魔王になりたい魔族と死霊の勇者(完)   作:発狂する雑草

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お久しぶりです
アニメ見たので書きました。雑草は相変わらず課題に終われ日々死にかけております。
また更新止まりますが気長に待ってくださると幸いです。あぁ死ぬぜ。

あとアニメのフェルンちゃんかわいい。丸い。かわいい。ぐっへっへ(´艸`*)


久しぶりにあった友人と殺しあうってどういうこと!?まぁやりますけど!

「ん?」

 

町で筋肉痛を癒し、なんとか体調を戻したフィール

そのまま1か月ほどその町にとどまったあと、次の町へ向かうために再び旅路へ戻ったわけだが。

 

「これ、結界が張られてる…」

 

漸く見えてきた大きな町には結界らしきものが張られていて、恐らく魔獣や魔族を入れない類の結界だと見て取れる。

フィールは魔族だ。つまりこの町に入ることはできないだろう。

 

「大魔法使いフランメが張ったといわれる結界らしい」

「大魔法使いフランメ?」

「千年以上前の伝説の魔法使いだよ」

「ほー」

 

ヒンメルの説明にフィールは相槌を打つとたったったと結界がうっすらと張られた町の壁に近付く。

 

「うーむ…む?」

 

じーっと暫く見つめるフィールは何かに気づいたように目を瞬かせる。

 

「どうしたの?」

「…やっぱ千年以上前のものなだけあって微妙に綻んでるとこがある…」

「え?」

 

言われてヒンメルも結界を見るがそれらしいところは見つけられない。

それは果たして、彼があまり魔法に詳しくないからなのか、それともフィールが魔族だからなのかはわからないが、フィールの目には綻んでいるように見えるらしい。

 

「結界とか封印とかの類は外のエネルギーをぎゅーってして固めて覆うんだけど

時間とともにそのエネルギーが外へふわぁって戻ろうとするんだ。

どれだけ強い魔法でもそこは変わらない。

まぁでも、このレベルならあと数百年は余裕で持ちそう…えぇ、こわ」

 

「これで千年前のもの?そのフランメとかいうのどんな化け物なの…」と呟くフィール

だがすぐに気を取り戻すと、ふんっと威張ったように胸を張る。

 

「まぁ?極悪魔族である俺様ならこんな結界、壊せないこともないけどな!

ただ時間かかりそうだし?フランメとかいうやつの顔を立てて今回は見逃してやろう!!」

 

フィールのいう通りこの結界、解けないことはない。

魔法である以上必ず解除する方法はある。

だが解くまで死ぬほど時間がかかる。

どれくらいかかるかというと、数百年ほど

そんなに時間をかけていたら結界が自動で消えるかフィールが寿命で死ぬかの二択になってしまう。

要するに、フィールがこの結界を解くことは状況的に不可能ということだ。

避ける以外道がないのだ。

 

「…遠回りするか」

 

へにょんっと眉を下げてフィールがいう。そんなフィールにヒンメルは苦笑いするのだった。

 

 

 

 

「…フィールか?」

 

 

 

 

その時だ。二人の耳に第三者の声が響いたのは。

名前を呼ばれたフィールが振り返ればそこには立派な角を持った男

その傍には同じく角を持った少女と少年の姿

後ろには魔族が群れを成していた。

 

結界の張られた町に大量の魔族

 

ヒンメルはすぐに彼らがなぜここにいるのか、何をしに来たのかを理解する。

だが名前を呼ばれた本人であるフィールは目を瞬かせ

 

「わぁ!スピナー、アーリエ、ポマード久しぶり!」

 

ぱぁっと顔を明るくさせて笑った。

その反応にヒンメルは「まさか」と思う。

 

「君が暫く一緒にいた魔族っていうのは」

 

その言葉にフィールはコクリと頷く。

 

「あの三人だよ!」

 

どれだけ魔族としては異端と言われるフィールとて魔族であることに変わりはない。

魔族であるフィールが人間とだけ関り、一人で生きることが果たしてできるか?

答えは否だ。どう足掻いたって何処かで魔族と関りを持たざるおえない。

そしてそんなフィールが関りを持っていたのが、先程フィールの口から名前が飛び出した三体の魔族、ということだ。

 

「久しぶりか…まだ50年程度だろう」

「そうだっけ?」

「あと私たちはリュグナー、リー二エ、ドラートだ」

「…そうだっけ…?」

 

んん?と首を傾げるフィールにドラートは「相変わらずカスみたいな記憶力だ」と吐き捨てる。

ドラートの隣に立つリー二エは「変わってない」と呟いた。

 

「ところでそちらの者は?魔族か?」

 

リュグナーが目を向けたのはヒンメルだった。

彼はフードを被っているがゆえにその正体に気づいていないらしい。

 

「ヒンメ」

 

聞かれたフィールは平然とその名前を言おうとして

 

「もごっ」

 

思いっきりヒンメルに口を塞がれた。

ヒンメルとしてはこの状況で己の正体がばれたら色々面倒だろうということを察知したのだ。

そしてもごもごとヒンメルの手を引っぺがそうとするフィールに小声で言う。

 

「魔王はペラペラと個人情報を言わないよ。王は口が堅いものだ」

 

ヒンメルはとてもいい笑顔でさらっと嘘を吐いた。

魔族の世界に個人情報なんて概念ないし、そもそもバレて困るような情報なんて魔族にはない。

魔法にプライドを持っている魔族は、人間的に言えば隠した方がいい”必殺技”などもオープンで使うし、その効果までべらべら喋るものもいるレベルだ。

 

普通ならばヒンメルの言葉が嘘だとすぐに気づくだろう。

 

「そ、そうなの!?」

 

究極の馬鹿でもない限りは。

 

フィールはヒンメルの言葉を受けてバッと口を手で塞いだ。

将来最恐の魔王になるもの。情報を話すわけにはいかないという意思表示であった。

 

一方リュグナーたちにはフィールの不可解な行動が理解できなかった。

なんで急に口を手で覆ったのだ、という感じだろう。

何が何だか分からないが、リュグナーたちとて暇ではない。

彼らはもうすでに、謎のフードの人物への興味関心は失せていた。まぁ元よりそれほど知りたかったわけでもないのだが。

 

「そこをどけ。私たちはやることがある」

「…やること?」

「ああ、その町の結界を破壊し、その町を掌握する」

 

リュグナーは興味の薄い瞳で大きな町の壁を見上げ、そしてその周りに張られた結界に僅かに顔を顰める。

そんな彼にフィールは首を傾げる。

 

「この結界はあと数百年は絶対に解けないと思うよ?」

「アウラ様なら解ける」

「!」

 

リュグナーの言葉にヒンメルが目を見開く。

 

アウラ

それは断頭台のアウラのことだろう。

魔王直属の幹部「七崩賢」の一角であり、500年以上を生きた大魔族

かつて勇者ヒンメル一行に敗れたものの、逃げおおせた魔族だ。

ヒンメルが死んだあと、再び活動を再開したらしい。

あの時仕留められていれば、とヒンメルは歯嚙みする。

 

「あのお方は五百年生きた大魔族

それだけの知識と技術を持ち合わせている。

だがそれでも少々手こずるそうだ。だから私たちで結界を緩くしておこうと思ってな」

 

結界魔法には一つ弱点がある。

それは外傷を負えば負うほど脆くなる、という部分だ。

なんて事のない弱い攻撃ならば簡単にはじき返すことが出来るが、許容量というのは必ずしも存在する。

その許容量を超えるほどの攻撃をされ続ければ、少しずつ結界が消耗され…砕ける。

フランメの張った結界は非常に強力だが、結界である以上この法則を変えることはできない。

 

彼らに結界を壊しきる技量は流石にないだろう。

だが大魔族アウラが結界を自力で崩壊させることできるレベルまで劣化させるコトならできるかもしれない。

それを目的として彼らはここにやってきたのだろう。ご丁寧に大量の魔族まで引き連れて。

 

話を聞いたフィールは「ふむ」と少し考え

 

「結界を壊すのはいいけど、町は荒らさないでよ」

 

そういった。

フィールとてこの町の結界は正直鬱陶しい。

これのお陰で遠回りしないといけなくなるかもしれないのだ。

壊せるなら壊して欲しい。

だが、そのあとに町を荒らされるのは困る。

 

「この町欲しくなるかもしれないからさ、荒らされると困るんだ。

あと、人から物とお金奪わなきゃだし」

 

主張するフィール。だがリュグナーは理解できないと首を傾げる。

 

「それなら人間を殺した後に好きなだけ奪えばいいだろう。私達は人間を皆殺しにするだけで物になど興味がない」

 

リュグナーの思考は正しく魔族そのものであり魔族としての回答としては満点だ。だが彼が会話しているのは魔族にとって異端とされるフィール

フィールもまたリュグナー同様理解できないとばかりに首を傾げた。

 

「やめてよ、人から奪えないじゃん」

「?、だから人を殺して奪えばいいだろ」

「?、何言ってるの?人が生きてなきゃ奪えないよ?」

「は??」

「え???」

 

永遠に分かり合えない感性

根付いた常識の違い。同じ魔族なのにまるで別の生き物と会話しているような、そんな理解できない感覚が二人を襲った。

そうして二人は同時に思う。

 

"こいつ、相変わらず話通じねぇな"

 

話ではなく、根本的な思考が通じ合っていないだけだが、それを指摘してくれるものは何処にもいない。

 

「面倒だ。邪魔なら殺せばいいだろ」

 

その時だ。

背後でそんな声がした。

フィールの真後ろに立っていたのはドラートだった。

 

完全に背後を取ったドラートはフィールが振り返るより早く魔法を発動させた。

彼の魔法は糸を作り出すこと。だがそれはただの糸ではない。

強力な魔法によって作り出されたそれはいとも容易く生き物の首を千切ってしまえるほどに強固な糸だ。

 

ドラートはフィールの首に巻き付ける。

フィールはドラートに完全に背後を取られ、振り返ることすらできていない。

杖も出せておらず、仮に今出せたとしてもドラートが首を切る方が早いだろう。

 

ドラートとフィールは数十年間だけ一緒にいたことがある。

だが魔族の世界に”情”なんて言葉はない。

あるのは”支配”と”恐怖”のみ。

要するに、いくら一時期一緒にいようがドラートにとって邪魔なら簡単に殺せてしまうのだ。それが魔族の世界の常識

 

だがそれはフィールだって同じだ。

ドラートたちと違い、フィールには情がある。

だが情に殺されるほどフィールは間抜けじゃない。

 

「勝った___は?」

 

勝利を確信した、その瞬間ドラートの視界が”ずれた”

 

ドラートは決して弱くはない。

 

断頭台のアウラの直属部下である首切り役人になれる程度には実力を持っている魔族だ。

その実力は並みの魔族を軽く凌駕するだろう。

 

だが彼は”知らなかった”のだ。

 

ドラートたちがフィールといたのはほんの3,40年ほど。

さらに一つ語弊があるのは別に彼らは自分の”意思で”一緒にいたのではなく

結果的に一緒にいた、というだけだ。

 

というのも、同じ魔族に出くわすことが少なかったフィールが彼等に興味を持って気まぐれにくっついて回っていただけなのだ。

そう”気まぐれに”

フィールが町観光を終えて思い出したように彼らの元へ行き、話をして軽く何か食べてまたフィールは他の町観光へ、リュグナーたちは町破壊へ

 

そんな感じの関係だった。

3,40年間ずっと一緒にいたわけではなくフィールの気分によって一緒にいただけにすぎない。

リュグナーたちからすれば”なんか時々やって来る魔族”という認識だった。

 

更に、リュグナーたちにとってフィールは魔力が弱い、人間と仲良くするという理解不明の行動をとる駄目魔族であり”いつでも殺せる雑魚”という認識であった。

だからこそ、フィールが寄ってきても攻撃はしなかったし、うろちょろされても許してやっていた。

それよりも、こんな雑魚に時間を割くくらいなら、他の場所でアウラの為に戦力を拡大するほうがいい。

情があったわけではなく、ある意味の驕りによって彼らはフィールを始末しなかっただけだ。

 

つまり彼らはフィールの”戦闘スタイル”も、その”性質”も知らないし、そもそも知る気もなかった。

 

「あ…ぁ”ぁ?」

 

故に敗北する。

 

ドラートの糸がフィールの首を飛ばす前に先にドラートの顔が吹き飛んでいた。

崩れ、力の籠らない体

傾く視界の中で、ドラートは混乱する。

 

フィールの手には杖がない。

素手なら弱い魔法しか使えないはずだ。

なのに自身の顔を飛ばせるほどの魔法を使った。

素手で極力な魔法を使えばがっさりと魔力を持っていかれる。それは常識

だというのにフィールの魔力は全然減っていない。

なにより、どうやって攻撃した?

フィールはこちらに気づいていなかったはずだ。本当に隙があった。今もそう。ドラートに攻撃しておきながら彼に目すら向けやしない。

なのに寸分たがわず彼に攻撃をぶつけた。

 

なぜだ?なぜ、なぜ 

 

理解不能な出来事に困惑しながらも、その答えを知る前にドラートの粒子となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「びっくりした。急に襲ってくるじゃん」

 

さて、死んだ彼に代わりネタバラしをしよう。

 

フィールは生き物の”害意”に非常に敏感だ。

害意は”攻撃する意思”をさす。

悪意は誤魔化せても、思考できる生物である限りどう足掻いても害意を消すことはできない。

害意にのみ敏感なフィールはいくら背後を取られたとしても気づかないわけがないのだ。

 

つまり、実はドラートが背後に来る前からドラートの存在にはしっかり気づいていた。

更にフィールは手の中に魔道具を突っ込んでいる。

ぱっと見素手であり、丸腰としか思えなくてもフィールは常に戦闘態勢に入っているのだ。

しかも害意察知のお陰で振り返る、という動きを取らなくても正確な場所に高火力の魔法をぶっ放せるのだ。最悪すぎる初見殺し。

 

ドラートはフィールに奇襲をかけた時点で詰んでいたというわけだ。

 

そしてこの初見殺しはもう一つ利点があった。それは

 

「どういうこと…?」

「…なにがおきた」

 

傍目から見ても”何が起きているのか理解できない”ということだ。

なんせ彼らの思考にも流石に”腕の中に杖を入れる”なんていう発想はない。

フィールのとち狂った案はある意味大成功を収めていた。

 

「…兎に角、排除します」

「ああ」

 

そして更にもう一つ

 

「害意発見」

「!」

 

どれだけ強くても武器を扱うものにとって近すぎると攻撃が出来なくなるものだ。

ではフィールは?

 

フィールはリー二エの斧を掴むとそのまま間合いに踏み込んだ。

突然目の前に現れたフィール

本来ならリー二エがここまで間合いに踏み込まれることは殆どない。

ないのだが、なぜ入らせてしまったのかといえば、フィールが”武器になりそうなもの”をもっていないから。

要するに油断だった。

 

リーニエやリュグナーでも攻撃の際は何らかの武器やそれに類似するものを出す。

リーニエなら斧、リュグナーなら己の血液を元にした武器を。

まず素手で突っ込むなんて真似、絶対にしない。

なのにフィールは素手で突っ込んできた。

その理解できない行動によって、不意をつかれたのだ。

 

近すぎる距離感まで踏み込まれたリーニエは武器を振ることを諦め、距離をとるためにすぐ飛び退こうとした…が

 

「てい」

 

選択を間違った。

 

彼女は飛び退くよりも先に防御するべきだった。

なんせフィールはすでに武器を持っているのだから。

そしてその武器は相手との距離感など、一切必要としない

 

「…ぁ」

 

フィールの手から放たれた魔法がリーニエの腹をゼロ距離からぶち抜いた。

馬鹿でかい風穴があき、リーニエはなぜ自分の腹が貫かれたのか理解する前に武器を取り落とすとそのまま粒子となって消えた。

一瞬で二体の強い魔族を葬ったフィールに魔族はみな驚愕する。

理由もわからず消し飛んだ黒い魔力の粒子を見ながら彼らはごくりと喉を鳴らし一歩後ずさる。

 

この瞬間リュグナーのフィールへの認識が書き換わった。

 

いつでも殺せる雑魚魔族から、自分の嫌いな天才へと。

 

フィールがリュグナーを振り返る。その赤い瞳がリュグナーの瞳と絡む。

魔族としての闘争本能

つまらなさそうなリュグナーの顔が僅かに楽し気に歪む。

そんな顔をみながらフィールはこてんと首を傾げる。

 

「…ルグナーも害意がある」

「…ああ、私はお前を殺そうと思っているからな」

「残念。仲よくしたかったのに」

「無理な話だな」

「そっか」

 

さぁ、まだまだ宴は始まったばかり




フィール

初見殺しの魔族様
奇襲は通用しないわ初見殺しで魔法ぶっ放してくるわ近接強いわで割とぶっ壊れてる。
実はリュグナー一行と一時期一緒にいたけど、話が通じないから数十年で飽き、一人旅に戻ったらしい。
情はあるけど攻撃してくるなら話は別だよね!という感じでぶっぱした。
とち狂ってる。色々と。
人を食べるより、人が作った料理を食べる方が好きだし
街を壊すより街を観光する方が好き。完全なる異端


ヒンメル

今回は割と空気だった。
仕方ない。彼は戦えないからね。
フィールが背後をとられた時は、フィールの安否より先に”ああ、この魔族、多分顔吹き飛ばされるんだろうな”と予想していた。ホントに吹き飛んだ。現在観戦中


顔面吹っ飛ばされたドラートくん

なんか死んだ。


お腹吹っ飛ばされたリー二エちゃん

素手でやられたんだけど…どういうこと??


リュグナーさん

次 は お 前 だ。


アウラ様

出陣の準備中


どこぞの銀髪エルフ

着々と近づいてきてるよ☆
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