我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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14話です! どうぞ!


14話 海は広いんだホントに

~~外海~~

 

皆さんどうも! 何やら重要そうな話を聞くハムザ君です!

 

現在俺の目の前では海底王国から来たという魚人さんが話をしている。

 

「あなた方にはお話しすべきでしょう。まずは現在,この海で起こっているとある問題についてお話しいたします。ハムザ様はこの海に眠る暗黒の海神”デスエーギル”という魔物をご存じでしょうか?」

 

デスエーギル……あー! あのダークドレアムとかデュランの色違いね! たしかめちゃめちゃ強かった記憶がある。

 

え~~,なんて答えよう。知ってたらおかしいかな? でもちゃっちゃと聞きたいから正直に言うか。

 

「……ふむ。たしか邪神を信奉する海の魔物だったか」

 

「その通りでございます! しかし現在の奴は海の奥底で封印されているため,我らの想像を絶するほどの魔の力が働かない限り暴れだすことはありません。ところが少し前になって,そやつの配下として海神のつかいを名乗る魔物がこの海を支配するべく動き出しているのでございます!」

 

デスエーギルって封印されてたのか。原作では邪神復活後に現れていたから,邪神の復活がその想像を絶することだったんだろうな。

 

…(ん? もしかして封印解かれたの!?

 

「それはもしや……そのデスエーギルの封印が破られたということか?」

 

だったら流石の俺もぶっちゃけお手上げだよ? 現時点であいつと戦えるかもしれない人間なんてドゥルダ郷のトップであるニマ大師と……大穴で”預言者”くらいしか思い浮かばない。

 

「いえ! 誤解させる言い方をして申し訳ありませんが,確認をしたところ奴の封印は解かれておらず,なにかを為せる状態ではないのです。つまり,海神のつかいを名乗る者が独自に動き出したと考えられます」

 

おお,それは朗報っちゃ朗報だな。それで,その配下さんは何してるの?

 

「具体的にはどんな動きを?」

 

「まず,やつは二匹の魔物を引き連れて海底王国に襲撃をかけてきました。その時は我らが女王セレン様の御力で奴を追い返すことが出来たのですが,その後やつらはこの外海に移動してその時の傷を癒すとともに近くを通る者を襲うようになったのです」

 

……今さらっと言ったけど,そいつらは撃退されたとはいえたった三匹で海底王国を襲撃して逃げおおせる力を持ってってことじゃないですかやだー!

 

しかも今この外海にいるのね! 周りで話を聞いてる騎士たちもざわざわしてきたよ?

 

「なるほど。ということは貴殿らはその魔物の攻撃を受けてあのような怪我を負ったということか?」

 

「はい。まさにその通りでございます。奴は我ら海底王国の民に屈辱を味わわされたと考えているようで,すぐに殺すのではなく痛めつけるような攻撃が多かったことから隙を見て逃げることが出来ました」

 

なるほどなるほど。……嫌な予感が強まってきたけどもう少し待とう。

 

「しかし危険が分かっているならその海底王国の女王が避難命令なり出すだろうと思ったのだが何か事情があったのか?」

 

「お恥ずかしながら,我らは奴を討伐する任務を負ってここまでやってきたのです。しかし力及ばず,仲間たちも何人も奴の手に……」

 

……なんか傷をえぐるようなことを言ってしまって申し訳ないでござる。

 

でもやっぱり他人事じゃないよな~。しかもこれ多分……

 

「となると我らにとっても無視できる問題ではないな。そいつが外海のどのあたりにいるのかも教えてもらえないか?」

 

「はい。ここよりはるか北東の海です。人間のあなた方であればバンデルフォン地方の南東あたりと申し上げた方が分かりやすいかもしれません」

 

う……うわあああ!! やっぱりだああ!! それ多分僕らの標的と一緒です! 途中から正直そうじゃないかなと思ってたけど違うと言ってほしかったああ!!

 

なぜそこにいる! たまたまなのか!? そして船を襲う目的は何!?

 

……ふぅ,餅つこう。どちらにせよ対処するのは決定事項なのだからここで情報を得ることができて良かったと思うことにしよう。

 

「なるほど。実は我々も近頃そのあたりに出現する魔物の討伐のためにやってきたのだが,おそらく同じ魔物だろう。どうだろうか,その魔物の討伐のために我らと貴殿らの力を合わせるのは?」

 

「し,しかし奴は強大な力を……」

 

「だからこそだ。我らの出会いも大樹の導きやもしれん。今こそ我らが協力し,この海に平和をもたらす必要があると俺は思うのだ」

 

大樹の導きとかいうパワーワードを俺も一回使ってみたかったんだよな!

 

彼は少し考えた後,俺に向き直って言った。

 

「ハムザ様! あなたの仰る通りです。どうか我らに力をお貸しください!」

 

「もちろんだ!よろしく頼む」

 

よっしゃあ! 今回の魔物に関する情報面でも戦力面でも大いに期待させてもらうとしよう。

 

そして俺たちは一時的ではあるが新たな仲間を加え,航海を続けるのだった。

 

 

 

~~ナギムナー村・近海~~

 

さて,あれからまた数日間の航海を経てようやくナギムナー村の近くにやってきた。

 

同行することになった魚人の皆も騎士たちと随分と打ち解けた様子である。

 

やっぱり,少しでも時間を共有して話し合うことが出来れば,異なる種族であっても案外分かり合えたりするんだと感じるね。

 

もちろんそうじゃない人はいるだろうけど,話をしてみるだけでも意味があるんじゃないかな。

 

……さて,なんかよさげなことを言って現実逃避をするのをやめようか。

 

今回,村に上陸するにあたってとある問題がある。それは――

 

「如何されましたかハムザ様? それにしてもサマディーの騎士団は精鋭ばかりですな! 実に頼もしい限り!」

 

君ら魚人組のことを受け入れてくれるかってことなんだよな~!

 

彼らに同行を願ったことを後悔はしていないが,悩ましい話だ。

 

うちの騎士団の皆でさえ,(おそらく!)俺を信頼して彼らの受け入れこそ納得したものの,始めのうちは警戒心を隠しきれていなかった。

 

たしかあの村の人々は数年前の大嵐を人魚の呪いだと考えているはずなので,人魚をひどく恐れているだろう。そんな中で少し違うとはいえ魚人を連れていったら拗れること必至だ。

 

彼らのことを説明して一応でも納得してくれればいいが,最悪のパターンは俺たちサマディーにまで不信感が広がることだ。

 

現地で彼らと過ごすサマディー兵もいるためそこまでのことにはならないと思うが,胃が痛い。

 

「なにかお困りのご様子ですな。私でよければご相談に乗りますよ」

 

彼はあの時に話をした魚人で,名前はトウジンというらしい。さらに海底王国では昔から女王の親衛隊長を務めているようだ。……思ったより偉い人だった。この世界では人間より力が強いとされる魚人の中でも精鋭である彼さえ勝てないやつを倒さなければならないと思うとマジつらたん。

 

「いや,そろそろナギムナー村に着くのでな。これからのことを考えていたのさ」

 

「あの魔物の被害を受けているという村ですな,会うことに少し不安もありますが話し合えばわかってもらえると信じております」

 

そうだな。『なんとかなる!』 俺の大好きな言葉だ。

 

そう考えていると,Dさんが近づいてくる。

 

「王子,もうすぐナギムナー村に到着しますので,そろそろ用意をお願いします」

 

「わかった。では後でな,トウジン」

 

そう言って俺は船室へと向かった。

 

 

 

~~ナギムナー村~~

 

ナギムナー村に着くと,そこで待っていたのは住民たちよる歓迎だった。彼らもサマディーから来るという王族が気になっていたのだろうな。

 

魔物の被害が出ている地域がまだ限定的であるからか,外からの船は見当たらないものの思ったよりも村の雰囲気は悪くないようだ。

 

港と船の間に橋がかかると,俺が彼らに手を振っている間に騎士団を先に降ろして村長を船に呼んでもらう。

 

とりあえず,色々と複雑になってしまった現状を村の代表者には説明しようと思ったからだ。

 

彼らとの話し合い次第でこれからの動き方が変わってくるだろう。

 

少しの間そうしていると,騎士たちが一人の男を連れて戻ってきた。まだ壮年といえる年齢だが,おそらく彼が現在の村長だろう。

 

その彼が俺に話しかけてくる。

 

「ハムザ王子! この度は王子自らお越しくださりありがとうございます!」

 

「なに,この村の皆も我々が守らねばならぬ民たちだからな。むしろ訪問が遅くなってしまいすまなく思う。今回はしばらく滞在することになるかもしれんが,よろしく頼む」

 

「いえ! 我らもサマディーの天馬と名高い王子にお会いできて光栄でございます!」

 

俺が握手を求めると,彼も応じてくれる。

 

それにしてもそのあだ名ってここまで広まってるの?恥ずかしいからやめてほしいでござるよ……。

 

「早速だが,実は道中で無視できん問題が出てきてな。悪いが少し船内で話をさせてほしいのだ」

 

俺がそう言うと,彼はそれを了承してくれたので船室に移動することにした。

 

 

 

 

俺は部屋につくと騎士の一人にトウジンを呼びに行かせて,村長との話を始めた。

 

「まずは情報のすり合わせをしよう。我々が来るまでの間に新たに分かった魔物の情報などはあるか?」

 

「はい,お役に立つかはわかりませんが……」

 

話を聞いてみたところ,どうやら魔物は三種類ほど確認されているいるらしいこと,そして少しずつではあるが奴らの活動範囲が近づいているように感じたことなどが聞けた。

 

うーん。魔物が三匹,海底王国を襲ったとされる数と一致する。それに活動範囲が近づいているのはひょっとすると魚人たちを追ってきたのかもしれない。

 

「なるほどな。では次はこちらの番だろう。その前に,今から我々が航海中に救助した者に会ってもらいたい。これは必要なことなんだ」

 

「わ,わかりました」

 

俺の言い方に少し緊張しながらも頷いてくれる。

 

そしてちょうど彼がやってきたようなので,部屋に入ってもらう。

 

「お呼びと伺い参りましたぞハムザ様」

 

「なっ!!」

 

村長はやはり突然現れた魚人に驚いているが,問題はこれからだ。

 

「彼は海底王国から来た者で,今回の魔物討伐に必ず役に立つ男だ。驚くかもしれないが,俺を信頼して協力してほしい」

 

「し,しかし……いや,王子がそうまで仰るなら私も協力しないわけにはいきませんな」

 

……あれ? もっと拗れるかと思ったけどいいの?ま,まさか言葉通り俺への信頼!?……なわけないか流石に。だって会ったばかりだしね。となると彼がすごく物分かりが良かったのかな。

 

「大丈夫か?話によると村の者は人魚への恐れが強いようだが」

 

「……たしかに村で起こったとある事件によりそういった考えは根深いですな。皆も理解を超える不気味な事態にそう思うしかなかったのです……。しかし我らはあまりにも無知だ。人魚を恐ろしい存在だと決めつけている者もいますが,皆が心のどこかでそれが本当に真実なのかを知りたがっているのです……」

 

そうなのか。原作では恐れられつつも半分おとぎ話的な扱いをされていたイメージがあるものの,この時代ならタイムリーな話だからより深刻だろうと心配していたのだが,そういう考えもあるのか。

 

……それに,俺は彼らが無知ゆえの勘違いをしていたことに対して責めるような気持ちはあまりない。人は弱い生き物だ,それが集団で生活するのだからこういうこともあるだろう。加えてこの世界は呪いとか割とあるからね。むしろそんな状態からの脱却を目指す村長に敬意を覚える。

 

俺の勉学の先生も,未知は恐れに繋がるって言ってたしね。

 

原作では悲恋の話と人魚を恐れる話が強調されていることから村人に少し悪い感情を抱く人もいるかもしれないが,彼らがキナイを村の端に追いやって船を焼いたのは愉快なことではないとはいえ,さほど特別なことでもない。

 

そもそも村の権力者だった当時の村長のメンツをつぶして「この村捨てて人魚のとこいくんや!」とか言い出したら普通にやばいやつだ。それに村一番の漁師ということは村にとっての価値も高いはずなので,そんなことを許せば端的に言ってコミュニティの秩序が乱れる。

 

この世界の権力者の発言力はめちゃくちゃ強い。そしてそれに従う人々はその力に縋ることに慣れきっている。そのあたりをキナイはわかっていたのだろうか?

 

……あれ? マジでわかってなかった説があるぞ。後に彼によく似ていると評される彼の義理の孫であるキナイも人付き合いが苦手だった。それに当時は若者まっさかりだろうしなぁ。

 

まあ,そんなことを気にできないほど人魚のロミアに惚れてしまっていたというだけの可能性もあるが。

 

うーん。どちらにせよこれは色んな意味で悲劇だ。

 

……それにしても恋ね。俺は経験がないが,自分が大きく変わってしまうのかと考えると怖くなってくるな。俺もいつかする時がくるのだろうか?

 

……今俺にはそんな心配は無用だとか言った君はあとでウマレース場に来なさい。

 

「……そうか。さて,それで彼の話だが――」

 

 

 

 

あの後村長にも事情を説明してから,俺たちは船を降りてナギムナー村に上陸した。

 

俺たちはまず,ちょうどここに集まっている村人たちに魚人たちのことを説明することにした。

 

正直なところ最悪隠したままでも任務の遂行はできるかもしれないが,不安は少しでも早めに取り除いておきたかったのだ。

 

「皆! 王子からお話がある!」

 

村長の言葉で皆が静かになったので,俺も話し始める。

 

「ナギムナー村の同胞たちよ! 私はサマディーの王子ハムザという。此度は皆の生活を脅かす魔物を討伐するために参った!」

 

「「「おおおお!!!」」」

 

「しかし! まずは今回の騒動は我らだけにとどまらず,この海全体の未来すら左右するやもしれん事態であるという認識を持ってほしい!」

 

それを聞いた村人たちの間には動揺が広がる。

 

「この度,皆と同じくこの海と生きる者たちが私に助けを求めてきた! 彼らは我々と同じく海の平和を乱す魔物を倒すべくやってきた戦士たちだ」

 

そう言って魚人たちに船から降りてきてもらう。

 

村人たちの中には彼らに驚いたり怯える者もいるが,俺は話を続ける。

 

「そして! 彼らは海底王国の戦士たちだ! 彼らの故郷はすでに我らの船を襲った魔物たちに襲撃を受けている! そしてこのナギムナー村がいつ魔物の標的となってもおかしくないのだ! ナギムナー村の仲間たちよ! 私は,我らサマディーの騎士団,そなたたちナギムナーの民,彼ら海底王国の民たちもが皆で力を合わせて今回の難事に立ち向かわなければならないと考えている!」

 

俺の話を受けて,ここに集まった者たちは静かに聞いてくれている。

 

「皆の中には初めは彼らを恐れる者もいるかもしれない! しかしそれは彼らも同じなのだ! 互いに理解する機会がないためにそのようなことが起こっただけだ! 我らは皆同じく平和を求める同胞なのだ!」

 

俺は皆を見渡すと,話を締めにかかる。

 

「今ここで! 俺たちは一つになり,この海の平和を守るのだ!!」

 

……やべ~! 自分でも勢いに任せすぎて何言ってるかわかんないでござる! これで反応がなかったら冗談抜きで恥ずかしさでこのまま海に飛び込むぞ!

 

「「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

良い反応だああああああ! よかったあああああ!




勢いは全てを凌駕するんですよきっと……。

それではまた!('ω')ノシ
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