭りのために色々と注文していたが、この雨で台無しになってしまったのか…」

 

ヒンメルが空を見上げる。

黒く分厚い雲が空を覆い隠していて、とてもすぐに雨が上がるとは思えない。

なんならここから更に天候が崩れるだろう。

 

「…?」

 

そして同じように雲を見上げたフィールはこてりと首を傾げる。

なんで皆”雨雲ごとき”で残念がっているのだろう、とフィールは疑問でしかなかった。

 

だって邪魔ならふっ飛ばせばいいのだから。

雲は高い位置にある様に見えて、その実そこまで高い場所にない。

しかしそれをしない人間たち。フィールはすぐにピーン!と察しがついた。

 

なるほど人間はそんなこともできないのか!

 

フィールは口角が上がる。

魔王は民の嘆きを聞き、問題を解決してやるもの…らしい!

更に自分の実力、その威厳を見せつけることが出来る。

まさに一石二鳥だ。

 

「…あ、折角だしアレ使お!」

 

フィールは思い出したように手を叩くと鞄を漁り…。

 

「あれ、どこ行ったっけ…」

 

がさごそと鞄を抱えながら中を探る。

だが鞄の中は整理整頓が全くされておらず、魔道具や薬草が入った袋、そのほかにもお菓子の袋、なんかも入っていてお目当ての物は見つからない。

 

「…まぁいいや」

 

面倒臭くなって早々に諦めたフィールはスッと手を上にあげる。

 

「刮目せよ!」

 

声を上げればその場の全員がフィールを見る。

初っ端から目立ちに行ったフィールに隣にいたヒンメルは頭を抱えた。

そんなヒンメルの苦悩など知らずフィールは魔法を口にする。

 

「アウゲンブリック」

 

バンッとフィールの手のひらから一筋の光が天へかけた。

そうしてそれは空高くで爆発した。

 

 

 

爆発した”だけ”

 

 

 

「…あれ?」

 

フィールは空を見て首を傾げる。

雲は俄然分厚いままだし、雨は一切やんでいない。

 

ここで一つ、豆知識

よく小説や漫画、アニメなどでは大きな爆発を起こして雲を吹き飛ばす…といった話があるが、あれは現実的に考えるなら、まぁ不可能である。

百パーセント不可能とまでは行かないが大概無理だ。まぁ要するに

 

「…フィール」

「…」

 

大失敗であった。

 

天気を操作する魔法はそう扱えることが出来るものではなく非常に高度な技術を要する魔法だ。更に言うとかなり激レアな魔法といえる。

レアとつくには訳がある。フィールの思い付きのアイデアが成功するわけがなかったのだ。

 

全員の視線が冷めたものにかわり、グサグサとフィールの体に突き刺さる。

その視線を前にフィールはプルプルと肩を震わせる。そして、ぼそっと魔法を呟いた。

 

空に薄い黄色の幕が張った。

それはフィールがやっていた防御魔法の拡大版

それにより雨が止む…というか弾かれる。

 

「はい止みましたぁ!大成功しましたー!全然失敗とかしてないし!」

 

バッと顔を上げたフィールは捲し立てるように叫ぶ。

まるで子供のような語彙力だがフィールは一通り言い終わると最後に「俺様が失敗するわけないし!ばーかばーか!!」とまるで雑魚敵が言いそうなセリフを吐き捨て、フィールは近くの宿屋に入って部屋に閉じこもった。

 

とてもいい逃げっぷりだったとヒンメルは語る

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「フィール、入るよ」

 

翌朝、結局一日部屋に引きこもって出てこなかったフィールの元へヒンメルがやってくる。

部屋に入ればフィールはベッドでぐたっとしていた。

 

「疲れてるね」

「…う"ー」

 

ベッドに倒れたフィールはう”ーう”ーと呻いている。ヒンメルは目を細めた。

 

昨日、開放祭は結局開催された。

雨は止んだわけではないが、濡れることはなくなったからだ。

大いに盛り上がった開放祭だが、その間、ずっと空には大規模な防御魔法が張られていた。

防御魔法は弾く物の質や壁の厚さ、大きさによって魔力消費が変わる。

今回フィールが行った防御魔法はデカいものの雨を弾くだけだったので特別な防御魔法というわけでもなく、更に非常に薄い作りとなっていた。

 

その為、そこまで消費は激しくないが、如何せん持続時間が長すぎた。

フィールが魔法を使ったのが午後6時

そこから祭りは午後10時まで行われていた。軽く4時間だ。

いくら消費が激しくないと言えど4時間はキツイ。

正直魔力が切れ、防壁が消えるものだとヒンメルは思っていた。

だが実際4時間張り続けられたのだ。

 

予想以上に魔力量が多いのかもしれない。

見えている魔力量は少し多い程度だが、ヒンメルの仲間だったフリーレンという前例もある。

フィールもそのタイプだったのか…などとヒンメルは思って

 

「これは…?」

 

ベッド付近の床に転がった瓶を拾い上げた。

何かが入っていたらしい瓶にヒンメルが首を傾げればフィールはぐったりとした顔で瓶を見る。

 

「大失敗したぁ…う”…しんどい。クソ薬ぅ」

 

フィールは確かに現在非常に疲れていた。

だがそれは別に防御壁を張るのに魔力を使いまくったからではない。

いや、使いまくったことが原因であることには変わりないのだが…正しくは”激しい吐き気””頭痛””気だるさ””腹筋の痛み”これらに呻いていたのだ。

 

どうしてこうなっているのか。

その理由は昨日に遡る。

 

 

 

 

思いっきり恥をかいたフィールは借りた部屋に入るなりベッドにダイブした。

そのまま恥ずかしさを分散させようとべしべしと枕に八つ当たりをする。

一通り八つ当たりして満足したフィールは窓から祭りの準備をし始める人々の姿を見てムスッとした顔をして再びベッドに横たわった。

 

そうして時間にして1時間

そろそろ魔力が持たなくなってきた。

 

このまま解いたら魔族としての威厳が…魔王にもなれないかもしれない…と困ったフィールは鞄を漁った。

先程は外だったのでできなかったがここは室内。

フィールはどしゃっと鞄の中身をひっくり返した。

 

『あった!』

 

瓶を発見したフィールは顔を明るくさせる。

それは先程フィールが飲もうと思っていたものであった。

 

この薬品は効果が正しければ魔力が"5倍"に跳ね上がる魔力増強薬だ。

特殊な魔道具を使用するうえ、特殊な薬草なども利用するため早々調合できない代物であり、なんなら実際に効果があるのかも未知数な薬品

だがこの間の激熱地獄シチューを無理やり飲ませまくった村人から献上された薬草で丁度作れるので作ってみたのだ。

 

実際に効果があるのかどうなのか確かめるためにフィールは薬を飲む。

甘酸っぱい味で、意外と飲みやすかった。

 

『!』

 

そして効果だが…本当に魔力量が跳ね上がったのだ。

実際に五倍かどうかは置いておいて、間違いなく三倍は増えている。

まさか本当に魔力が増えるとは思っていなかったフィールは驚いた。

 

これがフィールが防御魔法を持続させ続けられた理由だ。

 

そしてその後が問題だった。

祭りも終わったことだしとフィールは魔法を解除した…瞬間猛烈に襲ってきたのは激しい吐き気であった。続いてとんでもない頭痛

そしてなにより、防御魔法を解いたというのに、何故かまだ魔力を使っているような感覚がするのだ。

というか実際に魔力が勝手に溢れていた。

 

まるでコップに許容量以上の水を注いで縁から水が溢れるみたいに魔力が漏れる。

そしてそのたびに頭痛と吐き気、更には眩暈が起り、常に視界がフラッシュしている。

本気で死ぬんじゃないかと思うくらいしんどかった。

 

どうすればいいのかわからなくて…とりあえず腹筋に力を籠めてみた。

 

そしたらなんか魔力が溢れなくなった。

どういう原理かは知らないが、なんか魔力が抑えられたのだ。

そういえば最近はヒンメルといるから魔力を遮断しても無駄だということでやっていないが

フィールは魔力を遮断し隠れる時、よく腹に力を込めて息を止めたらなんか成功してたな…ということを思い出した。原理は本当に謎だ。

 

そうして数分。幾分か状態はましになったが、今度は腹筋が非常に痛い。

だが腹筋に力を入れていないとその他の体調がクソになる。

結果、フィールは腹筋を犠牲にすることを選んだ。

 

そして一睡もせずに翌朝が来て、こんなことになっている。

効果は10時間で効果が切れるようだが、まだ頭は痛いし気持ち悪いし、なにより腹筋が死んだ。起き上がることすらできなかった。腹筋が痛すぎて。

 

「呪いだぁ」

 

足の筋肉痛から解放されたフィールは今度は腹筋の筋肉痛に呻くことになるのだった。




フィール
今回筋肉痛に襲われてばかりの不憫な極悪魔族
アイデアや想像力が豊かなので、割と色々応用を思いつく。
まぁそうじゃないと魔法の自作とかできんわな。
でもな、いくら元々ある魔法の応用魔法とはいえ普通防御魔法を結界みたいに薄く広げて町に張り付けることなんて出来んのよ。
偶々面白そうな薬品の調合レシピを見つけたのでやってみたら自爆した。
二日酔いのアンデットみたいな顔してる。どんまいとしか言いようがない。


ヒンメル
マントについたフードを被ることで顔を隠すことに成功した。
少しだけ目立たなくなったぞ!やったね!!!
最初、彼の顔にマント巻き付けてやろうかと考えてました。
本作はイケメン感が凄いけど、要所要所からふざけたりするの好きそうな気がして、意外とやってくれそうとか思った。
まぁでも、よく見たらフードがついてたので、その案はなくなりましたけど。
暫くアンデットのお世話してくれる。仲間の一人がよくアンデットなってたからね。慣れてる。


銀髪のエルフ
中央諸国バクル峡谷城塞都市ヴァールでヒンメルがいたって…?
…噂を集めたら、なんか北側諸国の方にドンドン向かっていってないか?丁度”近くだし”行くか。

とうとう動き出した。次回(かその次回くらいに)フィール死す☆デュエルスタンバイッ!!!(冗談抜きで死ぬ可能性あり)


薬品
魔力増強剤とフィールは言っているが違う。
正しくは”増強薬”ではなく”一時的にリミッターを破壊する薬”
だから魔法使ってないのに勝手に魔力が放出してた。リミッターが壊れたから。

覚〇剤みたいに使い始めて2,3時間は滅茶苦茶元気に魔法使えるけど時間経過で元気なくなってく。
フィールは防御魔法を張った後にこれを使ったからまだあの程度で済んだが、光をぶっ放す魔法を使う前に呑んでたら更に様態が悪化して、もっとえらいことになっていたし、解放祭が終わるまで防御魔法も持たなかった。

デメリットがデカすぎること、そしてこの魔法薬は魔法使いを”侮辱する”魔法薬として知られているので世に全然出回っていなかったりする。
フィールはそんなこと知らないで作ったけど。

因みにまだ1本残ってるよ☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。