我が国だけのけものにはさせませんからな!   作:ヤチホコ

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17話です! 今回は他の2隻での戦闘の様子になります。


17話 仲間を信じて

〜トウジン視点~

 

「トウジン殿,旗艦の王子から連絡です。ここからはいつ戦闘が始まってもおかしくないゆえ備えるようにと」

 

「ええ,わかりました」

 

我らは海底王国ムウレアの戦士団に属している者だが,今は訳あって人間の国であるサマディーのハムザ王子の協力を得て,共に魔物討伐に来ている。

 

その訳の部分を話すとしようか。

 

今回の討伐対象である海神のつかいを名乗る魔物は最初に我らの国を襲ったものの,その時は女王セレン様の守護の御力によって撃退することに成功したのだ。

 

しかし奴らは外海に逃げたうえで同胞を襲い始めるようになり,それを止めるために討伐に向かった我らすら返り討ちにあってしまった。

 

奴らから逃げるうちに何人もの討伐隊の仲間たちとはぐれ,付いてくる者も数人ほどになった頃に人間の船団を見つけたのだ。

 

これ以上仲間たちを死なせるわけにはいかないと思い一か八かと助けを求めたところ,彼らに救助されることになった。

 

その船団を率いていたのがハムザ王子であった。最初,彼らが私たちが敗れたあの魔物を討伐しようとしていると聞き,私は希望を抱いた。

 

なぜなら王子から感じられる力は私を凌いでおり,あの魔物にも引けを取らないものだったからだ。

 

しかしその彼は私たちに協力を申し出てきた時,私はすぐに頷くことが出来なかった。

 

情けないことに,奴らに目の前で殺された仲間たちを思い出すと怖くなってしまったのだ。

 

しかし王子は言った。この海の平和を取り戻すために力を合わせようと。

 

彼の声は慈愛に満ちており,それがその言葉にも力を与えていた。

 

そうだ。この海と生きる全ての仲間のためにもやらねばなるまい!

 

私は自分を叱咤し,むしろ協力を願った。そして魔物を討ち果たすまでの間,この方と共に戦うことを誓ったのだ。

 

そこからナギムナー村という村に向かい,そこで用意を整えることになった。

 

彼らはとある事情があって人魚を恐れていたようだが,我々との関わりの中で少しでも誤解が解ければ幸いだ。

 

我々もそこで人間について様々なことを学ぶことができ,非常に有意義な出会いであったと思う。

 

2日ほど準備を行い,我々は再び海へと出た。遂に魔物討伐に向かうためだ。

 

そこからしばらくの航海を続け,私はここに戻ってきたのだ。

 

見覚えのある景色にあの時の恐怖が蘇りそうになるが,我らは頼れる味方を得たのだ。亡き仲間たちの無念を晴らすためにも必ず勝利すると決意を新たにする。

 

私がそう考えていると,突然王子たちの乗る旗艦が大きく揺れた。

 

おそらく魔物からの攻撃を受けたのだろう。私は遠くの気配を探ることは得意ではないが,王子は集中することで広範囲の警戒が可能なはずなので,きっと対応できているはずだ。

 

「トウジン殿! 魔物からの攻撃が始まったようです! 我らも警戒を!」

 

「ええ! ……ふんっ!」

 

私は船に飛び乗ろうとしていた魔物に自慢のヤリの一撃をお見舞いし,海へ落とす。

 

早速この船への攻撃も始まったようだ。

 

「今こそ我らムウレアの戦士団の力を見せるときぞ!!」

 

「「おう!!」」

 

戦士団の皆と共に気合を入れる。それにしてもこの気配は――

 

「ギシャアア!」

 

新たに襲い掛かってきた魔物に向かって"さみだれ突き"を放つが敵のツメによる攻撃で弾かれる。

 

……やはりこいつだったか。

 

目の前にいるのは体表を真っ赤に染めたエビの魔物。その色は自らの吐き出す炎で海水を沸騰させて茹で上がっているせいだと言われているが,体の硬度はかなりのものだ。

 

以前から海神のつかいが連れていた2匹の魔物の内の1匹,レッドプレデター。しかも通常の個体より強力な力を持っている。

 

周辺でも騎士たちが戦っていることからも分かるように敵の数は予想以上に多いようだが,王子が戦っているのが海神のつかいなら敵の主力である3匹の魔物を分散させることには成功したと考えて良いだろう。

 

私の役目はここでこいつを確実に倒すこと!

 

以前の遭遇時には我らはこいつにも苦戦させられた…だが!たった1匹だけでこの私に勝てると思ったら大間違いだ!

 

「さぁこい! 私が相手になろう!!」

 

「ギシャアアアアア!!!!」

 

 

【レッドプレデター・異が あらわれた!】

 

 

敵のヘイトが自分に向かっていることを確認した後,私は自身の体から余分な力を抜いていき,ヤリ使いの受けの型である"水流のかまえ"をとった。

 

「ふっ!」

 

そして敵が繰り出してくる"ツメラッシュ"をうまく受け流していく。

 

しかし敵が勢いをそのままに炎の力を纏わせた攻撃に切り替えてきたことで,余波によるダメージを少しづつ受けてしまう。

 

そこで,しばらくして敵が疲れてきたことによって攻撃の勢いが弱まってきたことを感じ取った私は瞬時に背後に回り込んで"さみだれ突き"を撃つ。

 

「はあっ!!」

 

「ギシャア!」

 

これが直撃してダメージを与えることに成功した。

 

敵は物理攻撃の打ち合いが不利だと悟ったのか,急に体の温度を上げて力を溜め始めた。

 

今攻撃しても溜めが終わるまでに倒しきれないと判断し,こちらもそれに対抗するべくヤリに魔力を集めていく。

 

互いの間にしばらくの沈黙が訪れたが,お互いにほぼ同じタイミングで攻撃の準備が整い,その力を放出する。

 

「「ギシャアアア!!/たああああ!!」」

 

敵は口から"はげしいほのお"を吐き出してきたが,こちらは我が必殺技である"ジゴスパーク"を放つ。

 

互いの攻撃が相手にダメージを与えるが,先に音を上げたのは敵だった。

 

海の魔物は電撃系の攻撃に弱いため,こちらの攻撃の方が通りが良かったのだろう。

 

その攻撃を食らってもなお敵はまだ倒れておらず,こちらを睨みつけていた。

 

しかし私にはわかる。奴はその状態を保つのがやっとだ!次の一撃で決める!

 

私は残りの魔力をヤリに集めると,敵を目掛けて駆け出した。

 

ハムザ王子との訓練で伝えられたこの技を今!

 

 

 

 

「王子は魔法の属性付与を用いた戦闘を得意とされているとか。お許しいただけるならば是非ともご教授願いたい!」

 

「もちろんだ。そうだな……海の魔物たちには雷属性の攻撃が有効だろうからな,ヤリとなるとあれだろうか。これは当てるのが難しい大技だがここぞという場面で力を発揮するだろう。まずは――」

 

 

 

 

雷の魔力をヤリに巡らせそのまま加速させる!

 

そして全体重をヤリに乗せながら速く正確に相手に突き出すッ!

 

 

「食らえ!! "雷光一閃突き"!!!!!」

 

 

私の放った一撃は敵に深々と突き刺さり,相手の内側から雷を迸らせた。

 

「シャ……」

 

――ズーン!!

 

敵は体中から煙を吹き出しながら一瞬だけ痙攣した後,その場で崩れ落ちた。

 

敵の息の根が完全に止まっていることを確認すると,私はふぅと息を吐いた。

 

なんとか倒すことができたが,まだ戦いは終わっていない。このまま周囲の魔物たちの殲滅に取り掛かるとしよう!

 

王子や彼の部隊の騎士たちも必ずそれぞれの標的を倒してくれるはずだ。

 

そうして私は気持ちを切り替えて船上の他の魔物との戦いに向かうのだった。

 

 

 

~Dさん視点~

 

「ギョ!!」

 

「くっ!……はっ!!」

 

「ギョーー!」

 

背後から急襲してきた魔物の攻撃を間一髪で受け止め,押し返すと同時にそのまま返す一撃で敵を斬り捨てる。

 

「皆! 仲間と連携しながら周囲を十分に警戒するのだ!」

 

私は声を張り上げながら周りの様子を確認する。

 

普段から王子と共に様々な魔物と戦ってきた隊の仲間たちは,突然の魔物の襲撃にも即座に対応して戦闘を開始している。

 

それに,この船にはナギムナー村の漁師たちもいくらか乗っているが,彼らも長い間この海の魔物と戦ってきた経験を活かしてうまく立ち回れているようだ。

 

今回は念には念を入れて,それぞれの船に海に詳しい者たちが配されている。青騎士団の者たちにも詳しいものはいるが,やはり設立からまだ数年の組織なので,彼らには失礼かもしれないが追加でナギムナー村の村人などから選ばれた。

 

旗艦には王子が直々に選んだキナイという村人が乗り,もう1隻にはトリトン殿率いるムウレアの戦士達,そしてこの船には村で現役の漁師たちから数人乗っている。

 

今回の我々は想定される敵との戦闘に備えて王子とは別の船に搭乗していた。

 

確認できている魔物は海神のつかいを名乗る魔物を含めて3匹。そのうちの1匹の相手をする役目を我々王子隊の面々は賜ったのだ。

 

旗艦の上で王子が魔物の攻撃を受け止めた様子はここからでも伺えた。それにトリトン殿の乗る船からも先ほど標的の魔物の1匹と交戦が始まったと連絡が入った。となると残るは1匹。

 

その魔物は"キングマーマン"だ。かつてソルティアナ海岸のあたりで目撃された幻の魔物だと本で読んだことがあるが,実在していたようだ。

 

トウジン殿が言うには,奴はマーマン系統の中で最強の存在であり,頭もいいうえに毒を使うらしい。そして他の標的の魔物同様に通常の個体より強力だという。

 

私が魔物の情報を思い出していたその時――!

 

「ぐわぁッ!」

 

――ドンッ!

 

突然に船の端から騎士の一人が吹き飛んできて,帆に打ち付けられたのだ。

 

一体何があったのかと騎士が吹き飛んできた方向に目を向ける。

 

「ギョギョギョ!!!」

 

そこには,見た目はマーマンに似ているものの,他とは違い紫色の体を持った魔物がいた。

 

「奴がそのキングマーマンか……」

 

私は攻撃を受けた騎士に回復呪文をかけながらも敵から目を離せないでいた。

 

なぜなら敵がこちらの隙を伺うように睨みつけていたからだ。

 

恐らく奴は,この部隊の一応の指揮官である私を真っ先に排除しようという魂胆だろう。それによって指揮系統が乱れれば有利になると考えているのだ。

 

周囲では奴が従える魔物たちと騎士や村人が戦っている。彼らも手一杯のようだが,今のところはこちらが優勢に見える。それもあって敵は大胆な作戦に出たのかもしれない。

 

となると現状で奴の相手ができるのは私だけのようだな……相対して感じる奴の気迫から,正直私1人には荷が重い相手だろう……。

 

だが! 王子の期待にお応えするためにも! 何よりこの時も命を懸けて戦い続ける仲間のためにもここで引くわけにはいかない!

 

いざ! 参る!

 

 

【キングマーマン・異が あらわれた!】

 

 

「"ソードガード" "バイキルト" "スカラ"!」

 

まず,あちらが様子を窺っている内に自身を少しでも強化しておく。

 

「ギョオ!!」

 

敵もそれに気づいたようで,すぐさまこちらに接近して"するどいツメ"による2連続攻撃を仕掛けてくるが,強化が間に合ったことで両手の剣を使い受け止めて対応することができた。

 

それにしても……自身に強化を施していてなお重く感じる一撃だ。

 

そこからしばらくの間,危うい場面はありつつも回避も交えながらなんとか敵の攻撃を耐え続ける。

 

敵の予想通りの高い実力を確認したが,私は更に相手の手札を探るべく次の行動に移った。

 

「はあっ! "メラミ"!!」

 

私が剣を握る両の手の周りから出現したいくつもの火球が敵目掛けて飛んでいく。

 

こうした呪文の使い方も経験による成果だ。

 

「ギョー……ギョッ!!」

 

それに対して敵は少し集中するような様子を見せた後,手を前方に突き出した。すると奴の前方の地面から水の柱が立ち昇ってこちらの攻撃を搔き消してしまった。

 

厄介だな……発動速度が少し遅いことから攻撃手段としては警戒し過ぎずとも良いだろうが,防御に使われると攻撃を通すのは難しそうだ。

 

というのも,私は水棲の魔物に効果的であるとされており,王子も多用している雷属性の技の扱いが得意ではないのだ。

 

それ以外でも本体に当たればダメージはいくらか通るだろうが,私が使える風属性の呪文などに切り替えたとしてもあの水の壁を突破できるかは怪しい。

 

どうするべきか……。

 

「ギョギョッ!」

 

その時,私が思考に集中力を割きすぎて敵への注意をほんの少しだけ緩めてしまったことを感じ取ったのか,敵が再び勢いよく接近してツメを振り上げた。

 

「!! くっ!」

 

私は少し反応が遅れたことで,その場で慌てて防御の態勢をとる。しかし――

 

「ギョーーー!」

 

――敵はこちらに攻撃すると見せかけて急停止すると,こちらに向けて"もうどくのきり"を吐き出してきた。

 

しまった! 事前に敵が毒を用いることは聞いていたにも拘らず警戒が足りなかったか!

 

……だが!!

 

「今だっ! "はやぶさ斬りぃ"!!!」

 

「ギョッ!?」

 

私は両手の剣から繰り出される連撃を敵にお見舞いした。

 

思惑通りに毒を食らわせたことで油断していた敵は,私の斬撃を正面からまともに食らったようだ。

 

「ギョオオオ!!」

 

完全に意表を突いたその攻撃で,敵の片腕にダメージを与えることに成功した。

 

実は,我々の部隊の中でも側近クラスの者は毒を受けながら動けるようになるための訓練を経験しているのだ。

 

王子が発案したこの訓練内容は,サマディー領内に生息する'ウィングスネーク'や'くさったしたい'等のモンスターの毒技を受けたうえで回避や攻撃を通常通りに行えるようにするというものだ。

 

王子曰く「毒を受けただけで動きが悪くなるようでは強力な毒を持つ魔物との戦闘を任せられない」らしく,我々は必死に取り組んだのだ。

 

ただ,これは毒を無効化する訓練ではない。確かに軽度の毒であれば効かない程度の耐性はついたかもしれないが,この魔物の猛毒は私の体に少しずつダメージを与えていっている。

 

「ギョオギョッ!!!」

 

すぐにでもキアリーを唱えて解毒したいところだが,敵は先ほどの攻撃が相当頭にきたのか怒涛の攻撃を繰り出してきたため,その余裕もない。

 

敵の怪我もあるとはいえ,依然として強力な攻撃だ。更には体に回った毒のことを考えるとこのままではまずいっ!

 

「はああっ!」

 

そう考えて一度距離を取るために敵の体に向けて,残った力で渾身の蹴りを入れる。

 

「ギョウッ!」

 

「ハァ,ハァ……"キアリー"」

 

傷口に響いたのか敵はそのま後ろに仰け反りながら後ろに下がったので,その隙に自分の体に意識を集中させてキアリーを唱えた。

 

すると体から毒が消えていく感覚を得ることが出来た。正直なところ,流石に体力がギリギリだったので助かった。

 

そしてもう一度敵の方を向くと,私はあることに気づいた。

 

――そして,それと共に勝利を確信した。

 

敵は完全に冷静さを失っており再び襲い掛かろうとしてくるが,何か違和感を感じたようで私と同じように周囲を見渡した。

 

……するとそこには奴を囲むようにして展開した騎士たちの姿があったのだ。

 

既に魔物の群れの姿は船上になく,私たちが戦っている内に全て彼らによって倒されていたようだ。

 

敵もそのことに気づいたのか冷静さを取り戻し,その場で周囲を警戒する態勢に戻った。

 

だが今更気づいてももう遅い! 確かに私では実力で劣っていたかもしれないが,私達であれば恐れるものではない!

 

「皆! ここで決める! いくぞ!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

そうして我々はそれぞれ剣を構えながら息をそろえて次々に斬りかかる"れんけい"を繰り出した!

 

 

――"超・はやぶさのまい"!!!

 

 

「ギョオオオオオオオオオ!!!!」

 

敵もいくらかは防御に成功したようだが我々の総攻撃を受けては流石に耐え切れず,その場で魔力となって消えていった。

 

よし……力を合わせることでなんとか倒すことが出来たぞ。

 

――ドオオオオオンッ!!!!!

 

自分に回復呪文をかけながらそう考えていると,王子の乗る旗艦から凄まじい衝撃が伝わってきた。

 

どうやら王子の戦いはまだ続いているらしい。我々も次の行動に移らねば! それに……念のための準備もしておくべきだろう。

 

「すぐに他の船への連絡と移動の準備を! また,手の空いている者は私に付いてきてくれ!」

 

他の船の様子が気になる。それによって動き方も変えていく必要があるだろう。

 

そうして我々は新たに行動を開始したのだった。




分かりにくいところがあったかもしれないので少しだけ解説をば……


Q.いきなり出てきたけど,異モンスターってなに?

A.軽い突然変異を起こした個体という想定をしています。ただ,強モンスターみたいな劇的な強化ではないので,あくまで能力は個体差の範疇で最上位みたいな感じです。でもそれによってその魔物の多くが使えない技を使えたりすることがあります。

Q.なんで毒の訓練を?

A.主人公くんは,勇者パーティは毒になってもパフォーマンスが落ちていなかったからそのぐらいいけるやろの精神でやりました。もちろん本人も参加しました。


今作を読まれてきた中で,解説が欲しい概念や名称などが出てきた時はぜひご質問ください! 先のネタバレにならない範囲でどんどんお答えしていきます! ……たまに作者のミスが発覚するときもあるかもしれませんが笑

それではまた!('ω')ノシ
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