イオリと先生   作:じーYA

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先生の自我強め&キスシーンかあるので苦手な方はブラウザバック推奨です。


イオリとお菓子を食べるだけ

午後の業務中 シャーレ部室内にて。

 

ぽりぽり

ぼりぼり

がさがさ

ぽりぽり

 

「あの、先生」

「うん?」

「さっきから音が気になるんだけど。」

「ああこれ。ごめんごめん。」

咥えていた棒状のチョコレート菓子を食べ切る先生。空になった袋を小さく折りたたんで机横のダストボックスに入れる。一瞬だけ見えたダストボックスの中身はお菓子の空箱と小袋がぎっしりと詰まっていた。

 

「そんなにお菓子ばっかり食べてたら太るぞ。」

「うっ。痛いところをついてくるね。」

 

大袈裟に胸を抑える演技をする大人を横目にため息をつく。しかし、ここで一つ疑問が浮かんだ。いままで先生が業務中に食べるお菓子はガムやアメなど、とにかく業務の手を止めなくても済むようなものばかりだった。一時期イベントが重なった時は毎日チョコレートを食べていたが、今は季節的にも合わない。

 

なんで今の時期に同じお菓子ばっかり…?

そんな疑問符を浮かべた顔に気付いたのか、質問する前に先生が口を開く。

 

「実は昨日のことなんだけどね」

 

デスク下のキャビネットを開きながら先生は続ける。話はこうだ。

昨日、シャーレに内在するエンジェル24で発注ミスがあり、特定のお菓子を通常の10倍以上仕入れるという珍事が発生した。頭を抱えていたところに先生が鉢合わせ、売るのを手伝ったという。かくかくしかじか、あの手この手を使って売りまくり、なおも余った分をを先生が買い取ったと。

 

「それがあとこれだけあるの」

 

苦笑しながらキャビネットから取り出したのは両手で抱えるほどに膨らんだレジ袋が2つ。がさりとデスクの上に溢れた中身は全て同じ種類のお菓子だった。10〜20、それ以上はありそうなお菓子の海にイオリは若干引いた顔で笑う。

 

「それでずっと食べてるのか。」

「普段は業務中には食べないんだけど、あるとあるで口寂しくなって…つい。」

 

イオリも甘いものは好きなため先生の気持ちはわからないでもない。しかし、だからと言ってこうも業務中に絶え間なく食べるのは体に悪いだろう。それにお菓子を食べる手で業務の進行が遅れてしまう。そのツケが万が一にも風紀委員に響かないとも言えない。当番として、先生のサポートを務める身として今の状況は改善が必要だった。

業務に手を動かしながらイオリは考える。

 

しばらくして、2つ目に手を伸ばす先生の裾を掴み、ぐいぐいと引き寄せる。

 

「その、先生。お菓子食べるの我慢してちゃんと業務終えられたら」

「あとでこれ、私が食べさせてあげるっていうのは…どうかな」

 

その後の先生の業務能率は目を見張るものだった。

あっという間に書類が片付いていく様を見ると、普段からこうあってくれたらいいのに…と思わざるを得なかった。

 

***

 

イオリは先生のことを“どこかのネジの締め付けが狂っている人”だと思っている。

“先生”としての能力で言えば、肉体強度は生徒に遠く及ばないものの戦闘指揮能力はキヴォトス全体で見ても最高峰に位置するといっても過言ではない。

噂程度だが、先生はほぼ全ての生徒の攻撃の得手不得手を把握しているのだという。その情報を基に現場のメンバーで即座にチームを編成し、最も効率よく且つ被弾を最小限に抑えて勝利をもぎ取る手腕は見事なものだ。今や先生の指揮の有無はチームの士気に直結する。それは勝敗を決する要因として無視できないレベルまで成長した。

 

そんな超人じみた戦闘指揮能力があるのに、先生はその力や権力を誇示しない。先生は“先生”という役職を感じさせない、フランクな関係性の構築に長けている。生徒に寄り添い、時に付き合い、時に導き、時に厳しく指導する。常に生徒の目線に立ち、そして問題には余裕を持ってして対処する大人の貫禄。自身を二の次にして生徒のために奔走する先生の姿には多くの生徒が信頼と好意を寄せている。イオリもその1人だった。

 

と、ここまで聞けばなんとも完璧、かっこいい大人だ。

そう、ここまでは。

 

ネジの締め付けが狂っているのはここからだ。フランクな関係性を構築するのが上手な先生だが、一部の生徒に対して距離感の測り方が明らかにおかしい。

一部例を挙げるとしても、メイド服の生徒に踏まれて喜ぶ、朝昼晩ご飯を作ってくれる幼妻がいる、街中でバニー服を着せた生徒に散歩させた、生徒をベッドに連れ込んで寝た、生徒の髪に顔を埋めて匂いを嗅いだ、生徒を半裸でシャーレ内を歩かせている等、大人の姿しか知らない生徒には到底信じられないような奇行の数々。経験した生徒でなければ嘘だとバッサリ切り捨ててしまうだろう。

 

イオリは経験した側だったために、これらを信じざるを得なかった。

自身も足を舐められたし、水着を着た時なんて…セクハラの度を越した行動に怒りを通り越して恐怖すら感じたことがある。それらを鑑みて、「食べさせる」という発言はいくらか覚悟を決めてのことだった。最悪指か足を舐められると確信していた。

していたのだが…

 

「先生、本当にこの格好じゃないとダメなのか…?」

「ダメ」

 

仮眠室のベッドに仰向けに寝転がるイオリ。片方の手にはお菓子の1パックを握り締め、緊張ゆえか尻尾はピンと張り詰めている。それに覆い被さるようにして先生が顔を近づける。側から見れば犯罪一歩手前の2人。

いわゆるP⚪︎ckyゲーム。最初は一箱というお願いだったので全力で拒否したイオリだが、1パック、せめて1本と土下座までされては断れない。残りは風紀委員会への差し入れということで半分ほど引き取ることとなった。

 

「約束を持ちかけたのはイオリだよ?」

「だからって…あ〜もう!はやくして!」

 

「ん!」

「ん〜!」

 

棒状のお菓子を口に咥えたイオリがこれでもかと口を突き出す。目を合わせるのが恥ずかしいのか両眼は閉じられている。

 

***

 

「それじゃ、いくね」

 

さくり 静かな部屋で破砕音が耳に残る

ドクン 平静を装っていた心臓が大きく唸る

 

さくり ゆっくりと近づく破砕音

さくり ゆっくりと、確実に近づく破砕音

噛み砕く歯の力、舌の動き。大小様々な振動が1本の細い棒を介して口から脳へとダイレクトに叩き込まれる

 

どく どく どく どくどく

心臓が早鐘を打つ。数秒の時間は数十秒にも感じられ、呼吸が苦しくなる。窄めた口元から細かく発せられる熱のこもった吐息が咥えたお菓子のコーティングをゆっくり、柔らかく溶かす。

一口も進まない私の唇に溶けたチョコレートが広がる。

 

ごくり

喉を鳴らす

 

さく お菓子を支える主導権が先生へと移る。

 

練られたチョコレートが駆ける。

脳がジワリと痺れた感覚。

形容し難い感覚に襲われてうまく呼吸ができない。

 

2人の唇はそのまま重なり合った。

 

***

 

「んっ…」

「ぷはッ…はぁ…んぁ…」

 

胸元へと抵抗する手先が力無く折り畳まれた頃、十二分にお菓子を味わった先生は顔を離す。口元から紡がれる茶銀の糸は、端のようにお互いの唇を結ぶ。目の前の彼女は目を合わせないようにそっぽを向き、乱れた呼吸で濡れた唇を袖で覆い隠す。

2人の唾液が絡まった、もはや原型をとどめていないそれをごくりと嚥下する。

 

「甘/苦…」

「…」

「最後にコーヒー飲んだせいかな?ごめんねイオリ」

「…」

 

呼吸を乱さずにニコリと笑って見せる先生。満足げな表情からは先ほどの好意を微塵も感じさせないほど整っていた。

 

「それじゃ業務に戻ろうか。ご馳走様イオr」

「まって」

「えっ」

 

尻尾で首を絡め取られてバランスを崩し、イオリの上に乗りかかるようにして倒れた。彼女の柔らかな体が密着する。予想外の出来事に狼狽える先生の耳元へとイオリが近づく。いつものはっきりとしたメリハリのある声はどこへやら。か細く熱っぽい声が耳元を犯す。

 

「苦いままじゃ後味悪いから、次は先生がチョコレートの番」

 

急いで起きあがろうとするも首に巻かれた尻尾のせいで少ししか顔を上げられない。どうにか正面に目を向けると、鼻先が触れる距離にイオリの横顔があった。きめ細かな褐色の肌は佳夕のように赤みを帯びている。

 

目を閉じていたイオリが流し目でこちらを見つめる。乱れた前髪から溢れる鮮やかな紅色の瞳が先生を射抜く。片手が先生の頬へと添えられ、親指が唇を優しく撫でる。

 

「それとも先生は…したくない?」

 

恥ずかしそうに。自信なさげにそうきかれた先生は、一拍置いたのちにもう片方の彼女の手から口掴みでお菓子を奪い取る

 

「まさか」

 

甘い甘い空気に蕩された2人の前から

お菓子の空箱が投げだされた。

 

 

 

 

 

 

 




この後高ぶったイオリとちゅっちゅした(一線は越えていない※重要)。チョコだけ取られたふやけた菓子は先生が美味しくいただきました。
一回目に舌が入ったのは事故なので二回目以降はバードキスです。
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