我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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15話です! どうぞ!


15話 おいでませ!ナギムナー村

~~ナギムナー村~~

 

皆さんどうも! 人生で一番の緊張を味わったハムザ君です!

 

なんとか俺の勢いでゴリ押す作戦が成功し,村人たちも魚人の彼らとの協力を受け入れてくれることになった。やっぱり勢いっすよ兄貴。

 

そして今俺たちが何をしているかと言うと――

 

 

「おお! この魚料理は実に美味しい!」

 

「おっ! あんたらもそう言ってくれるかい! それにしても魚人のあんたらでも魚を食べられるみたいで安心したぜ」

 

「ええ。我らの主な食べ物は魚なのですよ。しかしここにあるフルーツなどは我らには馴染みが薄いですがこれも実に美味しい!」

 

「あっはっはっ! そりゃそうさ~! この料理は採れたてのもんばっかり使ってるんさ~!」

 

 

「ヒック! へぇ~。そんじゃあ男は上半身が魚の魚人で女は下半身が魚の人魚になるってのかい?」

 

「基本的にはそう考えていただいてよろしいかと。更に海底王国では海の生き物たちも一緒になって暮らしているのです」

 

「マジかよ! じゃあ魚を食べるときに情が移って困ったりしねぇのかい?」

 

「はい,自然の営みとはそういうものです。もちろんお互いに法の下で節度をわきまえて生活しておりますので,それでトラブルがあっても皆で解決するのです」

 

「かぁ~! 深ぇなぁ~!」

 

 

「む? 如何されましたかな?」

 

「あなた方は海底王国の戦士と同僚よりお聞きしました。国に仕える者として少しお話を伺いたいのですが」

 

「私などの話がお役に立つのであればぜひとも。ではまず――」

 

 

「えぇ! サマディーの騎士団の副団長さんなんですか! スゴ~い! 一緒に飲みましょうよ!」

 

「い,いえ! 私には妻と子がおりますので!」

 

 

……最後の奴は青騎士団副団長だな,あの真面目な感じと立派な口ひげは間違いない。後で〆るか…。

 

なんてね! ……いやだなぁ~半分冗談ですよ。べ,別にうらやましくなんかないんだからね!

 

はい,というわけで俺たちを出迎える宴改め,『みんなで理解を深めよう!』の宴の真っ最中だ。

 

あれから村長の提案もあってこの宴を催すことになったのだが,見たところうまくいっていそうだな。

 

そもそもここの村の村人たちは基本的におおらかだからね。きっかけさえあれば仲良くなるのはそう難しくはないのかもしれないと思った。

 

……とはいえ,いきなり人魚を連れてきたりしていれば話も少し違った可能性があったかもしれない。そう考えると今回の件は運が良かったとも言えるのか?

 

「王子,お飲み物をどうぞ」

 

「ああ,ありがとう」

 

そういってDさんに空になっていたコップに飲み物を注いでもらう。ちなみに中身はフルーツジュースだ。

 

最初,普通に酒を注がれそうになったのを見て慌ててこっちに変えてもらった。

 

俺はそこで自分のテーブルを見渡しそこに座るメンツを確認する。

 

右から順に,Dさん,村長,トウジン……以上。

 

ちくせう! 年上の野郎ばっかりじゃねえか!

 

というか基本的にここにいる皆俺より年上だよ!

 

そうして俺が注がれたジュースを一気飲みしていると,村長が話しかけてくる。

 

「ところでハムザ王子。件の魔物討伐に関してですが,どのような陣容で臨もうとお考えですか?」

 

む? 真面目な話か。

 

「そうだな……たしか魔物は3匹,まず船の破壊を狙ってくるのだったな。複数となるとこちらの船が多いと守りきれんやもしれん。ならば我らの旗艦に加えて頑丈な船を2隻選び,あちらに合わせて計3隻で向かうか……。人員は我が国の騎士を中心に海底王国の戦士達,村人からも何人か連れて行かせてもらってよいか?」

 

もちろん雑魚ならここまでしなくてもいいかもしれないけど,聞いたところ敵は強いらしいから,何隻も引き連れていけばいい的になりかねない。

 

「村からの人手でしたらお任せください。それと頑丈な船ということでしたら,この村で船体の改修を行ってから行かれるのはいかがでしょうか?恐らくは2日もあれば最低限の補強は可能です」

 

「2日か……わかった。では明日より始めることにして,今日より3日後に出発することにする。皆もそのつもりでいてくれ。」

 

「「「は(い)っ!!」」」

 

さて,では俺は目の前の料理たちを制覇するとしようか。ここは海鮮だけでなく多様な果実も特産品で,この村の料理は原作の主人公パーティからも大絶賛されるレベルだからな。期待値は高い。

 

「いただきます」

 

食前の挨拶をしてから目の前の食事に手を付ける。別に決まった言葉があったりするわけではないが,サマディーでは俺の影響かわからないものの,この言葉が一般的になってきている。

 

――パクッ モグモグ

 

「うまいな」

 

びゃあぁぁ! うまひぃ゛ぃぃ!!

 

 

 

 

おはよう皆の衆。

 

昨日はあれからしばらく宴は続いたが,俺はガキンチョなので遅い時間になるとすぐに寝た。俺は寝る子だから育つ!

 

ちなみに俺は村の宿の一番いい部屋を利用したので,その寝覚めたるやすこぶる良し!

 

あそこはほんのすぐ前に増築してできた部屋らしく,俺が使用者第一号ということだ。なんだか得した気分だね!

 

さて,そんな俺は現在この村にあるサマディー騎士の詰所の中の一室で人を待っております。

 

ここはナギムナー村に駐屯するサマディー兵が使っている建物で,村の端にある。

 

実は俺は昨日の会話の後,村長にこの村で一番このあたりの海に詳しい者を討伐隊の案内役として俺の側につけてほしいことを頼んだんだ。

 

彼はしばらく悩んだ後,一人の男の名前を教えてくれた。

 

――コンコン

 

おっと,話をすれば目当ての人物が来たようだ。

 

「入ってくれ」

 

そう言うと部屋の扉を開けて一人の男が入ってくる。歳はあの村長と同じくらいだろうか。

 

「し,失礼しますハムザ王子。自分が今回の案内役を務めさせていただくキナイ・ユキと言います」

 

……俺は初対面だがこの男を識っている。そして村長から彼の名前が出た時にどうせなら2人きりで話がしたいと思って今日会うことにした。

 

「そなたがキナイだな。村長からもその腕前は聞いている。今回の討伐任務は危険なものになるだろうが,俺の名において必ず成功させると誓おう。無論だが全員無事にな」

 

俺はそう言うとキナイに椅子に座るよう促す。

 

彼は少しだけ緊張しながらも言う通りに椅子に座った。

 

「さて,せっかく出発までに時間が出来たのだから,この村一で一番このあたりの海に詳しいと言われるそなたに聞きたいことがあってな」

 

「は,はぁ。自分のようなものが王子のご期待にそえる答えを持っているかはわかりませんが……」

 

……とかカッコつけて言ったものの,特にこれと言って聞きたいことがあったりするわけではないんだよなぁ~!

 

本音を言うと,「宴でもこっそり探してたのに見つからなかったし,せっかくの準原作キャラに会えるチャーンス!」ぐらいにしか考えてなかったのだ!

 

君も緊張してるかもしれないけど俺も負けないぐらい心臓ドッキドキだよ!

 

す,少し餅つこう。冷静に考えれば俺が少し変なことを言おうが相手に文句を言う資格はないのだ。ククク,ここは自分の立場を思い出して余裕を持つというチートを使わせてもらうぞキナイよ。

 

少しの間それっぽい会話を重ねてから彼に問うてみる。

 

「ところで……聞いたところによると,どうやら人魚の恐ろしさを伝える話を広めようとしていたそうだな」

 

「そ,それは……」

 

焦っておる焦っておる! まるで悪いことをしたのがバレた子供のようだ!

 

よし……落ち着いた。今の質問はこの場で適当に考えたものだが,このまま話してみるか。

 

「ふふっ,別にだからなんだというわけではないさ。そなたに起こったことも少しは知っているつもりだ。大方,自分のような者をこの先も出さぬようにと思ったのだろう」

 

まあ,知ってるんですけどね。

 

「……おっしゃる通りです」

 

「ふむ……そなた,やはり本当に人魚に出会ったのだろう?トリトンたちにどんな者か教えればまた会うことが出来るやもしれんぞ?」

 

「いえ……もう自分なんかが彼女に会いに行く資格などありません」

 

うーん。まあ葛藤の末に自分の中で会いに行かない決心をしただろうに状況が変わったからな…複雑な思いもあるのかも。けどそんなの知ってたらおかしいよね。

 

「なぜだ? 人魚の時間の感じ方は我々より遅いと聞いたぞ。少し遅くなったのかもしれんが結婚を約束したほどの相手なら無駄ではないはずだ」

 

「……私は自分の軽挙の責任を取るためにも娘の面倒を見なければなりません。彼女と会っても一緒には……行けませんから」

 

娘……元許嫁であるダナトラの忘れ形見だろう。原作知識によると,彼女は家族を亡くした大嵐の後にショックで入水自殺して亡くなってしまったのだが,その時に助かったのが彼女の娘だ。

 

自分の行いで不幸にしてしまったと思っている人々への罪悪感って感じかな?

 

「なら本人にそう伝えるべきではないか?待ち続けるのは……きっと辛いぞ」

 

「……」

 

「だが,そうしないのも自由だ。自分の人生は自分のものだからな。ただ,後悔するかもしれないと感じているのなら前を向いてみるのも悪くない話じゃないか?」

 

「王子……」

 

「人の心は複雑なものだからな。そなたも苦しんでいるのかもしれぬが,娘やその人魚のことを真に思うのであれば,一度真剣に話をして折り合いをつけることを勧めるぞ。なんなら決心がつかぬなら私もついていこうか?」

 

俺が冗談も交えて言うと,彼は真剣な顔をしてこちらを見てくる。

 

え,なに?何か地雷踏んじゃった?

 

「王子! 勝手なお願いだというのはわかっておりますがお願いしてよろしいでしょうか!」

 

……あーそっちか,ってマジかよ! 素直だねえ!

 

…いいよ!(野次う…ゲフンッ!内なる騎士道精神)

 

「いいだろう。ただ,それは今回の魔物討伐が終わってからだな。その目的のためにも共に力を尽くそう」

 

「はいっ!」

 

その後も少したわいもない話をした後,彼は帰っていった。

 

流れで話してたからなんだかよくわからないが,仲良くなれた気がするし結果オーライなのではないでしょうか!まる!

 

 

 

 

またまたおはよう皆の衆。

 

昨日はキナイと話した後に,船の改修現場に顔を出したりトウジンに付き合って剣の鍛錬をして一日を終えた。

 

やっぱり彼は結構強いね!

 

結構なんて言い方をすると見下してるように聞こえるかもしれないので言い訳したいのだが,村内やその近くでお互い本気で戦えるわけないじゃん!

 

全力は伺い知れなかったが,流石は女王の親衛隊やってるだけはあると思ったのである!

 

ついでに技のコツとかについても少し話したな。

 

彼は俺と違ってヤリ使いだが,少しは参考になったんじゃなかろうか?

 

そんなこんなでいよいよ明日にはこの村を出発して魔物討伐に向かう予定だ。目的の海域まではここからでも少し距離があるので,一度向かえばしばらくは戻ってこれないだろう。

 

ちなみに俺は現在この村に住む大砲職人が話があるというので彼らを待っている。

 

……待ってばかりだね俺。

 

余談だが,実はなんと彼の作る大砲は全て空砲なのだ。これは彼らのポリシーによるものらしいのだが,射程は短いもののその威力は並みの大砲を凌駕するほどだ。

 

我が国の商船の間では自衛用の装備としても彼の作るものは需要が高い。

 

原作での彼は既に亡くなっていたが,彼の妻は原作時も存命で’大砲ばあさん’と呼ばれ,ナギムナー村を困らせるクラーゴンを退治しに行く勇者たちに’とびっきりの大砲’を貸したりしている。

 

任意イベントなので経験していない人もいるかもしれないが,このイベントを挟めばクラーゴンを初手にショック状態にできるのだ。

 

――コンコン

 

はいはい! いらっしゃーい!

 

「入ってくれ」

 

「失礼しますハムザ王子!」

 

そう言って大砲おじさん(そう呼んでおく)が部屋に入ってきた。

 

「さて,私に用があると聞いているがなんだろうか?」

 

「はい,今回の魔物討伐に私たちが造った新型の大砲を持って行って頂きたいと思いまして」

 

ほーう。新型の大砲とはこれまた俺の男心をくすぐる響きではあーりませんか!

 

でもなぁ,今回の標的に大砲を使うかというと微妙な気がするんだよな~。

 

「ふむ,まずはその大砲を見せてもらってもよいだろうか?」

 

「もちろんでございます!」

 

というわけで,俺は数人の騎士を連れて彼と共に村のはずれの崖の上にある射撃場へ移動した。

 

 

 

 

~~ナギムナー村・射撃場~~

 

おお~! いい眺めだ!

 

ここは原作では大砲ばあさんがいる場所で,村全体が見渡せるような高いところにある。

 

「ハムザ王子,こちらがその大砲になります」

 

そこには未来の大砲ばあさんも待っており,俺は彼らに促されるままに顔を動かした。

 

……俺には普通の大砲に見えるが……いや,なんだか少しだけ大きいかも?恐らく何かが変わっているんだろうな。

 

「一見すると周りの大砲と大きな違いはないように見えるが……」

 

「確かにそうかもしれません。しかしこの大砲は今までの大砲とは一味違いますぞ!」

 

そう言って大砲おじさんは準備をし始めた。

 

それから少しの間騎士たちと話をしていると,準備が出来たようで俺たちは見やすい場所に移動させられた。

 

「ではご覧くだされ!」

 

―ドーーーン!!!

 ドーーーン!!!

 ドーーーン!!!

 

おお,今のを見れば俺でもわかったぞ。おそらく発射速度がめちゃめちゃ早い。1発目の後にすぐ2発目以降があったからね。理屈はよくわからんがすごいな。

 

「標的の魔物は機動力のある奴らと聞きました。私は王子の勝利を確信しておりますが奴らは海底王国からも逃げおおせたということは今回も逃げるかもしれません。その際はこれがお役に立つやもしれないと思いまして」

 

なるほどね。確かにこれをいくつか揃えて使えば足止めにはなるかもしれない。

 

しかもそうか…相手が逃げる可能性なんて考えていなかったな。強いらしいからどうやって倒すかという部分のみに焦点を当てていた。

 

……まぁ何とかなるでしょ。もとい俺が何とかする。それにこの大砲もあれば心強いな。

 

「なるほどこれはいいな。ありがたく使わせてもらうとしよう」

 

「よろしくお願いいたします!」

 

その後は俺たちはそのまま村に降りて行ったのだが,そこで村長と出会った。

 

「おお王子! こちらにおられましたか!」

 

なんだなんだ?話があるならいい報告にしてよね!

 

「どうしたのだ村長?」

 

「はい! 実はこの村にはその昔,とある海賊王が身に着けていたという帽子が残されておるのです。それを見つけてきましたので,王子に献上しようかと!」

 

わーお。ホントにどったの村長?

 

「いいのか? それほどの品ならば村の宝だと思うのだが…。」

 

「もちろんでございます! 王子のお役に立つならば喜んで差し出しましょう!」

 

……こ,こわい! だけど欲しいからもらっちゃう!

 

「感謝する。遠慮なく使わせてもらおう」

 

今日は色々と収穫があったな!

 

その日はその後も船の確認や自主訓練などを行い,明日に迫る出撃に備えるのだった。




海賊王の帽子って他の装備と一緒だと似合うのかな?
次回はようやく敵さんと会えそうです!

それではまた!('ω')ノシ
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