【転生者は】多次元式転生掲示板【助け合いでしょ!!】 作:DestinyImpulse
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」
妖狐達と一緒に召喚された愛子先生が叫ぶ。
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
「そ、そんな……」
愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。
「そんな……!」
「妖狐……」
それは妖狐も例外ではなく顔を青ざめて震えていた。そんな恋人を必死に宥めながらオタク知識から幾つかのパターンを考えていた。
「……ありがとうハジメ。大丈夫」
ハジメのカウンセリングと掲示板の激励で少しずつ妖狐も落ち着きを取り戻す。そして気づくイシュタルの目の奥に侮蔑が込められているような気がした。
(確かにグラマスさんの言う通り「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのかもしれない……信じられない奴なのは間違いない)
その時、天之河光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。……妖狐とハジメは嫌な予感がした。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。
同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
いつものメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。
(何、何を言ってるの…!?コイツら?)
そんな彼らを妖狐は別の生き物を見るような目で見ていた。いきなり異世界に連れてこられて勝手な都合で戦争をしろと言われているのにこいつらは何を言っているんだ……
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206:ありふれた転生者(仮)
アイツら何言ってるの?それとも私がおかしいの?
207:OCGトマト
君がおかしい(褒め言葉)
中学生の俺でももう少し考えますよ。
208:屋根裏ジョーカー
それしかないって……
一体この数分で何を考えたのだろうか?
普通考える時間を取るのが鉄板だろ?
209:炎の剣士
幼馴染がやるなら自分もって……赤信号みんなで渡れば怖くない理論かよ。
210:極み主任
本当に彼らは日本育ちなのだろうか?
現代社会がベースな世界なら大抵日本は悲惨な戦争の被害を受けた筈だ。第二次世界大戦や原爆ドームなど……私の世界にはあるのだが。
211:屋根裏ジョーカー
俺の世界もあるぜ。
212:最高最善のグランドマスター
俺の所もあるな。
213:ありふれた転生者(仮)
私の世界にもあります。というか社会の授業でやってますよ!
他の奴らも何を考えてるんだ!幾らカーストトップの四人が参加するからって馬鹿正直に自分もって!凄い力があるって分かった途端にヒーロー気分……よくそんなんでハジメを馬鹿にできたわね!!
214:神を薙ぐ超古代の光
クラスの問題もあるけど……あのイシュタルにしてやられた。
奴は見抜いていたんだ。クラスの中で誰が一番影響力を持っているのか。事情説明をする間、それとなく勇者である天之河光輝を観察し、どの言葉に、どんな話に反応するのか確かめていたんだ。
ありふれちゃんから話を聞くに正義感の強い人間なんだろう。そんな彼の人間族の悲劇を語られた時の反応は実に分かりやすかった筈だ。それを確認して魔人族の冷酷非情さ、残酷さを強調するように話していたんだ。
215:ありふれた転生者(仮)
どうしよう…!全員参加の方針になってきてる!
216:鬼斬り抜刀斎
マズイな…!このままでは…!
217:ねっぷねぷにしてやんよ!!
まだ、手はあるわ!
218:炎の剣士
ッ!ねぷネキ!!
219:最高最善のグランドマスター
さっき連絡した。
こういう掛け合いには強いからな。
220:ねっぷねぷにしてやんよ!!
ありふれちゃん……初対面の私を信じられないかもしれないけど、此処は私に任せてくれないかしら?
221:ありふれた転生者(仮)
…………………正直、少し戸惑ってます。
でも、この掲示板の皆さんは少しの時間でも信頼できると分かりました。そんな皆さんが信頼する貴方を信頼します。
……お願いします、知恵を貸してください!
222:ねっぷねぷにしてやんよ!!
ええ!任せてちょうだい!!
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クラスのカーストトップである、いつものメンバーが戦争参加に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。
「少しいいですか?」
そんな時時だった。先程まで顔色を悪くしていた妖狐が静かに立ち上がりイシュタルを見る。光輝達とは別のクラスの注目株の行動に誰もが視線を合わせる。
「妖狐…?」
ハジメも先程まで狼狽えていた彼女の行動に少し驚いていた。そんな彼氏にこっそり微笑むと小さく深呼吸して話を切り出す。
「私は精錬妖狐といいます。いくつかお願いがあるんですが聞いていただけませんか?」
クラスの反応から、妖狐もクラスで大きな存在と見たイシュタルは鷹揚に頷きながら答える。
「はい。何なりとお申し付け下さい」
「はい、ありがとうございます。一つ提案したいのですが…私達は戦争や戦いなど体験した事がありません。いわば文官を養成する場所にいた人間が力を得たからと言って急激に戦えるようになるとは思えません。そこで戦争に参加する人間を志願制にしていただけませんか?戦争に参加しない者も、身分を保障してもらい住む場所を提供していただけませんか?」
「ふむ、志願制ですか…?」
考え込むイシュタルを見て光輝が声を荒げる。
「何を言っているんだ妖狐!?この世界の人達を見捨てるって言うのか!?君はそんな人間じゃないだろ!?」
そんな光輝に内心で罵声を浴びせつつ嫌悪を顔に出さないように反論する。
「誰も見捨てるなんて言ってないわよ。“本当に助けを求めている人”に手を差し伸べる善意くらい有るわよ。アンタ達四人と違っていきなり戦えって言われて戸惑いが有るだけで別に何もしないって訳じゃ無いわよ。私達の世界の技術の提供といった後方支援くらいはできるわよ」
光輝を黙らせてイシュタルに妖狐が続けて発言する。
「私達は確かに創世神エヒト様に召喚されたかもしれませんが、この世界の事は何も知りません。この創世神エヒト様が作ったこの世界がどんな物か、人類を救う天命を受けたと言っても何も知らないままでは戦えません。ですから志願制という形であくまでも戦争に参加するかは個人の自由で戦争に参加しない者は後方支援に回させてもらえないでしょうか?」
イシュタルは暫く考え、妖狐を見る。妖狐の提案はイシュタルにとっても悪くない物である。重要な勇者は扱いやすく、手綱は完全に此方が握っており、勇者と親しい他三人も参加するだろう。発言力が高い四人を上手く使えば他の面々が参加するのは先程の光輝達の演説(笑)で確認済み。恐らく全体の八割が参加する筈、そこで残りの極少数が参加しなくても大した問題はない。
後方支援とて使い道は有るし、下手に扱って不信感も抱かせるのも良くない。それに妖狐の態度はイシュタルから好印象だった。今すぐとはいかないものの、これから参加してくれる可能性は十分にある。
「成程…… 私達も何も無い状態で戦いに参加させるわけではございません。訓練や講義等の必要な事は此方が支援させていただきますし、後方支援という形で間接的協力していただけるのなら何も言う事はありません。わかりました、そのように手配いたしましょう。それでは先ずハインリヒ王国に移動しましょう」
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243:極み主任
よし!何とか志願制を認めさせたぞ!!
244:最高最善のグランドマスター
それに生活の保障もできたな。
あのジジイもそれ程ありふれちゃんに嫌悪してない。
245:屋根裏ジョーカー
ああ!かなり良い交渉だった!
246:炎の剣士
それに後方支援って形で戦えない人も価値を示せましたし。
247:神を薙ぐ超古代の光
流石の交渉力だね、ねぷネキ。
248:ねっぷねぷにしてやんよ!!
私は大国プラネテューヌを統べる運命と勝利を司る女神よ。狂った狂信者を出し抜く程度造作もないわ。あのイシュタルは心からエヒトを信仰している。エヒトを持ち上げて更正の余地ありと思わせておけば今すぐどうこうされる心配はないわ。
ありふれちゃんもお疲れ様。貴方の演技とても良かったわ。
249:ありふれた転生者(笑)
えへへ、お父さんの仕事で時々、キャラ作成の一環としてこうして演技する時があるので。
250:OCGトマト
堂々としていて良かったですよ。
251:対魔忍リバイ
ああ、演技の才能有りだぜ!
252:鬼斬り抜刀斎
とはいえ、内心じゃ疲れているだろう。
お疲れ様。
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(久しぶりだな……。善意に触れるの)
イシュタルに連れられ部屋を出るクラスメートを冷ややかな目で見つつ、掲示板のスレ民達の自分を労ってくれる言葉に深く感謝していた。
イシュタルの交渉では冷静を保ちつつも内心冷や汗モノだった。ねぷネキの言葉をそのまま言うだけとは言え、自分達の今後を左右する話だ、緊張が顔に出ないか気が気でなかった。
そんな時に「私は駄目な教師です……」なんて呟く愛子が目に入る。本来なら教師である愛子が光輝達の暴走を止めなければならないのだが、傍観していただけの彼女。元々、生徒に舐められている人だ。彼女を頼る事は今後ないだろう…
「妖狐……大丈夫?」
そう思っているとハジメが声をかけてくる、その顔は何処か申し訳なさそうだった。
「ハハハ、もう心臓バクバク。何か間違ってないか気が気でなかったよ」
「…妖狐は何も間違ってないよ。ごめんね、こんな大役を任せて」
自分はねぷネキの言葉を綴っただけに罪悪感を感じ、心の中で謝罪しながらハジメに笑みを向ける。
「何言ってんの。私がダメな時、いつも励ましてくれるのハジメでしょ?ハジメはこんな荒事が苦手で心優しいのは私が何より知って、助けてもらってるから!」
「妖狐…」
少しだけ顔に笑みが戻ったハジメを見て妖狐はスレ民から聞いた原作を思い出す。こんな優しいハジメが片腕を失い未来では魔王になってしまう。
(そんな事は絶対にさせない!)
スレ民に助けてもらってばかりの自分だけど、必ずハジメと一緒に元の世界に帰ってみせる。
そう少しずつ決意を固める妖狐を……
「…………………!」
クラスの陰に隠れながら光の無い目で見つめる誰かが居た。
・ねっぷねぷにしてやんよ!!
光ニキやグラマスの同期でレジェンドの一人。ネプテューヌに転生した古参。年齢の話はNG!!初代の時はブラック、ホワイト、グリーンの三人がかりでも……余裕で勝利。Vの時はレイとタイマンで戦って圧勝!VⅡはうずめを生存させ、かなりの強さをほこる。マジモンの神で運命を司る。
光ニキ達に相談する為に此処に来た。
運命と勝利を司るチートぶりを発揮する。元ネタは今はサービス終了したメガミラクルフォースのパープルハート(運命)。