【転生者は】多次元式転生掲示板【助け合いでしょ!!】 作:DestinyImpulse
今回で一応の決着です。
何とか纏めました。
「コハル、もう少しだけ待っててくれ!」
「必ず決着をつけてやる!」
「カナタ…ウォーグレイモン」
傷だらけ身体で佇むカナタと太陽の如き優しい光を放つウォーグレイモン。その後ろ姿をコハルは信頼の眼差しで見ており、彼女の頬にもう涙は流れていない。限りなく小さかった勝機という希望が大きく輝き始めたのだ。
「凄え……!」
「ああ、これならイケる!」
「……………」
究極体に進化したウォーグレイモンの力は絶大で、あのムゲンドラモンの右腕を容易く砕いたのだ。これなら勝てるとクラインとエギルが歓喜する傍ら起き上がったキリトは静かに動けないアスナの隣に戻った。
「……完全に俺の出番はないな」
「キリト君……」
「多分、決着がつくのに時間は掛からない」
何処か悔しそうな雰囲気のキリトは理解していた。どちらも究極体である以上、勝負は長くは続かないと…
◆◆◆◆◆
257:極み主任
この勝負、おそらく決着は近い。
258:炎のヒロアカセイバー
そうですね。幾らウォーグレイモンに進化してパワーが漲ってると言ってもこれまでのダメージ全てが回復された訳ではありませんし、テイマーニキだって傷だらけです。
259:最高最善のグランドマスター
そして茅場晶彦は無傷だがムゲンドラモンはメタルグレイモンにつけられた亀裂に、砕かれた右腕。戦闘力は格段に落ちてるが背中のムゲンキャノンは健在だ。
260:超マサラ人
……どちらが勝っても不思議じゃない。
◆◆◆◆◆
「やるぞウォーグレイモン!」
「ああ!」
ウォーグレイモンがドラモンキラーを構えて突撃する。ウォーグレイモンは近接が主体のデジモンでありムゲンドラモンは中遠距離が主体のデジモンだ。接近戦に持ち込み此方のペースで一気に倒す!
「やはり接近戦で来たか、ムゲンドラモン!」
「…!!」
無論、それは相手も理解しており右腕を砕かれた事から近づけさせまいとムゲンドラモンが尻尾の砲門を展開し放たれた無数のレーザーがウォーグレイモンを焼き尽くそうと迫ってくる。
空中を飛び回るがレーザーに追尾機能があるのか何処までも追ってくる。
「逃げ場を奪え!ギガデストロイヤー!!」
更に亀裂がある腹部より上の胸部の装甲が開きメタルグレイモンの必殺技である有機体系ミサイル『ギガデストロイヤー』が射出される。茅場晶彦は言っていた、サイボーグデジモンの中でも特にメタルグレイモンのデータをメインに育成したと、だから左腕のトライデントアーム同様、使用できても不思議じゃない。
しかし性能が段違いだ。
射出されたミサイルはスピードも精度もメタルグレイモンとは比べ物にならず、レーザーを回避するウォーグレイモンの逃げ場を完全に塞いでいた。
「ウォーグレイモン!!」
「ブレイブシールド!!」
回避不能と判断してウォーグレイモンの背中にある二枚の盾が分離、空中を飛び回りウォーグレイモンの前方に展開、ミサイルの爆撃を完全に防ぎ切る。
「そのまま突っ込め!!」
飛び回る二枚のブレイブシールドでレーザーやミサイルを防ぎ、時にはドラモンキラーで弾きながらムゲンドラモンに接敵する。ムゲンドラモンは右腕がない、此処まで近づけば!
「ッ!……グッ!」
しかし次の瞬間、ウォーグレイモンの近くの空間が次々と爆発していく。四方八方からの爆発にウォーグレイモンも止まるしかない。
理由はすぐに分かった。ムゲンドラモンが射出したギガデストロイヤーが防御される前に爆発したのだ。
「随分便利な盾を持ってるからね。君の策を参考にさせてもらったよ」
「チィ…!」
それは俺達が先程使ったギガデストロイヤーを機雷化する策だ。爆発で動けないウォーグレイモンに更にレーザーが迫る。ブレイブシールドとドラモンキラーで防ぐが……
「トライデントアーム!!」
「……ッ!」
追い討ちのトライデントアームが振り下ろされウォーグレイモンが地面に叩きつけられる。咄嗟に両腕でガードしたが動きが止まった所をミサイルとレーザーの雨が降り注ぐ、ブレイブシールドを盾に防ぐが……
「放て!ムゲンキャノン!」
フリーになったムゲンドラモンが背中のキャノン砲からムゲンキャノンを放つ。威力を犠牲にして素早く放たれた光弾だが、受けてしまえば、究極体デジモンでも致命傷は免れない。
全てを消滅させる光弾がウォーグレイモンの居る場所に炸裂する。光が世界を包み込み轟音が響く。そして全てが収まった時……その場所には何もなかった。
「む…!」
しかし茅場晶彦の視線は鋭い。それはそうだ、ウォーグレイモンが消滅したのならルールにより俺は消滅する。しかし俺は生きている。
「ブレイブトルネード!!」
「ガウアッ!?」
つまりウォーグレイモンは生きている。エリアの地面から光の渦を纏ってウォーグレイモンが飛び出しムゲンドラモンの尻尾を破壊する。
「足止めとして使ったんでしょうがミサイルは悪手でしたね」
「……君は本当に隠すのが上手いな」
ギガデストロイヤーは威力が高い技、故に爆煙や爆音が生じる。ダメージをブレイブシールドで防ぎ、生じた爆煙と爆音を隠れ蓑にブレイブトルネードでエリアの地面を掘り、近づいたのだ。
「これで尻尾のレーザーは使えない!」
「ドラモンキラー!!」
ウォーグレイモンが側面から飛びかかり頭部にドラモンキラーを振りかざす。胸部のギガデストロイヤーは場所の都合上、正面にしか放てない。側面からの至近攻撃なら!
「私達もやられてばかりではない。君達なら接近した場合、必ずそう攻撃すると思っていた」
茅場晶彦がそう言った瞬間、ウォーグレイモンに顔を向けたムゲンドラモンの目からビームが発射された。
「「なっ!?」」
あまりにも予想外の攻撃にマトモに喰らってしまったウォーグレイモンが弾き飛ばされる。
くそ!目からビームとか昭和のアニメかよ!?
ウォーグレイモンが弾き飛ばされた隙に正面を向いたムゲンドラモンの胸部の砲門が展開する。砲門にはミサイルと共にエネルギーが集まっている。多分、ギガデストロイヤーと同時に『ジガストーム』も放つつもりだ。このままだとマトモに喰らって更に弾き飛ばされムゲンキャノンの餌食なる。
さっきの地面からの奇襲も一度きりの策だ、もう通用しない。
だったらもう、やるしかない!!
「ウォーグレイモン!ブレイブシールドを突っ込ませろ!」
「ッ!イケェ!!」
弾き飛ばされようともブレイブシールドの遠隔操作はできる。射出されたブレイブシールドは今まさにミサイルと熱線を放とうとしていたムゲンドラモンの砲門に突き刺さり……
大爆発を起こした。
ムゲンドラモンの装甲と大爆発で破壊されたブレイブシールドが吹き飛び爆煙が巻き上がる。
「ウォーグレイモン!…ドラモンキラー!」
「ムゲンドラモン!…トライデントアーム!」
爆煙が巻き上がる中、お互いの指示は同時に発せられ……胸部の砲門が破壊されながらもムゲンドラモンがトライデントアームを発射させ、ウォーグレイモンの胸部の鎧を砕き。それに対してウォーグレイモンは右腕に装備したドラモンキラーを発射させムゲンドラモンの片目を抉り取った。
「グウゥ!」
「ガアアッ!!」
正に痛み分けの結果になりトライデントアームで殴り飛ばされたウォーグレイモンは俺の方に、片目を抉られ後ずさるムゲンドラモンは茅場晶彦の方に、其々のテイマーの方に戻る形となった。
「大丈夫か!?ウォーグレイモン!」
「ああ……まだやれる」
そう言うウォーグレイモンだが限界は近い。ブレイブシールドと胸部の鎧は砕けてるし、進化だって万能ではなくメタルグレイモン時のダメージは完全に回復した訳ではない。それを証拠に肩を揺らして大きく息を吸ってる。
しかしそれはムゲンドラモンも同じだ。腹部と胸部には大きな亀裂があり、もはやミサイルは発射不可、右腕と尻尾を破壊され残る武装は左腕のトライデントアームと片目のビームに背中のムゲンキャノン。
これ迄のダメージもあって動きは最初と比べてかなり悪い。
「こうなってしまっては残る手段は一つだな、カナタ君」
お互いの状況を確認していると茅場晶彦が問いかけてきた。お互いのパートナーはボロボロであり、ルールにより命を共有している俺と茅場晶彦のHPゲージは既に危険域のレッドゾーンに入っている。
もう双方後がない状況、茅場晶彦の言う通り残る手段は一つ!
「やるぞ…ウォーグレイモン!!」
「ああ!この一撃に全てを賭ける!!」
最大最強の一撃で勝負の流れを掴む!!
デジヴァイスに力を込めるとそれに呼応してウォーグレイモンがオレンジ色のオーラを身に纏う。
「そう、お互いの全てを賭けた一撃のぶつかり合い!この戦いの決着をつけるに相応しい!ムゲンドラモン!!」
「……!!」
茅場晶彦の言葉を受けムゲンドラモンが両足を固定させ背中のキャノン砲を此方に向ける。
閃光のように白い光を上げて、キャノン砲へとエネルギーを先程までよりも遥かに時間を掛け、より一層大きく集めていく。その輝きは鋭く、その威力がどれほど絶大であるかなど放つ前から予想がつく。
明らかに最大出力で放つつもりだ。全力のムゲンキャノンに対抗する技は一つしかない。
ウォーグレイモンは自身のエネルギーを両手の間に集中させオレンジ色のエネルギー球を生み出し、今度はそれを掲げて大気中のエネルギーをかき集める。すると最初は両腕に収まる程だったエネルギー球が燃え上がる太陽と見紛う程の巨大なエネルギー球へと成長する。
コハルやキリト達、そして掲示板のニキ達が見守る中……その時はきた。
「ムゲンキャノン!!」
茅場晶彦の叫び声と共に放たれる極大の光球。全てを破壊する破滅の光が俺達に向かって直進する。
それでも俺達は恐れない、これで終わらせる!!
「「ガイアフォーーース!!」」
俺達の叫びと共に放たれた『ガイアフォース』は立ち塞がる全ての困難を焼き尽くそうと激しい勢いと共に『ムゲンキャノン』と衝突した。
◆◆◆◆◆
276:超マサラ人
遂に決着の時か!
277:極み主任
凄まじいエネルギーの衝突だ!
278:地球が恋しいレイオニクス
ガイアフォースとムゲンキャノン……威力は互角か…
279:モンハンライダー
おいアレ!?
280:SAOテイマー
ぐうぅ…!!
281:炎のヒロアカセイバー
テイマーニキ!?
282:最高最善のグランドマスター
くそ……やはりこうなったか。
◆◆◆◆◆
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
「ガアアアアアアアアアッッッ!!!!」
ガイアフォースとムゲンキャノン。激突した互いの必殺技は空中で押し合っていた。
その余波は凄まじく百層が砕け散りそうな衝撃に、動けない攻略組の中には吹き飛ばされる者も居る。そんな状況でもカナタとアグモンと近い者達は二人の勝利を信じて見ていた。
「なんつーぶつかり合いだ…!」
「ホントにこの百層が消し飛びそうだ…!」
「しっかり掴まってろ…アスナ!」
「うん……!」
麻痺で動けない体を必死に動かしてなんとか衝撃から身を守るクラインとエギル。唯一動けるキリトは剣を地面に突き刺し固定して動けないアスナを支えていた。
「ぐうぅ…!」
そんな時、デジヴァイスを掲げるカナタから苦痛の声が漏れる。
ウォーグレイモンに注目しがちだが、カナタもメタルグレイモンの時からダメージを負っている。HPゲージはパートナーデジモンに由来するから問題ないが、それでも一時は立ち上がれない程のダメージを負ったのだ、そんな体で究極体の必殺技が衝突する場所に居るのだ、衝撃だってキリト達よりもずっと大きい……限界が来たのだ。
カナタの苦痛に反応する様にデジヴァイスの光が弱くなる。
このままではマズイ!
誰もがそう感じた次の瞬間……驚愕した。
現在、戦ってるカナタ達を除けば動けるのはキリトのみ。
なのに何故?
誰もがそう思わずにはいられず……“彼女”の後ろ姿を見ていた。
◆◆◆◆◆
如何に仮想現実でも痛みはあり、全身にかかる負荷が洒落にならない。身体が軋む、激痛が全身を巡る。必要な代償と割り切り、無視しようともデジヴァイスの輝きは小さくなっていく。
デジヴァイスに使う力も生命由来である以上、当然無限ではない。これまでの戦いに加えて初めてのウォーグレイモンへの究極進化に全力のガイアフォース……遂に限界が来た。
「ぐっ……負ける訳には…!」
ガイアフォースがムゲンキャノンに押され始めた……力を込める、叫びを上げる。しかし、非情にも押し返す事はできず留まらせる事で精一杯だ。
そしてムゲンキャノンが押し込んだ事で俺に伝わる衝撃が強くなり。デジヴァイスを支えていた両腕の内、右腕が弾かれる。
(……あ)
この衝撃の中でデジヴァイスを片手で支えられる訳もない。デジヴァイスが弾かれれば一気に押し込まれる。
(ここまで……なのか…)
絶望が脳裏を過ろうとした時……弾かれた俺の右腕の代わりに“誰か”の右腕がデジヴァイスを支えていた。
「え…?」
衝撃で激しく揺れる黒色の短髪に唖然とする俺を見つめる翡翠色の瞳。見間違える筈もない…… GM権限によって麻痺を受けて動けない筈のパートナーだった。
「コハル……なんで?」
「あはは……何でだろう。カナタとウォーグレイモンを助けなきゃって強く思ったから……かな?」
笑みを浮かべるコハル。どうして動ける?麻痺が解けたのか?
しかし茅場晶彦の表情が違う事を物語っていた。キリトに正体を見破られた時も、ウォーグレイモンへと進化した時も余裕を崩さなかった茅場晶彦の表情が驚愕に染まっていた。信じられないと言わんばかりで唖然としている。
まさかコハルの思いがシステムの力を上回ったのか?
「私は…カナタみたいにアグモンを進化させられる訳でも、アグモンみたいにデジモンと真正面から戦える訳でもない。それでも支えてあげたい!」
いや、そんな事はどうでもいい。
「私は!」
大事なのは…!
「貴方のパートナーだから!!」
コハルが俺を支えてくれている事実だ!
俺が困難に直面した時、いつだってコハルは笑みを浮かべてそう言ってくれた。デジモンであるアグモンとデジモンテイマーである俺が化け物と迫害された時だって一緒に居れば心無い罵倒を受けるにも関わらず、俺達と共に戦ってくれた。
「コハルのその言葉と笑顔にどれだけ助けられた事か…」
「え…?」
俺は弾かれた右腕をコハルの身体に回して彼女を支える。幾ら思いの力と言っても限度がある。ステータス的には麻痺は継続しておりコハルもいつ倒れても不思議じゃない。
「終わらせよう。俺とウォーグレイモンと……コハルの力で!」
「カナタ……!うん!!」
コハルも空いている左腕を俺の身体に回し、互いに支え合いながらデジヴァイスに力を込める。すると俺のオレンジ色のオーラとは別の“青色のオーラ”がコハルから迸る。
「なっ…!まさかコハル君も!?」
茅場晶彦が驚愕の声を上げるが、そんな事はどうでもいい。デジヴァイスにコハルの輝きが宿ると同時にウォーグレイモンがオレンジ色のオーラと共に青色のオーラに包まれる。
「ッ!感じる、カナタだけじゃない…コハルの思いが俺に力を与えてくれる!!うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ウォーグレイモンが雄叫びと共に力を込めると先程まで押し込まれていたガイアフォースが更なる輝きを放ちムゲンキャノンを押し返していく。
「グッ!ガガガ……!」
ムゲンドラモンも必死に押し返そうとするが止まらない。
「「「いっけぇぇぇぇぇ!!」」」
そして遂にガイアフォースがムゲンキャノンを飲み込み、ムゲンドラモンに直撃した。
「グガァアアアアアッ!?」
凄まじい熱量と爆発が巻き起こりムゲンドラモンの装甲が溶けていき、やがてその姿が見えなくなっていく。
「やっーー「まだだ!!」ーーえ?」
勝負あり。誰もがそう思ったであろう刹那……
「………グガaアアAAAアアアアaaアアアアッ!!」
燃え上がる爆炎からムゲンドラモンが飛び出して来た。怨霊が叫んでいるのかと思う程の雄叫びとは対照的に、今だに炎上するその体は既に、至るところから光の粒子が漏れ、死にかけの体だ。
「うおおおおおおぉぉぉぉ!!」
それでもその身に纏う気迫はこれまでの戦いの中で一番強かった。ムゲンドラモンを迎え撃つ為にウォーグレイモンがドラモンキラーを構えて突撃する。
どちらも限界など既に超えた体……これが本当に最後だ。
二体の攻撃が交差する。
ドラモンキラーを振り下ろすウォーグレイモンとは対照的にトライデントアームを振り上げるムゲンドラモン。背中合わせのまま動かない二体。流れる沈黙……
「うっ……!」
しかしウォーグレイモンがアグモンよりも下である幼年期IIのコロモンに退化した事で一変する。
「コロモン…!ッ!カナタ!?」
桃色のスライムみたいな形状のコロモン。その額には切り傷が刻まれており、同時に俺のHPゲージが減っていく……後少しでも減れば0になる。
もう進化する力もなく、正にもう後がない状況。コハルが顔を青くするのも無理はない。
「…………茅場晶彦」
「……うむ、カナタ君」
この勝負。
「俺達の……」
「君達の……」
◆◆◆◆◆
294:炎のヒロアカセイバー
……………………
295:極み主任
……………………
296:最高最善のグランドマスター
……………………
297:超マサラ人
……………………
298:モンハンライダー
……………………
299:地球が恋しいレイオニクス
……………………
300:異種族派カセキホリダー
……………………
◆◆◆◆◆
「「勝ちだ」」
俺と茅場晶彦が同時に言った瞬間、トライデントアームが切り落とされ、ムゲンドラモンが地響きを上げて倒れ伏す。
そう、勝ったのは俺達だ。
「………よかった」
倒れそうなコハルを慌てて抱える。思いでシステムの力を乗り越えていたが遂に限界……いや、とっくに限界だったのを最後まで持ち堪えてくれていたのか。
「ありがとうコハル」
「カナター!コハルー!」
「コロモン…おいで…!」
「うん!」
決着がつきピョコピョコと飛び跳ねながらコロモンはコハルの腕の中に飛び込む。
「二人とも…!」
「………コハル、俺達はちゃんと居る。約束通り、勝ってお前の側に居る」
「うん!僕達勝ったよ!コハルが力を貸してくれたから!」
「カナタ…!コロモン…!よかった…!本当によかった!」
俺達の言葉を聞いてコハルはコロモンを抱きしめ俺に寄りかかりながら静かに泣いていた…俺達の存在を感じる為に。
「ご苦労だった……ムゲンドラモン」
その一方で茅場晶彦は倒れ伏すムゲンドラモンの側に居た。ムゲンドラモンの身体から光の粒子が漏れ……もうすぐ消滅する。そんなムゲンドラモンに茅場晶彦は労いの言葉をかけていた。
「ムゲンドラモン……私の夢に付き合わせてしまって、すまなーー「そっちじゃないだろ、ムゲンドラモンが聞きたいのは」ーー…カナタ君」
ムゲンドラモンは茅場晶彦の命令に忠実だった。確かにマシーン型デジモンは自我という物が薄いが決してない訳じゃない。その気になれば命令を無視する事もできる。
例えテイマーであろうとデジモンを完全に支配する事はできない。何処までいこうともテイマーとデジモンは心と力を合わせる必要がある。
ムゲンドラモンは最後まで戦った、本来ならガイアフォースの一撃で消滅する筈の体を必死に動かして……。
つまり茅場晶彦とムゲンドラモンの間には確かに絆があったのだ、茅場晶彦の夢を込めた育成はムゲンドラモンとの信頼を作るのに十分だ。
「………そうだな」
俺の言葉に唖然としたが小さな笑みを浮かべてムゲンドラモンに向き直る。ムゲンドラモンは静かに茅場晶彦を見つめていた。
「ありがとうムゲンドラモン。狂人である私の夢に付き合ってくれて」
「……………」
茅場晶彦が触れようと手を伸ばしムゲンドラモンはそれに応じて頭を動かす。そして茅場晶彦の手がムゲンドラモンの頭部に触れた時……
………ムゲンドラモンは光と共に消滅した。
ムゲンドラモンが居た場所には一つの卵……デジタマがあった。デジモンは消滅するとデジタマになって新しい命として転生する。
「………私もすぐに後を追う」
そのデジタマを拾い上げ茅場晶彦は此方を向く。ルールにより茅場晶彦は消滅するが、GMとしての責務を全うしてから消えるつもりなのだろう。
「さてGMとして、そしてこのゲームの開発者として言おう。カナタ君、コロモン、そしてコハル君。ゲームクリア…おめでーー」
それは突然だった。
100層に居た筈の俺達が突如……75層のボス部屋に戻されたのだから。
異変はそれだけじゃない。
【ソードアート・オンラインの処理に不具合を確認。不具合レベル大。ただちに対処が必要と判断】
鳴り響く警告音と共に謎のシステムボイスが聞こえてくる。
「な、なに?」
【現在進行されようとしている処理は管理者による独断であり修正が必要と判断】
「……まさかここまでの強硬手段に出るとはな。……無粋が過ぎるぞ。私のパートナーが命を散らしてまで行ったこの戦いを茶番にするつもりか!」
茅場晶彦は何が起きてるのか理解しているのだろう。ウインドウを開き、もの凄い速度で操作する。
【ユーザー名Heathcliffから管理者権限を剥奪。黒鉄宮の特別区画にて監禁………失敗。ユーザー名Heathcliffからの抵抗を確認。対処します】
「くっ…既に幾つかの権利を取られたか」
俺達には何が起こってるのか分からないが、一つ悟った事がある。
このまますんなりとゲームクリアにはならないと……
◆◆◆◆◆
317:炎のヒロアカセイバー
い、一体何が!?
……っ!アレ見てください!
318:異種族派カセキホリダー
茅場晶彦とフィールドに……!
319:極み主任
ノイズだと!
◆◆◆◆◆
【本件とは別のシステム障害を確認。外部からの予想外の干渉が発生。その影響によりメンタルヘルス・カウンセリングプログラム。MHCP試作□号の膨大なエラーがコアプログラムに侵入。例外的状況の対応に処理能力の多くを割かなければならないと判断。現在の対処を一時中断します】
それを最後に謎のシステムボイスは聞こえなくなった。辺りを静寂が包み込む。麻痺が解消された攻略組の面々からも不安の声が上がる中、俺は茅場晶彦に問いかける。
「……説明する余裕はあるか?」
「……辛うじてだが猶予がある。カナタ君、そして攻略組の諸君。当初の予定通り先程の百層を目指し正規の手段でこのゲームをクリアしたまえ。それしか現状、現実世界に戻る手段はない」
「そんな……カナタとコロモンが命を賭けて戦ったんですよ!?それなのに!?」
コハルがあんまりだと叫び。攻略組の面々からも非難の声が飛ぶ。
「……本当に返す言葉もない。せめてもの償いとしてコハル君、君にコレを」
茅場晶彦がウインドウを操作するとコハルの前に現れたのは…。
「コレって!?」
「カナタと同じデジヴァイスにデジタマ…」
俺が持つ物と同じデジヴァイスと一つのデジタマだった。目の前に現れた二つをコハルが手に取った時、先程見せた水色のオーラがコハルから流れデジヴァイスが水色に輝いた。
「それは研究の途中で偶然見つけた物で私には扱えなかったが…まさかコハル君も選ばれし者だったとは……そのデジタマはデジヴァイスと一緒に置いてあった物で……きっと君を助けてくれる筈だ」
「私もカナタと同じ……」
「そしてカナタ君にはコレを。私がこれ迄の研究で集めたデジモンのデータや独自に開発した機能だ」
デジヴァイスに様々なデジモンのデータが流れ込んでくる。まるでデジモン図鑑だ。それに茅場晶彦が作った機能……便利な物と信じよう。
ん?俺のステータスに変化?新しいスキル……っ!
「コレって!?」
「それは私を倒した報酬であり、君なら使いこなせる筈だ。そして用心したまえ、全てはこの世界を動かすシステムである、カーディナル・システムの中に組み込まれし“アルカナ・システム”が仕組んだ事だ」
「アルカナ・システム」
茅場晶彦の身体が光に包まれていく……時間か。
「時間か……君達なら必ずクリアできると信じているよ、インデグラル・ファクター」
最後にそう言い残し、茅場晶彦は手に持つデジタマと共に消えていった。
◆◆◆◆◆
329:超マサラ人
一体何が起こったって言うんだ。
330:極み主任
推察だが。SAOは自動化されたシステムであるカーディナル・システムによって運営されている。その中にあるアルカナ・システムという物が自我を持ち、あのような強硬手段に出たのだろう。
331:炎のヒロアカセイバー
そんな事があり得るんですか?
332:最高最善のグランドマスター
あの世界のAIは人間と変わらない自我を持っている。言っちまえばデジモンと大差ない。十分にあり得る話だ。
333:モンハンライダー
そもそもよ、本当に百層をクリアしたら解放されるのか?あの状況から見てかなり怪しいぞ。
334:SAOテイマー
クラインやエギルもその事を危惧しています。
335:異種族派カセキホリダー
でもよ、可能性はあるんじゃないか?
336:地球が恋しいレイオニクス
ああ、どのような思惑があったにせよゲームを運営するシステムが行った事だ。ならばその性質上、正規の仕様通りに百層をクリアすれば今回みたいに口を挟める隙はない。
337:最高最善のグランドマスター
だが、問題はもう一つある。
338:炎のヒロアカセイバー
あのノイズですね。
339:SAOテイマー
あの時、俺達はそんな物見えませんでしたが……
340:極み主任
おそらく、この掲示板を通して第四の壁から見てる我々だからこそ見えた物だろう。何にせよ、デジモンを抜きにしても完全に原作の道から外れてしまった。
341:SAOテイマー
だとしても足を止める訳にはいきません。今の自分達にできるのは、少しでも前に進む事だから
342:異種族派カセキホリダー
そうか……
343:最高最善のグランドマスター
だけど忘れんなよテイマーニキ。お前は一人じゃないって事をな。
344:SAOテイマー
勿論分かってます。
俺はーー
『あ、見てカナタ!』
ーーえ?
◆◆◆◆◆
「あ、見てカナタ!」
これまでに類を見ない非常事態にみんなが意見を交わし、俺は掲示板でニキ達の意見を聞く中、コハルが抱いていたデジタマが揺れる。まさか生まれるのか!?
揺れるデジタマを見てみんなが集まってくる。コハルが愛おしく優しくデジタマを撫でると……デジタマは弾けるように光を放ち。
「ミ~」
「わぁ…!」
新たな命が其処には居た。
ゲル状の赤い体に頭部には三つの触手が生えている幼年期Iのデジモンだ。
「可愛い〜!」
「落ち着けよアスナ。おいクライン、あんまり近づくと泣くんじゃないかこの子?」
「何だとキリト!それを言うならエギルの旦那だろ!?」
「そりゃ聞き捨てならねぇな」
みんなが生まれたデジモンに反応していると俺のデジヴァイスが光を放ち、あるデータを表示する。それは目の前のデジモン……“プニモン”のデータだった。
「早速あの人の贈り物が役にたったな。コハル、その子はプニモンだ」
「プニモン…!」
「ミー?」
コハルはプニモンと視線を合わせ……
「私はコハル。これからよろしくね、プニモン!」
笑顔で自己紹介をする。生まれたばかりのプニモンにはまだ言葉を理解できない。
「ミ?ミー!」
だけどコハルは自分の誕生を心から祝ってくれていると分かったんだろう。笑顔でコハルの胸に飛び込んでいった。
「仲間が増えたねカナタ」
「ああ、楽しくなりそうだ」
グラマスの言う通りだ……俺は一人じゃない。みんなと一緒ならきっと大丈夫だ。
次回予告!!
茅場晶彦に勝利したカナタ達。しかしデスゲームは終わらない。76層を攻略するある日、カナタは謎のエリア「ホロウ・エリア」に強制転移されてしまう。 そこで出会ったのは、虚ろな目をした蒼き少女。 その手には短剣と共にデジヴァイスが握られていた。
次回【ホロウ・エリアと三人目のテイマー】
インテグラル・ファクターは終わらない。
まぁ、次回は違う話を投稿するんですが、流石に三回連続なので。
しかし書いているのと熱意が湧いてきまして。テイマーニキの話はありふれちゃんと同じくメインにします。
なので次、テイマーニキの話を投稿する時は次回予告で出た話ですね。
茅場晶彦に勝利したテイマーニキですがゲームはクリアされずに先に進む事に。コハルが動いたのは原作でのアスナさんをオマージュしました。
しかしやっぱり長くなってしまいました。最後のガイアフォースで終わりにしても良かったのですが、やっぱりムゲンドラモンとウォーグレイモンの決着はあの展開にしたかったので……
そしてコハルもテイマーになってパートナーはプニモン。果たしてどう成長するのか……お楽しみ!