12話です! どうぞ!
12話 新たな任務
~~サマディー城・中庭~~
皆さんどうも! いつも元気なハムザ君でーす!
あれからまた2年ほど経ち,俺も12歳になりました! 俺も随分とこの世界に馴染んだんじゃないかな?
現在俺はお気に入りの中庭で日課の自主訓練を終え,お気に入りのネコと戯れ中である。
このサマディー城ではたくさんのネコを飼っており,いたるところで見ることが出来るのだ。
……ドラクエの砂漠の国ってネコ好きすぎじゃない?
だから城で働いてる者達にはそれぞれお気に入りのネコがいたりするんだよね。
でもネコたちの多くは俺が近づくと逃げてしまいがちで,そんな中でも逃げずにむしろ近づいてきてくれるこのずんぐりむっくりが最近のお気に入りなのだ。
「みんな逃げていくのは俺が怖いからか? それとも……まさか匂うのか……?」
「にゃーん? にゃ~?」
俺はネコの耳の後ろを触りながらつぶやくが,「どしたん? 話聞こか~?」みたいな感じで鳴いてくる。
ふふっ。こいつののんびりした様子を見ていると,色々と忙しない俺たち人間はもっと肩の力を抜いてもいいんじゃないかという気分にさせてくれる。
「ここにおられましたか王子!」
だが、ネコと戯れていたところに突如乱入してきた部下の登場に,俺は固まった。
「…………お寛ぎのところ申し訳ありませんが王がお呼びです。では失礼します!」
…………
ほわあああああ! おわ! おわーーーーー!
見られたあああ! クールキャラを死守してきた俺の隙をーー!
前から忙しかったけど,騎士団長に就任してからはそれに輪をかけて忙しくなったんだもん!
実際に現場で問題解決に当たるだけじゃなくて,まずは騎士全員の特徴やバックボーンの把握をして,次に騎士団全体の統括,つまりどこにどれくらいの騎士をどういう役割で配置するとかそこで得られた情報の管理とか,更には以前考えてた騎士団の中でも組織改革についてとかやることいっぱいで忙しかったんですうう!
俺まだ12ですううう! しかし最近自分でも「12ならまぁあり得るかな」とか思い始めてきてる! もしやこれが……成長……?
ちくせう。俺はまだまだ未熟だ……。
「にゃにゃん! にゃん!」
ずんぐりむっくりが「ええやんええやん! 切り替えてこ!」と俺を励ましてくれる。
そうだよな。大事なのはこれからだよな! 俺はまた一つの壁を越えたのだと考えよう!
よし! そうと決まれば玉座の間までレッツラゴー!!
~~サマディー城・玉座の間~~
俺はあのネコと別れ,玉座の間まで来ていた。
「父上,このハムザ,お呼びと聞いて参上いたしました!」
「うむ。そなたも忙しいところをすまんな。そなたの働きは大いににワシの助けにもなっておる。そなたも立場が立場ゆえ無理をするなとは言いにくくなったが,いつでもワシを頼ってくれよ」
い,忙しいところ……はい,ありがとうございます。
「お気遣いありがとうございます。して,此度のご用件をお伺いしたく。」
「おお,そうであったな。ゴホンッ! 時にハムザよ,数年前より我が国の庇護下に入ったナギムナー村のことはそなたも存じておろう。そしてそのナギムナー村から近頃海に出現する魔物を討伐してほしいという要請がきておることもな」
確かに来てましたね。忙しすぎて詳細までは目を通していないが,派遣する者をどうするかって話を先輩とした気がする。……それにしてもナギムナー村ね。
この世界では俺はなんだかんだでまだ行ったことがないが,あそこはサマディーにとっても軍事的,経済的に非常に重要な場所になってきている。
サマディーの庇護下に入ってサマディー兵が近海の治安維持を行うようになってからは魔物の被害も減っており,こういった要請も減少傾向にあるのだ。
今回も,組織改革でつくった海での戦いを専門とする騎士で編成された”青騎士団”に討伐隊を任せ,現地に駐屯する騎士とも協力して戦闘の経験を積ませようと思っていたのだが何かあったのだろうか?
「そこでだ,ワシはその討伐部隊をそなたに率いてもらいたいと思っておるのだ」
ほう。……え,なぜ? まさか突然強い魔物が出てきたとかですか?
「本来であれば,あの村が我が国の勢力圏に加わった際にワシが現地に赴いて民を慰撫しなければならなかったのかもしれぬが,色々とやらねばならぬこともあったゆえに出来ておらなんだのだ」
そういえば確かに俺だけじゃなく父上もナギムナー村に行ったことがないのか。え,今更だけどあの村の村民って俺たちの顔すら知らないの!?
「そなたも気づいたようだな。あれから数年経つが,我らは一度もナギムナー村を訪問しておらぬのだ。最近はそなたも部下に任せられることが増えて少し余裕もでてきたじゃろう。今回の魔物討伐に加えて,王子としてナギムナー村の者達と親交を深めてきて欲しいのだ」
なるへそなるへそ。いいですよ。(即決) だって,とどのつまりそれって休暇ですよね!?
外海に生息する魔物は強力なやつらも多いが,今まで報告にあったくらいの強さの魔物であれば油断しなければ余裕を持って討伐できるはずだ。
それに海上での戦闘は慣れないうちは危険も多いが,慣れれば敵が多少大きかったりしても連携などで色々とやりようがあるのだ。
もちろん俺は海上戦闘も経験済みですし,指揮力も中の上くらいはあると自負している。
これを休暇と言わずして何と言う! もしや父上もそれを見越してこんなことを!?
流石父上! さすちち!
「なるほど,確かにそれは由々しき事態ですな。わかりました。その任務,私が務めさせていただきます!」
「うむ! そなたであればワシも心配せずに任せられるというもの。ではくれぐれも頼んだぞ!」
「ははっ!」
……あ,今思い出したけどそういえば父上って船ダメなんだったっけ。
~~サマディー城・大騎士団長室~~
さて,俺は半分くらい休暇のつもりで行くが,正式な任務であることには変わりない。
連れていくメンバーの選定や俺がいない間に俺の仕事を代わってもらうための引継ぎなど,やらねばならないこともたくさんある。
せっかくだから俺が取り組んだ騎士団の改革による現在の騎士団の組織について少し説明しておくとしようか。
その最たるものとして,先ほどに少し出たように騎士団を編成し直し,役割ごとに分けることにした。
そこで,大きく分けてだいたい四つの騎士団が生まれた。
一つ目は陸上での戦いを主に担当する”赤騎士団”だ。
この騎士団は戦闘を得意とした屈強で忍耐力のある者たちを集め,その任務は領内に現れた魔物の討伐任務が主で,定期的な巡回やダーハラ湿原の探索においても活躍している。大雑把に言うと陸軍と考えていいかもしれない。
二つ目は先ほどの会話の最中で,本来魔物討伐を任せるつもりだったと考えていた海上での戦いを主に担当する”青騎士団”だ。
この騎士団は泳ぎや船の上でも十分な戦闘が出来る勇敢で器用な者たちを集め,その任務は海に進出したサマディーの海防を担っており,現在は外海での哨戒や緊急時には兵や物資の輸送も行っている。こちらも大雑把に言うと海軍と考えていいかもしれない。
三つ目は情報収集や隠密任務を主に担当する”黒騎士団”だ。
この騎士団は単独行動も連携も得意な柔軟で忠誠心の高い者たちを集め,その任務は諜報やその対策,軍事行動の際は斥候なども可能である。表でも裏でも活動できる者たちだな。
そして最後の四つ目は重要人物や施設などの警護を主に担当する”白騎士団”だ
この騎士団は対人戦闘や文官仕事もこなせる賢く真面目な者たちを集め,その基本的な任務は王城警備や王の護衛,外交の場における警護など国の信用にかかわるものも多い。近衛騎士などもここに配属される。
ちなみに王子隊は形式上は白騎士団に所属している。俺の親衛隊みたいな感じだしね。
それと,一時的にこれらの騎士団の枠組みから外して任務を任せることが出来る特務騎士という制度も作ったが,今はいいだろう。
え?こんくらい普通じゃね?と思ったかもしれないが,以前のサマディーでは騎士はなんでもできなきゃいけないみたくなっていたので,人選とかがマジでだるかったんだって!
ある程度は平時の役割をきっかり決めておかないと面倒だと思ったのだ。
ちなみに,団員数は赤>青>黒≧白といった具合だ。
それぞれの騎士団は,基本は元来のサマディー兵の衣装にそれぞれの騎士団の名前の色が少しだけ使われた衣装を身に着けている。
また,騎士団ごとに得意とする分野はあれど,様々な事態に対応できるようにそれ以外でもある程度はこなせるように厳しい訓練を行っている。
騎士団同士の仲も良く,連携や協力などに大きな支障が出るような事態は今のところ発生していない。
俺は当初,騎士たちの中でグループを分けすぎると派閥ができて対立が起こるなどの問題が発生するかもしれないという懸念を持っていたが,結果としてそれは杞憂だったようだ。
彼らはこのサマディーと国民たちを守るという目的で一致団結し,騎士道精神を宿す高潔な騎士たちだったのだ。
俺は彼らをとても頼もしく,それと同時に誇らしく思ったものだ。
彼らであればもしも俺が乱心してもそれに迎合せずに止めてくれるだろう。
原作のデルカダール王国のように王の命令に忠実すぎる兵は一種の理想ではあるんだろうが,俺はサマディーの兵たちには自分達で考える能力も養ってもらいたい。この世界何が起きるかわからないしね。
…でもそれのせいで俺にかかるプレッシャーは並々ならぬものがあるんですけどねえ!
自分で自分の首を絞めていると言えば聞こえは悪いが,自分を見つめなおすための鏡を作っているとでも言えば美談っぽくない!?
あとこれは余談だが,驚くべきことに俺は現在これらすべての騎士団の団長職を兼任している。
……聞き間違いではなく,俺は赤騎士団長でもあり青騎士団長でもあり黒騎士団長でもあり白騎士団長でもあるのだ!
いやいやおかしいだろうと! 俺に全てを押し付けるなと言いたい!
それで一刻も早くそれぞれに騎士団長を任命して,俺は騎士団統括とかサマディー軍総司令でも名乗ろうと思っていたら父上から「全ての騎士団長を兼任するそなたは大騎士団長だな!」と言われて俺の役職名がその名前になった。
……ダサくないよね? 他国で馬鹿にされないかどうかだけが不安だ。
あとそれぞれの騎士団長はまだまだ募集しています! いい人材を早く見つけたいでござる。
まあその話は置いておき,今回は考えた結果,やはり連れていくのは青騎士団を大部分として,そこに白騎士団の王子隊を合わせたメンバーにすると決めた。
俺がいない間の代わりは先輩に任せることにした。普段から俺以上に俺の仕事をしていると言っても過言じゃない男なので大丈夫なはずだ。
……不安なのはむしろ先輩がいない俺の方だったりする。
正直な話,自分の鍛錬や勉強をしながら騎士としての任務もできていたのは先輩のおかげだったりしたりしなかったり。
だがまあ大丈夫だろう。きっとなんとかなるなる!
自信を取り戻すためにもせっかくだし俺自身の成長についても話そうじゃないか!
まず,現在俺の習得している技はこんな感じだ。
≪呪文≫
ホイミ,ベホイミ,ベホイム,キアリー,キアリク,バイキルト,スカラ,イオ,イオラ
≪特技≫
ブレードガード,零の洗礼,ゾーン必中,エレメントフォース,溶岩斬,氷河斬,雷光斬,渾身斬り,ぶんまわし
新しく覚えたものもいくつか増えている。
まずは呪文からだが,回復呪文が成長してベホイムになった。
そして……攻撃呪文を覚えました!! イェイ!!
光属性で爆発の呪文であるイオ系統の呪文が使えるようになった!!
さらになんとイオだけでなくその上位のイオラまで覚えたのだ! このままいけばイオナズンも覚えられるかもしれない!
相変わらずメラやヒャドはうまくいかないが,これはドラクエにはよくある向き不向きという奴だったのだと思う。
補助系魔法は得意なので俺は僧侶型なのかもしれないとも思ったが,イオを覚えるとなるとちょっと予想外だ。向いている攻撃魔法も少しずつ探っていこうと思う。
次に特技だが,零の洗礼を覚えた。
覚えたきっかけなんだが,父上から頂いた天馬の大剣(結局俺でも使えた)には攻撃時に相手の良い効果を確率で打ち消す効果があり,その感覚を覚えて真似したらできました。……天才か?
もうひとつエレメントフォースというものがあるが,これは魔法剣の強化をする技みたいなものだ。これを使うと武器のエンチャントを長時間持続させられるようになる。
それらに加えてもとより覚えていた技の練度もめちゃくちゃ高まっている。
あ,そうだ! ゾーン必中について説明させてもらいたいのだが,俺のやつはかなりぶっ飛んだ性能だった。
そもそも原作においてゾーン状態で上昇するステータスは全体の一部だったのだが,俺は軒並み上昇することが分かった。更に各状態異常系に対する耐性も強化されるようなので,もうスーパーゾーンと呼んでもいいレベルだと思う。
ただしそのぶんゾーン必中使用時の魔力と精神力の減り方が尋常でないため,魔力が豊富な自分でもこれに頼った戦い方は危険だろうと感じた。
以前のデスコピオン戦で用いたエンチャントしたまま他の技をつかった攻撃,俺はセルフれんけいと呼んでいる技も自然にできるようになったし,何より基礎ステータスは飛躍的に成長しているはずだ。
特に純粋な剣技は成長したよ! 多分かなりの達人と切り結んでも簡単に負けたりしないはずだ。
……こんなところかな? それにしても自分のステータスとか見たいなぁ。レベルとかどのくらいなのかめちゃくちゃ知りたいでござる。
今回俺が行くことになったナギムナー村は,原作ではオーブを探す勇者たちが海底に行くために必要な重要イベントがある場所だ。
今が原作から何年前かはわからないが,イベントの鍵になるキナイ・ユキという男がまだ生きているかもしれない。
原作では過去の話になるが,彼は事故で難破した際に命を助けてもらったロミアという名の人魚と恋に落ちた。しかし当時の村の村長の娘であるダナトラという許嫁が既にいたこともあって村長の怒りを買ってしまい,長い間村のはずれにある"しじまヶ浜"に追いやられてしまうのだ。その後は村長やダナトラ,彼女と結婚した夫もしばらくして亡くなり,キナイと人魚の2人も会えないままキナイは亡くなってしまう。
……俺的には良くも悪くも色々と思うところもある話なのだが。
たしかナギムナー村がサマディーの庇護下に入るきっかけとなった大嵐で村長を含む村の者たちが亡くなったらしいので,既にこの村長たちは亡くなっているかもしれないが。
勇者がマーメイドハープという重要アイテムを手に入れるきっかけとはなるものの,それ以外特に誰も得をしない悲しい結末を迎えるイベントなので少しでも何とかしたい気持ちもあるが,はてさて……。
まぁそれもぼちぼち考えていけばいいや!
それに最悪,面倒なことになっても勇者様はこのぐらいでどうにかなったりしないでしょう!
俺は決意を新たにしてナギムナー行きの準備を進めるのだった。
いつも誤字報告や感想を下さる方ありがとうございます! 自分の校閲なんかも全然不十分だと思うので助かっております!
それではまた!('ω')ノシ