やっぱりイオリは可愛いですねぇ!!!本当は曇らせも考えていましたがやっぱりイチャコラがナンバーワン!
4月1日エイプリルフール、嘘をついてもいい日。でも嘘ってのが私は苦手。顔に出やすいというのもあるけれど、やはり騙されていい思いはしない。特に一つの者に注視して周りが見えなくなる悪癖を持つ私にとっては嘘は結構致命的だったりする。
どんより曇り空に囲われた廊下を重い足取りで進む。朝から今まで、火山が噴火しただの、熊が暴れただの、パンケーキが暴れだしたのって。いつものゲヘナ学園に似つかわしい騒然たる様だったが、今日という日は特にひどい。
ほぼ大半が嘘や誤情報なのだ、嘘ともいう。おそらく普段から風紀員会にいい思いを抱いていない輩が、これ幸いにと件を起こし起こさずで鬱憤を晴らしているのだろう。今日だけで10件を超えた通報、だがしかし実際に起きたものは2件。
現場がわざわざヒノム火山近くだったり、自治区郊外だったりして移動にものすごく手間がかかった。しかし連絡があっては風紀委員は動かざるを得ない。たとえそれが嘘であっても助けを求める声があるのならば向かわざるを得ない。まったく、治安維持すらままならないゲヘナはもうちょっとこう…規則を守るやつはいないのか…。
もともと重い足取りが余計に重くなる。足首には包帯がまかれていて、サポーターを靴下で隠しているとはいえ歩きづらい。チナツには安静にしておいてください!と念を押されたがこの程度歩けないほどじゃない。松葉杖を使うほどでもない。それに、そんなものを使えばきっと心配されて追い返されてしまう。それだけは避けたかった。
ノックを3回繰り返して、重い扉に体を預けてゆっくりと開く。ドアダンパがいい感じに抵抗になってくれて、勢いよく開くことはない。
「ああ来たね。ってどうしたの。すごく疲れてそうな雰囲気だけど。」
広げていた本をぱたりと閉じて、先生がゆっくりと立ち上がる。
私はドア横の壁に背を預けてたまま動かない。
「問題ない…って言いたいけどそうだな、さすがに今日は疲れたよ。」
そこで少し話をした。今日起きたことをメインで、さすがにイラついて必要以上に苛烈な戦闘をしたこと、思った以上に火山帯が熱くて汗びっしょりになったこと、本当にパンケーキがうごめいてるのをみて恐怖したこと。それに今日がエイプリルフールであることとか、とにかく何でもしゃべった。別に誰かに聞いてほしい話ばかりではなかったと自覚はあるのだけど、先生の顔を見るとついつい胸の内を吐露してしまう。
「大変だったね。そっか今日はエイプリルフールか。道理でみんな楽しい嘘をついてくるわけだ。」
金塊が降ってきただのと、世の中とんでもない嘘をつくやつもいたものだ。でも実害がない分ゲヘナ生徒よりもましか。何なら今日あったことを思えばかわいいものだ。
「イオリは何か嘘ついたの?」
「いや私は嘘は苦手だか…ら」
そうだ、良いこと思いついた。普段からやられっぱなしなのだから、ここいらで一つお返しでもしてやろうか。
「…じゃあ先生、私のこと抱き上げて運んでくれる?実はすごく疲れてるんだよね。」
わざわざ両手で迎えるようなポーズをとって、力なく首をかしげて薄い目元で先生に語りかける。なるべくか弱く見えるように、胸のネクタイをいつもより少しだけ下に落として、前髪を少しばらつかせた。
「…………」
「なーんて、嘘だけど。」
してやったり。口元に手を当てて目線を反らす先生。ざまぁみろ。いつもいつも私ばかりもやもやさせてばかりだったのだから、こういうところぐらいやり返したって罰は当たらない。
「…イオリ、嘘をついていいのは午前中だけって知ってる?」
「? 知ってるぞ。だってまだ11時を少し過ぎたくらいじゃないか。」
部屋の時計をちらりと眺める。長針と短針は3と11を過ぎたころで、まだ12時までには時間があった。
「気づいてない?実はここの時計1時間遅いんだ。」
「…え?」
ポケットに手を突っ込んで思い出す。今日という日に限って、というか今日の委員会業務中に支給携帯は破損して始末書と宜しくしてきたところだった。外はあいにくの曇天で、太陽も影も見えない。
「つまり、さっきのイオリの言葉は嘘の嘘ってことになるからつまり。」
「ちょ…先生なになに。」
ずいっと先生の体が私によって来る。壁を背にした私は後ろに下がることもできず、壁に背をべったりとつけて顔をそらす。
「こういうことだね。」
すらりと長い手足が、私の腰と足に回されて抱きかかえられる。先生のひょろっこいイメージとは裏腹に、私の腕より一回りも大きい腕が私を包んだ。
「ちょ、ちょっと先生!ちょっとってば!」
急なことに気が動転して、あわあわとして言葉が出てこない。
「ダメ。嘘をついたイオリが悪い。それにほら、やっぱり怪我してる。」
「これはちょっとひねっただけで…」
「また噓。」
「嘘じゃない!歩くくらいなら出来る…いっ!」
強がって足を乱暴に振ったおかげで、足首に一瞬走った痛みにくぐもった声が喉奥から鳴った。
「ほら痛そう。」
「痛くない!今のは声が出ちゃっただけで…風紀員会をあんまり舐めるな!」
「…せめてシャーレを出るまで、ね?」
「ぅ…」
沈黙で返す。実際問題はなかったのだけど、先ほどので足首を少しやった気がする。これじゃ自爆だ。
黙ったままの私を抱えて、先生は一度微笑んでからドアに向かった。
「それじゃ行こうか。今日は何食べに行くんだっけ?」
「…今日は先生の番だろ。」
両手がふさがった先生の代わりにドアノブに手をかける。
「そうだったそうだった。じゃあ柴関ラーメン行こうかな。」
「先々週も行ったぞそこ。」
「おいしいからね。サイドメニューも豊富だから今日は炒飯にでもしたら?」
「…それもいいかもな。」
先生の体の隙間から映る曇り空には日が照り始めていて、少しまぶしかった。